この記事は過去のアーカイブです。トルコの記事のうち、データとして古くなったものをこちらに格納しています。本ブログは以下からアクセスしてください。
2021年1月
2021年1月 政策金利を据え置き
トルコ中央銀行は1月21日、主要な政策金利の1週間物レポ金利を年17%で据え置くと決めました。
新しい総裁となって、2会合連続した利上げは打ち止めとなりました。
市場予想も同じでした。
通貨リラは発表後、対ドルで小幅に下落した後、反発しました。
中銀は声明で
「長期的なインフレ率の下降がみられるまで、引き締め策を続ける」
と述べています。
12月のインフレ率は加速
1月4⽇発表の12⽉消費者物価指数は、前年同⽉⽐+14.6%でした。
11⽉の同+14.0%から加速しました。
市場予想の同+14.2%も上回っています。
ただし、12⽉に政策⾦利を17.00%まで引き上げたこともあり、実質政策⾦利は他国と⽐較してもかなりの水準を確保できている事や、11⽉上旬以降のリラ高で輸⼊物価の低下が時間を追って消費者物価指数の伸びを抑制する期待が⾼まっているため、大きな心配はされていません。
2020年12月
2020年12月 2%の金利引き上げ
トルコ中央銀行は12月24日、金融政策決定会合を開き、主要な政策金利の1週間物レポ金利を2%引き上げ、年17%としました。
政策金利は前月に続き2カ月連続で引き上げられました。
アーバル新総裁はインフレ抑制のために必要な時には金融政策を引き締めると表明してきたため、利上げで投資家の信頼は高まりました。
因みにマーケットの予想中央値は150bpsの利上げでした。
中銀は声明で「引き締め策は長期的なインフレ率の低下が見られるまで断固として維持する」と述べています。
通貨リラは発表直後、対ドルで前日比1%上昇しました。
11月のインフレ率は加速で追加利上げ期待
2020年12月3日発表の11月消費者物価指数は前年同月比14.0%でした。
10月の11.9%から加速しました。
市場予想の12.7%も上回りました。
発表を受けて一時的にリラが売られる場面もあったようですが、追加利上げへの期待が高まったこともあり、すぐに買い戻されました。
2020年11月
2020年11月 中銀総裁を更迭
2020年11月7日、トルコ中央銀行のウイサル総裁がエルドアン大統領によって更迭されました。
法律違反の可能性がある総裁更迭は1年4カ月ぶりの2回目で、同中銀の独立性への疑念は一段と深まりました。
史上最安値を更新し続ける通貨リラへのさらなる下落圧力となる可能性があります。
アルバイラク財務大臣辞任でリラが急反発
2020年11月9日、トルコリラが対ドルで急反発しました。
リラ安を容認する発言をしていたアルバイラク財務相が11月8日に辞意を表明し、政策変更の兆候だとの観測が浮上したためです。
アルバイラク氏の辞意表明を受け、9日の外国為替市場では朝方からリラが買われました。
その後、中銀のアーバル新総裁が「物価安定のため、あらゆる手段を使う」と表明しました。
市場は同氏が早期の利上げを示唆したと受け止め、リラ買いが更に進みましだ。
11月9日のリラは一時、前週末より6%以上高い1ドル=8.0リラに達しました。
アルバイラク氏はリラ安を「輸出競争力を高める」と評価していました。
一方で11月7日未明には、当時のウイサル中銀総裁が大統領令で更迭されました。
新総裁には前財務相のアーバル氏が就きました。
アーバル氏はアルバイラク氏の政策に批判的で、不仲説が流れており、これがアルバイラク氏の辞任表明と関係があるのかもしれません。
中銀総裁更迭で最安値をまた更新
2020年11月7日、トルコ中央銀行のウイサル総裁がエルドアン大統領によって更迭され、同中銀の独立性への疑念が一段と深まった結果、トルコリラは11月6日に一時過去最安値となる1ドル=8.58リラを付けました。
最終的には1ドル=8.5445リラで取引を終了しましたが、リラは今年、対ドルで30%下落しています。
史上最安値を更新し続ける通貨リラへのさらなる下落圧力となる可能性があります。
2020年7-9月期GDPは2期ぶりのプラス成長
トルコが11月30日発表した7-9月GDPは前年同期比6.7%増でした。
G20の中で最も高成長の数字です。
新型コロナウイルスの感染拡大で4-6月のGDPは9.9%減でしたが、景気浮揚のため当局が銀行に促した融資拡大策などが奏功し、2期ぶりのプラス成長となりました。
内訳としては、
- GDPの6割を占める個人消費は前年同期比9.2%増
- 製造業が9.3%
- 建設業は6.4%
- サービス業は0.8%増
となったようです。
2020年11月 4.75%の利上げで政策金利は15%
2020年11月19日、トルコ中央銀行は金融政策決定会合を開き、主要な政策金利の1週間物レポ金利を4.75%引き上げ、年15%にすると決めました。
7日に就任したアーバル新総裁の下で大幅な利上げに踏み切ったことで、トルコの金融政策が正常化するとの期待が高まり、通貨リラは買われました。
リラの対ドル相場は発表後、前日比で一時2.5%上昇しています。
中銀は2019年7月から20年5月までに主要政策金利を計15.75%引き下げており、インフレ率を下回る実質的マイナス金利状態となっていました。
エルドアン大統領は、アーバル新総裁らに外貨準備の危機的な状況を説かれ、自らの娘婿の財務相らを退任させることに合意したとされます。
中銀は今回の決定会合で、資金供給を主要政策金利に1本化するとも発表しました。
今回の決定は市場にひとまず安心感を与えましたが、焦点はエルドアン氏がいつまた利下げを主張するかです。
大統領の任期切れを2023年に控え、エルドアン氏が再選を果たすには、景気を冷やしかねない高金利は避けたい本音があるとされるからです。
今回の利上げ幅は2年超ぶりの大きさとなり、ひとまず夏以降に安値を更新したリラを支える可能性があるわけですが、新型コロナウイルス禍からの景気回復を遅らせる恐れもあります。
2020年10月
2020年10月 リラが連日最安値更新
トルコ政府がロシア製ミサイルのテストを開始したり、アメリカ大統領選挙でバイデン氏が優勢である事等から、トルコは連日最安値を更新しています。
ミサイル問題については、アメリカから制裁を受ける懸念が高まり、 リラの下落要因となりました。
更に米大統領選においては 、トルコに強硬的な姿勢を示すとみられるバイデン氏が優勢との見方が強まった事で、こちらもリラを下落させる事となりました。
この結果、連日で円や米ドルに対して史上最安値を更新し、2020年10月8日に、一時1ドル=7.95リラ、1リラ=13.3円と史上最安値を記録しました。
2020年10月は据え置き
2020年10月22日、トルコ中央銀行は金融政策決定会合を開き、主要な政策金利の1週間物レポ金利を年10.25%のまま据え置きました。
通貨リラは最安値圏で推移していますが、景気刺激を優先する政権に配慮したとみられます。
市場では2%程度の利上げが予想されていたため、発表後リラは対ドルで一時、最安値を更新しました。
2020年10月、インフレ率は予想に反して鈍化
2020年10月5日、9月の消費者物価指数が発表され、前年同月比11.75%と、市場予想の12.13%に反して前月の11.77%よりも鈍化しました。
トルコ ・ リラは発表直後に対米ドルで一時的に上昇しましたが、インフレ懸念は拭えず 、リラ買いは長続きしませんでした。
2020年9月
政府、今年の成長率を+0.3%と予想(2020年9月)
2020年9月29日、アルバイラク財務相は新型コロナウイルス危機から回復する中、今年の経済成長率が0.3%になる見通しだと表明しました。
ただ、最悪シナリオでは1.5%のマイナス成長になると警告しています。
同相は政府の新たな中期プログラムを説明する中で、第4・四半期のGDP伸び率は第3・四半期と比べ鈍化するものの、2021年には5.8%に加速すると述べました。
同相は、金輸入と新型コロナに伴うロックダウンを背景とする観光収入の減少で2020年は経常収支の黒字化を望めないものの、経常収支を改善し、持続可能な成長の達成を目指すとしました。
2020年9月、2年ぶりの利上げ
2020年9月24日、トルコ中央銀行は金融政策決定会合を開き、主要な政策金利の1週間物レポ金利を2%引き上げ、年10.25%としました。
エルドアン政権は低金利で景気を支える意向を示していたが、史上最安値圏で推移する通貨リラ防衛のため中銀は2年ぶりの利上げに踏み切りました。
市場予想は据え置きで、利上げ発表の直後、リラは対ドルで一時、前日比2%近く上昇しました。
リラは9月に入り、連日のように史上最安値を更新しており、昨年末からの下落率は2割を超えていました。
中銀は8月以降、流動性を絞るなどで引き締めを図ってきましたが、投資家は透明性欠如や政策反転の容易さからこの手法を疑問視していました。
中銀は声明で、
「インフレ期待とインフレ見通しへのリスクを抑制するため、8月以降に実施してきた引き締め措置を補強する必要があると判断した」
と説明しています。
競争的な通貨戦略
2020年9月9日、アルバイラク財務相は輸出主導型の経済をめざすために 、「 競争的な」通貨戦略を採用すると発表しました。
具体的内容は明かされませんでしたが、要するに通貨安を容認する姿勢だと受け止められています。
もちろん、これはリラ売り圧力を強める可能性があります。
2020年9月、2年ぶりの利上げでリラは一時2%高
トルコ中央銀行が9月24日の政策決定会合で、主要政策金利の1週間物レポレートを8.25%から10.25%に引き上げた事で、リラが上昇しました。
リラの対ドルレートは、発表後に約7.71リラから7.56リラまで上昇し、約1カ月ぶりの高値を付けました。
ただ、政策金利は年率11.77%のインフレ率を下回ったままで、リラを預金する場合、実質金利はマイナスのままとなっています。
マーケット関係者は利上げ決定を「大胆」だとして歓迎し、2018年の通貨危機から「教訓を得た可能性がある」と指摘しています。
2020年9月、高インフレ率収まらず、リラは最安値を更新
トルコのインフレ率の高止まりが続き、リラが最安値を更新しました。
2020年9月3日発表の8月消費者物価指数は前年同月比+11.77%と7月からほぼ横ばいでしたが、コア指数は+11.03%と7月の10.25%から加速しました。
インフレ率が鎮静化する兆しはみられません。
同指標の発表後に通貨安圧力が強まり、トルコ・リラ(対米ドル)は過去数週間にわたってサポートされていた7.4リラの節目を突破し、過去最安値を更新しました。
2020年8月
2020年第2四半期はマイナス9.9%
2020年8月31日発表となった4~6月期の実質GDPは前年同期比マイナス9.9%でした。
新型コロナウイルスの影響でほとんどの主要セクターが落ち込みました。
ただ、エコノミスト予想中央値では10.7%減だったので、予想は上回りました。
足元で製造業などには景気回復の兆しがみえますが、外貨収入源の観光業は不振が続いており、経常収支の悪化が懸念されています。
- 製造業はマイナス18%、
- サービス業は同25%
- 輸出は同35%
- 金融・保険サービスは28%増
新型コロナの拡大後も政府は2020年通期のプラス成長に自信を示していましたが、8月に入り「マイナス2~プラス1%成長」と予想を修正し始めました。
2020年8月、中銀が実質的に1.5%の利上げ
2020年8月7日、トルコ中銀はプライマリーディーラーに対する公開市場操作での流動性供給枠を8月10 日から半減させると発表し、その結果短期金利が上昇しました。
翌日物 TRLIBOR は政策金利である1週間物レポ金利である8.25%より翌日物貸出金利9.75%に近い水準に上昇しており 、実質的には1.5%の利上げだと解釈できます。
しかし 、リラ売り圧力は収まっていません 。
為替市場は当局が何らかの形で介入し 、リラを買い支えていることがうかがえる値動きになっています。
実際、金価格が大幅に下落しており、トルコ中銀が保有する金を売却し 、リラの買い支えに動いた可能性も考えられます。
2020年8月の会合では政策金利を据え置き
2020年8月20日、トルコ中央銀行は金融政策決定会合を開き、主要な政策金利の1週間物レポ金利を年8.25%で据え置くと決めました。
通貨リラは史上最安値圏で推移しており、利上げをしなければならない状況ですが、低金利で景気を支えたい政権の意向をくんだとみられます。
中銀は声明で、新型コロナウイルス対策のために導入した流動性措置を継続すると表明しました。
最近取った引き締めステップが金融市場の安定を支えると判断した、としています。
2020年8月、連日の最安値を更新
リラが対ドルで連日の最安値を記録しています。
トルコリラは17~18日、対ドルで史上最安値を更新し、一時1ドル=7.4リラ台に迫り、2019年末からの下落率は20%近くに達しました。
通貨危機の再燃を懸念する金融市場では20日の金融政策決定会合で、中央銀行の利上げを期待する声が強いようですが、エルドアン大統領は反対しています。
国営銀行を通じて間接的に為替介入する中銀の限界も近づいています。
外貨準備高(金を除く)は8月7日時点で460億ドルとなっており、19年末から4割超も減りました。
政策金利が8.25%と足元のインフレ率(12%)を大きく下回る実質的なマイナス金利状態で、リラには下落圧力が継続的に働いています。
マーケット関係者からは通貨を安定させるためには5%前後の利上げが必要との声が上がっています。
しかし、トルコ国内では20日の会合で中銀は利上げを見送るとの見方が大勢のようです。
理由は景気刺激を優先するエルドアン氏が利上げに反対しているからです。
金利が下がれば物価も下がるという独自の考えを持つエルドアン氏は8月10日に、
「金利がさらに下がることを望む」
と中銀に圧力をかけています。
エルドアン氏は2019年7月、利下げ要求に従わないことを理由に当時の中銀総裁を更迭した経緯があります。
後任として副総裁から起用されたウイサル現総裁は就任以降、20年5月まで9会合連続、計15.75%もの利下げを実施してきました。
大統領の意向をむげにできない中銀は「裏口」の金融引き締めに乗り出していますが、焼け石に水なのかもしれません。
8月7日には1週間物レポ金利を使った市中銀行への資金供給を停止して、より金利の高い後期流動性貸出金利(11.25%)などに誘導しています。またし、景気浮揚のため国営銀などに促していた、政策金利を大きく下回る水準での個人・企業向け融資の金利も引き上げさせました。
ただ、中銀は18年夏の通貨危機「トルコショック」の前も同様の引き締め策で解決を試み、失敗した経緯があります。
利上げの判断が遅れるほど傷口を広げ、最終的にはより大幅な利上げを余儀なくされる可能性があります。
2020年8月 対ドルで過去最安値を更新
2020年8月6日、トルコリラの相場が一時1ドル=7.3リラまで下がり、対ドルで5月上旬に記録した過去最安値を更新しました。
前日比の下落率は3%を超え、対ドルの下落率は19年末から18%に達しました。
当局は国営銀行を通じてリラを買い支えてきましたが、原資の外貨準備が減り続けており、原資の外貨準備が減り続けている状況で、防衛の目安の相場水準を切り下げたとの観測が市場に広がった結果となりました。
トルコは政策金利がインフレ率を下回る実質マイナスの状態で、リラが売られやすい状況です。
新型コロナウイルスの影響でトルコ経済も悪化しており、予断を許しません。
中銀の外貨準備(金を除く)は足元で509億ドル(約5兆3000億円)で、2019年末に比べ37%減っています。
リラは対ユーロでも6日に一時、過去最安値を更新しました。
エネルギーを除く輸入の決済はユーロ建てが多く、足元で12%のインフレの加速につながる可能性が高まっています。
オフショアでリラの決済できず、節目の1ドル=7リラを突破
2020年8月4日、複数の国際的な金融機関で、トルコの銀行を相手方としたトルコ・リラのポジションを決済することができなかったようです。
オフショア市場でのリラの流動性を制限する政策の結果のようです。
オフショアの投資家がリラを借り入れるコストが一時1050%も急騰したため、外国銀行はリラの支払いを履行できませんでした。
今回のような決済不能は以前にもあり、トルコ当局は一時的に国内銀行がシティグループとUBSグループ、BNPパリバと取引することを禁じていました。
今回のリラひっ迫は、トルコ国営銀行による先週の大規模な介入の結果と考えられます。
国営銀行による大量のドル売りの決済が祝日明けの4日に始まり、リラが不足しオフショア市場での翌日物借入金利は1年5カ月ぶり高水準に跳ね上がったのです。
当局はリラ売りを防ぐために外国人投資家が国内銀行からリラを借り入れることを禁止していて、トルコ中央銀行からの資金供給も利用できません。
このためリラが必要な際は、供給が限定的なオフショア市場で借り入れるしかないわけです。
こうした事もあり、8月5日は節目の1ドル=7リラを割り込んでいます。
2020年7月
中銀、インフレ率鈍化を予想(2020年7月)
2020年7月29日、トルコ中央銀行は四半期報告書で、インフレ率予想を引き上げましたが、間もなく鈍化するとの見方を示しました。
中銀は、新型コロナウイルスの感染第2波が起きないことを前提に、2020年末のインフレ率予想を8.9%とし、前回予想の7.4%から引き上げました。
インフレ率は2021年末までに6.2%に低下すると予想しています。
因みに前回は5.4%に低下すると見込んでいた。
6月の消費者物価指数は前年比12.62%上昇し、中銀の目標を大きく上回りました。エコノミストはおおむね、年内インフレ率は高水準で推移すると予想しています。
また、外貨準備は、短期的な債務返済に対応できる水準だとし、下期に外貨準備の状況が改善するとの見方を示し、新型コロナウイルスの感染拡大のような状況で大きく変動することは異常ではないと指摘しています。
今週に入り一時1.5%下落した通貨リラ相場には言及しませんでした。
トルコ政府はリラ防衛に懸命(2020年7月)
トルコ政府が通貨リラ防衛に懸命です。
中央銀行が市中銀行から預かる外貨まで流用して買い支えているとみられています。
背景には新型コロナウイルスによる景気の落ち込みで政権が揺らぎかねないという危機感があるようです。
リラの対ドル相場は足元で1ドル=6.85リラ前後と年初より約13%下がっています。
6月中旬からはこの水準で安定していますが、これはトルコ中銀が国営銀行を通じ、市場で買い支えているからと言われています。
もちろん、トルコ中銀にそういった指示を与えているのは政府です。
買い支えの原資は中銀の外貨準備です。
金を除く純外貨準備は2020年7月10日時点で496億ドル(約5兆3千億円)と2019年末から4割も減りました。
トルコ国内のエコノミストによれば、中銀が外貨準備の減少を抑えるため市中銀行から預かる外貨を流用していると推測しています。
トルコがリラ防衛に使った外貨は19年以降で約1千億ドルとされており、これは同国のGDPのほぼ8分の1にあたる規模です。
こうしたやり方が長続きしない事は目に見えています。
エルドアン氏はリラが暴落しても自分の政治基盤が脅かされないように世界遺産をモスク化したりしていますが、抜本的な解決にはならず、しっかりとした経済的な改革が必要でしょう。
2020年7月、預金準備率引き上げと政策金利を据え置き
2020年7月23日、トルコ中央銀行は主要な政策金利の1週間物レポ金利を年8.25%のまま据え置くと決めました。
据え置きは2会合連続となります。
今回の据え置きはほぼ予想通りです。
足元のインフレ率(12.6%)を大きく下回っており、利下げ余地はない状況のままです。
トルコ中銀は前月までの9カ月間で計15.75ポイントの利下げを実施していて、市場の注目は利上げの可能性に集まっています。
市場では次回以降の利上げを予想する声もありますが、利上げを嫌うエルドアン大統領への忖度が働くかもしれません。
また、インフレ率についてですが中央銀行は声明で年末の物価上昇率が現行見通しの7.4%を上回る可能性を指摘しました。
中銀は4月、年末のインフレ予想を7.4%に引き下げましたが、一部のアナリストはこの日の中銀発言が7月29日に公表する次回の物価見通しで予想を上方改定することを示唆していると考えているようです。
預金準備率を3ポイント引き上げると発表
2020年7月18日、トルコ中銀は全ての銀行を対象に外貨預金準備率を3ポイント引き上げると発表しました。
金利引き上げは7月にはありませんでしたが、過度な金融緩和を修正する動きと言えそうです。
ここから更に利上げして過度なインフレを抑制する動きが出てくると金融市場の安定につながることが期待されます。
2020年6月
6月の予想外の金利据え置きでリラは上昇
5月に過去最安値を記録した後の6月、トルコ中央銀行が主要な政策金利の1週間物レポ金利を年8.25%で据え置くと予想外に決めた事を受け、リラは上昇しました。
6月25日の外国為替市場で通貨リラの対ドル相場は一時、前日より0.3%上昇しました。
5月下旬に記録した1ドル=7.2リラ台の過去最安値から回復し、足下では1ドル=6.8リラ台で推移しています。
国営銀行などが買い支えているとみられます。
5月のインフレ率は上昇が加速
2020年6月3日に発表された5月の消費者物価指数は前年同月比11.39%でした。
市場予想は10.87%でしたので予想を上回り、また前月(4 月)の10.94%からも伸びが加速しました 。
元々、利下げが難しい通貨ではありますが、更なる通貨安を伴わない追加利下げはより困難な状況かもしれません。
2020年5月
ロックダウンの一部緩和を発表(2020年5月)
2020年5月4日、エルドアン大統領は都市封鎖措置の一部緩和を発表しました。
理髪店やショッピングモールは11日から、大学や裁判所は6月15日から再開する予定です。
5~7月にかけて徐々に正常化を進めるようです。
出入りを原則禁止している31都市のうち7都市について禁止を解除しますが、最大都市イスタンブールや首都アンカラを含む24都市の移動禁止は5月中旬まで延長します。
トルコでは既に12万人以上の感染が確認されていますが、新規の感染者数は4日まで3日連続で2000人を下回るなどピークを越えたとの見方が出ています。
2020年5月、0.5%の利下げ
2020年5月21日、トルコ中央銀行は主要な政策金利の1週間物レポ金利を0.5%下げ、8.25%としました。
利下げは9会合連続です。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済悪化があるとはいえ、拙速な利下げで通貨リラは年初から対ドルで1割超下落しています。
リラ防衛のため、金融監督当局は外国市場でのリラ取引や金融機関の情報発信の制限に動きますが、外国からの資金流入を細らせる懸念は拭えません。
中央銀行はインフレは短期的に若干高まる可能性があるものの下期には需要面からのデフレ効果が優勢になるとの見通しを示し、利下げを正当化しました。
2020年1-3月の経済成長はプラスを維持
1-3月(第1四半期)はプラス成長を維持したようです。
新型コロナウイルス感染拡大の厳しい影響はありましたがマイナス成長は免れました。
1ー3月GDPは前年同期比4.5%増となりました。
予想中央値は4.9%増でした。
昨年10-12月(第4四半期)は6%、1-3月GDPは前期比0.6%増でした。
2020年5月、最安値を更新
2020年5月7日、リラの対ドル相場が一時前日比0.9%安の1ドル=7.2リラ台に下落し2018年の通貨危機「トルコショック」時の最安値を下回りました。
リラを買い支えようとする中央銀行の外貨準備は急減しており、トルコはアメリカなど主要中銀との通貨スワップ協定の締結を目指していますが上手くいくかは分かりません。
対米関係でも対欧州でも決して外交的に上手くいっているわけではないので、マーケットも懸念しているでしょう。
年初からのリラの下落率は5月時点で18%に達しています。
5月6日にはアルバイラク財務相が投資家らとの電話会議で2020年のプラス成長見通しなどを語りましたが、リラ売りは止まりませんでした。信用されてないという事でしょうか。
市場操作を巡る規制を強化した事も一因
同日、トルコの銀行監督当局は、金融市場で操作的と見なされる取引の範囲を拡大しています。
通貨リラが対ドルで最安値を更新する一つの要因となったと思われます。
銀行調整監視機構の新たな規制によれば、「誤解を招く価格」をもたらしたり、資産価格を「異常もしくは不自然な」水準に維持する結果となった銀行取引は今後、操作的とみなされるようです。
トルコでは今年2月にインサイダー取引や市場操作に関する罰則を強化し、刑期を延長する法律が成立しましたが、今回はこれを補完するものです。
今回は外為や金利を含む広範な資産が新たな規制の適用対象となるようです。
加えて低い流動性を利用した取引や、CDS取引でも特に急激な価格変動を利用したものを今回のリストに加えたようです。
4月のインフレ率は前月から伸びが鈍化し利下げを後押しする内容
2020年5月4日発表の4月消費者物価指数は前年同月比+10.94%と前月から伸びが鈍化しました。
コア指数も同+9.93%と市場予想に反して伸びが鈍化しており、追加利下げを後押しする結果となりました。
ただこれ以上の利下げは更なるリラ安を招く恐れもあり注意が必要です。
2020年4月
国営銀行への資本注入を検討
2020年4月下旬現在、新型コロナウイルスのパンデミックで打撃を受けている企業への支援を銀行に促す事が狙いで、国営銀行への追加資本注入を検討しているようです。
この計画は始まったばかりで、注入規模などもまだ明確になっていません。
資本注入の原資は、リラ建て国債の発行などが選択肢に挙がっているという事です。
資本注入先として検討されているのが、国内最大手のトルコ農業銀行とハルク銀行、バキフラール銀行の三つのようです。
IMFは2020年の経済成長予想を▲5%と予想(2020年4月)
2020年4月14日に発表されたIMFの世界経済見通しで、2020年のトルコの成長率は▲5.0%と見込まれています。
もちろんこれは前回から大幅に下方修正されています。
ただ、2021年は+5.0%となり、2020年の落ち込みをほぼ取り戻すとの想定のようです。
2020年末のインフレ率見通しを下方修正
2020年4月30日にトルコ中央銀行が四半期に1度のインフレ報告書を発表しました。
2020年末のインフレ見通しが前回の前年比+8.2%から+7.4%に下方修正されました。
これでさらなる利下げを正当化することになりますが、もちろんトルコリラの更なる下落が懸念されます。
外貨準備不測の懸念
4月17 日時点で259 億ドルに留まっており、その後も中央銀行は通貨安を抑えるべく通貨スワップを実施していますので、4月下旬における外貨準備高はゼロ近くになっている可能性もあります。
中銀のウイサル総裁は公式の場で外貨準備高の縮小を認めており、不測の事態に備えてアメリカやイギリスに通貨スワップ協定の締結協議を進めていたりするようです。
普通こういう時に力になるのはIMFですが、エルドアン大統領のIMF嫌いによって、あまり期待できません。
トルコの状況は厳しくなることが予想され、中国がここぞとばかりに手を差し伸べる事態も考えられ、そうなると事態は更に政治性を帯びて厄介になります。
日本、イギリス、中国などにスワップ通じた支援を要請
通貨リラの急落に備え、日本やイギリス、中国、カタールに通貨スワップを通じた支援を呼び掛けているようです。
先週、トルコリラが最安値を更新し外貨準備が減っている事で、多くの投資家がトルコリラの行く末を心配しています。
多額の債務を抱えるトルコがこのまま危険状態を放置していると、2018年のようなトルコショックがまた起こるかもしれません。
アナリストらは、トルコが数百億ドル相当の資金を確保できない場合、2018年のトルコショックと同様の事態が起こる恐れがあると考えています。
トルコ高官によれば、トルコ政府は各国との協議で手ごたえを感じているようです。
ただ、新型コロナウイルス危機で各国の政府と中銀が異例の対応を迫られる中、合意にどこまで近づいているかは分かりません。
2020年4月、1%の利下げで8.75%
2020年4月22日、トルコ中央銀行は政策金利を1%引き下げ、8.75%とする事を発表しました。
新型コロナウイルスの経済への影響を緩和する事が表向きの理由ですが、実質金利はかなり低く合理的な理由はあまりなさそうです。
通貨リラの急落しているにもかかわらず1年弱で8回目の利下げに踏み切る形となりました。
エコノミストの大半は0.5ポイント利下げを予想していました。
インフレ調整後の金利ではトルコはいまや世界で最も低い水準で、緩和サイクルの中でリラへの売り圧力が強まっています。
2020年4月、止まらないリラ安
トルコは新型コロナの感染者数が中東で最多に達し、景気回復シナリオも暗転する中、通貨リラは2018年の通貨危機以来の最安値圏で推移しています。
【トルコリラー日本円の推移(2020年1月10日~4月23日)出所:TradingView】
外貨準備もリラの買い支えを大量に行った事で1カ月で3割も減ったようです。
2月末に770億ドルだった中銀の外貨準備高(金を除く)は、4月10日時点で560億ドルに落ち込んだようです。
止まらないリラ安の中、景気刺激のためという事で中央銀行は4月22日に追加の利下げを決めました。
金融緩和の推進は資金流出を加速させる恐れがあります。
利下げに加え、中銀は3月から市場を通じた国債の買い取りも急拡大させています。
金融緩和や政府の財政拡張は一段のリラ安を招く可能性がありますが、選択の余地がないというのが実情のようです。
4日間のロックダウンを実施
2020年4月20日には、4月23日から4日間、全国31の都市でロックダウンを行うとの発表がありました。
トルコは11ー12日と18ー19日の週末に同様の措置を実施しています。
トルコでは足下の感染者数が主要国を除けば最大となるなど経済への悪影響が心配されています。
感染対策を巡っては政治対立が見え隠れし、エルドアン大統領はラマダン明けの来月末の経済活動正常化を目指す意向のようですが、一連の対応が奏功するかはまだ分かりません。
観光業への打撃も懸念
トルコは、近年のトルコリラ安によって、観光業が外貨の獲得手段として大きな役割を果たしてきたわけですが、コロナウイルス問題で各国からの観光客が激減しており、トルコ経済にとっては厳しい状況が続きそうです。
2020年3月
コロナ対策に150億ドルの景気対策
2020年3月18日、エルドアン大統領は新型コロナウイルスの感染拡大による影響を緩和するため、総額1000億リラ(154億ドル)の経済対策を発表しました。
主な内容
新型ウイルスの影響を受けた企業については、債務返済を少なくとも3カ月延期できたり、様々な業種を対象に、付加価値税と社会保障費の納付期限を延期します。
国民に対し、不要不急の場合や通勤を除き、向こう3週間の外出自粛も勧告した事に加えて、銀行に貸し渋りをしないよう求めたほか、企業には人員削減回避を呼び掛けました。
トルコ、1%の利下げでついに金利は1ケタ台に
2020年3月17日、トルコ中央銀行は金融政策決定会合を開き、主要な政策金利の1週間物レポ金利を1%引き下げて9.75%としました。
元々19日に予定されていた決定会合を急きょ前倒して実施しました。
新型コロナウイルスの感染拡大による経済の停滞に対応したとのスタンスです。
これで利下げは7会合連続で、リラは対ドルで一時、前日比1%近く下落しました。
足元では輸入物価を押し上げるリラ安が進んでいるものの、原油価格などの下落で、年末のインフレ率はこれまでの予想から下ぶれる可能性が高まったと判断したようです。
2020年2月
2019年10-12月のGDPは急回復もマーケットは反応薄
2020年2月28日、トルコ統計局が発表した2019年10~12月期のGDP成長率は前年同期比6%と急回復しました。
しかし、その前日に起きたシリアとの抗争激化によって、当面の景気はシリア情勢が大きなリスクになりそうです。
なかなか、トルコは投資家を安心させてくれません。
トルコのインフレ、予想以上に加速
トルコのインフレ率は、2カ月連続で予想以上に加速しました。
トルコ中央銀行が5会合連続で積極的に金融緩和を進めたため実質金利のマイナスはさらに拡大し、日本と同程度になりました。
2020年2月3日に発表された統計によると、1月のインフレ率は12.2%と、12月の11.8%から上昇しました。
トルコ中銀は、これまでエルドアン大統領に忖度して1桁台の金利という目標に向けて利下げを進めてきたわけですが、この動きが拙速だったのではないかとの疑問が生じています。
2020年2月末、シリア問題深刻化でリラが急落
2020年2月27日にシリア北西部でアサド政権軍とトルコ軍の大きな衝突を受け、トルコリラの対ドル相場が急落しました。
28日は一時、1ドル=6.25リラ台まで売られ、26日比で1%超下げました。
一方、トルコ統計局が28日発表した2019年10~12月期の実質成長率は前年同期比6%に急回復したが、あまり影響しませんでした。
2月初頭から下がりがちだったトルコリラは、年初からの下落率は5%に迫っています。
2020年2月、インフレ高いなか0.5%の利下げ
2020年2月19日、トルコ中央銀行は主要な政策金利である1週間物レポ金利を年11.25%から0.5%引き下げ、10.75%にすると決定しました。
エルドアン大統領の金利を1桁にするという意向に沿った形です。
新型肺炎による新興国通貨売りや、シリア情勢などの政治問題を巡る警戒感から通貨リラの下落圧力は高まっていて、理屈の通った利下げとは言えないでしょう。
2020年1月
政府の為替介入
2020年1月、アルバイラク財務大臣はリラ相場安定のため、国営銀行を通じた為替介入を継続する考えを示唆しました。
トルコリラは大変脆弱な通貨である為、現在当局が国営銀行等を通じてリラ買いをしていると言われています。
当局が3行ある国営銀などを通じてリラを買い支えているとの指摘について、アルバイラク財務大臣は
「中銀、国営銀、民間銀が積極的な市場参加者となって、協調して金融の安定化に取り組んでいる。今後もこれが継続される」
として、介入の継続を示唆しています。
トルコ、2020年は5%成長?
トルコ政府は2020年の経済成長率について強気です。
2019年後半には通貨危機に伴うマイナス成長から脱却し、GDPの6割を占める個人消費も徐々に回復しているように見受けられます。
なんとアルバイラク財務相は2020年の実質成長率が5%になるとの強気の見通しも示しています。
ただ、外貨準備不足や外交問題などで引き続き通貨クラッシュに見舞われる可能性が十分にあります。
アルバイラク氏は、
- 2019年通年の成長率は0.5%程度
- 経常収支の黒字とプラス成長を両立した
- 2020年について政府目標である5%の達成は十分可能と主張
といった趣旨のコメントを行っています。
0.75%の利下げして11.25%へ 政権からの圧力?
2020年1月16日、トルコ中央銀行は主要な政策金利の1週間物レポ金利を0.75%引き下げ、11.25%としました。
利下げは5会合連続となります。
景気浮揚を狙ってのことですが、実質金利はほぼゼロかマイナスになっていて、通貨リラの下落リスクが高まる可能性があります。
エルドアン大統領の利下げ要求と市場の反動リスクの間でバランスを取ったといった所でしょうか。
中銀は
「インフレ見通しに影響する全ての要素を考慮し、節度ある利下げを決定した。現時点で、現行の金融政策姿勢は予想されるインフレ低下のトレンドに矛盾していない」
として、改善を続けているとの認識を示しています。
足元の2019年12月の消費者物価指数は12%で、一時25%に達した2018年と比べると落ち着いている事は確かです。
ただ、引き続き気になるのはエルドアン大統領の独創的な金融政策理論です。
5会合連続となる利下げには、政権の圧力が働いているとの見方が強いです。
2019年12月
政治的な介入がなければ1リラ=20円はそこまで難しくない??
2019年12月現在、トルコのファンダメンタルズはかなり厳しい状況ながらインフレ率などは一時よりも少しは持ち直しつつあります。
何かグローバルで金融不安が起こったりリスクオフな出来事が起きると、直接関係のないトルコリラが売られるといった事も十分想定されるでしょう。
ただ、相場が落ち着いた状況であって、経済や金融への政治的介入がなければ20円への回復もそこまで遠くないのではないかと思われます。
金利が異常に高いのでbuy&holdでいっても相応に儲かる可能性もあるでしょう。
直近のGDP、プラス成長に回復も、弱さが表れる
2019年12月2日発表の2019年7ー9月GDPは前期比0.4%増、前年同期比で0.9%増と、予想を下回る低成長にとどまりました。
公的セクター、家計とも調子が悪いです。
- GDPの6割を占める個人消費は前年同期比1.5%増
- 官民のインフラ投資や設備投資を示す総固定資本形成は12.6%減と大きく落ち込み
2018年10~12月期に始まった3四半期連続のマイナス成長を脱し、景気はひとまず底を打った形ですが、雇用環境は悪化が続き、弱さが出ています。
高い失業率と高いインフレ率で支持率下落に悩むエルドアン大統領は、今回の統計に更なる焦りを募らせ、更なる利下げや歳出拡大を行うかもしれません。
ただ、もちろんそうした拡張的な政策がとられる可能性は大きな懸念材料となります。
2019年12月以降、トルコリラが下落続き
2019年12月中旬からトルコリラが急落しています。
12月20日は対ドルで1ドル=5.93リラと、前週末比2%安で取引を終えました。
その前日である19日には瞬間的に、5月以来の安値を付けました。
急落の背景
- エルドアン大統領が、国内にある米軍基地の使用禁止を示唆して対欧米関係が悪化していること
- リラを買い支えていた国営銀行による大規模な介入が最近実施されていないこと
等が言われています。
2019年11月末まで1ドル=5.7リラ台で推移していたリラは12月に入ってからどんどん下がり5.9リラ台まで下落しました。
トルコがシリア北部に侵攻した10月半ばに付けた直近の最安値も下回っている状況です。
政治ショックがあったにもかかわらずリラが安定していた理由
ただ、ここ最近は国営銀の介入があまりないようです。
これは政府が輸出促進のためにある程度のリラ安を容認しているのではないかとみるマーケット関係者もいます。
2%の利下げを行い、政策金利は12%
2019年12月12日、トルコ中央銀行は主要な政策金利である1週間物レポ金利を2%引き下げ、12%としました。
これで利下げは4会合連続となります。
中銀は
「インフレ見通しは改善を続けている」
と述べています。
2018年夏の通貨危機後、24%に達した政策金利は、4会合で計12%引き下げられました。
エコノミスト予想には幅がありましたが、大勢の予想は1.5ポイント利下げでした。
これ以上の利下げの可能性
ドラスティックに下げる可能性は低いと思われます。
現状、政策金利から物価変動の影響を除いた実質金利は2%程度まで下がっていて、これ以上の利下げはリラ売りにつながりインフレを再燃させるリスクもあるためです。
中銀は2020年、19年は8回だった金融政策決定会合を12回に増やす予定です。
次回の金融政策決定会合で、中央銀行は難しい判断となるかもしれません。
エルドアン大統領は2020年中に金利を一けたにすると宣言しています。
その一方で、懸念点があります。
- 2019年12月の利下げで実質金利は他の新興国に比べて低水準となり、これ以上金利を引き下げるとリラ売りが加速する可能性がある。
- 中央銀行は来年末時点のインフレ見通しを 5.3~11.1%としているものの、予定通りそうなるかは分からない。
- 政治問題、特に対米関係などに端を発するリラ安がいつ起こっても不思議ではない。
等です。
こうしたなかで、中銀にとってはエルドアン大統領にとて悲願である政策金利の一桁台突入を前に難しい政策対応を迫られることは避けられません。
仮に対立が表面化する事態となれば、前任者同様にウイサル総裁が更迭されるリスクも出て来ます。
2019年11月
2019年10月
2019年10月、中央銀行総裁が利下げ余地狭まると発言
2019年10月31日、トルコ中央銀行のウイサル総裁は過去数カ月間の10%に及ぶ利下げで、利下げ余地が狭まったという認識を示しました。
「現状にたどり着くまで、かなりの緩和余地を使ったことを強調したい。主要な物価動向は著しく改善しており、これが中銀の決定につながった根本要因だ」
ただ、インフレ率が落ち着けば、それをもってエルドアン大統領が更なる利下げを要求してくる可能性相応にあるでしょう。
シリア関連でトルコリラ下落
2019年10月9日、トルコ軍がシリア北東部を掌握するクルド人勢力への軍事作戦を開始しました。リラもこれを受けて下落しました。
トランプ大統領は、トルコの今回の軍事行動を支持しないとすぐに表明しました。
ただ、攻撃停止は明確に求めず、報復措置にも触れませんでした。
対米関係においては大丈夫という確信がエルドアン氏にもあるのかもしれません。
ただ、軍事行動はリラを下げる効果があり、これによってまた輸入物価が上がると、落ち着き始めたインフレ傾向がまた元の悪い状態になり、経済を冷やす事になる可能性もあります。
2019年10月、政策金利を2.5%下げて14%に
2019年10月24日、トルコ中央銀行は主要な政策金利の1週間物レポ金利を2.5%引き下げ、14%としました。
利下げはこれで3会合連続となります。
利下げの背景
- インフレ見通しの改善
- シリア北部への軍事作戦がアメリカ、ロシアとの合意で沈静化したこと
- アメリカからの経済制裁も解除されたこと
直前の市場予測との比較
利下げ幅は市場予測を上回りました。中央銀行が年末までのインフレ率の見通しが2019年7月に示した13.9%よりもかなり下回ると考えているからです
2019年9月
トルコ政府、2019年後半からインフレは落ち着き、来年から5%の成長を見込む
トルコ政府は、経済が今年のほぼゼロ成長から急加速し、インフレは鈍化するとの見通しを示しました。
2019年9月30日、アルバイラク財務相が記者向けのプレゼンテーションで語った所によると、
- インフレ率が8月の15%から年末には12%に減速すると予想
- 更に2020年末に8.5%、21年末には6%への低下を見込みます。
- GDPは2019年が0.5%の伸びにとどまるものの、2020年からの3年間は5%の成長を続けるとの見通し
invstem.com
2019年9月、3.25%の利下げ
2019年9月12日、トルコ中央銀行は金融政策決定会合を開き、主要な政策金利である1週間物レポ金利を年率3.25%引き下げて16.50%にすると決めました。
invstem.com
invstem.com
利下げの表向きの理由は物価上昇率が縮小傾向で、金融緩和を進めて景気をテコ入れする好機、というもの。
ただ、エルドアン大統領の意向も相当にあるでしょう。
invstem.com
事前の予測は2.75%程度でしたので、これを上回る利下げです。
ただ、エルドアン大統領は金融政策決定会合の直前に、金利を一けた台に、とする発言をしていたので、それに比べれば、まだ許容範囲っという事で、トルコリラはこの利下げ幅を受けて上昇しました。
2019年8月
よくやり玉にあがる経常収支問題
トルコのアキレスけんとしてよく言われるのが慢性的な経常赤字。
ただ、少し状況は変わっています。
リラ安の恩恵でトルコの観光業は2019年1~7月において、前年同期比14%増となる2500万人の外国人観光客を呼び込みました。
内需や輸入の低迷から貿易赤字は縮小し、2019年6月までの1年間の経常収支は17年ぶりにプラスに転じました。
トルコ=慢性的な経常赤字=通貨がなかなか上がらない
という式は少しずれてきているようです。
2019年第二四半期のGDP
2019年8月2日発表の2019年4~6月期のGDPは前年同期比1.5%減と、3四半期連続でマイナスでした。
インフレによる消費低迷が主因でしょう。
インフレの理由はもちろん通貨安。
通貨急落の引き金となった対米関係の改善も進まず、景気の先行きは見通せない状況で、トルコ投資家にとってはやきもきした所でしょう。
- トルコのGDPの6割を占める個人消費は前年同期比▲1.1%。この数値は前期が▲4.7%だったため少し改善しました。
- 政府・民間による投資も▲22.8%。経済のけん引役だった建設業も低迷。
invstem.com
恐らくエルドアン大統領の意向を受けて、9月も中銀は追加利下げをするものと思われます。
この結果、通貨リラは再び下落していて、足元では1ドル=5.8リラ台と、8月上旬から約7%下落しました。
トルコ政府は19年通期の成長率を2%強と予想していますが、エコノミスト予測はゼロ成長です。
やはり為替相場が安定しなければ、プラス成長は難しいと考える人が殆どです。
懸念の対米関係は今も不透明感が漂っています。
2019年8月27日、米下院外交委員会は公式ツイッターでトルコへの制裁に言及しています。
実はこの日、エルドアン氏がプーチン大統領と会談していて、その時にロシアからの戦闘機の購入や共同生産の可能性について言及していたのです。
まだまだくすぶり続ける火種が沢山あります。
20%超の金利の魅力。。。
私の場合は、少し怖いけどやはり20%もある金利はすごいと思ってしまいます。
なので、超長期視点でまた下がってもいつかは元に戻るだろう、その間はずっと高い金利で利息収入をもらって待機しておこう、というスタンスで継続的に投資をしています。
もっとも、政治リスクが高すぎて合理的な予測が出来ない通貨なので、他の人にあまり同じ手法をおススメすることが出来ませんが。。。
2019年7月
2019年7月、フィッチが中銀総裁更迭を受けて格下げ
2019年7月12日、フィッチはトルコの格付けを従来の「BB」から「BBマイナス」に引き下げました。
見通しはネガティブです。
チェティンカヤ中銀総裁の更迭について、中銀の独立性や経済政策の信頼性を損なうものとして、格下げにつながった一つの理由であるとしました。
2019年7月に政策金利を19.75%に
2019年7月25日、トルコ中央銀行は金融政策決定会合で、主要な政策金利の1週間物レポ金利を4.25%引き下げ、19.75%としました。
invstem.com
足元でインフレが和らぐなど緩和に転じる環境が整いつつあったものの、気になるのは中央銀行へのエルドアン政権の影響力です。
実際に市場予想を超える急激な下げ幅となった背景には、景気浮揚を狙うエルドアン大統領政権の圧力があったと思われます。
かつて25%を超えていたインフレ率は2019年6月時点で、15.7%まで低下。
一方で通貨防衛を目的とした政策金利24%は経済活動は冷え込ませ、GDPは19年1~3月期まで前年同期比で2四半期連続で減少。
上記の様な現状に基づき、市場は2.5%の利下げを予想していました。
ところが実際はその市場予想を大きく超える利下げとなり、政治的な圧力が働いたとの見方が強まっています。
トルコの金融政策については以下のリンクで特化して記述しています。
トルコの金融政策の経緯とまとめ2019年6月
2019年6月、ムーティーズが格下げ
2019年6月14日、ムーディーズは、トルコの自国通貨建長期債務格付および外貨建長期債務格付を「Ba3」から「B1」に、それぞれ1段階引き下げました。
格付見通しは「ネガティブ(弱含み)」としています。
背景は、
- 2018年以降、トルコ政府が公表した経済改革政策で実現しているものは少なく、政策の有効性等への
投資家の信頼感が低下してきていること - 外貨獲得が難しくなっているのではないかと考えられること
- トルコにおける外貨準備が今後2年間で一層不足すると予想されること
等です。
今に始まった事ではないですが、トルコの海外からの視線は以前として厳しいままです。
2019年5月
2019年1-3月の成長率はマイナスで、2四半期連続マイナス成長
2019年5月31日に発表された2019年1~3月期のGDPは前年同期比▲2.6%減でした。
前年同期を下回るのは2四半期連続で、通貨安がもたらしたインフレで経済が不調です。
エルドアン大統領は2019年6月下旬にトランプ米大統領と首脳会談し、通貨安の原因である対米関係を改善して苦境の打開を図りたい考えですが、どうなるでしょうか。
2019年3月
2019年3月、地方選挙をにらんだ政策が裏目に出てリラ急落トルコ
2019年3月、トルコリラが急落しました。
既にリラの急落に慣れてきている投資家も多いでしょうが。。。
やはり急落のきっかけはまずい政策でした。これも親マーケットの閣僚や当局者を遠ざけてしまった結果かもしれません。
これらについての経緯等をまとめた記事は↓をご参考ください!
2019年3月地方選挙前に起こったルコリラ急落についてのまとめ
2019年3月 トルコの金融政策、一転引き締めへ
2019年3月22日、トルコ中央銀行は通貨リラ急落を受けて、金融引き締め策を発表しました。
主要な政策金利である1週間物レポ金利(年24%)を使った市中銀行への資金供給を停止し、今後は別の政策金利である翌日物貸出金利(25.5%)や後期流動性貸出金利(27%)に切り替えます。
中央銀行は引き続き高金利を嫌うエルドアン大統領からの圧力を受けていると思われ、使用する政策金利の切り替えという事で事実上の利上げをしようと試みたのだと思われますが、発表後もリラは下げ止まりませんでした。
2019年3月22日 一時5%超トルコリラ安に
2019年3月22日、トルコリラが主要通貨に対してかなり売られました。
対ドルでは一時1ドル=5.8リラ程度と前日比5%あまり急落しています。
トルコ中央銀行が2019年3月21日に発表した週間統計で個人や企業がリラを売ってドルを買う動きを加速させたことが明らかになり、リラの先安観が強まったと見られます。
高インフレで自国通貨の減価を嫌気し、トルコの個人や企業がドル預金を積み増しており、それが無視できないレベルになっているのです。
もちろん中東情勢の不安定化やトルコとアメリカの関係についての懸念も背景の一つとしてあるでしょう。
2019年3月 トルコ 2018年10-12月GDPは3%マイナス レセッション入りか
2019年3月11日発表された2018年10~12月期のGDPは前年同期比3%減で、9四半期ぶりのマイナス成長となりました。
物価が高騰し消費や投資が低迷しており、マイナス成長は19年前半まで続く可能性が高いです。
2018年後半以降で見ると、あらゆる経済指標でトルコ経済が悪くなっているのが分かります。
例えば、鉱工業生産指数、自動車販売、失業率などです。
今回の10~12月期はGDPの6割を占める個人消費が8.9%減を記録し、官民のインフラ支出や設備投資の合計である総固定資本形成も12.9%減でした。
2019年3月 トルコ中央銀行、4会合連続の政策金利据え置き
2019年3月6日、トルコ中央銀行は金融政策決定会合を開き、主要な政策金利である1週間物レポ金利を年24%で据え置きました。
2月のインフレ率は19.6%と2018年8月以来初めて20%を下回りましたが、1年前のほぼ2倍の高水準であることに変わりはなく、景気刺激をめざす利下げは時期尚早と判断したようです。
これで政策金利の据え置きは4会合連続となりました。
2019年3月 2月のインフレ率は19.6%
2019年3月4日、2月のインフレ率が前年同月に比べ19.67%上昇したとの発表がありました。
前月の20.35%からの改善は小幅にとどまりました。3月末の統一地方選に向け、エルドアン大統領の政権は大都市で公営、低価格の野菜販売所をもうけるなどインフレ抑制に向けた対策を進めていますが、効果は不透明です。
エルドアン大統領が経済の実態を無視して中央銀行に利下げ圧力をかけないか心配です。
トルコの外貨準備高が危機的な水準
中央銀行の外貨準備高が、トルコリラ防衛でかなり減少したことで、トルコの
- 国際収支
- 外貨建て債務を繰り越す能力
- 必要な場合に緊急の資金をどのように、どこから調達するか
を巡って疑念が生じています。
トルコでは外貨に対する国内の需要がかなり強く、外貨準備高の多寡が注目を集めています。
最近公表されたデータによると、中央銀行の外貨準備高は3月15日までの1週間で約30億ドル減少して737億8000万ドルとなりました。
一方でトルコの個人が保有する外貨建ての預金およびファンドの総額は1057億4000万ドルと過去最高を更新しています。
もし外国からの資金流入がすべて停止した場合に、輸入を継続できる期間は、
- 南アフリカ:6カ月強、
- ロシア:1年半
- トルコ:約4カ月
となっていて、かなり厳しい状況です。
2019年3月の急落で個人のトルコリラ投資家に影響広がる
2019年3月下旬にトルコリラが急落しました。(詳細は2019年3月地方選挙前に起こったルコリラ急落についてのまとめをご参照ください)
この急落が、FX取引を行う個人投資家に影響を及ぼしました。
トルコリラの翌日物スワップ取引金利が年1千%以上に急上昇し、本来ならFX取引の利息も増えるはずですが、FX業者の経営体力の違いによって得られる利息に2倍超の差が出てしまったのです。
例えば、大手のFX業者ははおおむね、1万リラあたり100円を超えていますが、中小では40円前後にとどまっているようで、2倍超の差があるわけです。
今回業者間で差が出たのは、利息水準を業者が決めることができる事も背景の一つのようです。
一部のFX業者は銀行などからリラの調達が難しくなっていて、高い利息を投資家に提供できないのです。
リラが調達できないのに、高い金利を付ければリラ買いの注文が増えてしまうため、本来はもっと利息を増やしたかったけど、そう出来ないという事です。
加えて、”サヤ抜き”で稼ぐ業者も出てきているようです。
FX業者は投資家からリラ買いの注文を受けると外国為替市場でリラを手当てする必要がありますが、相場変動を理由に必要以上に大きなサヤを抜き、その分個人投資家がもらえる利息をもらえていない、という事です。
※スワップポイントとは
スワップポイントというのは、簡単に言うと二国間の金利差の事を指します。
日本の場合はほぼ金利がゼロなので、海外の通貨を買うと、その通貨の金利がまるまる収益として得られるわけです。
トルコの場合は、トルコ金利ー円金利分がスワップポイントでつきます。もちろんブローカーの手数料等は差し引かれてしまいますが、それでも大きな金利収入です。
FXで投資をされている個人投資家の方は多く、それをブログでお書きになられている方も多いです。
以下にリンクを貼らせて頂いたブログでは、毎月積み立てでトルコリラに投資をされている方のものです。個人的に参考になりましたので、リンクさせて頂きます。
https://akilog.jp/restart-turkey-swaplife/
2019年3月28日 トルコ・リラの下げは続く
2019年3月28日の取引でも下落しました。
既報の通りの政策のまずさでリラの値下がりが続いています。
リラは25、26両日は上昇しましたが、3月27日は下落しました。
国内企業や個人がドルを買っていると見られます。
3月28日も続落で始まり、選挙がある日曜日以降もどうなるか分かりません。
2019年3月27日 CDSスプレッドが1,000%超
2019年3月下旬に投資家がトルコの債券と株式の投げ売りに動きました。
これは、完全に人為的というか、政策ミスでしょう。
地方選挙を控え通貨リラの下落を阻止するために当局が演出した「リラ不足」が原因だからです。
3月27日、外国人投資家が取引をするスワップ市場でリラを借り入れる翌日物レートは一時1000%を超えました。
これは、外国人投資家によるリラの空売りを防ぐため、政府が国内銀行に対して流動性を提供しないよう圧力をかけた結果です。
この悪政の為、リラを買い戻してポジションを解消したい投資家は債券や株式などのトルコ資産を売って現金を確保するしかなくなったわけです。
2年物トルコ国債の利回りは20%を上回り、株式相場も昨年の7月以来で最大の下落となってしまいました。完全に政府の思惑とは逆効果になりました。
短期の政治的目的のために、マーケットの色々な機能を犠牲にしています。
このようなやり方は、外国人投資家にとってリラが合理的な投資先ではないと思わせ、中長期的なリラ下落を招かざるを得ないでしょう。
2019年3月25日、中央銀行が不安払しょくの為、新たな措置
中央銀行はここ最近の通貨急落を受け、政策金利であるレポ金利での資金供給を見送り、市中銀行に金利25.5%の翌日物ウィンドウで借り入れることを強制しています。
これにより市中銀行の資金調達金利は1.5ポイント上昇したことになると共に、1週間物スワップ入札による外貨供給も行わず、これによってこの週に25億ドル(約2760億円)の外貨積み増しとなるようにします。
トルコリラは3月22日、外貨準備高が予想に反して大幅に減少したことをきっかけに5%余り急落しましたが、25日は一時3.4%高の1ドル=5.5711リラまで回復しました。
トルコと貿易摩擦の影響
トルコにもアメリカの貿易戦争の影響はあります。
2018年6月21日、トルコはアメリカの鉄鋼・アルミニウム輸入制限への対抗措置として、同国から輸入する石炭、自動車、ウイスキーなどに3億ドル規模の報復関税を発動しました。トランプ政権の自国第一主義に屈しない姿勢を鮮明にしたのです。
対抗措置を講じた22品目群の選定理由は、アメリカの輸出業者が政権に影響力を行使できる事を重視したとの事です。例えばバーボンウイスキーは米共和党の有力議員の選挙区の産品で、産炭地域はトランプ政権の重要な支持基盤となっていることを意識した模様です。
因みにトルコの2017年の対米鉄鋼・アルミニウム輸出額は11億ドルであり、アメリカの鉄鋼輸入シェアでは6位と、日本を上回る規模になっています。
2018年7月新政権 人事等でマーケットの失望を買う
選挙を経て大統領権限を強くしたエルドアン大統領は、2018年7月9日に新内閣の人事を発表しました。
娘婿のアルバイラク前エネルギー天然資源相を財務相に起用し、前政権の主要閣僚で市場寄りと目されていたシムシェキ前副首相は入閣しませんでした。
また、エルドアン氏は同日、中央銀行の総裁、副総裁および金融政策委員会委員の任期を4年とし、大統領が指名することを定めた大統領令も公布しました。
上記のいずれもマーケットの失望を買い、これらの新しい政策が発表されてからトルコリラは対米ドルで3%程度下落しました。
2018年9月 エルドアン大統領が政府系ファンドの会長に。産業界により強い影響力行使?
エルドアン大統領は2018年9月、トルコの政府系ファンドの経営陣全員を更迭し、自らを会長に指名しました。
元々このファンドは二年ほど前、トルコ政府が2000億ドル規模の国有資産を活用し、クーデター未遂事件後の市場の混乱を抑えようと2年前にできたものでした。
しかし、目的や戦略があいまいなままで大した事も出来ず、事実上放ったらかしにされていました。
しかしこのファンド、トルコ航空、トルコ・テレコム、国営銀行のジラート銀行とハルクバンク、国営石油・パイプライン会社、国営郵便、証券取引所、国営鉄道などの株式を保有していて、かなり強い影響力を持っています。
エルドアン氏はこのファンドの会長になる事によって、産業に対する自らの影響力を強める狙いがあるのだと思われます。
2018年12月 急激に改善するアメリカとの関係
2018年12月になってから、シリア情勢を巡って対立してきたアメリカとの関係が急改善しているようです。
トランプ大統領がシリアからの米軍撤退を決めたことで、トルコが敵視するシリアのクルド人勢力への支援停止が決まり、2国間の最大の懸案が解消するためです。
これに先立ち、米国務省は地対空ミサイル「パトリオット」のトルコへの売却も承認しました。
トランプ大統領がトルコに対して融和的な態度に出るのは、サウジの記者殺害も関係しているでしょう。
トルコが、ムハンマド皇太子の関与を示す証拠を次々に出すことで、同皇太子の国際的信用は失墜。サウジとの関係を重視したいトランプ大統領としては、トルコとアメリカの関係を回復させる事で、少しでもトルコの対サウジに対する攻撃を緩和させようとしているのかもしれません。
2018年のトルコリラ安はアメリカとの関係がこじれた事も大きな要因の一つ。それが取り除かれればトルコリラの上昇もまた望めるかもしれません。
先進国の金利上昇にも要注意
先進国の金融マーケットには要注目です。
先進国の長期金利が上昇しているとよく言われていますが、直接のきっかけは、中国の⽶国債購⼊額の減額の可能性、欧州景気の拡⼤を受けて欧州中央銀⾏が緩和縮⼩のタイミングを早めるかもしれないという観測、⽇本でも⽇銀の超⻑期債買⼊れが減額されたこと、等から、⾦融政策の変更時期が早まるとの思惑が⾼まったことがあげられます。
2018年多くの新興国通貨は売られやすくなっています。
しかし、闇雲に新興国に売りを仕掛けているわけでもないでしょう。
マーケット参加者は、外貨建て借入の割合や海外投資家保有の割合を見て決断を下していると思われます。
トルコはこの点で売られやすい状況になっているのです。
中長期的に見れば、前でも述べた通りこの国の潜在力、経済力は大きな評価に値します。
当初は多少損失が出ても気にしない、長い期間で儲けられればいい、という人ならぜひ検討してみていいタイミングではないかと個人的には思っています。
2018年の選挙
2018年6月24日に大統領選挙と議会選挙が同時に行われました。現職のエルドアン氏と与党・公正発展党(AKP)が同日、勝利宣言を行いました。
決選投票を経ることなくエルドアン大統領の再選が決定し、AKPが主導する政党連合も過半数の議席を獲得したことは、政治の安定という点でマーケットにはひとまず好感されたようで、トルコ・リラは対米ドルで一時約3%上昇しました。
しかし、これまでの議院内閣制から実権型大統領制に移行し、エルドアン大統領は、法律と同等の効力を持つ政令の発令、副大統領や閣僚の任免、国会の解散権などを持ち、権限がこれまで以上に拡がるため、強権政治の強まりが懸念されています。
中長期的な観点からは、エルドアン氏が安定的な政権基盤を持つことで、より強権的な政治を行って欧米との関係が悪化し、経済も停滞するのか、それとも逆に人気取りの政策をやめてしっかりと地に足の着いた政策を行うのかが、トルコ投資にとっては極めて重要となるでしょう。
2018年12月 トルコの2019年予算可決
2018年12月22日、トルコ国会は予算を可決しました。実質的な大統領制に移行して初めての予算です。
歳入約8804億リラ(約18兆6千億円)、歳出9610億リラを見込んでいて、財政赤字のGDP比は1.8%と前年並みとなる予定です。
2018年は通貨リラが急落した影響から、政府は財政規律の強化を掲げています。このため、インフラ整備や産業振興を担当する省の予算は半減しました。
しかし、2019年3月末に統一地方選が迫っており、人気取りのためのバラマキ的な政策を急きょ打ち出すとの懸念も出ています。
スワップ狙いのFX投資も、ロスカット多発
ただ、2018年の4月~6月にかけて、主にFXでトルコリラに投資をしていた人たちは、下がり続けるトルコリラによってロスカットに追い込まれた方も多かったと思われます。
特にリラが30円台後半~40円くらいで買っていた人は、30円を切った段階でかなりやばかったのではないでしょうか。
2014年くらいにトルコリラブームが来たわけですが、その時のリラのレートは大体47~49円。
そんな高値で買った人はとっくにロスカットされていると思いますが、仮に持ち続けていたとすると2018年8月では20円を切ってますからね。それは相当な痛手だと思います。
購買力平価で見たトルコリラ
さて、こうして考えた際のリラ円ですが、2018年7月現在で日本のビッグマックは390円、トルコでは12.95リラ。
とすると、1リラ=30.11円となります。
今の状況では購買力平価から考えると割安であると言えそうです。
しかし、もはやトルコリラはどこまで下がるか分からない感じでバリュートラップと言えなくもない状態ですね。参考程度です。
他の通貨についても同様の考え方で割安か否かを考えています!
2018年11月 マーケットのトルコリラに対する見方、変化か
2018年11月5日、トルコ統計局は10月の消費者物価指数を公表しました。
前年同月比で25.2%と市場予想(25.0%)と、9月の実績(24.5%)を上回ったのですが、ここで面白い動きがみられました。
インフレ率が市場予想を上回って、これまでだったらネガティブな動きをしていそうだった為替市場で、リラは対ドルで上昇傾向を維持できたのです。
一時20%を越えていたトルコ国債利回りも落ち着いた動きとなっています。
トルコリラに対するマーケットの見方が少しずつ変化しているように見えます。
このまま上昇基調を維持してくれることを願うばかりです。。。
以下に、トルコリラを取り巻く環境を時系列でまとめています。ご参考にどうぞ!
2019年1月16日 政策金利を3会合連続で据え置き
2019年1月16日、中央銀行は金融政策決定会合を開き、主要な政策金利である1週間物レポ金利を年24%で据え置きました。
これで据え置きは3会合連続となります。
会合前には市場の一部に利下げ観測があったため、据え置きの発表を受けてリラは買われました。
トルコリラの対ドル相場は、2018年の急落前に近い水準まで回復しており、インフレ率も18年12月まで2カ月連続で低下している為、金利据え置きが妥当と判断したようです。
ただ、2019年3月末に統一地方選が予定されており、エルドアン大統領は景気回復に懸命な事から、中銀に対する利下げ圧力が再び強まる可能性もあります。
2019年1月 インフレ低下継続
2019年12月3日、12月のCPIが発表されました。
前年同月に比べ20.3%のプラスでした。前月の数値は21.6%だったので、ここからは上昇率が縮小した形です。
インフレの低下は2カ月連続で、政府の減税措置や原油相場下落が効いたもようです。
因みに、トルコ政府は19年のCPIを15.9%、中央銀行は15.2%として予測しています。
2018年12月13日 政策金利は24%で据え置き
2018年12月13日、中央銀行は政策金利(1 週間物レポ金利)を24%に据え置くことを決定しました。
政策金利据え置きの決定は市場予想通りで、10 月に続き2 会合連続での据え置きとなりました。
中央銀行は声明文で、インフレ見通しが改善するまで金融引き締め的な政策を維持するとともに、物価の安定のためにあらゆる政策手段を利用すると述べています。
前回の決定会合の時の声明文からすると、インフレ見通しに安ど感的なトーンが感じ取れます。
しかし、安心するのはまだ全然早いでしょう。政治的な激しさがなくなっただけで根本的な問題が解決されたわけではないからです。
引き続き注視が必要でしょう。
2019年2月
2019年2月 2019年1月のインフレ率
2019年1月のインフレ率は20.35%と3カ月ぶりに上昇しました。
食品が約30%も高騰したことが響いた形です。
トルコのエコノミストは2019年前半の間はインフレ率は20%台で高止まりすると予想しています。
物価高は消費を冷やし経済に悪影響を及ぼします。これを食い止めるべくエルドアン政権が無理な財政政策等をする動機が強まってしまう可能性があり、そうなるとトルコリラ安となる可能性があります。
2019年2月 高いインフレでトルコの景気悪化
2019年1月のインフレ率は食品高騰などで3カ月ぶりに上昇しており、2019年半ばまでは20%台の高インフレが続く見通しです。
結局、まだ2018年夏の通貨危機の余波から抜け出せていないのがトルコの現状です。
消費や投資の低迷で経済はマイナス成長入りしたとみられていて、2019年3月末に迫った統一地方選の行方に影響が及ぶ可能性があります。
2019年2月 エルドアン大統領、トルコ大手銀のイシ銀行接収を企図
エルドアン大統領は国内大手銀のイシ銀行の接収に向けてその是非を議会で採決するよう呼び掛けました。
イシ銀行は株式を上場している国内銀行のうち最大手で、最大野党が一部出資しています。
エルドアン大統領は、与党の公正発展党の議員らに対し、「イシ銀行が財務省の資産になることは、神がご了承たもうた」と宣言しました。
トルコでは不良債権の積み上がりと景気後退の懸念で、金融セクターが苦境に立たされています。
2019年3月の地方選挙を前にイシ銀行をめぐる政治的な騒動が巻き起こることは、投資家をさらに動揺させかねません。
2019年2月5日のイスタンブール株式市場でイシ銀行の株価は7%近く下げ、2018年8月の市場混乱以降で最大の値下がりとなってしまいました。
政治の動きで金融経済が混乱を来すトルコの悪い癖は2019年も健在です。
2019年2月 トルコ中央銀行、預金準備率引き下げを発表
トルコ中央銀行は2019年2月16日に預金準備率の引き下げを公表しました。
引き下げ率は満期などにより異なりますが、0.5%~1.0%と声明で示されています。
ただ、この預金準備率の引き下げは金融政策の変更を意味しないと説明しています。実際にすぐに利下げの兆候も見られない事から、トルコリラの動きはこの発表があった後も穏やかでした。
ただ、将来の利下げを見据えた動きの一つであることは確かかもしれません。もちろん、それには今の高すぎるインフレ率は早く収束させていく必要があります。
2019年2月 トルコの中央銀行が利下げするための条件
トルコは悪性インフレをなんとか抑えようと、高い金利を設定していますが、この利率の利下げタイミングがいつになるかというのは気になる所です。
これについて、トルコ中央銀行のチェティンカヤ総裁のコメントを基にヒントを探してみたいと思います。
まず中央銀行は価格動向と、インフレ率に関連する各種指標の「明確な改善」が必要と説明しています。
例えば2019年1月の様な20%を超える高インフレの中で利下げするのはなかなかないと思われます。
これは指標の算出方法などによって出てきた異常値的なテクニカル要因や、原油価格等の下落を反映した外部要因のインフレ率低下はあまり考慮しないという事だと受け止められています。
トルコリラがその経済状況を反映して少しずつインフレ率が低下(改善)傾向していると判断できれば、利下げするという事だと思われます。
2018年7ー9月のGDPは1.6%成長に更に減速
2018年12月10日、7~9月期のGDPが前年同期に比べ実質で1.6%増えたとの発表がありました。
市場予想は2%程度だった為、それをも下回った形です。
成長率は4~6月期の5.3%から減速が鮮明になっていて、GDPの6割を占める個人消費の伸びは1.1%にとどまり、4~6月期の6.4%から大きく縮小しました。
米国人牧師の拘束を巡る同国との対立でこの夏に通貨リラが急落して物価が高騰した事で殆ど説明はいらないと思います。
2019年前半にかけて景気後退局面に入るとの観測も浮上してきており、トルコ経済は全く油断ならない状況に変わりありません。
2019年1月
2019年1月 シリアをめぐるアメリカとの協議は難航 アメリカは対トルコに制裁もちらつかせ
2019年1月13日、アメリカのトランプ大統領は、「イスラム国」(IS)の掃討作戦で米軍と協力関係にあるクルド人勢力に対し、トルコが攻撃に踏み切った場合には「トルコに経済面で打撃を与える」とツイッターへの投稿で警告しました。
米軍のシリア撤収後もクルド人勢力がIS掃討に専念できる環境をつくるため、トルコをけん制した形です。
ただアメリカの安全保障担当大統領補佐官であるボルトン氏は、トルコのエルドアン大統領がクルド人勢力を攻撃しないと約束したと説明し、トランプ氏が主導するシリアからの米軍撤収に理解を示していました。
にもかかわらず、トランプ氏がトルコによる攻撃をけん制したという事は、実際にはクルド人勢力の保護をめぐる米・トルコの協議が難航している可能性があります。
トルコは元々クルド人勢力もテロ組織と考えており、そもそもアメリカとは立場がかなり違っていました。
しかし、この問題で再びアメリカがトルコに対して経済制裁するなどとなれば、トルコリラの急落につながる可能性があります。
2019年1月 アメリカのシリア撤退問題
アメリカがシリアからの撤退を行うにあたって、撤退条件をトルコと話し合っていますが、交渉はなかなか難しいようです。
2019年1月8日、エルドアン大統領はシリアのクルド人勢力をトルコが攻撃しないことを米軍撤退の条件に挙げた6日のボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)の発言を「受け入れは不可能だ」と批判しました。
エルドアン大統領は「シリアでの軍事作戦の準備がおおむね完了した」とも述べていて、単独の軍事行動も辞さない姿勢でアメリカをけん制しました。
アメリカがイスラム国掃討を巡り支援してきたシリアのクルド人勢力を、トルコはテロリストとみています。
この問題はずっとアメリカ・トルコ間の最大の要因となってきました。2018年のトルコショックの要因の一つもシリアでしたので、予断を許しません。
2019年1月 2018年の自動車販売はかなり低迷 トルコリラ安で
2019年1月4日、2018年の乗用車と軽商用車の販売が2018年に比べ35%減の約62万1千台になったとの発表がありました。
2018年8月の通貨リラの急落以降、5カ月間で前年の同期間と比べ平均56%減と大きな落ち込みとなったようです。
新車販売は2018年4月から9カ月間、前年割れが続きました。アメリカ人牧師の拘束をめぐるアメリカとの対立で通貨安となり、自動車販売価格が上昇したこと、また大幅な金融引き締めによる自動車ローンの金利上昇が直撃した形です。
2019年1月 選挙に向けたキャンペーンで財政悪化を懸念
2018年12月末、トルコ政府は同年末に期限が切れた自動車や家具などを対象とした減税措置を統一地方選が予定される2019年3月末まで延長すると発表しました。
エルドアン大統領は事前に2019年1月から住宅の電力料金を10%、住宅と中小企業を対象とする天然ガス料金も10%値下げすると発表していましたが、当然財源が問題です。
市場は選挙を控えたエルドアン政権の財政支出拡大を懸念しています。
政治に翻弄されるトルコリラが続きそうです。
2018年10月26日 トルコはサウジへの捜査の手緩めず 対米関係重視の表れ??
サウジアラビアの著名記者殺害事件で、エルドアン政権はサウジへの揺さぶりを緩めません。
2018年10月26日にはサウジが拘束した容疑者18人の引き渡しを要求しました。
サウジは直ちに拒否しましたが、おそらくトルコはそれを見越して要求したのでしょう。
こうしたトルコによる一連の圧力は外交上の立場を強化する思惑がありそうです。もちろん、眼中にあるのはアメリカでしょう。
2018年10月23日 エルドアン大統領「記者殺害はサウジが意図的に行った」
サウジアラビアの記者がトルコで死亡した事件で、エルドアン大統領は2018年10月23日に演説し、その中でこの事件が計画的な殺害だったと言明しました。
工作員の過ちとするサウジ側の説明を否定し、組織的な犯行との見方を示したわけです。
ただ、ムハンマド皇太子の関与には言及しませんでした。
エルドアン氏は全容解明へ指導部の説明を要求しており、まだ事態収拾の行方は見通せません。
この問題がどこまでトルコリラに波及するかは分かりませんが、中東情勢の不安定要因として引き続きちゅしする必要があるかもしれません。
2018年10月 在トルコサウジラビア総領事館における記者殺害
2018年10月、牧師問題がひと段落したと思ったら再び政治がらみの問題が発生してしまいました。
サウジアラビア政府に批判的な著名記者がトルコの総領事館で殺害された疑惑です。
アメリカのトランプ大統領は2018年10月17日、この疑惑に関してトルコ政府に証拠となる音声や映像記録を提供するよう求めました。
サウジアラビア政府は尋問中に誤って殺害したとの説明を準備しているようですが、記録が提供されればサウジ側の説明との矛盾が明らかになる可能性があります。
この問題トルコとアメリカがとても険悪になっているという事はありません。しかし、トルコがどう動くかでアメリカの対応も変わる可能性があります。
トルコはサウジアラビアと関係が冷え込んでいて、これ以上関係悪化をしたくないのが本音ですが、かと言ってアメリカの要求を全部蹴ってしまうと再びアメリカとの関係改善に水を差す形となります。
牧師問題ほど大きいインパクトにはならないのかもしれませんが、注意してみておいた方が良いかもしれません。
利上げを認めないエルドアン
金融当局は利上げしたいのに、エルドアン大統領の顔色を窺って出来ないというのは他の所でも何度も述べました。
このブログでも何度も言及しているわけですが、エルドアンは利下げすればインフレが収まるというとても独創的な金融理論を持っており、当局もそれらに配慮した政策をせざるを得ない状況なのだと思います。
もちろん、このままで上手く行く可能性は普通に考えればかなり低いわけですが、エルドアンもなかなか引き下げれないのではないでしょうか。コンコルド効果ではありませんが、ここまで自説を繰り返しやってきて、今ここでそれをひっくり返すと自身のこれまでの政策を否定した事になりかねません。
なかなか政治は難しいものです、、、
2018年10月 小売りで10%値下げキャンペーン?
アルバイラク財務相が2018年10月9日、ある政策を発表しました。
通貨リラ安に伴うインフレ対策として、小売りなどの企業が「年末まで最低10%の値下げを実施する」キャンペーンを開始するというのです。
8月以降に実行された融資を対象に各銀行が金利を10%下げ、電力や天然ガス料金の引き上げは年末まで凍結するものですが、当然誰もそんな政策の効果など期待していません。
ちょっと大丈夫かなと思ってしまいます。
インフレ関連で言うと、2018年10月3日にCPI算出の責任者が更迭されたようです。後任にはアルバイラク氏の部下だった人物が就いており、統計部門の独立性や信頼性への懸念が広がっています。当然ですね。
しかし、もし本当に統計指標の所で嘘をつかれた場合、投資家はどうやって投資すればいいのでしょう。
もう少し市場や第三者との対話を通じた適切な政策を遂行して欲しいと一投資家として願うばかりです。
2018年7月の牧師開放問題
アメリカは2018年7月下旬に、米国人牧師アンドルー・ブランソン氏の自宅軟禁からの解放を求めトルコに圧力を強めました。
2018年11月のアメリカ中間選挙に向けた政治的なパフォーマンスかもしれません。
トランプ大統領は米国人の解放を外交成果と考え、トルコへの制裁も本気っぽく考えているようです。
ただ、トルコはアメリカと共にNATOのメンバー。つまり同盟国同士なのです。
トルコはもちろん反発。
こういう感情が絡んできたりする問題は、ただでさえあまりうまくいっていない両国関係をあらに悪化させるのみならず、西側とうまくいかなくて経済的にも結構やばくなっているトルコに追い打ちをかけてしまうかも、、、
投資家としては早めの解決を望むところですが、どうなるでしょうか。注視が必要です。
2018年12月
2018年12月 インフレ率改善
2018年12月3日に発表された11月のCPIは、前年同月比+21.6%で前月の25.2%から大きく低下したようです。
インフレの改善は3月以来8カ月ぶりとなりました。
政府の減税措置や値下げキャンペーン、原油相場の下落が効いたもようです。
トルコ中央銀行は10月末に従来の予測を大幅に上方修正し、2018年末のCPI伸び率を23.5%としていましたが、このままいけばこの水準を下回って着地する可能性もあります。
トルコの高すぎるインフレ率は、国際社会からの厳しい視線と同じですから、これが緩和するのはとりあえず良い事でしょう。
トルコの経常収支
2018年12月11日に発表されたトルコの10月の経常収支は27.7億ドルの黒字になり、市場予想の25億ドルを超えました。
経常収支の黒字は8月以降3カ月連続となりました。
2017年対比で考えると、例えば2017年10月の経常赤字が38億ドル程度だったので驚くべき改善です。
この理由は、トルコリラが暴落した事による、観光収入の増加です。
invstem.com
このため、今のトルコリラの水準が続くと経常収支は黒字ですが、投資家にとっては経常収支が良い事それ自体がもうけにつながる事はないので、これがいかにリラ上昇につながるかです。
しかし、引き続き他の項でも触れている通り、トルコ政府自体がファンダメンタルズ改善のためにやるべきことはまだたくさんあるわけで、そちらの推移を見守る事が一番のポイントという事に変わりはありません。
2018年9月13日 政策金利を24%に 追加の引き締めも示唆?
トルコ中央銀行は2018年9月13日、政策金利である1週間物レポレートTRINT=ECIを17.75%から24.0%に6.25%引き上げました。
元々金利を上げるのではないかと予想されていたわけですが、期待通りの利上げに一先ずマーケットは安心している所でしょうか。通貨リラが上昇したほか、市場ではエルドアン大統領の金融政策への影響を巡る懸念が緩和したようです。
しかし、今後のトルコリラについては全く予断を許しません。
中央銀行は声明で「必要なら一段の金融引き締めを行う」と表明し、必要なら追加の引き締めも示唆しました。
この引き上げに関するレポートは相当出ています。各レポートを一気に確認したい場合は、2018年9月13日の利上げレポート一覧を見るからどうぞ!
エルドアン大統領は利上げと同時に中央銀行を批判
今回の措置によって、エルドアン大統領の金融政策への干渉が弱まったと判断して良いのかというと、まだそう判断していいタイミングではないでしょう。
実際に、エルドアン大統領は2018年9月13日、つまり利上げしたその日に中央銀行がインフレに対して「誤った措置」をとったと批判し、高金利への反対姿勢を改めて示しています。
中央銀行がどの程度まで独立した意思決定を出来るのか、ずっとこの国に対して言われ続けてきた『問い』はまだ解決していないですね。
2018年4-6月のGDPは減速
2018年9月10日、2018年4-6月期のGDPが発表されました。
前年同期比の実質ベースで+5.2%です。政府は景気刺激策で支えましたが、1-3月期の7.3%増からは減速しました。
まぁ、悪くなるのはここからでしょう。通貨安と物価高の悪循環に陥っていて、2019年にはマイナス成長に転じる可能性だってあります。
2018年のトルコリラ暴落 もはや通貨危機の状態
2018年はトルコリラにとって受難な年になりました。
元々ファンダメンタルズが悪いから売られやすいのに、そこに政治的な問題が発生して一気に経済に悪影響を与える形となったのです。
これらの経緯について詳細に以下の記事にまとめましたので、ご確認ください。
また、トルコリラ暴落についての各社レポートを一覧で確認したい場合はコチラをクリック!
FX投資家 トルコリラでロスカット続出
トルコは元々高金利という事でFX投資家も高いスワップポイントを狙って投資していたわけですが、2018年の暴落で相当ロスカット者が続出した模様です。
そのロスカットによるトルコリラ売りが更にトルコリラ安を助長するという悪循環。
トルコリラ関連の投信 損失額2000億円
2018年7月から始まるトルコリラ暴落によって、トルコ債券や株式を組み入れた投資信託が大幅に値下がりし全体では約2000億円程度目減りしたようです。
日本の個人投資家は相当大きなダメージを負っていると思われます。自分もその一人です。
特に一部証券会社では、2017年の暮れ頃にトルコリラ系の投信をかな戦略的に販売していたのです。ここで買った個人投資家はかなり厳しいでしょう。
2019年以降はトルコリラは買い時なのか?
2018年時点からこんなことを予想してもしょうがないですが、トルコリラの下落率は突出しています。2019年に限らず、タイミングを分散して少しずつ投資を始める良いタイミングかも。
もちろんリターンは保証できません。
一年前に、トルコリラがここまで暴落するなんて誰も想定していなかったように、誰も分かりません。
ただ、個人的には買ってます。
2018年11月
2018年11月2日 アメリカと閣僚制裁を相互解除
アメリカは2018年11月2日、トルコのギュル法相とソイル内相に科していた制裁措置を解除しました。
これを受けてトルコ政府もアメリカのセッションズ司法長官とニールセン国土安全保障長官への報復制裁を解除しました。
アメリカ人牧師の解放が10月に実現し、関係改善へ歩み寄った結果、今回の制裁相互解除の実現されたのでしょう。
政治でかき回されてきたトルコリラですが、少しずつネガティブな政治ネタが減ってきています。
2018年11月下旬 サウジ記者殺害で息を吹き返すエルドアン
エルドアンは10月に起きたサウジアラビア人記者殺害問題で、事件の捜査情報を小出しにしながらメディアにリークし、対立するサウジを揺さぶる手法を使っています。
年初以来、トルコリラマーケットが荒れる中で自身の権力強化に注力し、マーケットからの批判を浴びていた時とは別人の様な表情になっているようです。
投資家として、現在のトルコリラのマーケットの状況と、それに対する政府と当局の誠実な対応を希望するわけですが、この政治的な問題にマーケットの問題が置いてきぼりを食らって、不透明でよく分からない状態になってしまわないか少し不安です。
特に日本の様に離れている国では入ってくる情報が元々限られてしまいますので。
2018年10月
2018年10月に牧師問題は一応の決着
2018年10月、上記の牧師問題は政府同士の表に出ない交渉があったのでしょう、ようやく決着に至りました。
これによって、アメリカからの制裁緩和もひと段落しそうな感じですが、まだまだ経済のファンダメンタルズは最悪です。
政治的な問題は一旦去りましたが、まだまだトルコリラについての先行きは不透明です。
2018年10月3日 9月のインフレ率24.5% 追加利上げの圧力に
2018年10月3日、9月の消費者物価上昇率が発表となりました。上昇率は前年同月比で24.5%となり、約15年ぶり高水準に達しています。
インフレ高進は6カ月連続で通貨リラの急落によってあらゆるものが値上がりしています。
しかし、今回の水準は大方の予想をも超えており、かなり高めの状況になっています。
2018年10月3日、アルバイラク財務相は9月がインフレのピークとの認識を示しましたが、市場は警戒を強めているようです。ある専門家は今後数カ月で30%まで上昇するリスクもあると言っています。
これではさすがに投資家もリラ買いが出来ません。
再び、マーケットからの利上げ圧力にさらされた中央銀行ですが、金融引き締めを嫌うエルドアン大統領の圧力は必至。
2018年10月25日の次回会合で追加利上げに踏み切るかの判断を迫られる事になります。
ここでまた利上げできないと、せっかく安定してきたリラも再び下落基調になる可能性があります。
牧師問題やEUとの関係改善といった良い情報があっても、利上げが出来なければ全て帳消しになる可能性もあります。
トルコリラのデフォルトの可能性
2018年のトルコリラ急落についてのまとめでも書いている通り、トルコリラのCDS(クレジットデフォルトスワップ)の保証率が上昇して高止まりしています。
これは、デフォルトの可能性が高まると両立が上昇します。
マーケットは少しずつですが最悪のシナリオについても考慮に入れ始めているのかもしれません。
2018年7月、フィッチが格付けをBBに
エルドアン大統領が色々とマーケットに嫌気されるような事をしている中、大手格付け会社のフィッチ・レーティングスは2018年7月13日、トルコの外貨建て長期国債の格付けを「ダブルBプラス」から「ダブルB」に引き下げました。見通しは「ネガティブ(弱含み)」です。
通貨が暴落した事で、トルコ企業の外貨建て債務の負担が大幅増し、危険な状態になっているとして「マクロ経済安定の下振れリスクが増大している」としています。
また、エルドアン大統領が中央銀行の統制強化を示唆した事を念頭に「経済政策の信頼性低下」にも言及しています。
当然と言えば当然ですね。。。
2018年8月のインフレ率17.9%
2018年9月3日、8月の消費者物価指数が前年同月比17.9%上昇したとの発表がありました。
通貨リラの急落を受け、2018年7月の同15.85%から2ポイントも上昇です。この悪性インフレは消費の低迷や企業財務の悪化に直結しています。
中央銀行が9月13日の金融政策決定会合で大胆な利上げに踏み切るかが焦点となりそうですね。
新興国の中央銀行の対応
FRBの利上げペースが一段と加速する可能性が出てきたわけですが、これを受けて新興国の中央銀行は追加利上げの検討を迫られるかもしれません。
アメリカとの金利差が縮めば、自国の通貨安や株安が進む恐れがあるためです。
しかし、もちろんそれには金利上昇による国内経済の失速という副作用も予想され、中銀は慎重なかじ取りに悩むことになると思われます。
こちらについてより詳しく知りたい方は、以下の検索エンジンで「トルコ」と入力して検索!
※新興国でも株式に投資をしたいときはこちらもどうぞ。
2018年9月
2018年9月の中期計画により、積極的な財政出動もしない??
トルコ政府は2018年9月、新規インフラ開発を事実上凍結する2021年までの中期経済計画を発表しており、財政出動を通じた景気の下支えは難しいです。
もっとも、ファンダメンタルズが悪いこの国にとって、当初こうした計画はまだ好意的に見られていましたが。。。
そうなるとリラ安を背景にした輸出で稼ぎたいわけですが、輸出先の半分以上を占めるヨーロッパ経済も減速感を強めており、こちらはこちらで問題山積の様相です。
2018年9月 中央銀行の独立性を強調⇒利上げの示唆?
因みに、中央銀行は今回の引き続き凄まじいインフレ率を目の当たりにし、2018年9月3日、物価安定への「重大なリスク」に対応する考えを示しています。
つまり、利上げを示唆した、という事でしょう。
2018年1-3月期GDP
2018年6月11日に発表された1-3月期のGDPは景気刺激策によって前年同期比7.4%となりました。
通年で7.4%成長を記録した2017年からの流れを引き継ぎ高い水準です。
エルドアン大統領は早速これについてツイートしています。しかし、これらは政府の無理な景気刺激策によるところが大きく、2018年5月のトルコの製造業PMI(購買担当者景気指数)は46.4と2カ月連続で景況判断の節目となる50を下回ったりしています。
2018年9月 中期経済計画を発表 ファンダメンタルズ改善に意欲
アルバイラク財務大臣は、2018年9月20日、中期の経済計画を発表し、その中で新規のインフラ開発を事実上凍結する事を発表しました。
財政規律を重視し、金融市場の信頼回復を優先する狙いです。ただ、企業の破綻増で膨らむ銀行の不良債権への対応には踏み込まず、マーケットは失望してトルコリラが直後に下げています。
実質成長率の目標も下方修正し、2018年が3.8%、2019年は2.3%に引き下げました。また、消費者物価指数の上昇率目標は18年末で20.8%、19年末が15.9%、20年末は9.8%としました。
エルドアン大統領が経済発展の原動力としてきたメガ(巨大)インフラ事業については「国際的な資金調達を通じて実行する」と説明したものの、今の様に市場の信頼が失墜している状況下では、海外からの資金調達など不可能です。
自分たちで招いた事なのでしょうがないですが。
2018年8月
2018年8月、S&Pとムーディーズが格下げ
2018年8月17日、S&Pはトルコ国債を格下げしました。
まぁ、当たり前ですね。
外貨建て長期債務格付けが投機的とされる「ダブルBマイナス」から「シングルBプラス」に、自国通貨建て長期債務格付けは「ダブルB」から「ダブルBマイナス」にそれぞれ1段階引き下げられえています。
トルコ通貨リラの急落は財政に悪影響を及ぼすと指摘した上で、2019年に景気後退に陥る可能性を示しました。
また、ムーディーズも同じ日に、トルコの長期債務格付けを投機的とされる「Ba2(BBに相当)」から「Ba3(BBマイナス)」に1段階引き下げたと発表しました。
背景はS&Pと一緒です。
これら二つの発表は当たり前すぎて、マーケットの反応はあまりなかったようです。
2018年8月13日、中央銀行が流動性を支える政策を発表も・・・
2018年8月13日には駐豪銀行が市中銀行の流動性を支える措置を発表しました。一瞬戻しましたが焼け石に水でしょう。
トルコ大使とボルトン補佐官が協議をしたり、色々なルートで何とか事態を収束させたいとやっていますが、牧師を開放しないとダメなのかもしれません。
この問題は感情的なものもはらんでいるような感じになっているし、アイディンティティにも関わるので予断を許さないですね。
トルコの国民感情がどうなるのかも注意しなければなりません。
エルドアンがこれを機に更に支持を伸ばすなら、国民の後押しで彼の独創的でユニークな金融政策が牙をむき、もっと恐ろしい事になるかも。
逆に国民がエルドアンはダメだとなっても、それはそれで政治的混乱が起きてリラ売りにつながる、、、
私のトルコ含み損は本当にすごい事になってしまいました、、、
2018年8月10日と13日 立て続けにトルコリラ暴落
マーケットはどう対応したらいいかよく分からなくなって、とりあえず売りを浴びせるだけなのか??
2018年8月10日にトルコリラが対ドルで一時約20%も急落し、過去最安値を更新しています。1日の下落率としては2001年以来の大きさ。
つまり、20年近くに一度の大相場ということ?
もしかしたら仕込み時期としては良いかもしれない。でも、もっと下落する可能性がある事もしっかりと認識する必要があります。
また、2018年8月13日のアジア市場で、トルコリラは対ドルで一時1ドル=7.2リラ台へ更なる急落。またまた最安値を更新しました。
前週末に比べた下げ幅は一時約1割に達しています。
もちろん背景はトルコによるアメリカ人牧師を巡った対米関係の悪化でしょう。
事態収拾の見通しが全く立たず、エルドアンは強気一辺倒。もちろんリラ安に歯止めがかからない状態となっているわけです。
2018年8月9日 トルコリラ下落 史上最安値をまた更新
2018年8月9日、またまたトルコ・リラが過去最安値を更新しました。
政府は何とか市場の悪化に歯止めをかけようとしていますが、そもそも経済政策に精通していない財務大臣であんまり信用されていないし、そんな事よりも対米関係の悪化や高いインフレの方が材料視されて下落しました。
2018年7月下旬~8月 米国人牧師問題でトルコリラ急落
2018年7月から持ち上がった問題です。
アメリカとトルコの同盟関係に深い亀裂が生じています。
アメリカがトルコのギュル法相とソイル内相に資産凍結などの制裁を科したからです。理由は米国人牧師の拘束に主導的役割を演じたからとのこと。
これを受けて、トルコの通貨リラは急落、2018年7月下旬に対ドルで過去最安値を更新したわけです。
ここから報復合戦が始まる可能性があります。
アメリカとの関係がうまくいかなければ、トルコのロシア・中国接近が促進される可能性があり、これも大変危険です。
こうした中、エルドアン大統領は2018年8月4日、トルコも対抗措置をとると表明しました。そうなるだろうと思っていましたが。
アメリカは2018年8月7日に対イラン制裁を再開する予定なわけですが、これについてもトルコはアメリカと歩調を合わせない見込みです。
怖いのは、これを受けてトルコの企業とかがアメリカで活動できなくなったり、ドルを基軸とする国際金融システムにアクセスできなくなる事です。
2018年7月24日の会合で金利据え置きを決定⇒トルコリラ急落
2018年7月24日、中央銀行は市場の期待を裏切り政策金利据え置きを発表しました。
当然通貨リラとトルコ株は急落。。。
金利を17.75%で据え置いたわけですが、市場予想は大体1%くらいの引き上げでした。
通貨の急落がさすがにきついですからね、、、
ところがそんなマーケットの声よりもエルドアン大統領の声を意識したのでしょうか、据え置きです。
発表後にリラは一時3%以上急落し、1ドル=4.9155リラを付けました。
今回は、2018年6月の大統領選挙以降初めての金融政策決定会合だったので、動向が注目されていたわけですね。今後の試金石というか。ゆえに、「やっぱりかい」みたいに思っている人も多いかも。
1ドル=5リラに突入するのも時間の問題かもしれません。
2018年6月の選挙後 エルドアン大統領に対する懸念増大
エルドアン大統領の暴走が止まりません。
2018年7月12日には対ドル相場が一時
1ドル=4.97リラ
まで下落し、約1カ月半ぶりに過去最安値を更新してます。
年初からの下落率は2割超に達していて、週間の下落率がほぼ10年ぶりの大きさとなる見込みです。
もちろん、世界の主要通貨では最大の下げです。
まず2018年7月9日に新政権により発表された閣僚人事や中央銀行の人事制度は、強権的な大統領の姿勢を改めて示すと受け取られて、マーケットは崩れました。
何しろ、財務大臣というとても重要なポストに、経済閣僚を経験した事のない親戚を置くという事なのですから、マーケットも不安になるはずです。
自分への忠誠心の高さでもって閣僚を選んでいるみたいに取られつつあります。
チャートが大好きな人からすると、ここで投資をしておきたいタイミングですが、なかなか上がるきっかけも見つけにくいようです。
2018年6月金融政策決定会合 利上げ
中央銀行は2018年6月7日に開いた金融政策決定会合で、主要な政策金利である1週間物レポ金利を1.25%引き上げ、年17.75%としました。
事前の市場予想はおよそ0.5%だったため、予想を超えた利上げを好感し、通貨リラの対ドル相場は一時急騰しました。
金融政策については、これまで対応に批判が向けられてきており中央銀行は今回、引き上げ幅を予想に反して大きくすることで、金融政策に対する信認の回復に乗り出したようです。
もちろん、この背景にエルドアン大統領の経済運営に関する一定程度の方針変更があるのは間違いないと思われます。
しかし、これでリラが安定していくかどうかはまだ分かりません。今月の選挙含めイベントや突発事項について注意深く見ていく必要があるでしょう。
2018年7月
トルコリラがずっと下落し続けてきた背景
2018年4月に入っても最安値を更新している状況で、投資家にとっては相当厳しい状況が続いています。
通貨が下落してきた背景にはいくつかあります。
- 地政学的なリスクの高まり、
- 来年の大統領選挙と今年急きょ開かれることとなった議会選挙を見据えて拡張的な財政政策が採られていること、
- 輸入の増加によって経常赤字が拡大していること、
- 大統領が利上げを嫌気しているため、金融政策の引き締めもしづらく高インフレが続いていること、などです。
これまでエルドアン大統領は選挙を意識して人気取り政策に邁進してきましたが、これが無くなって中長期的な政策にシフトする可能性もあります。
2018年5月以降のトルコリラの推移
更に2018年5月に入ってから、トルコリラは再び大きく下落しました。
背景には、5月に発表された直近のインフレ率が高かったことや6 月に実施される総選挙を前にトルコ政府から「バラマキ」的な色彩が強い経済政策が発表されたこともあるでしょう。
大統領選挙以降については、2018年6月25日早朝は上昇したものの、中央銀行の独立性への不透明感やファンダメンタルズ改善に向けた政策が実施されるかへの疑念が残っており、どうなるかは分かりません。
2018年5月28日金融政策の枠組み変更
2018年5月28日、中央銀行は金融政策枠組みの変更を発表しました。最近使用していなかった1週間物レポ金利を年8%から16.5%に引き上げ、政策金利としての使用を再開しました。
今回の変更で、金融政策実行の枠組みが簡素化され、政策金利に幅を持たせることが出来るようになり、実質的な金融引き締め効果を狙う事が出来ます。
今後、中央銀行が金利の高い翌日物貸出金利を通じた資金供給を増やせば、市場金利を高めに誘導することができるからです。
今回の措置にって中央銀行の金融政策引き締め姿勢の維持が改めてアピールされることとなり、中央銀行に対する信頼回復に一定程度繋がるものと思われます。
実際に、この措置発表を受けてトルコリラは対米ドルで一時、3%超上昇する展開となりました。
目先、トルコリラの動きは安定化することが期待されますが、根本的な問題解決はななされていないので、まだまだ油断は禁物です。
2018年5月23日緊急利上げ
下がり続け、どうにもならなくなっていく中、中央銀行は2018年5月23日、臨時の金融政策決定会合を開き、複数ある政策金利のうち事実上の上限金利とする「後期流動性貸出金利」を3%引き上げ年16.5%としました。
声明で「物価安定のため、強力な金融引き締めを決めた」と説明しています。
銀行間の資金融通を行う際の金利は年18%を超えており、今回の利上げで通貨安に歯止めがかかるかは不透明です。
しかしエルドアン大統領は、「現在の急激な変動(下落)はトルコ経済の現実と合致していない」と主張しました。もちろん市場がこれで安心する事はないでしょう。
因みに、2011 年や2014 年にも大幅な利上げを行い通貨防衛をした事があります。その時はトルコ・リラは上昇か横ばいの動きとなり、急場をしのぐことが出来ました。
今回についても、大幅な利上げを行ったことでいったんは安定を取り戻す可能性があります。しかし、本質的な問題は何も解決されていないため、どの様な金融政策、財政政策を行うか注視していく必要があります。
2018年4月 利上げ
2018年4月、中央銀行は事実上の政策金利をを0.75%引き上げ年13.5%としました。
引き上げは2017年12月以来、3会合ぶりです。中央銀行は声明で、輸入物価上昇のリスクを挙げ、物価安定のため金融引き締めを実施したとしています。
また、必要があれば更なる引き締めについても言及しました。
エルドアン大統領は利上げ反対を公言していましたが、通貨リラの下落が全くとらないため、今回の利上げに踏み切ったものと思われます。
ただ、マーケットには、相場を反転させるには不十分であるとの声が多いようです。
既述の通り、2018年5月に発表されたインフレ率の加速や、足元の国際金融市場動向を受けて、中央銀行は追加利上げを含めた通貨安対策に動く可能性が高まってると考えられます。
実際にトルコのエルドアン大統領は2018年5月9日、チェティンカヤ中銀総裁や資本市場の監督当局者らが出席する緊急会合を開催し、通貨リラについて協議しました。結局目新しい政策は何も出てきませんでしたが、少しずつトルコリラの本格的対応を行う姿勢が見え始めています。
トルコリラ通貨危機
トルコで通貨危機と呼ばれているのは、2000年初頭の出来事です。
当時、経常収支赤字などへの懸念とスキャンダルが重なり、金融システムに対する信用不安が高まりました。銀行同士がやり取りするマーケットでも貸し渋りが発生して金利が高騰し、大規模な資本流出につながったのですが、IMFが緊急支援策を発表し、いったん沈静化しました。
しかし、翌2001年に当時のセゼル大統領とエジェビット首相が対立し、「国家の深刻な危機」として公表されたため、連立政権崩壊、総選挙、経済構造改革の後退といった憶測から、マーケットが暴落しました。
外国為替市場ではトルコリラ切り下げを恐れたトルコリラ売り・ドル買いが急増しました。当局はトルコリラの価値を維持しようと大量の外貨準備を使ってトルコリラを買い支えようとしたものの失敗。外貨準備は底をつき、それまで維持してきたクローリング・ペッグ制(当局が方向を決め小刻みに基準為替レートを変更する制度)の放棄と、変動相場制への復帰を余儀なくされます。これら一連の出来事に伴う通貨価値の下落は、トルコ経済に大きな損害を与えたのです。
2018年6月
大統領選挙・議会選挙までの経緯
2018年3月に新しい選挙法改正案が可決しました。これまで単独で獲得しなくてはならなかった最低議席数なるものが、単独ではなく協力関係にある複数政党数の合計となったのです。
この改正を受けて、エルドアン大統領は2018年4月18日、2019年11月実施予定だった大統領選と総選挙を2018年6月24日に前倒しすると表明しました。この一連の動きについての背景を確認したい場合は、以下をご参考ください。
経済状況の急速な悪化に対する強い焦りがあるのでしょう。早く政権基盤を固めて、中長期的な政策を出せる環境を作りたいのだと思われます。
そして2018年5月、大統領選の立候補の受け付けが締め切られました。現職のエルドアン大統領(64)のほか、世俗主義の最大野党・共和人民党(CHP)からはインジェ議員(54)、そのほか国会に議席を持たない小政党の党首も含め計7人が立候補を届け出たようです。
大統領選と同日には国会総選挙も実施される予定です。与党側はAKPなど3党が、野党側はCHPなど4党がそれぞれ政党連合の結成を決めました。これでエルドアン大統領の安定的な政治基盤が出来上がれば、目先の人気取りの政策より長期的な施策が出来る可能性も広がり、その点投資家にとっては良いかもしれません。もちろん、さらなる独裁・悪政となる可能性も否定できません。
2018年5月末現在においては、急激な通貨安や物価上昇に直面し、再選を目指すエルドアン大統領とAKPは、有権者の関心が従来の治安から経済問題に移っていることを背景として苦戦を強いられているようです。場合によってはエルドアン大統領率いる与党連合が過半数割れするという可能性もあります。
過半数割れするとなると、野党が国会を制する「ねじれ」状態が生じ、主導権争いによる政治の停滞は避けられません。その結果、更なる市場の混乱につながる恐れもあり、投資家にとってやきもきする展開が続きそうです。
トルコリラ下落に対する政府・中央銀行の反応
2018年5月3日に発表された4月の消費者物価指数では、前年比で10.85%の上昇と、市場予想および前月の実績値を上回る内容となり、同国のインフレ圧力の強さを示す形となってしまいました。
また、2018年5月14日、訪問先のロンドンでのインタビューで、大統領は再選後に金融政策の決定を巡り、一段と強い影響力を行使する考えを示しました。これによってトルコリラ市場はまた下落。大統領の金融政策に対する理解不足と傍若無人な言動に嫌気がさしているようです。
同じく2018年5月16日には中央銀行が通貨安に対して必要な措置をとる用意があるとの声明を発表したものの、効果は一時だけであまりありませんでした。
2017年後半、株は爆騰したが、、、
一方で、ここにチャートを載せる事は出来ないのですが、2017年暮れからのトルコの株式指数はかなり上昇していました。
また、2018年初頭から新規株式公開(IPO)の動きも相次いでいるようです。2018年4月現在でも複数の小売り大手が上場の準備を進めています。彼らは調達した資金で負債の削減を謳っています。取り巻く情勢が不安定化する中で、少しでもリスクを避けたいと考えているのかもしれません。
2018年に入ってからの株式指数は2017年と打って変わって先行きの景気への影響を見通した投資家の売りで、代表的な株価指数BIST100も1月下旬のピークから約10%下げています。
2018年5月
2018年5月 S&Pが格下げ
2018年5月1日、格付会社のS&Pがトルコの自国通貨建ての長期債務格付けを「BB+」から「BB」に、外貨建ての長期債務格付けを「BB」から「BB-」に、それぞれ1段階ずつ引き下げました。格付けの見通しは「安定的」です。
格下げの理由はトルコ経済の不均衡が拡大していることです。より具体的には、このブログでも他の所で言及している通り経常赤字や財政赤字の悪化、高いインフレ率の見通しが悪化したこと、トルコ・リラの不安定性、民間企業部門が債務などで苦しい状況になりつつあることが挙げられます。
また、6月1日にムーディーズもトルコの格付けを引き下げ方向で見直すと発表しました。
※アジアで2018年初頭に最も下落したのはインドとフィリピンです。そちらもご参考にどうぞ。
しかし、政府の景気刺激策を背景とした堅調な個人消費や、欧州向けの輸出の増加により景気の回復が続いていること、金利が高い水準にあることから、状況が落ち着きを見せればトルコは再評価されやすいと思われます。足元が悪いときに投資をした方が、中長期的な姿勢でいる限り、大きな収益が期待できます。
トルコリラの急落はあるのか?
過去の事例を見ていても、通貨急落の憂き目にあったケースと、少し似ている点があります。注意が必要です。
テクニカルチャートではなく、しっかりとファンダメンタルズとか政治的な状況を見極めた方が良いのではないかと。
以下の記事もご参考にどうぞ!
エルドアン大統領と与党への支持率
2018年の5月中旬現在では、与党支持率が低下しているという世論調査も出ており、不透明感が高まってきているようです。今後もこれらの動向には注意が必要でしょう。
2018年4月 リラの下落と一瞬持ち直した理由
更に4月に入ってからは市場からの信任が厚いシムシェキ副首相が辞任するとの報道が出て、下落基調を強めました。
ただ、2019年11月に実施予定だった大統領選挙と総選挙が2018年6月に前倒しされる事を受けて、通貨リラは足元では持ち直しています。政権がいよいよ通貨の下落阻止に向けて本腰を入れるという思惑があっての事です。
2018年4月
中央銀行の毅然とした態度が必要
前述した総選挙での勝利を確実なものとすべく、政府は景気刺激策を繰り返し導入しています。その結果足元でもインフレは10%台と、中央銀行の目標水準(5%±2ポイント)を大きく上回っています。物価上昇に対して、中央銀行は金融引き締めを行なっているものの、選挙での勝利を目指すエルドアン大統領があからさまに利下げを要求する中、これまでの対応は積極さを欠き、中央銀行に対する市場の信頼が低下する事態につながっています。
金融引き締めに関する政府の態度
ただ、政府の態度にも少しずつ変化が表れていて、ユルドゥルム首相は2018年4月11 日に「中央銀行は金融政策について責任を負っている。トルコ・リラを防衛し、経済を支援する必要がある場合には必要な措置をとるだろう。」と述べています。この発言からトルコ政府もトルコ・リラ安の進行について警戒を強めていて、一定程度の金融引き締めはやむを得ないと考えているのではないでしょうか。
選挙の前倒し観測
選挙法の改正が行われたことで、元々2019年11月に予定されていた総選挙が前倒しされる可能性が高まってきました。2015年6月の総選挙では与党は過半数を獲得できず、再選挙となったものの、今の与党である二つの政党が政党連合として臨めば過半数の獲得が容易となり、政権基盤が安定するとの思惑があります。総選挙が早期に実現し、安定的な政権基盤となればエルドアン政権は目先の選挙対策ではなく、中長期的な目線で構造改革に取り組むことが可能になります。
インフレ率に注目
2018年2月、イスタンブールのインフレ率が下がってきたことから、国全体のインフレ率についても低下するのではとの期待が膨らんできています。実際に2月発表のインフレ率について、事前の市場予想通り鈍化しました。中央銀行は金融引き締め姿勢を維持するとの見方が強いですが、今後を考えると物価動向に注目すると良いかもしれません。
トルコの経常赤字
トルコの経常赤字も2013年当時より縮小していますが、依然として他の4ヵ国よりも高水準なのです。引き続き「脆弱」な状況であることはトルコリラに投資をする上では注目してかなければなりません。
トルコリラの推移
およそ3年間ずっと下がり続けているわけです。かなり忍耐が必要な投資ですね。2018年3月23日には、対ドル、対円で史上最安値を記録してしまいました。
近年のトルコリラ下落の背景
今のトルコリラ安が進むきっかけとなった、トルコと欧⽶諸国の関係悪化等については、今後もトルコの⾦融市場に影響を及ぼす可能性があり、注目していく必要があるでしょう。
2018年3月
ムーディーズがトルコ国債を格下げ
2018年3月、格付会社のムーディーズは、トルコの自国通貨建長期債務格付および外貨建長期債務格付を「Ba1」から「Ba2」へそれぞれ1段階引き下げました。格付見通しは「ステーブル(安定的)」です。格下げとなった理由は、金融政策の実効性の低下や構造的経済改革が遅れていること、経常赤字と対外債務が増加し対外要因による不安定さが増していること、政治リスクの高まり、等です。どれも目新しいものではないのですが、状況としては引き続き要注視といった所で、気は抜けません。更に2018年5月1日にはS&Pもトルコ国債を格下げしました。
2018年2月
IMFもトルコリラに対して懸念
IMFは2018年2月、需要の超過や高いインフレ、経常収支の悪化を指摘し、トルコ経済に過熱感があると指摘しました。
トルコ経済はインフラ整備から消費者ローンまで不足する資金を海外からの資金で賄っています。
先進国の金利上昇でそうした資金調達に困難が生じてくると、経済に大きな打撃となる可能性があります。
https://kensaku.herokuapp.com/
中長期的には強気
ただ、堅調な個人消費や、最大の貿易相手であ るユーロ圏の景気回復基調を受けた好調な輸出などを背景に、中長期的な成長も期待されています。
2018年1月
エルドアン大統領の強硬姿勢
最近の出来事という意味では2018年1月20日に、エルドアン大統領が米国の反対を押し切ってシリアのクルド人勢力、民主連合党(PYD)に対する軍事作戦を始めたと宣言しました。もちろん、こうした動きは対米関係の悪化につながり、それを嫌う投資家にとってトルコリラ売りの材料となってしまいます。
2018年2月にはクルド人勢力とアサド政権が、トルコ軍に対抗するため、共闘を行おうとしています。こういった動きは当然トルコリラの売り要因になるので既に投資をしている人にとっては耐えどころです。余裕がある人はこういう異常事態の時に低い所で拾い続けるというのも良いと思います。
先進国の金利上昇
2018年1月22日と23日に行われた日銀の金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が決定されました。
また、最近少しずつ言われ始めている先進国の金利上昇についても注意が必要かもしれません。カナダも2018年1月に利上げを実施しています。もっとも、これは当初から確実視されていたものですが。いずれにせよカナダの景気が上向いているからこその利上げです。
当該雇用統計についてはマーケットの反応もそれなりに派手だったことから、多くの運用会社等がレポートを出しています。チェックしてみても良いと思います。上記のサイトで「雇用統計」と入れて検索してみてください。
更に2018年2月8日、英中銀の早期利上げ発言等を受け、米国10年債利回りが一時4年ぶりの水準となる2.88%を付けたりもしています。この結果、アメリカの株式市場は下げ足を強める展開になりました。
今後も金融政策の正常化を模索している欧米からの金利上昇圧力などには注視が必要でしょう。当該金融政策決定会合の詳細な内容を知りたい方は、↓の検索エンジンで「日銀」と検索すると運用会社等のレポートをすぐに入手できるのでお試しください。
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