2019年3月地方選挙前に起こったルコリラ急落についてのまとめ

このブログは2019年3月下旬に起きたトルコリラ急落に関する情報提供記事です。

トルコの基本的な情報等は↓をご参考ください!

トルコリラと中長期的に付き合う 基礎から学ぶ4つのポイント

2018年に起きたトルコリラ急落の振り返りは↓

2018年のトルコリラ急落についてのまとめ

2019年3月地方選挙前のトルコ・リラ急落について

2019年3月の地方選挙前にトルコ政府が行ったリラ安定策は完全に裏目に出ました。

これも親マーケットの閣僚や当局者を退任させてきたエルドアン大統領の自業自得という風に言える部分があるかもしれません。

問題はこれがどこまで続くかでしょう。

リラの対ドル相場は2019年3月の最終週、1ドル=5.7466リラの安値から同5.3034リラの高値まで、約7.71%の幅で乱高下しました。
きっかけは既報の通り同月22日の急落で、この日だけで取引開始時より最大で約6.5%下がったわけです。

トルコ当局は、その主因がリラ売り推奨のレポートだったと非難していますが。。。

ちなみにこのレポートの背景にはトルコの外貨準備の急減がありました。

トルコ中央銀行の資料によれば、同国の外貨準備は、3月のはじめの3週間で約100億ドル減り、約247億ドルに落ち込みました。

この間におよそ全体の3割が失われたことになるわけです。

リラ買い介入は財務省が外貨建て預金を中銀から引き出し、預け替えた国営銀行に命じているとの観測もあります。

3月27日にはトルコリラの翌日物スワップ取引金利が年1200%まで急上昇しました。

トルコ当局が海外勢のリラ空売りを防ぐため、国内銀行にリラと外貨のスワップ取引に応じないよう命じたためだとみられていて、海外投資家はかわりにトルコリラ建ての債券や株式を売ったわけです。

以下では、2019年3月下旬の地方選挙前に起こったリラ急落についてまとめます。

2019年3月下旬のトルコリラ急落の経緯

選挙の結果を経て、より近視眼的な政策を展開か

今回の統一地方選でエルドアン大統領率いる与党公正発展党が苦戦したことにより、大統領の経済政策はますます近視眼的なものになるのではないかと危惧されています。

今回の敗因は、人々の経済に対する不満。それは外国人投資家も同じです。

望まれるのは、

  • 財政赤字を抑えること
  • 中央銀行の独立性を認め、自由に仕事をさせること
  • 民間の投資を促すような施策を打つこと

なわけですが、エルドアン大統領は、金融政策を緩和しなければ高インフレが続くとの持論を展開し、改めて中銀に利下げを要請する始末です。

ムーディーズは4月1日、トルコの外貨準備の減少は信用格付けにとってネガティブだと指摘し、中央銀行が外貨準備を使ってリラを買い支えたことは、中央銀行の透明性と独立性への疑問を提起したとの見解も示しました。

その一方で、政治的な圧力から利上げは難しく、仮にしたとしても厳しい経済状況を更に圧迫する事になります。

なかなか厳しい状況です。

地方選挙、エルドアン大統領には厳しい結果

統一地方選挙の結果はエルドアン政権にとって厳しいものとなりました。

今回の選挙は既報の通りエルドアン大統領や与党AKPへの「信任投票」の意味合いがあったわけですが、結果的には、首都アンカラと最大都市イスタンブールで長年与党AKP が守ってきた市長の座を最大野党CHP に明け渡し、都市部を中心とする政権への信認低下を示す形となったのです。

全体では与党AKP の得票率が半数を上回り、エルドアン大統領は勝利宣言を行いましたが、苦しいものでした。

今後の政権運営は厳しいものになると予想されます。

しっかりとマーケットに向き合った誠実な対応を見せてくれればあ、まだ可能性はあるのですが。。。

2019年3月31日の選挙実施

3月31日、エルドアン大統領への信任投票とされる統一地方選の投票がありました。

5年に1度で、全国81都市の首長などを選ぶものです。

景気低迷でエルドアン氏の与党には逆風が吹いています。

ポイントは、エルドアン大統領が率いる公正発展党と、協力政党の民族主義者行動党の得票率です。

2018年の大統領選挙では計52%に達しましたが、これを維持できるかどうかです。

国政への影響力が大きい首都アンカラ、最大都市イスタンブールの市長は公正発展党が確保しているようです。

どちらか一つでも野党に譲れば、政権の陰りに直結すると言われています。

トルコ株、トルコ債券共に下落

一連の動きでトルコの株式と債券も軟調です。

トルコの代表的株価指数BIST100は2019年3月27⽇、前⽇終値⽐約5.7%安と急落しました。

もちろんその背景は、エルドアン政権による一連のまずい政策によるものです。

具体的には、トルコリラ売りの抑制のために導⼊した国内銀⾏へのスワップ取引に関する規制の影響からトルコのスワップ市場における流動性が低下し、スワップ⾦利が急騰したことでトルコ市場におけるリスク回避的な動きが強まり、株式や債券を売却する動きが加速した、というものです。

また、トルコ10年国債利回りは前⽇から0.72%⾼い18.21%となり、こちらもかなりひどい状況です。

トルコの外貨準備高が危機的な水準

中央銀行の外貨準備高が、トルコリラ防衛でかなり減少したことで、トルコの

  1. 国際収支
  2. 外貨建て債務を繰り越す能力
  3. 必要な場合に緊急の資金をどのように、どこから調達するか

を巡って疑念が生じています。

トルコでは外貨に対する国内の需要がかなり強く、外貨準備高の多寡が注目を集めています。

最近公表されたデータによると、中央銀行の外貨準備高は3月15日までの1週間で約30億ドル減少して737億8000万ドルとなりました。

一方でトルコの個人が保有する外貨建ての預金およびファンドの総額は1057億4000万ドルと過去最高を更新しています。

もし外国からの資金流入がすべて停止した場合に、輸入を継続できる期間は、

  • 南アフリカ:6カ月強、
  • ロシア:1年半
  • トルコ:約4カ月

となっていて、かなり厳しい状況です。

2019年3月28日 トルコ・リラの下げは続く

2019年3月28日の取引でも下落しました。

既報の通りの政策のまずさでリラの値下がりが続いています。

リラは25、26両日は上昇しましたが、3月27日は下落しました。

国内企業や個人がドルを買っていると見られます。

3月28日も続落で始まり、選挙がある日曜日以降もどうなるか分かりません。

2019年3月27日 CDSスプレッドが1,000%超

2019年3月下旬に投資家がトルコの債券と株式の投げ売りに動きました。

これは、完全に人為的というか、政策ミスでしょう。

地方選挙を控え通貨リラの下落を阻止するために当局が演出した「リラ不足」が原因だからです。

3月27日、外国人投資家が取引をするスワップ市場でリラを借り入れる翌日物レートは一時1000%を超えました。

これは、外国人投資家によるリラの空売りを防ぐため、政府が国内銀行に対して流動性を提供しないよう圧力をかけた結果です。

この悪政の為、リラを買い戻してポジションを解消したい投資家は債券や株式などのトルコ資産を売って現金を確保するしかなくなったわけです。

2年物トルコ国債の利回りは20%を上回り、株式相場も昨年の7月以来で最大の下落となってしまいました。完全に政府の思惑とは逆効果になりました。

短期の政治的目的のために、マーケットの色々な機能を犠牲にしています。

このようなやり方は、外国人投資家にとってリラが合理的な投資先ではないと思わせ、中長期的なリラ下落を招かざるを得ないでしょう。

2019年3月25日、中央銀行が不安払しょくの為、新たな措置

中央銀行はここ最近の通貨急落を受け、政策金利であるレポ金利での資金供給を見送り、市中銀行に金利25.5%の翌日物ウィンドウで借り入れることを強制しています。

これにより市中銀行の資金調達金利は1.5ポイント上昇したことになると共に、1週間物スワップ入札による外貨供給も行わず、これによってこの週に25億ドル(約2760億円)の外貨積み増しとなるようにします。

トルコリラは3月22日、外貨準備高が予想に反して大幅に減少したことをきっかけに5%余り急落しましたが、25日は一時3.4%高の1ドル=5.5711リラまで回復しました。

2019年3月 トルコの金融政策、一転引き締めへ

2019年3月22日、トルコ中央銀行は通貨リラ急落を受けて、金融引き締め策を発表しました。

主要な政策金利である1週間物レポ金利(年24%)を使った市中銀行への資金供給を停止し、今後は別の政策金利である翌日物貸出金利(25.5%)や後期流動性貸出金利(27%)に切り替えます。

中央銀行は引き続き高金利を嫌うエルドアン大統領からの圧力を受けていると思われ、使用する政策金利の切り替えという事で事実上の利上げをしようと試みたのだと思われますが、発表後もリラは下げ止まりませんでした。

2019年3月22日 一時5%超トルコリラ安に

2019年3月22日、トルコリラが主要通貨に対してかなり売られました。

対ドルでは一時1ドル=5.8リラ程度と前日比5%あまり急落しています。

トルコ中央銀行が2019年3月21日に発表した週間統計で個人や企業がリラを売ってドルを買う動きを加速させたことが明らかになり、リラの先安観が強まったと見られます。

高インフレで自国通貨の減価を嫌気し、トルコの個人や企業がドル預金を積み増しており、それが無視できないレベルになっているのです。

もちろん中東情勢の不安定化やトルコとアメリカの関係についての懸念も背景の一つとしてあるでしょう。

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