ずっと下がり続けてきたトルコリラ。
今もなお、低いレベルでくすぶっています。
それでも、この国は地政学的に重要だ、とか潜在パワーが凄いから待ってりゃ上がる!見たな感じにいわれて、自分の場合は既に4~5年たっている、みたいな。
最近はFXをやっている人もトルコリラの急落で、強制ロスカットに陥った人も多いとか。それで、今のトルコリラの状況について、過去の通貨危機に学びながら整理しなおそうというのがこの記事の目的です。
随時更新、リライトしていきます。
本ブログは↓です!
また、この記事でも触れていますが、類似例を研究する事も大切です。アルゼンチンで起きた通貨危機について知る事でトルコで同じような事が起きた時に、次に起こる事が想像しやすくなるはずです!
トルコリラ通貨危機
まずは、過去のトルコリラについて書きたいと思います。
トルコの歴史は通貨危機の歴史と言ってもいいくらい。全部を紹介していたらキリがないので、比較的最近目の通貨危機についてここでは紹介をしたいと思います。
それは2000年初頭の出来事です。
ファンダメンタルズの悪化と政治家のスキャンダル
当時、この国のファンダメンタルズ特に経常収支赤字などへの懸念がかなり高まり、更に政治家のスキャンダルが重なった事で、金融システムに対する信用不安が一気に吹き上がりました。
銀行同士がやり取りするマーケットでも貸し渋りが発生して金利が高騰し、大規模な資本流出につながってしまいます。この時はIMFが緊急支援策を発表し、いったん沈静化しました。
しかし、翌2001年に当時のセゼル大統領とエジェビット首相が対立し、「国家の深刻な危機」として公表されたため、連立政権崩壊、総選挙、経済構造改革の後退といった憶測から、再びマーケットが暴落しました。
これによって外国為替市場ではトルコリラ切り下げを恐れたトルコリラ売り・ドル買いが急増しました。
当局はトルコリラの価値を維持しようと大量の外貨準備を使ってトルコリラを買い支えようとしたものの失敗。外貨準備は底をつき、それまで維持してきたクローリング・ペッグ制(当局が方向を決め小刻みに基準為替レートを変更する制度)の放棄と、変動相場制への復帰を余儀なくされてしまいます。
これら一連の出来事に伴う通貨価値の下落は、トルコ経済に大きな損害を与えたのです。
アルゼンチンの通貨危機
次は他国の最近の事例をご紹介。
アルゼンチンです。
アルゼンチンは長年、金融マーケットで典型的な問題児と言われ続けてきました。
2018年以降に起きたアルゼンチン通貨危機については、↓をご参考!
良くなっては悪くなり・・・を繰り返す
経常赤字・財政赤字がともに大きい双子の赤字になっていて、インフレ率も高い。これまでも7回、デフォルト(債務不履行)を起こしているのです。
- 1980年代:インフレ率3000%程度のハイパワーインフレ
⇒自由解放政策などを実施し、復活。年率5%程度の経済成長と1桁台の低インフレ率を達成
- 1990年代後半:アジアやブラジルの通貨危機に端を発した経済危機。2001年には債務不履行。
⇒債務再編と同時に、米ドルに連動する固定相場制から変動相場制に移行。
⇒アルゼンチン・ペソは切り下げられ、自国通貨安によって輸出競争力増。経済成長を謳歌。
- 2008年9月:リーマン・ショック
⇒バラマキ政策を実施。その結果財政が再び深刻な状況に。加えて外貨取引への規制強化を行った事によってアルゼンチンペソへの信任性が低下。同通貨は売られて自国通貨安に。
⇒輸入物資の物価上昇。インフレ率が思いのほか上昇。
⇒2015年12月に発足したマクリ政権下では、バラマキ政策を見直し、各種補助金の見直しや公共料金の値上げなど財務の健全化を図る。
マクリ政権は、2017年後半に少しですが政策金利を引き下げました。
しかし、結果的にこの利下げは次期尚早だったわけです。
次項で述べる通り、アルゼンチン・ペソは外部要因もあってその後急落しし、その下落を抑えるために今度は政策金利を約13%引き上げざるを得なくなったのです。
そして投資家の中央銀行に対する信頼感を失う結果となりました。
2018年4月再び急落
急落が起きたのは2018年4月です。
アメリカの長期金利が約4年ぶりに3%台を付けた2018年4月24日以降、アルゼンチン・ペソは対ドルで急落しました。
通貨防衛のため政府はドル売り/アルゼンチン・ペソ買いを継続してきた結果、年初に620億ドル程度あった外貨準備高は約560億ドルまで約10%減少しました。
アルゼンチンの中央銀行は、政策金利を2018年4月27日より1週間足らずで3回、トータルで12.75%引き上げられ、2018年5月には政策金利が40%となりました。
今回のアルゼンチンの政策金利の引き上げは、短期的な応急処置です。あまりに自国通貨の下げがきつすぎるので、金利を上げる事によって止めようとしたのです。
一般的に為替レートの多少の下落は輸出を伸ばすとして評価されます。しかし、この場合、問題は為替レートの下落が早すぎることです。これは明らかに経済にとってマイナスなのです。
そしてそれを後手後手で解決すべく金利を以上に引き上げる。金利の引き上げは景気を冷やす効果があるわけですから、景気がそこまで良いわけでもないのにめちゃくちゃ上げる事は、強烈な副作用を引き起こす可能性があるわけです。
IMFとの関係
新興国にとってIMFは通貨危機の時の最後の砦的な感じなのでとても重要です。
しかし、IMFとアルゼンチンの関係は良くないのです。
2001年にIMFが融資の条件として出した経済改革をアルゼンチンが無視したため、IMFは最終的に融資を打ち切りました。結果としてアルゼンチンは同年デフォルトしたわけです。
政府の中長期的なインフレ抑制の姿勢とIMFとの関係が良化すれば問題ない?
しっかりとアルゼンチン政府がこのインフレを抑制する意思を持ち、具体的な政策に落とし込んでいく事と、IMFとも適切にやり取りできるようになれば、アルゼンチンはまた回復していくのではないかと見ています。
やはり政府の取り組みが重要になると考えます。
どういう時にトルコリラは更なる下落に見舞われるのか
新興国通貨に投資をするとき、そのリスクの高さは誰もが頭ではわかっているわけです。
しかし、実際に危機的状況なんてそんなに何度も起こるわけではないし、大体忘れたころに暴落みたいな事が起きて、気がついたら今まで稼いでいた分が全部吹っ飛んでた、みたいな感じになるわけです。
というわけで、個人的にいつも頭の片隅に置いておいたらいいなぁと思う事を簡単にまとめてみました。
先進国や周りの国の状況
新興国に流れているお金は先進国から来ている場合が多いです。
簡単に言えば、先進国で儲けられないから新興国に投資をしているという感じ。
なので、先進国で今までより儲けられると思うんだったら、あえてリスクの高い新興国で運用しようとは思わないわけです。
それで出てくるのが先進国の利上げ。
金利がたくさんもらえるようになるから、今までより沢山先進国にお金を入れておこう、という風になるわけですが、そのお金は新興国の資産を売って作る事が多い。新興国の資産が売られる=新興国の資産価格が下がるという事になるわけです。
だから、新興国に投資をするときは先進国の動向にもそれなりに気を付けておいた方が良いという事になるわけです。
欧米諸国との関係
今のトルコリラの落ち方を見ていると、欧米諸国との関係が悪化し始める時と結構同じなような。
やっぱりトルコに投資をしている外国人って欧米の人が多いと思われるので、彼らから嫌われたらなかなか上昇するきっかけも見つけにくいのではないかと思います。
エルドアン大統領の独裁的傾向や強硬策は大体ヨーロッパの人から嫌われていますし。
対米関係の安定
2018年7月以降に出てきた、アメリカ人牧師問題。
これはトランプ大統領が選挙のために強硬に出ているという事ですが、理由はどうあれアメリカと仲が悪いのはあまり投資対象として良く見られないのも事実。
国家の威信がかかっている話だから簡単に妥協するわけにもいかないですが、そこは政治の技術でしっかり解決する方向に向かってほしいなとトルコリラへ投資をしている人間として思います。
米国市場やドルを基軸通貨とした決済市場にアクセス不可能になるリスク
一番怖いのは、アメリカとの関係が壊れに壊れて、トルコの民間企業がアメリカ市場でビジネスが出来なくなったり、ドルを基軸通貨とした国際金融システムから締め出される事です。
こうなったらトルコリラはもっと激しい下落に見舞われると思われます。
ここら辺は普通に考えたら絶対に回避できるはずなのですが、首脳の感情的な問題が絡んでくると解決が難しく、民間企業や一般市民が犠牲を強いられる事につながる場合もあります。
外国人投資家がトルコ国債やその他トルコ資産を大量売却⇒更なる下落も
ある通信社のレポートによれば、2018年8月初頭現在、外国人投資家によるトルコ国債やトルコリラ建ての資産が、そこまで売られていないそうです。
嫌なのは、一気に大量売却されたタイミングですよね。
トルコを巡る2018年現在の危機が解決しなかった場合、ある時点で外国人が見切りをつけて国債の含み損を実現したとしたら、悪夢の始まりになるかもしれません。
資金流出が相当な規模になれば、同国の資金繰りは一層苦しさが増しかねません。売りが売りを呼ぶパターンです。
まだまだこれから急落する可能性があるのかもしれません。
政策の失敗
トルコでここまで通貨が下落したのは、やはり政策の失敗によるところも大きいと思います。
投資家はトルコ当局が適切な景気刺激策の巻き戻しを行っていないと懸念してきたわけです。
インフレ加速にもかかわらず、中央銀行は政治的な圧力から利上げ見送り続けてきたわけです。
エルドアン大統領の利上げに対する消極的態度
エルドアン大統領は、金利を下げればインフレが収まるという独創的な理論で経済を語るのですが、なかなか投資家の理解を得るのは難しいかもしれません。
エルドアン大統領は国内の景気を良く保つために、利上げには消極的です。彼は、閣僚や中銀のメンバーで利上げに積極的な者を抑えつけてきたわけです。
もちろん最初からこういう政策対応だったわけではないです。例えば、2014年1月には、リラの下落を食い止めるために、政策金利を4.5%から一気に10%にするという利上げも行いました。
ただ、近年のエルドアン大統領の独裁制の志向の中で、民衆の一時的な支持を得るために必要以上に利上げに消極的になり、周りもイエスマンばかりになってしまった事で、適切な経済政策が出来なくなっているのです。
財務大臣に娘婿を起用、市場寄りの人物を遠ざける
エルドアン大統領は娘婿のベラト・アルバイラク氏を財務相に起用しました。彼は元企業トップで前内閣のエネルギー相を務めた人物ですが、金融界ではほぼ無名です。
さらに、市場寄りのメフメト・シムシェキ前副首相は新内閣から外されてしまいました。
マーケットとの上手な会話が出来る人物がエルドアン氏の周りから、彼自身の手によって遠ざけられてしまったのです。
これはなかなか厳しい状態です。
スキャンダル
問題が起きている時にスキャンダルが起きて、政治の停滞が起きるとマーケットはめちゃくちゃ下がります。
ご紹介したトルコの時もそうですし、ブラジルでもそうです。
スキャンダルが起きている時には、一旦静観した方が身のためなのでしょう。押し目買いしたい気持ちは分かるんですけどね。
IMFとの関係
本当にやばい状況になったとき、どの国もIMFに支援を求めるわけですが、ここでその国とIMFとの信頼関係は重要そうです。
アルゼンチンもIMFと仲たがいしてデフォルトしてるわけですし。
本当にやばい状況になってもトルコはIMFに援助を求めないかもしれない⇒デフォルトの危機
トルコもIMFとそこまで仲が良いのか分かりません。少なくともIMFが求めている政策の在り方とエルドアン大統領が考えている政策は全然違います。
IMFに援助を求めても、IMFが求める条件をのまない限り、その援助は受けられません。
仮にIMFに資金融通を求めるレベルになったとき、トルコがしっかりと政策面でIMFと協調関係を築けるかは重要なのだろうと思います。
テクニカル分析ではなかなか難しいか
FXをされている方は、テクニカル分析で買ったり売ったりという事をされている場合が多いようなイメージがあります。しかし、暴落をテクニカル分析で予想するのはなかなか難しいと思います。
アノマリーやジンクス等もそうです。ファンダメンタルズをもう少し重視する方が長期的には良いような気がします。
テクニカルチャートでどこまで下がるかを予想するのは難しいかもしれない
今回のトルコリラ暴落は事故ではありません。
やはり政治や外交といった所で暴落が促進された側面はあるでしょう。テクニカルチャートは成熟した厚みのある先進国マーケットではありなのかもしれませんが、新興国の様に政治や政策リスク又はスキャンダルのリスクが高い所では予期せぬファクターでマーケットが動揺しがちです。
しっかりと下調べを行って、あとは細かいタイミングにはとらわれず、時間分散で投資をするのが個人投資家のスタイルで一番フィットするのではと思っています。
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