中国の一帯一路政策とインフラ建設支援についてのまとめと経緯

2018年10月

スリランカは対中政策をめぐって内乱の様相

債務の罠にはまって、大変な事になっていると報道されているスリランカ。

そのスリランカで対中政策をめぐってトラブルが発生しています。

シリセナ大統領は2018年10月26日、対中懐疑派のウィクラマシンハ首相を解任し、前大統領で親中派のラジャパクサ氏を後継首相に据えると宣言しました。

しかし、これに対しジャヤスリヤ議会議長は2018年10月28日、ウィクラマシンハ氏を依然首相であると認めたのです。

スリランカでは大統領に首相任命権があります。

しかし、2015年の憲法改正で、大統領は原則、首相罷免権を失いました。実はその改憲はシリセナ大統領自身が、前任の大統領であったラジャパクサ氏による強権政治への反省から施行していて、その意味では、シリセナ大統領自身が、自分で施行した政策を自ら犯すといったような事になっているわけです。

今後、対中懐疑派と親中派で議会は混とんとしそうです。

マレーシア、亡命ウイグル族を釈放

マレーシアのマハティール首相は2018年10月15日、マレーシア国内に不法入国容疑で拘留していた中国・新疆ウイグル自治区出身のウイグル族男性11人を釈放したことを明らかにしました。

一帯一路と直接関係はありませんが、一帯一路による経済・財政コントロールを梃子に政治を支配したいと考えている中国にとって、この問題は通常よりも少し落胆度の大きい結果だったかもしれません。

中国政府はマレーシアに対し、拘留中のウイグル族に関して「中国へ強制送還するように」と強く求めていたわけですが、マレーシアは中国のこの要求を事実上拒否したことになるわけです。

今後のマレーシア・中国関係になんらかの影響がでる可能性もあるでしょう。

中国がどの様に今後対応していくのか、一帯一路の関係国は注視していく事になるのでしょう。

中国、「相手国の決定を尊重する」旨のコメント

中国政府は2018年10月13日、インドネシア・バリ島で開かれたセミナーにおいて、一帯一路について言及し、その際「（相手国の）決定を尊重している」と強調しました。

対外債務やインフラ開発に伴う輸入増などを嫌い、一帯一路関連の開発計画の中止や見直しを表明する国が相次いでいて、中国側はパートナー国に柔軟な姿勢を示すことで計画を推進する狙いがありそうです。

自分たちの真意を見抜かれて何とかフォローせずにはいられなかったのでしょう。

IMF、世銀総会でも一帯一路への懸念相次ぐ

2018年10月にインドネシアのバリで行われたIMFと世界銀行の年次総会は、「一帯一路」への風当たりが強くなっていることを印象付けたようです。

例えばラガルドIMF専務理事は、知的財産保護や競争の確保、過剰な市場支配的立場は回避するべきとの指摘を行いました。

いずれも中国を想定した発言です。

一帯一路に関する世銀のパネル討論会においても、小国の過剰債務や、小国が中国との交渉力を欠いている事などについて、中国高官らが質問責めにされたようです。

中国はアメリカの関税問題はあまり表に出ず、一帯一路が攻撃された事に不満の色を見せたようです。

親中政権の敗北が続き、中国政府焦る

「一帯一路」の関係国で、相次いで親中政権が選挙で敗北しており、中国政府は危機感を強めているようです。

要因としては、各国で中国支援がもたらす汚職や債務の問題に懸念が高まった事が一番でしょう。

中国政府は新政権との関係構築を急ぐとともに、経済支援の手法を見直すなど対応しているようですが、なかなかすぐに結果も出ないようです。

折しも、中国はアメリカと貿易戦争でやり合っており、中国を支える「友好国」をつなぎ留めるのに必死なようです。

～ご参考～

米中貿易摩擦問題について整理してみた2018