ここではスポット的に2021年3月の中国全人代に絞って記事をまとめます。
中国は世界第二位の経済大国として、その景気動向が世界全体に影響を与える為、注目されています。
もちろん、中国株式に投資をしている人はもちろんのことだと思います。
全人代は毎年の成長目標を示すなど投資家として注目のテーマがあったりするため、一つの記事としてまとめ直す事としました。
2021年の中国全国人民代表大会(全人代)に関するまとめ
全人代とは
年に一回開催される、中国の国会にあたるものです。
今年も第15期全国人民代表大会(全人代)が2021年3月に北京で開催されます。
中国の国会に相当する機関で、国防費を含む予算案を承認し、法律の制定・改正も実施します。
年に1回、毎年3月に北京市で開き、向こう1年間の政治・経済・社会など各分野にわたる政策運営方針を審議します。
コロナウイルスで延期された全人代は、今年については例年通りのスケジュールで、3月5日に開幕しました。
今年の全人代において、当局は例年通り今年の経済政策方針を議論したほか、昨年10月に草案を示していた14次5カ年計画(2021年~2025年)と2035年までの長期計画を審議しました。
5か年で研究開発費を年7%以上増加
李克強首相は3月5日、2021~25年の5カ年計画で研究開発費を年7%以上増やすと表明しました。
ハイテク分野で米国に対抗しますが、同計画では平均成長率の目標設定を見送る異例の措置も取りました。
米国を刺激しないよう配慮したとの見方があり、硬軟両様で対米長期戦に備えるとみられます。
米企業が強みを持つ高性能半導体やOS、コンピューター用プロセッサー、クラウドなど「核心技術の重大突破」を実現する主要分野を指摘し、政府活動報告には「科学技術の自立自強を国家発展の戦略の柱として、かなめとなる技術開発の攻防戦に打ち勝つ」と盛り込みました。
官民あわせた研究開発費を年平均7%増とし、5年間で4割以上増やします。
覇権を争う米国との対立が長引いても影響を受けない成長モデルの構築を急ぎます。
2035年までに中等先進国へ
中国は2035年に「1人あたりGDPを中等先進国の水準にとの長期目標を公表しました。
つまり、中国のGDPは25年に米国の76%に達するという計算です。
「中等先進国」は1人あたりGDPで2万~3万ドルが念頭にあるとされています。
人口と掛けると35年までのドル建ての名目経済成長率は年6%を超す事になりますが、そこは明示しませんでした。
米議会予算局(CBO)の予測も使って米中のGDPを比べると、20年に70%だった中国GDPの対米比率は25年に4分の3に達し、30年には85%を超す見込みです。
中長期的な成長持続に向け、中国当局は内需の拡大とハイテク製造業の内製化を重視する方針を示していますが、こうした中、今年の重点取組分野として、①消費の拡大、②ハイテク技術の自立に向けた研究開発費の税制面での優遇、③サプライチェーンの独立性強化に向けた設備投資支援などが設定されました。
2021年の成長率目標は6%、但し本音では、、、
李首相は、2021年の成長率を、6%以上としました。
一方で国際機関や中国内外のシンクタンクは8%前後との予測が多く、世界経済の不確実性が高いなか、6%以上という設定は「最低ライン」を強調する意味合いがあると思われます。
今年について付言すると、引き続き先行き不透明感が残っていることを意識し、政策の急転換を行わないことも強調されました。
中国経済政策への不透明感は後退したと言え、政策支援の下での景気の安定化を目指していると思われます。
ただ、上記は中国政府の表向きの発言で、実際はもっと高い成長率を想定していると言われています。
報道では、2021年の名目経済成長率を9.8%程度と想定しているようです。
中国財政省が示した財政赤字額と名目GDPに対する比率から試算したものがその様な数値になるようです。
物価の伸び率を考慮すると、中国政府が「6%以上」と設定した実質経済成長率は実際には7~8%を想定している公算が大きいと思われます。
金融機関の倒産法を制定
中国は今回の全人代で初めて金融機関倒産法の制定を議題に乗せます。
中国には金融機関の倒産に関する法的な枠組みがないため、実質的に債務超過に陥った銀行が市場から効率的に退出できない状態となっています。
今後5年間にわたって、企業倒産法など様々な法律が改正される見通しとの事です。
財政赤字を9年ぶりに削減
中国政府は財政赤字を9年ぶりに削減します。
2021年の財政赤字は昨年より5%少ない3兆5700億元(約58兆円)を計画しています。
地方のインフラ債の発行も減らします。
ただ雇用など景気への配慮から圧縮幅は小幅にとどめる事になりそうです。
新型コロナウイルス対応で急激に膨らんだ財政赤字をコロナ前の水準に正常化させるには時間がかかると思われます。
金融政策は正常化
金融政策については、「機動的かつ対象を絞った穏健な姿勢」が強調されました。
行き過ぎた金融緩和とは距離を置く一方、経済成長に見合った流動性は供給する方針です。
金融政策も現在行われている正常化への動きがさらに進展することが示唆されています。
香港選挙制度を変更
3月11日、全人代は香港の選挙制度を変更する決定を承認しました。
香港立法会(議会)から民主派を事実上排除して「愛国者」で固める制度に変更します。
選挙制度の変更方針は賛成2895票、反対ゼロ、棄権1票で採択されました。
新制度では、立法会の定数や構成、選挙委員会の役割を変更します。
行政長官を選ぶ選挙委は議員を選ぶ権限も持ち、候補者を審査し、当選者の行動を調査して愛国者と見なす人物に限定する制度を確立します。
全人代終了後の記者会見
李克強首相は11日、全人代閉幕後の記者会見で、中国は安定的な経済成長と新規雇用の創出を2021年の主要目標としていると述べました。
李首相は
「堅調な成長が見られることは確かにうれしいが、中国の景気回復と世界経済の成長・展開に大きな不確実性があることを強く認識している」
と語りました。
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