ここではスポット的に2019年3月の中国全人代に絞って記事をまとめます。
中国は世界第二位の経済大国として、その景気動向が世界全体に影響を与える為、注目されています。
もちろん、中国株式に投資をしている人はもちろんのことだと思います。
全人代は毎年の成長目標を示すなど投資家として注目のテーマがあったりするため、一つの記事としてまとめ直す事としました。
2019年の中国全国人民代表大会(全人代)に関するまとめ
全人代とは
年に一回開催される、中国の国会にあたるものです。
今年も第13期全国人民代表大会(全人代)が2019年3月に北京で開催されます。
詳細の説明は↓に記述してありますのでご確認ください。
2018年の全人代
2018年の全人代は注目されていました。国家主席や首相など国家人事を5年ぶりに改選する手続きに加え、14年ぶりの憲法改正を行う為です。
この改正によって、最高指導者の在任期限が事実上撤廃されることとなりました。憲法改正の記述は以下をご確認ください。
全人代で注目されるのが中国の経済政策や成長目標
いつも全人代で注目されるのが成長率目標や経済政策です。
2019年3月現在だと中国の景気は懸念が広がっており、政府がどの様なかじ取りをするのか注目されています。
2019年の中国の経済成長目標は6.0-6.5%
李克強首相は初日の演説で、今年の主要な経済目標をしました。
同首相は「いかなる困難な試練にも打ち勝つ」と6%~6.5%成長維持への意思を強調しました。
足下の経済状況、景気動向はたまた外交などを踏まえた数値という事でそうなったのだと思います。幅を持たせた成長目標は2016年の「6.5~7%」に続くものですが、中国当局も今後どうなるか少し不安を感じながらの目標設定なのかもしれません。
2018年は構造改革、2019年は景気優先
2018年は中国経済の構造を改革するという中長期的な視野に立ったものが結構ありました。
それは痛みを伴うものの、新しい成長に向けては必要なもので、相応に評価されていたのだと思います。しかし2019年は目先の景気対策にかなりご執心と言った感じです。
成長目標実現のための方策
投資の拡大
景気下支えの手っ取り早い対策は投資の拡大でしょう。
このため、地方政府も苦肉の公共事業に動いているようです。
具体的には、
- 地方政府がインフラ建設に充てる債券の発行枠を6割増の2.15兆元に積み増す
- 2019年は大手国有銀行の中小向け融資を30%以上増やす
といった事が謳われています。
ただ、シャドーバンキング問題などもあり、債務を圧縮するはずだったわけなので、資金をじゃぶじゃぶにするこのやり方は構造改革の逆行となり、中長期的に中国経済をむしばむでしょう。
法人向けの減税
企業向け減税は景気刺激策の大きな柱の一つと言われています。
例えば、
- 付加価値税を製造業で16%から13%に下げる、
- 公的年金保険料の企業負担分をいまの18~20%から16%まで下げる
といった所です。
この減税規模は18年当初より8割も拡大し、GDPの2%超に匹敵します。かなり思い切ったものだと思われます。
財政赤字の規模拡大も過剰債務問題には目配り
2019年の財政赤字の対GDP比率は2.8%と3年ぶりの引き上げとなります。3%程度の予想もあった点を踏まえるとやや慎重な印象もあります。
財政投融資で何とか景気下支えをという事ですが、少子高齢化が本格化する中で債務問題は避けて通れない問題となっている中で、当局としても景気対策への強い意思表示と同時に過剰債務への問題意識もしっかりと明示したかったのだと思います。
実際にある調査では、隠れ債務を政府債務に含めると、政府債務残高対GDP比率が60%台と警戒水準に上昇するとの話もあり、そうだとすればかなり心配な状態です。
その一方で、2015年頃からシャドーバンキングを急激に止めたことで一気にインフラ投資が止まり中国経済が低迷したという経験もあります。中国当局はかなり複雑な経済運営が求められているのです。
中国の外資規制の新しい枠組み
新しい「外商投資法」の可決についても注目されています。
これは外資合弁会社や100%外資系企業を規制する法律を刷新するもので、中国の投資環境を巡る海外からの懸念を和らげる狙いがあります。
もちろん米中貿易摩擦の中でアメリカが重視している所と重なっています。
先に公表された草案によれば、
- 技術を中国に強制的に移転させること、
- 外資系企業の慣行に政府が違法に「干渉」すること
を禁じる内容との事です。
景気回復が早まるか注目
中国政府は2018年夏場あたりから減税や一部輸入品の関税を引き下げる等、景気対策を本格化させています。
地方のインフラ投資を進めるため、いつもなら3月から始まる地方政府の債券発行も2019年は1月に前倒しし、資金繰りを支援しています。
全人代で改めて強く景気回復への言及を行い、いつ底入れになるか期待されます。
中国製造2025への言及はなし?
アメリカから目の敵にされている中国製造2025についてですが、李克強の政府活動報告では言及されませんでした。
中国製造2025が政府活動報告に登場しないのは初めてのことで、2018年は2度も言及していました。
報告の起草者である国務院は記者会見で「紙幅がなかった。多くのことは年によって言及したり、しなかったりだ。『2025』も特別ではない」と説明していますが、アメリカの配慮から言及されなかったと思われます。
全人代を受けたマーケットの反応は冴えない
全人代での財政政策発表後、日本の中国関連株が軒並み下落しました。
例えば、中国で良く稼いでいる中国関連株とされるディスコは5%安、日立建機とコマツが3%安となり、いずれも日経平均の下落率(1%安)を上回っています。
市場では全人代で発表された財政政策の物足りなさを指摘する声が目立つようです。
これによって多くの機関投資家や、中国の政策期待を手掛かりに日経平均先物を買い進めてきたマクロ系ヘッジファンドが、利益確定売りに動いているとの情報もあります。
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