中国の一帯一路政策とインフラ建設支援についてのまとめと経緯

スリランカ議会は新首相を認めず

2018年11月14日、スリランカ議会はシリセナ大統領が「新首相」に指名した親中派の前大統領ラジャパクサ氏への不信任投票を実施し、賛成多数で可決しました。

これによってシリセナ氏が10月26日に首相解任を強行したウィクラマシンハ氏が首相職を続ける可能性が出てきました。

政治混乱は経済にまで波及しています。

通貨の下落を抑えようと、中央銀行は利上げも同日で行っています。

今回は中国にとっては少しきついものだったかもしれません。

スリランカ最高裁、議会解散を一時差し止め

スリランカ最高裁は2018年11月13日、シリセナ大統領が同月9日発表した議会解散を一時差し止めるとの判断を下しました。

スリランカでは2018年10月にシリセナ大統領が一方的に現職首相の解任を公表して以来、政治空白が続いているわけですが、この状態が正常化に向かうか注目されます。

11月14日に再開する議会では、ウィクラマシンハ現職首相に対する信任投票が実施される可能性があります。現職首相の陣営では大統領による首相解任を違憲として、議会での信任投票実施を求めていたのです。

同国議会は一院制で全225議席。首相側が半数程度の議員の支持を確保しているもようであり、これによって10月26日以来、2首相が並立する状態が終わるかもしれません。

どの様な形になるかで当然一帯一路に対する姿勢も変わるはずです。一帯一路という観点から言うと要注目です。

スリランカ、議会を解散　違憲の疑いも

2018年11月9日、スリランカのシリセナ大統領は議会を解散し、1月5日に総選挙を実施すると発表しました。

2018年10月下旬、親中派で一帯一路戦略を積極的に進めたいシリセナ大統領はウィクラマシンハ首相を突然解任し、前大統領で親中派のラジャパクサ前大統領を首相に指名し、ウィクラマシンハ氏が解任無効を主張した事は、この記事内でも伝えた通りです。

11月14日に議会で信任投票を予定していたわけですが、シリセナ大統領は解任の是非を直接、民意に訴える戦略に切り替えたわけです。

この解散はスリランカの政治状況を更に混乱させる可能性があります。

2018年11月7日　オーストラリアで一帯一路を巡った論争

オーストラリアのモリソン首相が、同国ビクトリア州政府が一帯一路について中国と覚書を締結したことに対し「事前の相談がなかった」と批判しています。

オーストラリアのモリソン首相は、連邦政府は一帯一路に関して一貫した政策を持っており、中国と覚書も結んでいない、と主張し、その上で州政府の独断的な行為を非難しています。

中国を巡りオーストラリアの地方政府の動きが批判を浴びるのは今回が初めてではありません。

2015年、ダーウィンという商業港について、北部準州政府は中国・嵐橋集団に99年間にわたり貸与する契約を勝手に結びました。

嵐橋が中国共産党とのつながりを指摘されていたことに加え、ダーウィンは米海兵隊が巡回駐留する北部の要衝でもあることから批判が噴出し、アメリカの不興も買いました。

ビクトリア州は2018年11月24日に州議会選挙を控えており、投資や貿易拡大をうたった今回の覚書締結が労働党のアンドリュース氏の人気取りにつながると見て、労働党が主導して行った可能性が高いと見られています。

パキスタン、一帯一路への協力を継続

パキスタンのカーン首相は2018年11月3日、北京で中国の李首相会談し、一帯一路での協力継続を確認した模様です。

深刻な外貨不足に陥っていたパキスタンに対して、中国は巨額の資金支援に応じたようです。

アジアの新興国で一帯一路にからむ事業の縮小が相次ぐなか、パキスタンが一帯一路への協力を表明した事で、同じ問題を抱えるスリランカなどに影響を与える可能性があります。

中国の李首相はカーン首相との会談で、一帯一路の諸政策は「十分な論証を経たもので、ビジネスの原則に合致しており、経済的な見返りもある」と語りました。

中国が一帯一路を通じて、関係する発展途上国を借金漬けにし、属国化しようとしているという米欧の批判を意識した発言と思われます。

パキスタン支援交渉は大詰め

パキスタンのカーン首相は2018年11月2～5日に初訪中し、習近平らに支援を求める予定です。

その後、2018年11月7日にはIMFの交渉団がパキスタン入りし支援の可否を詰める予定です。

パキスタンは100億ドル程度の外貨積み増しが必要となっており、10月にサウジアラビアから60億ドルの支援を取り付けました。

今後は中国とIMFを天秤にかけて、残りの資金を確保する構えです。

カーン政権は2018年8月に発足し、その時はIMF支援を「予備の選択肢」とみていました。なぜなら、国内で進む一帯一路事業の融資契約などをIMFに開示すれば中国が反発すると推測されたからです。

しかし、なかなか資金面で苦境を免れず、2018年10月上旬、IMFに支援要請の方針を伝えました。

しかし、その後今度はサウジが60億ドルの支援を約束するに至り、カーン首相は「あまりIMFに頼る必要がなくなる」と方針を二転三転させています。

元々、外貨準備の減少の一因は一帯一路事業に伴う電気設備や鉄鋼製品などの輸入急増でした。

これで苦境になったからと言って中国にもっと支援を求めれば、もう、中国無しではやっていけなくなります。