ZTE問題についてのまとめと、その後

この記事は元々米中貿易摩擦について記述していたものの中から、ZTE問題に関するものだけ抜き出して独立させたものです。

2018年9月現在では、ZTE問題はかなり下火になってきましたが、今後の中国投資や米中貿易摩擦に関する考察にご活用ください!

もちろん新しいネタが出て来次第、更新していきます!

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中国貿易摩擦問題 ZTE制裁について

米中の貿易摩擦問題について、一つ象徴的なイベントがありました。ZTE問題です。

そもそもZTEってどんな会社か

中興通訊(ちゅうこうつうじん)という会社で、その英文社名がZTEなので、ZTE社と呼ばれてます。

今流行りの深センに本社を置く、通信設備および通信端末の開発および生産を行う中国企業です。日本にも法人があって、ZTEジャパンという社名になっています。

なぜこんなにアメリカから厳しい対応を取られているのか

元々は2012年10月、つまりオバマ政権の時にさかのぼります。

アメリカ議会 は、中国のファーウェイとZTEが、中国共産党や軍と共謀して外国でスパイ行為やサイバー攻撃をしているとの調査報告を発表したのです。このため、両社の製品を使うのは危ない、として目を付けられたわけです。

つまり、この問題はいきなりトランプ大統領が持ち出した問題ではない、という事ですね。

そしてさらに、2016年3月、アメリカはZTEグループに対して、2010年にイラン政府系通信会社と北朝鮮に禁輸措置品を納入し、またその事実を隠蔽したとして輸出規制措置を取ったのです。ここまでがオバマ政権下での話。

ここから先は以下に記したとおりの流れをたどっていきます。

2018年4月

アメリカ、ZTEへの制裁としてアメリカ企業への製品供給禁止を発表

アメリカは2018年4月16日、中国の通信機器大手、ZTE社のアメリカにおける事業について虚偽の説明を行なったとし、アメリカの企業によるZTE社への製品・部品の供給を7年間禁止する措置を発表しました。

これが、トランプ大統領の言う知的財産権の保護の観点による対応として、貿易摩擦の深刻化につながる可能性が危惧されたと思われます。

2018年5月

ZTEはスマホ事業の売却を検討

そんな中、2018年5月、ZTEがスマートフォン事業の売却を検討していると報じられました。

ZTEは制裁により、スマホの自社生産が難しくなってしまったのです。

トランプ大統領と習近平国家主席の電話会談

2018年5月下旬、トランプ大統領と習氏が電話会談をし、習近平が制裁見直しを求める条件としてZTEに5億ドルの罰金を支払わせる意向を示すと、トランプ大統領が15億ドルの罰金を要求し、最終的には罰金額を13億ドルにすることで決着したという報道がありました。

アメリカの与野党議員の間では、中国政府のスパイ活動に関わっているといわれるZTEへの制裁緩和に反対意見はいまだ多かった状況です。

このZTEに対する制裁は6月7日に見直され、最大14億ドルの罰金などを条件に、ZTEにアメリカ企業との取引再開を認めました。もちろん、この裏に中国政府の働きかけがあった事は間違いありません。

2018年6月

2018年6月13日 香港市場でZTE株式の取引再開

2か月ぶりに取引再開となりました。

株価はなんと約42%安。

約3300億円相当の時価総額が吹き飛んだ計算です。

制裁解除の道は見え始めているわけですが、今期の巨額赤字が見込まれるほか、イメージダウンも避けられず、経営の先行き不安は払拭できていない状況ですね。

2018年6月下旬 取締役14名が一斉に辞任

2018年6月29日の株主総会で、現経営陣14人を総退陣させ、新たに経営メンバーとなる8人を決定しました。

アメリカからの制裁の解除条件として、経営陣の総退陣が盛り込まれていたので対応したものと思います。

しかし、トップはZTEと特に関係の深い企業から招かれており、それ以外の役員も大半は内部昇格者のようです。経営陣刷新の意味があまりないような。。。

2018年7月

2018年7月11日 ZTEへの制裁見直しで最終合意

アメリカはZTEへの制裁見直しで最終合意したと発表しました。

色々紆余曲折ありましたが、追加関税リストを発表した直後にこのアナウンスをするというのは何か言いがあるのかと思ってしまいますね。本丸の関税問題の風穴にしたいのか?

ZTEが将来、新たな法令違反があった場合に没収されるはずの4億ドルをアメリカに納めた段階で米国企業との取引再開を認めるようです。

4月に取引禁止の制裁を科して以降、ZTEは苦境に陥っていました。

元々アメリカは2018年6月17日に、ZTEと制裁の見直しで基本合意していました。ZTEが10億ドルの罰金を支払うほかに、4億ドルを預託する、と。

経営陣を刷新したり法令順守の責任者を置いたりすることを条件に、米国企業との取引を再開できるようにする内容だったわけですが、今回ので一件落着なのでしょうか。

ZTEスマホ事業の売却先候補

2018年7月現在、ZTEの制裁がなくなろうとしているので、売却自体どうなるのでしょうか。

ニュースは出ていません。

報道によれば、売却先には華為技術(ファーウェイ)やOPPO(オッポ、広東欧珀移動通信)、小米(シャオミ)など中国の有力スマホメーカーがあがっているようです。

2018年7月16日 ZTE全面的に事業再開

アメリカが2018年7月13日に制裁を正式解除したのでZTEは、約3カ月ぶりに業務を全面的に再開したようです。

しかし、株価は激落して時価総額が1兆円ほど吹っ飛んでいます。イメージ悪化もあり今後の事業の見込みは不透明です。

何よりも、スマホ事業のメインの市場だったアメリカでの落ち込みは相当でしょう。今でもアメリカ政府はZTEが共産党の強い影響下にあって、スパイの役割をしているとの考えを変えておらず、それに伴うイメージ悪化は相当であると考えられるからです。

2018年8月

2018年8月23日 オーストラリアがZTEの5G市場の参入を禁止

オーストラリア政府は2018年8月23日までに、次世代高速通信規格である5Gの国内導入について、中国の華為技術(ファーウェイ)とZTEの市場参入を禁止にしました。

中国2社の5G用の通信機器を介し、中国政府側に重要情報が漏洩するリスクがあるとみなしたのです。もちろん、この裏に米国の助言があった事は間違いないでしょう。

ZTEに対する制裁の余波はまだまだ終わりません。

2018年8月24日 ZTEの社内監査役に元連邦検察官が就任

アメリカは、2018年8月24日にZTEが米制裁解除の条件として受け入れた社内の監視担当者について、元連邦検察官のロスコー・ハワード氏を任命したと発表しました。

同氏はこれによって、ZTEがイランなどの制裁対象国にアメリカ製品を違法に販売しないよう監視を行うコンプライアンスチームを率いる事になります。

ZTEの2018年上期はおよそ1280億円の赤字

2018年8月30日に発表された同年1~6月期の最終損益は78億元(約1280億円)の赤字でした。

前年同期は23億元の黒字。そこから一気に大幅赤字に転落です。

もちろんその背景はアメリカからの制裁の影響。2018年4月中旬から3カ月にわたって主力のスマートフォンや通信設備の生産ができなっていました。

制裁は既述の通り2018年7月中旬に解除されていますが、今後もなかなか厳しそうです。

2018年10月

2018年1-9月は1170億円の赤字、7-9月は最終黒字

ZTEは2018年10月下旬に、2018年1~9月期の最終損益が72億6千万元(約1170億円)の赤字になったと発表しました。

上記の通り、1~6月期に比べ赤字幅は約100億円縮小していますが、アメリカの制裁を受け4~7月に主要業務がほぼ全て止まった影響が依然として残っています。

2018年は通年で1千億円を超える最終赤字を見込んでいて、厳しい経営が続きそうです。

因みに、7~9月期だけ見ると、最終損益は昨年同期比で65%減ではあるものの黒字を確保しています。

因みに2018年通期の最終損益の予想は62億~72億元の赤字を見込んでいるようです。

2019年3月

2018年通年の決算は1100億円の赤字

2019年3月27日に発表された2018年12月期の決算は、最終損益が69億元(約1100億円)の赤字でした。

アメリカからの制裁で半導体の調達ができなくなった事で、一時的な業務停止に追い込まれた事や、制裁解除のための罰金10億ドル(約1100億円)も響きました。

売上高は21%減の855億元で、欧米などでイメージが悪化したことに伴う同地域の売り上げが半分近く減ってしまいました。

中国自体の売り上げも12%減少しています。

だ、2018年1-9月の最終損益が1170億円の赤字でしたから、回復傾向ではあります。

2019年5月

2019年5月、ミャンマーで5Gインフラの整備

ZTEは、ミャンマーでの5Gインフラ整備に向け、カタール系ので携帯通信事業会社であるウーレドゥー・ミャンマーと協力覚書を結んだと発表しました。

アメリカが中国製機器の排除に動くなか、新興国市場で巻き返しを狙う動きです。

少しずつ次のステップに向かおうとしているようです。

2019年6月

2019年6月、インドネシアで5G展開に関する覚書

ZTEが、インドネシア通信最大手のテレコムニカシ・インドネシア(テルコム)と5Gの展開で連携するようです。

6月25日、5G用の通信網の構築などで協力する覚書を交わしました。

アメリカの圧力がある中、価格の安さで引き続き中国企業の製品等は一定程度の支持を受けているようです。

2019年6月、5Gビジネス、順調に拡大

ZTEが5G関連ビジネスで既に世界200を超える企業と協力関係にある事が明らかになりました。

2018年4月の米国からの制裁で経営危機に陥りましたが、標的がファーウェイになってから、低価格を武器にアジアなどで5G用の設備受注を伸ばしたようです。

2019年8月

ZTEが5G関連で勢いづく

ZTEが再び勢いづいているようです。

制裁で経営危機に陥った2018年夏から1年たち、足元では世界の通信大手60社超と5G関連ビジネスで提携し、存在感を高めています。

ファーウェイがやり玉に挙げられる中、その陰でZTEが勢いを取り戻す形です。

ただ、基幹部品である半導体などの内製化はファーウェイの様に進んではいません。

今なおクアルコムなど米国企業に半導体など主要部品の調達の多くを頼っているため、アメリカに命運がかかっているという状況は変わりません。

また目立つとアメリカが再び監視の目を強める可能性があります。

2019年10月

第三四半期、復活が印象付けられる

2019年10月28日発表された第3・四半期決算は、純利益が前年同期比約4倍増となり、業績回復が印象付けられました。

昨年の米政府による制裁の打撃から回復した形です。

純利益は370%超増の26億6000万元(3億7700万ドル)で1-9月の純利益は41億元に達しました。

通年利益は40億~50億元程度と予想されます。

去年は69億8000万元の赤字でした。

2020年4月

第1四半期は10%の減益、コロナウイルス問題で

2020年4月24日、ZTEは2020年1~3月期の純利益が前年同期比10%減の7億7998万元(約120億円)だったと発表しました。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、主力の通信機器の受注が伸び悩んだとみられます。

売上高は3%減の214億元でしたが、事業別の内訳などは開示されていません。

新型コロナに直面する中、積極的に事業を展開し業務は安定していたと同社はコメントしています。

2020年8月

上半期は3割増益

2020年8月28日、ZTEが発表した2020年1~6月期決算は、純利益が前年同期比26%増の18億元(約280億円)となりました。

5G向け通信機器などが好調で国内市場で売り上げを伸ばした結果です。

ただアメリカ政府は中国ハイテク企業への規制を強めており、今後は国外での事業展開に打撃が広がる可能性があります。

2021年3月

EV向けラインを新設

3月3日、ZTEが電気自動車向けに新たな生産ラインのチームを構成すると明らかにしました。

新たな生産ラインが提携企業向けの部品供給用か、独自ブランドのEV生産用かは明らかにしませんでした。

中国のハイテク関連企業の間では、EV市場参入の動きが相次いでいます。

前期は1割増収

ZTEが3月16日発表した2020年12月期決算は、売上高が前の期比11.8%増の1014億元(約1兆7千億円)でした。

主力の中国市場で5Gの通信網の整備が進み、通信用基地局の受注が伸びました。

地域別の売上高は中国が16.9%増の680億元と好調でした。

中国では通信会社と組み240超の都市で5G通信網を整備したという事です。

中国以外のアジアも11.8%増の147億元で堅調だった一方、欧米などは1.3%減の138億元、アフリカは9.3%減の48億元にとどまりました。

2021年4月

5G関連が好調で2割増収

ZTEが4月28日発表した2021年1~3月期決算は、売上高が22.1%増の262億元(約4400億円)でした。

中国を中心に整備が進む5G関連の機器やサービスの受注が堅調だったとみられます。

ZTEは、5G関連で交通やエネルギーなど様々な分野の500社超と組み、活用を模索しているようです。

2021年6月

5Gで500社超と協力

ZTEは28日、世界最大のモバイル関連見本市「MWC」の基調講演で、5Gで外部企業との連携を広げる考えを示しました。

商用化の成功を確実にするため協力していきたいと呼びかけています。

2021年8月

1-6月期の売上高は12%増

ZTEが27日発表した2021年1~6月期決算は、売上高が前年同期比12%増の530億元(約9000億円)でした。

5G向け通信機器などの受注が伸び悩んだ一方、スマートフォンの販売が伸びました。

事業別の売上高は、スマホなど消費者向けが67%増の123億元と好調でした。

一方で通信会社向けは0.2%増の350億元にとどまりました。

主力の中国市場で通信大手が半導体不足の影響などから1~6月期の設備投資を前年同期より減らしており、ZTEの受注にも響いた可能性があります。

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