インドネシア・ジョコ政権の経済政策のまとめ

ここではインドネシアのジョコ大統領が掲げる経済政策とその遂行状況についてフォローしまとめていきたいと思います。

インドネシアはアセアンの中の大国ですが、構造的な問題も抱え一筋縄ではいかない国であることも確かです、ジョコ大統領の経済政策や財政政策を把握してインドネシア向け投資戦略の検討にお役立てください。

ジョコ大統領の主な選挙公約

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ジョコ大統領の主な選挙公約は以下の様なものです。
  • 教育制度改革を通じた高度人材の育成
  • 情報通信技術の活用によるデジタル経済への対応
  • 海外からの投資を積極的に受け入れ、持続的発展が可能となる法整備

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この内、一期目と二期目とで変わらないものとしては
  • インフラ整備、
  • 海外資本積極導入、
  • 物価の安定、
  • 汚職撲滅

といった所でしょうか。

一期目の最初は期待通り規制緩和や補助金削減などの改革を断行したものの、選挙が近づくと改革は鈍化どころか逆行している一面も出てきました。これについては下記で指摘します。

その他公表されている目標

以下がジョコ大統領が正式な公式な形でコメントしているものです。

経済規模(2030年まで) 世界10位
経済規模(2045年まで) 世界4位
2020年の経済成長率目標 5.6%⇒5.3%に変更
法人税の減税 2021年までに25%から20%に下げる

ジョコ大統領は、2045年にGDPで上位5位以内に入り、先進国に加わる目標を強調するとともに、起爆剤として①輸出の拡大②インフラの整備③経済のデジタル化――を掲げています。

政権発足時の課題(2019年)

以下の政策を推進して経済力アップとファンダメンタルズの改善が望まれます。

外資規制の緩和拡大

外資規制を積極的に導入する事によって国内産業のアップグレードを行っていく必要があります。

しかし、これについては以下でも触れている通り、ジョコ政権の保守化によってうまくいくかどうか懸念されています。

輸出産業の育成

より付加価値の高い産品を輸出する事によって経常赤字の縮減又は黒字化をしていく事が必要です。

これまでインドネシアは資源国として有名でしたが、結局そういった一次産品を輸出しているだけではいつまでたっても先進国に追いつくことは出来ません

今はITサービスなど第二次産業を飛ばして第三次産業が一気に広がりそうなところもありますが、いずれにせよ地に足の着いた稼げる産業を育てていく必要があります。

イスラム教徒の付き合い方

ジョコ大統領が今回副大統領候補に選んだマアルフ・アミン氏は同国のイスラム教指導者の最高団体「インドネシア・ウラマー評議会」の議長で、生粋のイスラム教徒であり、他のイスラム教徒への影響力も相当です。

世俗的な現実主義者としてジョコ大統領は一期目はやってきたわけですが、保守的なイスラム教徒の陣営と手を組んだことで、アグレッシブな開放政策や経済政策を展開しにくくなる可能性があります。

人気取りの政策と実際とのギャップの埋め合わせ

また、大統領選挙の人気取りの為に、近視眼的な政策に走ってしまったのも事実で、しっかりと軌道修正が出来るかもポイントです。

2023年8月

予算案を発表

2024年度の予算案が発表されました。

海外の投資家も注目する財政赤字対GDP比率は、歳入の大幅増加で比率が顕著に低下した2022年の2.4%を下回る2.3%を計画しており、財政健全化路線を堅持する姿勢を見せました。

もちろんこの通り行けば国の信用力を高め、海外資金の流入促進に寄与すると思われます。

2022年8月

財政赤字をGDP比で3%以内に

ジョコ大統領は8月16日、2023年の予算案を国会に提示し、財政赤字のGDP比を2.85%に抑える方針を示しました。

新型コロナウイルス対策に伴う歳出拡大のため22年まで凍結してきた財政規律ルールを公約通り元に戻します。

ジョコ政権は財政赤字をGDP比で3%以内に抑える財政規律ルールを20年から22年までの時限的措置として凍結してきました。

好調な輸出などにおされ、コロナ禍からの経済回復の足取りが力強く、2023年の予算案では同年の実質GDPの成長率を5.3%と予想しています。

歳出は前年比12%増の3041兆7000億ルピア(約27兆3700億円)を計上し、人材育成やインフラ開発、再生エネルギーへの移行など5分野に重点配分する予定です。

2022年7月

財政赤字が改善

インドネシアの財務相は7月1日、2022年の財政赤字が489億4000万ドルと、GDP比3.92%になるとの見通しを示しました。

従来予測のGDP比4.5%から下方修正しました。

歳入が好調となる見通しです。

国債発行額も従来目標から削減します。

インドネシアではコモディティー価格の高騰を受けて輸出が拡大しており、輸出収入の増加と新型コロナウイルス禍からの景気回復で歳入が急増しています。

2022年6月

来年度の経済成長率目標、変わらず

インドネシア政府は6月27日、2023年度国家予算案の前提となるマクロ経済指標について、国会と合意しました。

原油高など外部環境が悪化する中で、実質GDP成長率は+5.3~5.9%と、2022年からほぼ横ばいの推移の見込みです。

2022年5月

地熱発電を拡充

インドネシアの国営石油会社プルタミナが地熱発電の出力を倍増します。

数年で最大40億ドルを投じ、130万キロワットと現在(67万キロワット)から大きく伸ばす予定です。

背景にあるのが国家戦略に掲げる脱炭素化の加速です。

インドネシア政府は2060年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を達成する目標を掲げており、二酸化炭素を排出しない電源の確保が必須なのです。ちなみに、目先の目標として、発電に占める再生エネの比率を現在の14%を25年までに23%まで高める予定です。

同国の発電の6割は石炭火力が占めており、地熱など再生可能エネルギーの引き上げが急務のみならず、ここに加えて足元の資源高騰も脱炭素の取り組みに拍車をかけていると言えます。

火山島の多いインドネシアの地熱資源量は米国に次ぐ世界2位とされ、潜在的な成長力は大きいため期待も大きくなっています。

2022年4月

インフレ対策で現金給付を検討

ジョコ政権は、物価高対策として低所得者向けの現金支給策も打ち出しました。

月給350万ルピア(約3万円)以下の労働者880万人を対象に1人につき100万ルピアを支給します。

5月初めのイスラム教のラマダン(断食月)明けの大祭の時期は各世帯の出費がかさむため、間に合うように手当てするつもりのようです。

ジョコ氏が世論対策を強めるのは首都移転計画への影響を懸念する事もありそうです。

世論調査では移転に反対する回答が半数超を占めており、首都移転をレガシーとしたいジョコ氏にとってハードルになっています。

ジョコ氏は19年4月の大統領選直後に首都移転を2期目の主要政策として打ち出していまいたが、新型コロナウイルスの影響で計画は大幅に遅れています。

2022年1月

首都移転、2024年開始を目指す

インドネシア国会は18日、首都をジャカルタから移転する法案を与党などの賛成多数で可決しました。

法制化により2024年に首都機能の一部の移転を始めたいジョコ政権の方針を固める狙いで、新首都の名称を「ヌサンタラ」とすることを明記しました。

ヌサンタラはインドネシア語で「群島」を意味し、インドネシア自体を示す象徴的な言葉でもあります。

場所はカリマンタン島(ボルネオ島)東部の東カリマンタン州の一部で、法案では経度と緯度で規定しました。

17日時点の法案草案では、24年前半に大統領府や国会、最高裁判所など主要な首都機能を移転する工程を盛り込んでいたようです。

しかし法的拘束力を伴う法案への明記は与党内にも慎重論があり、政府・与党は18日の採決前に関連部分を削除したという事です。

2021年11月

脱炭素戦略を矢継ぎ早に発表

ジョコ大統領が脱炭素の政策を矢継ぎ早に打ち出しています。

2060年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を達成する目標を掲げ、具体策を示すことで、インドネシアが22年に議長国を務めるG20首脳会議の議論を主導する狙いがあるようです。

政府は22年4月にもCO2の排出に課税する炭素税を導入し、国内の石炭火力発電所などを対象にする予定です。

排出枠取引の市場も早急に整備する方針です。

インドネシアは発電の6割以上をCO2の排出量が相対的に多い石炭に依存しており、世界の国・地域の中で10番目にエネルギー起源のCO2排出量が多い国です。

ジョコ氏がめざす45年の先進国入りに向けて経済を成長させるためにも発電量の増加は避けて通れず、脱炭素にも後ろ向きとみなされてきたという経緯があります。

インドネシアはEV電池の主要材料になるニッケルの埋蔵量が世界一で、CO2の吸収効果が期待される熱帯雨林の面積も世界3位です。

各国からEV産業の集積や、森林の再生などへの投資を呼び込みやすい戦略的環境にあることも、脱炭素にカジを切る方針を後押ししたようです。

一方で今掲げている目標は、国際的な支援を前提にしたものです。国際的な協力がなければ達成度も下がります。

どこまで自国でやり遂げるつもりがあるのか、まだ疑問が残るところもあります。

2021年9月

予算計画について、国会の予算部会と合意

インドネシア政府は28⽇、2022年度予算案について国会の予算部会と合意しました。

税率の引き上げを含む政策で付加価値税の税収を10%増やす内容が含まれています。

財政健全化姿勢については外国人投資家にとってポジティブなものと言えます。

首都移転事業が前進

ジョコ大統領が新型コロナウイルスの感染拡大で停滞していたジャカルタから首都を移転する事業を再び動かし始めました。

関連法案の国会への提出を検討するなど、2024年10月までの自身の任期の後も事業が継続するよう既成事実化を狙っています。

政府高官は、

新首都は短期間で建設することはできない。15年から20年はかかる

と話し、首都建設の基本計画と合わせ、事業の継続を担保する法案を準備して、国会に提出する方針を明らかにしました。

国営企業の転機となる可能性があるIPO

インドネシアの国営企業が転機を迎えています。

国内で民間企業のIPOが相次ぐなか、政府は国営系14社を2023年までに上場させる計画です。

投資マネーを使った収益拡大や経済活性で新型コロナウイルス禍で傷んだ財政の立て直しが狙いです。

企業は上場後、政府との距離や少数株主を意識しながら経営改革できるかが課題となります。

インドネシアには100社超の国営企業があり、その子会社を含めエネルギーや運輸など基幹産業を中心に34社が上場しています。

21年秋から国営企業の子会社含め14社をインドネシア証券取引所に上場させる方針で、上場時の株式の売り出しや新株発行などは今後詰める予定です。

14社のうちまず国営企業子会社3社について22年までの上場をめざしているようです。

2021年8月

2022年度の予算案を提示

ジョコ大統領は16日、国会で財政方針演説を行いました。

総額2708兆7000億ルピア(約1883億ドル)の2022年予算案を提示しました。

予算総額は今年より0.4%増加するものの、成長率見通しを高く掲げているため、財政赤字比率は縮小する見込みとなっています。

コロナ対策を含む医療費には歳出の9%超を占める255兆3000億ルピアを充てる予定です。

一方、教育やインフラ関連の予算は前年より削減しました。

同国政府はコロナ対策に伴う財政悪化を見込み、財政赤字のGDP比を3%以内に抑えるルールを22年まで凍結していますが、それでも財政悪化を防ぐための措置でしょう。

2022年の経済成長率は5ー5.5%に設定しました。

因みに、21年は3.7ー4.5%でした。

財政赤字の対GDP比率予想は4.85%で、今年の予想5.82%から低下する見通しとなっています。

ジョコ大統領は、22年予算案は財政赤字を23年に3%以下に抑えるための基盤となることを意味すると述べています。

拡大する新型コロナウイルスについては、公衆衛生と経済の間でバランスを取る必要があるとの認識を示しました。

2021年7月

コロナ感染再拡大で緊急措置

インドネシアでコロナ感染が再拡大しており、これに対応して緊急経済措置を発動させる事になります。

3日から20日までの期間について、人口が最も多いジャワ島と観光地のバリ島を対象に、飛行機の利用を含む移動制限の強化のほか、外食の禁止、ショッピングモールや宗教施設の閉鎖、エッセンシャルワーカー(最低限の社会インフラ維持に不可欠な労働者)を除いて企業に対して全従業員の在宅勤務の義務化といった強力な行動制限を発動させます。

ただし、政権は「感染対策と経済の両立」を目指す姿勢を堅持するなど事態収束が進むかは見通しが立っていません。

政権2期目は折り返しが近付くなか、与党内では2024年の次期大統領選を巡る駆け引きなど、ジョコ大統領のレームダック化が進む動きもみられます。

ルピア安懸念も強まるなか、経済及び政治はともに「正念場」に差し掛かっているかもしれません。

2021年4月

投資調整庁を省に格上げ

インドネシアで投資調整庁が投資省に格上げされることになりました。

ジョコ大統領は4月28日、同庁のバフリル長官を投資相に任命しました。

内外の投資を促進する狙いが背景にあります。

教育・文化省と研究・技術省を統合する省庁再編も決まり、ナディム教育・文化相を統合した省の大臣に任命しました。

2021年1月

コロナ経済対策を増額

1月26日、政府は2021年度の新型コロナウイルス対応の経済対策に関して大幅増額を発表しました。

2020年度の同対策の実行額とほぼ同規模の予算が割り当てられることになる予定です。

政府は昨年の予算案発表で2021年度の財政赤字対GDP 比率の目標を5.70%と発表しましたが、数値を引き上げる事になりそうです。

2020 年度の実績値の6.09%を上回る財政赤字になれば、財政懸念が強まりやすく、インドネシアルピアへの下値プレッシャーが強くなるかもしれません。

2020年11月

EV電池国産化を目指す

インドネシア政府はEV向けのリチウムイオン電池を2024年をメドに国産化する方針です。

政府は鉱業、石油、電力の国営4社が近く新会社を設立する予定です。

ノウハウ取得に向け中韓の大手企業との交渉も始めました。

政府は国内の自動車産業を維持するため、国を挙げて新技術に対応します。

新会社には鉱業持ち株会社のマイニング・インダストリ・インドネシア(MIND ID)や同国石油最大手プルタミナなどが出資し、電池事業の持ち株会社とします。

中核の電池生産では、世界大手の中国CATLや韓国LG化学に協力を要請します。

政府によると、電池国産化事業への総投資額は200億ドルに達する見通しです。

インドネシアは、2025年に自動車販売の20%をEVにする目標を示していて、EV電池の国産化はその一環です。

EVの完成車生産を見据え、韓国の現代自動車と国内工場の建設で合意しました。

EVの普及でエンジンなど既存技術に基づく部品の需要が減っても、関連産業の雇用を維持する狙いもあります。

インドネシアは製造業がGDPの約2割を占め、自動車産業は中心的存在となっています。

インドネシアにはEV電池に使うニッケルを産出する強みもあります。

インドネシアのニッケル生産は19年の実績推計で80万トン、推定埋蔵量も2100万トンと、ともに世界最大と言われています。

国内に付加価値を取りこむため、インドネシアは未加工ニッケルの輸出を段階的に減らしており、2020年1月には全面禁輸に踏み切りました。

現在は国内でのステンレス鋼生産などに使っているが、今後は需要拡大が確実視されるEV向け電池に用途を広げる予定です。

インドネシア政府が国産化を目指したものの、資金不足などから失敗した事例も過去にたくさんありました。

エンジン車はかろうじて国産化を実現させましたが、国内市場の9割超は日本車が占め、国産車メーカーの販売量は少ないままです。

自動車産業の構造変化をにらみ車載電池の開発・生産を急ぐ動きは世界で相次でいます。

例えばタイ政府がEV関連の新しい投資優遇策を発表しています。

これは、新規に完成車を生産する場合、その事業で生じる法人税の支払いを最長で8年間免除するという内容です。

電池の国内生産を促すため、原材料の輸入関税を2年間は90%減免する措置も設けています。

競争が激しいEV市場で、インドネシア政府の実行力が試されそうです。

2020年10月

外資誘致法、可決後に変更

インドネシアの政府・与党が10月の外資誘致を促す制度一括改正法の条文を国会可決後に変更していたことが明らかになりました。

ジョコ大統領が近く署名して正式に成立する見通しですが、同法への抗議デモが一段と広がる可能性があります。

法案採決前の条文は企業が従業員を解雇できる14の事由を列挙していましたが、大統領への送付時には15に増えていたのです。

紛争解決機関が仲裁したときも解雇可能と加えられたようです。

また、退職金の算定方法などを巡っても条文の変更があったようです。

大統領に提出された後も内容が変更されており、分量も増えているようです。

採決の段階で最終の文案が完成していなかったため条文が繰り返し変更されたためという事ですが、こういった事を簡単に許してしまうと、そもそも民主主義のプロセスを疑われかねません。

条文変更によって同法への抗議デモは激しさを増しています。

ジョコ氏の2期目が一年経過

2020年10月20日、ジョコ大統領は2期目の発足から1年を迎えました。

投資を呼び込む規制緩和では前進がありましたが、首都移転などインフラ開発は遅れが目立っています。

2019年に再選したジョコ氏は就任演説で、世界5位以内の経済大国になる目標を掲げていました。

そして主要政策として、

  1. 人材育成
  2. インフラ開発
  3. 規制緩和
  4. 官僚機構改革
  5. 資源依存からの脱却

を掲げました。

規制緩和の柱である外資誘致を促す制度一括改正法は、10月に労働組合などの反対論を押し切って国会で可決しました。
投資手続きも全面的にオンライン化され、以前は数カ月かかった手続きは数日以内に短縮されました。
官僚の等級の簡素化は今後、本格的に着手される予定です。

一方、首都移転計画はあまり進んでいないようです。

関連予算を新型コロナウイルスの対策に回したためで、24年に一部移転する当初計画は実現が疑問視されています。

中国の協力を得て建設するジャカルタと主要都市バンドンの間の高速鉄道も開業が22年以降に遅れるでしょう。

全国の高速道路の建設計画も一部が滞っている状況です。

人材育成では、職業訓練から資格取得、就業までを国が支援する政策を打ち出したものの、コロナでオンラインでの訓練を余儀なくされ、効果が上がっていないと言われています。

たった一年で二期目の評価を下すことは出来ません。ただ、コロナウイルスの影響もあり、当初より様々な所で進捗が送れている事は確かかもしれません。

国営企業の再編政策

インドネシア政府は新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた国営企業の再生案をまとめました。

ガルーダ・インドネシア航空、LCCのシティリンクなど航空、観光関連の9社を1つの持ち株会社の傘下に置き、一体運営することが特徴です。

無駄なコストを省き、割安な旅行プランの提供など連携を進めます。

1~6月期に赤字転落したガルーダに公的資金を注入しやすくする思惑もありそうです。

持ち株会社構想はジョコ大統領肝煎りの案件ですです。

持ち株会社傘下に入るのは、

  1. ガルーダなど航空会社のほか、
  2. バリ島をはじめ国内に14のホテルを持つホテル・インドネシア・ナトゥール、
  3. 世界遺産のボロブドゥールなど観光地の管理・運営会社、
  4. 百貨店のサリナといった観光関連9社

です。

会社規模が大きくなり、銀行からの資金調達も容易になると思われます。

また、総務、経理といった間接部門の統合、事務所の統廃合も進められる可能性も高いでしょう。

観光立国のインドネシアにとって観光、航空分野は生命線です。

かねてジョコ大統領は両部門の統合を進めたかったようで、8月上旬の新型コロナの関係閣僚会議でも、コロナによって、観光と航空部門の統合と変革を始めるよい機会になると話していました。

雇用創出関連のオムニバス法案を可決

2020年10月5日、国会が急遽雇用創出関連の法案を可決しました。

海外直接投資を後押しすると評価されているものです。

概要

焦点の一つになっていたのが最低賃金の上昇率の算出方法です。

当初案では国の実質経済成長率とインフレ率の和から一律に算出する現行方式から地域の実質経済成長率に改めようとしました。

可決時点の条文では州ごとに経済成長率またはインフレ率をもとに算出することになり、経営側は各地域の実態に沿った最低賃金を設定でき上昇の抑制を期待できます。

また、退職金の支払いは企業の負担を軽減しました。

現行法では企業が給与の最大32カ月分を支払うと定めていた所を最大25カ月分に減らし、19カ月分を企業、6カ月分を政府管掌の労働社会保険が負担する事にしました。

解雇を現状より容易にするため、条件をいまの9つから、会社が合併したときなどを加えて15に増やし明確化しました。

この法案は、労働組合のデモなどを受けて不確実性が高いと見られていました。

今回は与党連合が国会の7割超の議席数を有する構図を利用し 、 強硬に法案を成立させました。

これに反発した労働組合は、10月8 日に首都ジャカルタで反政府デモを激化させました。

インドネシアでは昨年も反政府デモが活発化しましたが、これは議会の拙速さも動機となるなど少し今回の動きと類似している所があります。

今回の法改正は外資企業にとってはハードル低下による成長加速が期待されるわけですが、その一方で宗教右派の台頭など内向き姿勢が強まる動きもあり、対立や懸念を一段と際立たせる契機となる可能性も出てきています。

関係者の合意を優先したあいまいな内容を残したため、外国企業は制度の詳細を定める政令を見きわめる事になるでしょう。

今後労働組合の反発がどなるかが懸念されますが、重要な構造改革に踏み切ったことで 、 中長期の経済発展につながる事に期待したい所です。

ジョコ大統領、ロックダウンと経済成長の両立を求める

ジョコ大統領は新型コロナウイルス感染拡大防止のロックダウン措置について、経済をさらに脅かすことがないよう対象を絞るべきだと呼び掛けました。

ジョコ氏は大統領府がユーチューブに配信した動画で、社会生活を大規模に制限する現在の措置よりも制限対象を絞り具体的にすべきだと述べました。

ただ、計画の詳細については明らかにしませんでした。

なかなかよくならない経済について焦りがあるようです。

2020年9月

デジタル課税の対象を拡大

2020年9月8日、インドネシア財務省は売り上げに10%の付加価値税を課税する対象のIT企業に、さらに12社を追加したと発表しました。

ツイッターの関連会社のほか、ビデオ会議システムを手掛けるズーム・ビデオ・コミュニケーションズや同業のスカイプ・コミュニケーションズ、ビジネス向け会員制交流サイト最大手のリンクトインのシンガポール法人、マイクロソフトのアイルランド法人などが含まれています。

インドネシア当局は7月に、グーグルのアジア太平洋部門、ネットフリックスやフェイスブックなどのIT企業をVAT課税対象にすると発表していました。

パンデミックが政府財政を直撃したことで新たな財源を作らなければならない事が背景にあるとされています。

中銀の独立性を脅かす法案

インドネシア銀行(中央銀行)の独立性を脅かす法案が提案されており、懸念が広がっています。

金融政策における政府の権限を高めようとする法案を国会議員が提案しているのです。

専門家から成る委員会が用意した法律の試案は1999年の中銀法を抜本的に変更するよう求めていて、国会内のさまざまな委員会で審議されようとしています。

中銀の責務を経済成長・雇用支援に広げるとともに、政府との政策協調を図るため財務相が率いる新たな金融審議会を設置して、中銀の政策決定委員会に複数の閣僚を加えることが柱です。

この動きを受けて、インドネシアルピアは1.6%安と5月以来最大の下落となりました。

2020年8月

起業家を政権中枢に取り込み

ジョコ大統領がスタートアップの経営者を政権の中枢に取り込んでいます。

配車大手ゴジェックの共同創業者の閣僚起用に続き、インドネシアを代表するネット通販大手ブカラパックの共同創業者を国営企業の幹部として迎えました。

ITを中心に企業のノウハウを政策にいかすほか、若年層の支持を得る狙いがありそうです。

ただ、会社への利益誘導批判で辞任した経営者もおり、課題を抱えています。

ここには、政治的思惑もあります。

世界4位の2億7千万人の人口を抱えるインドネシアの平均年齢は29歳です。

投票権は17歳からで、若年層が有権者の多数を占めており、政治家にとって1980年代から90年代半ばまでに生まれた「ミレニアル世代」の支持を獲得することが重要になっています。

ただ、こうした若手経営者の取り込みにはリスクもあります。

政策決定の過程で、自社に有利になるようにするなど利益相反の事例が相次いているのです。

こうした事例を踏まえていかに経済界出身の若手を上手に取り組んでいくか、ジョコ大統領の手腕が試されます。

コロナ対策で首都機能移転は棚上げ

コロナ対策の迷走はジョコ大統領の主要政策にも影響を与えそうです。

政府が8月13 日に公表した来年度予算案では新型コロナの影響克服に向けて歳出拡大に取り組む一方で、財政赤字の大幅拡大は避けられない模様です。

こうして他の政策へのしわ寄せが進む中で、ジョコ政権2期目の柱であった首都機能移転は棚上げされ、スケジュールの後ろ倒しの可能性が高まっています。

ジョコ大統領が年次教書演説

2020年8月14日、ジョコ大統領は国会で年次教書演説に臨み、新型コロナウイルスで打撃を受けた経済を改革で底上げすると訴えました。

「経済回復の加速と改革の強化」を目指す2021年予算案を明かし、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけとして、食品・エネルギーの安全保障強化、天然資源の国内加工拡大などを通じて経済を再起動させなければならないと呼びかけました。

今後の経済政策のポイントとしては、

  1. 2020年の成長率の目標は4.5%~5.5%
  2. 歳出は2747兆ルピア(約19兆円)で、2020年の当初予算案より約9%増
  3. 2021年の財政赤字は971兆ルピアでGDP比で見ると5.5%

となります。

演説では財政赤字の拡大に理解を求め、2021年も積極財政で成長率をV字回復させる考えを示しました。

インドネシア財務省は8月14日、2020年の成長見通しをマイナス1.1%~プラス0.2%に下方修正しました。

2021年の政策の柱には

  1. 経済回復の加速
  2. 生産性や技術革新、競争力を引き上げる構造改革の推進
  3. デジタル経済への適応
  4. 人口動態変化への対応

を掲げています。

2020年7月

デジタル課税を導入

インドネシアが2020年8月よりデジタルサービス税を導入します。

ネットフリックスなどがオンラインで提供する商品やサービスを利用した消費者に10%の付加価値税を課すというものです。

しかし、アメリカのIT大手への法人課税はアメリカ米政府の反発が大きく簡単ではありません。

対象にはネットフリックス傘下のネットフリックス・インターナショナルやグーグル、アマゾン・ウェブ・サービスなどのサービスが課税対象となります。

インドネシアで経済的な影響力が多い企業を選んだようです。

今回の導入の背景は新型コロナウイルス対策に伴う巨額の財政支出の財源を捻出する、というのが大きいと思われます。

政府は国家経済回復プログラムとしてGDPの4%超にあたる総額約695兆ルピア(約5兆円)の費用を充てています。

新たなVAT導入で2019年の歳入の0.5%に相当する年10兆4千億ルピアの税収増を見込んでいます。

東南アジアではすでにシンガポールやマレーシアが税を課しています。

アメリカとの関係も課題です。

トランプ政権はインドネシアを含めて欧州や新興国など10カ国・地域が導入・検討するデジタル課税について制裁も視野に入れて動いています。

イスラム保守派の動向

イスラム教の保守派が、ジョコ大統領や最大与党が同国で非合法の共産党の復活を容認しようとしているとして、政権への攻撃を強め始めており、政権の対応が注目されます。

世俗色が強い現政権に打撃を与え、2024年の大統領選と総選挙に向けて影響力を強める狙いがあると思われます。

インドネシア・ウラマー評議会(MUI)やナフダトゥル・ウラマー(NU)など主要なイスラム団体が問題視するのが議員立法の「パンチャシラ法案」です。

法案の根拠を示す文献一覧に、共産主義の禁止を明記した1966年の暫定国民協議会決定を記載していないとの事実を指し、政権が共産党復活を目指していると批判しているのです。

法案はジョコ氏が属する最大与党、闘争民主党の主導で提出されていました。

オーストラリアと包括的経済協定

インドネシア貿易省は、オーストラリアとの包括的経済連携協定が2020年7月5日に発効したと発表しました。

同協定は昨年署名され、今年2月に国会で承認されたものです。

2020年6月

ジョコ大統領、内閣改造に言及

ジョコ大統領は、国内で新型コロナウイルスの感染拡大を抑えられていない現状を踏まえ、閣僚に内閣改造も辞さない考えを表明し、発破をかけました。

コロナ対策で迅速な対応を促すためのもので、ユーチューブで動画公開されました。

大統領府が公開した動画は18日の閣議でジョコ氏が閣僚を一喝する場面です。

ジョコ大統領は、

「ここにいる閣僚の多くが通常モードで仕事をしている。私はそれにいらだっている。危機感がないのか。必要なら内閣改造などあらゆる手段を取る」

と訴えのです。

コロナ対策で積んだ予算の執行が遅いとも指摘し、一刻も早く行動に移すよう求めました。

首都移転に暗雲

新型コロナウイルスの感染拡大によって、ジョコ大統領の目玉政策であった首都移転に少し暗雲がたれこめているようです。

インドネシアは2020年に2兆ルピア(154億円)を計上して首都移転を検討していました。

ただ、これらの予算は病院建設などコロナ対策に回さざるを得ない状況となっています。

スリ財務相は21年予算でも転用の可能性を示唆していますが、大きく計画を変更する可能性が上昇しています。

都市封鎖緩和に動くも感染が拡大

今月初めには首都ジャカルタで拡大再生産数低下を理由に制限緩和に動きましたが、結果的に感染拡大が強まり、政府は対応に苦慮しています。

インドネシアは感染者、死者ともにASEAN 最大となっている状況です。

政府は巨額の財政出動で景気浮揚を目指しますが、「双子の赤字」を抱えるなかで一段のファンダメンタルズの悪化リスクがちらつきます。

中長期的な目線での冷静な対応が必要にでしょう。

2020年5月

コロナ対策ではジョコ大統領に逆風

新型コロナウイルスへの対応を巡り、ジョコ大統領に対する逆風が強まっているようです。

感染対策と経済への配慮で軸足が定まらず、世論の支持を得られていません。

与党からも政権運営に注文がつき始め、何とか指導力を回復させるべく必死になっています。

最新の世論調査では、53.8%が中央政府のコロナ対応に不満を持っていると答えたようです。

政策の一貫性のなさと支援物資の配給の遅さが主な理由です。

ジョコ氏は同国史上初めて地方首長から大統領に就いた人物です。国民からの高い支持率を背景にした政権運営をしており、政権基盤自体は盤石ではありません。

ジョコ氏は経済への配慮から強制力を持つ行動制限をためらい、対応を地方政府任せにしました。

一方で地方政府を評価する声は57.3%に達しています。

2024年の大統領選をうかがう各州知事が独自のコロナ対策に知恵を絞っているのが背景です。

財政赤字が当初目標の2倍に悪化

2020年5月18日、インドネシアのムルヤニ財務相は今年の財政赤字が対GDP比で6.27%に拡大するとの見通しを示しました。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済危機で、ジョコ大統領が達成を断念した政府目標の財政赤字上限である対GDP比3%の倍以上となります。

ムルヤニ財務相は予算の前提について、政府が再修正する事を示唆しました。

ロックダウンの出口戦略を模索

インドネシア政府は、コロナウイルスで停止している経済活動の段階的な再開を計画しているようです。

一定の条件を満たせば6月から規制緩和が始まるようです。

インドネシアの新型コロナ感染症による死者は東アジアでは中国を除き最も多く、医療の専門家からは対応の遅れが指摘されています。

しかし、経済的な損失がかなり大きく、経済活動を早く再開させたいというインセンティブが強いようです。

過去6週間で少なくとも200万人が失業するなど、経済が打撃を受けています。

マスクの着用や社会的距離の確保といった厳格な感染防止指針のもと、一部都市の経済活動を5段階で再開することを想定しているようです。

2020年4月

外資誘致法案の審議を延期

2020年4月27日、インドネシア国会は政府が提出した外資誘致を促す新法案の審議の中断を決めました。

新型コロナウイルスの感染拡大のため雇用環境が悪化し、解雇を容易にするなどの内容に反発していた労働組合が審議中断を求めていた事が影響したと思われます。

ジョコ大統領は労働者側の意向に配慮した法案修正に言及していますが、妥協しすぎて骨抜きになれば、今後の外資誘致戦略にも影響を及ぼしかねません。

審議を中断するのは制度一括改正(オムニバス)法案で、ジョコ大統領の二期目の政策の柱の一つとされるものです。

法案では、

  1. 最低賃金の伸びを抑える、
  2. 従業員の解雇要件を緩和する、
  3. 中小企業分野への外資進出を認める

といったもので、これにより海外からの技術移転を促していきます。

政府は国会に2月に提出していましたが、その後の感染拡大に伴う経済の停滞で解雇や失職が広がっており、労働者の主張が通りやすい環境になっています。

2020年3月

コロナのウイルス関連の経済対策

2020年3月31日、新型ウイルス問題に対処するために 約 405 兆ルピアの追加支出を盛り込んだ 景気刺激策第3弾を発表しました 。

具体的内容

  1. 中小零細企業の支援 、
  2. 社会保障 、
  3. 保険への追加歳出

などに充てられ、 幅広い分野がカバーされます。

景気の下振れ回避 、 社会安定化に寄与する事が期待されます。

財政赤字3%ルールを緩和

2020年3月31日、インドネシアのジョコ大統領は財政赤字をGDP比で3%以内に抑える財政規律ルールを緩和する方針を示しました。

但し、2020年から3年間に限定した措置です。

新型コロナウイルスで冷え込んだ経済を浮揚させるための財政出動を行う為ですが、国家財政への懸念から史上最安値に接近する通貨ルピア相場が一層下落する恐れもあります。

今回、財政を拡大して、一部業種での所得税免除や若年失業者向けの職業訓練制度の導入などにあてる予定との事です。

コロナウイルスに伴う経済対策

2020年3月13日、インドネシア政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、新しい経済対策を発表しました。

総額125兆ルピア(約9000億円)規模の経済対策です。

内容

  1. 製造業で働く人の所得税を半年間免除
  2. 企業が物品の輸入時にかかる税金の納付に猶予

等です。

今回の9000億円規模の対策は、インドネシアのGDPの1%近くに相当する大規模な経済対策となり、消費の拡大を促して、成長の鈍化を防ぐ狙いがあります。

原油安の影響大きければ予算修正も

2020年3月9日、スリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相は原油価格の急落が2020年度予算に与える影響を見極めていると述べました。

インドネシアは原油輸入が輸出を上回る純輸入国ですが、一方で、石油・ガス産業は財政収入源でもあります。

原油価格の急落で輸入の名目価値が下がる可能性があり、どの程度それが続くかにもよりますが政府歳入もある程度減少が見込まれると述べました。

景気低迷下の原油安は、一部の国にとってはプラスで景気刺激効果がありますが、石油価格戦争を巡る先行き不透明感は、資本流出を引き起こしているとの見方を示しています。

経済改革の成否についての見方

目下、ジョコ政権は投資環境の整備の為改革を前進させようとしていますが、その成否については意見が分かれているようです。

どちらかと言うと国内は期待しており、海外は懐疑的なようです。

特に海外勢の懸念は労働市場改革のようです。

また、法律の改正よりもその後作成される細則やその運用であるという指摘もあります。

法律をどの様に解釈するかの判断は結局現場に近い所で行われ、そこまで改革の精神を浸透させる必要があるという事でしょうか。

2020年2月

外資導入に向けた法改正を実施

インドネシア政府は海外からの投資を呼び込むため、法制度の改正に踏み切ります。

内容

投資の手続きをシンプルに、人件費負担を軽減するため、最低賃金の伸び率を抑えることが柱になる予定です。

ジョコ政権はこのほど約80あった投資や労働関連法を統廃合し、法制度改正の手続きに入りました。

具体的には、インフラ開発などの際、中央・地方の両政府の複数の省庁で許認可を得る必要があった投資の手続きを中央に一本化するものです。今回の法改正で、最短数時間で基本的な投資手続きを完了できるようにします。

法改正をする背景

大規模な法改正に踏み切るのは、ベトナムやタイに比べ海外からの直接投資の伸び悩みが顕著になっているためと考えられます。

投資法制の未整備や最低賃金の上昇が足かせとなって、ドルベースで2018年は前年比1割減、2019年も微減となってしまいました。

外資系企業からの不満は顕著でした。

インドネシアは5%程度の堅調な成長を続けていますが、毎年200万人とされる新規就業者の雇用を吸収するため「6%程度」の高い成長率目標を掲げています。

実現には外資の獲得が不可欠なので、制度改正をしてでも投資拡大をしなければなりません。

2020年1月

国営企業改革に本腰を入れる

ジョコ政権が国営企業改革に再び挑んでいます。

国営企業改革をめぐる最近の動き

  • 最大企業の石油大手、プルタミナの監査役会議長にジョコ氏の盟友のバスキ元ジャカルタ州知事を任命
  • 司令塔となる国営企業省には実業界で実績のある人物を配置。

インドネシアには100社を超える国営企業があり、その売上高は合計18兆円に達しています。

特にプルタミナはかつて「国家の中の国家」と呼ばれ、大統領といえども影響力を行使しにくい企業でした。
バスキ氏の就任で、より政権の意向に沿った経営がなされるという期待があります。
これによって石油製品の自国生産がより効率的に行われ、貿易収支を改善させられるという効果もあります。
2期目のジョコ氏はプルタミナのほか、国営電力PLNやガルーダ・インドネシア航空といった主要国営企業でも相次ぎ経営幹部を交代させています。

監督官庁である国営企業省の大臣には実業家のエリック・トヒル氏を任命しました。

同氏は大手メディア企業などを経営した経験があります。

2019年4月の大統領選挙では選対本部長としてジョコ氏の再選を支えました。

エリック氏率いる国営企業省は、国営企業による子会社設立の抑制や事業モデルの改善を掲げます。

また、過剰債務を抱えた企業の再建も同省のテーマとなります。

2020年1月28日には、国営企業で製鉄会社のクラカタウ・スチールが国内外の銀行10行と債務再編で合意したとの発表がありましたが、これも同省の指導があってのことと思われます。

一期目の反省

ジョコ氏は1期目で国営企業の改革に失敗しています。

当初は少数与党で政権基盤が弱かったこともあり、連立与党や労働組合、国営企業などの反発を受けたのです。

プルタミナでも5千億~1兆円規模の複数の製油所建設や拡張計画が浮上しましたが、いずれも進展しませんでした。

国営企業全体の売上高約18兆円は、インドネシアのGDPの2割弱に相当します。

しかもプルタミナのように市場で支配的な企業も多く影響力は依然大きいので、引き続き抵抗が予想され、改革がどこまで上手くいくかは分かりません。

加えて、そういった国営企業が色々な政治的な力によって似たような小規模子会社を乱立させ非効率な事になっている例も多数あります。

課題山積でどこまで上手くいくのかは分かりませんが、前に進むしか方法はありません。

2019年10月 ジョコ大統領の二期目が始動

EV用バッテリーのニッケルを輸出禁止に

インドネシアがニッケルの輸出を禁止し、EV技術の中心になろうと国を挙げて取り組んでいます。

インドネシアはEV用バッテリーに使われ性能向上を左右するニッケルの鉱石埋蔵量が世界最大です。

これを強みに世界の自動車メーカーから巨額の投資を呼び込んでみ、EV技術の中心地になろうと取り組んでいるわけです。

インドネシアのニッケル埋蔵量は世界全体の約25%と言われており、その価値は約3500億ドルに達します。

インドネシアは2019年10月28日、来年1月1日開始を予定していたニッケル鉱の輸出禁止措置を前倒しし、即時実施すると発表しました。

もともとは2022年の計画でしたが、それを2020年1月実施に早めており、それをさらに早めたわけです。

輸出禁止の影響

輸出禁止で、EVメーカーやバッテリーメーカーがインドネシアのニッケルを利用するには同国内に施設を建設する必要があります。

このため、供給チェーンのあらゆる段階に投資資金が流入しており、同国の自動車産業が急速に成長する可能性があります。

同産業への投資規模

ニッケル精錬所建設への投資額は2024年までに総額200億ドルが見込まれています。

既に日本や中国、ブラジルのプロジェクトが進んでいるようです。

二期目の閣僚名簿公表、最大野党の党首が入閣

2019年10月23日、ジョコ大統領は閣僚名簿を発表しました。

元世界銀行エコノミストのスリ・ムルヤニ財務相が留任したほか、最大野党グリンドラ党のプラボウォ党首が国防相に任命されました。

新内閣では、ジョコ大統領が掲げる成長・投資促進のビジョンの推進役になるとみられるテクノクラート(専門技術官僚)がどれだけの割合を占めるかが注目されていましたが、34人の閣僚のうち、約半数という結果となりました。

残る半数は政党に所属するか、つながりのある人物です。

プラボウォ氏の入閣によって、ジョコ氏はグリンドラ党の議員を含め、議会議席の約74%を占める議員を味方につけたことになります。

2期目が始動

インドネシアのジョコ大統領の2期目が2019年10月20日に始まりました。インドネシア経済の先行きも不透明で、実質経済成長率5%割れが目前に迫る中、どういった経済政策を行うか注目されます。

2014年10月の1期目の就任時にはジョコ氏は

「7%程度の高い成長を目指す」

としていました。

実際には目標には届かず、おおむね5%の経済成長にとどまっていましたが、最近はその5%割れも目前になっています。

ジョコ氏の2期目の経済政策の柱は

ジョコ氏は海外から投資を誘致し新たな輸出産業を育てる事で成長を加速させようとしています。

しかし、実際は資源輸出に頼る経済構造からの脱却はまだ上手くいっているとは言えません。

MEMO

輸出(石油・ガスを除く)に占める石炭とパーム油の割合は直近で計約25%となっていますがこれは就任前の約28%と大きな差はありません。

何がネックになっているのか

外資誘致を巡っては投資を促す規制緩和に努めているものの、依然約330の分野で外資の出資規制があり、許認可を得るのも面倒なのです。

2期目は、許認可を迅速にするほか、多数の投資関連規制も全面的に見直す予定です。

ただ改革の遅れで周辺国に誘致競争で既に後れをとっている状況で、後継を巡る権力闘争が起これば、更なる出遅れも懸念されます。

首都機能移転が始動

インドネシア政府は、首都移転費用をねん出するために国有施設などの売却や賃貸の検討を始めたようです。

新首都建設費用は3兆円超と巨額で、資金確保を疑問視する声も出るなか自前の財源を手当てします。

元々どれ位国家予算を使える予定だったのでしょうか。

新首都建設にかかる466兆ルピア(3.5兆円)のうち国家予算で賄えるのは2割にすぎないと言われています。

そこで、新たな策として国有施設や国有地の売却や賃貸が浮上したと思われます。

ほかに国有企業の資金の活用やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)も検討しているようです。

インドネシア政府によると、政府の保有資産価値は1100兆ルピアを超えるという事で、特にジャカルタ中心部の資産は価値が高いとされています。

今回の国有資産売却で、466兆ルピアの移転費用のうち、約3分の1にあたる150兆ルピアの捻出を目指します。

国民はどう思っているのでしょうか。

首都移転は国民の賛否が分かれているようです。

首都移転先が決まった8月の世論調査では39.8%が首都移転に反対で賛成の35.6%を上回っています。

やはり、巨額の費用をどう賄うのか不安に思う人が多いようです。

2019年8月

イスラム化が進行する経済

ジョコ大統領が今年4月の大統領選で、保守派のマアルフ・アミン氏を副大統領候補に選んだ事で、少しずつインドネシア経済のイスラム化が進んでいるようです。

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アミン氏とはどんな人でしょうか??

アミン副大統領はイスラム団体のトップで聖職者でした。

イスラム金融の法整備やハラル認証の義務化を促進してきたという政治的実績もあります。

今後副大統領としてイスラム経済化を後押しする措置をさらに進めそうです。

イスラム化する経済のデータ

インドネシア国民がハラル認証の食品、観光、ファッション、化粧品に費やした額は2017年に2190億ドル超でしたが、これは2014年の1930億ドルからかなり拡大しました。

イスラム金融機関の資産は2019年6月までに486兆9000億ルピア(約3兆6000億円)に達し、過去9年間で300%以上増えました。ただ、これは全銀行資産の6%未満です。

インドネシアでは、ハラル認証食品や節度を守った衣服、イスラム法にのっとった旅行の需要が、特に急拡大していて、政府はGDPにこうした「シャリーア経済」が占める割合の把握に努めているようです。

首都移転先を決定、2024年から段階的に移転

2019年8月26日、政府は首都の移転先にボルネオ島東部の東カリマンタン州の2つの県を選んだと発表しました。

現在の首都ジャカルタから2024年の移転開始をめざす予定ですが、費用は466兆ルピア(約3.5兆円)と見込まれており、どうやって費用を確保するかなど課題は沢山ありそうです。

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ジョコ大統領も二期目で、何か大きな花火を打ち上げたかったのでしょうか

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もう少し詳細を教えて下さい

政府は2021年中までにマスタープランをまとめる予定で、2024年から段階的に移転を始める計画です。

移転完了は2045年。

移転するのは行政関連の機関・施設で、100万人規模の移住を想定しています。

中央銀行や金融庁などの経済関連機関はジャカルタに残る計画です。

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今のジャカルタはそんなにひどい状況なんですか??
現在のジャカルタの状況
  • 面積は東京都の3分の1
  • ジャカルタだけで現在、約1千万人が居住
  • 周辺自治体もあわせた広域人口は3千万人を超えている
  • 過密した人口が原因で世界最悪レベルとされる交通渋滞と大気汚染が発生
  • 自然災害、特に洪水が多く、経済損失も年々大きくなっている

財政についてはどうですか??

政府が試算する移転費用は約3.5兆円です。

しかし、その移転費用のうち国家予算からの支出は2割弱にとどまる見込みです。

残りは官民パートナーシップ方式や国営企業、民間からの直接投資で賄う予定との事ですが、正直めどはたっていないと思われます。

100万人を移住させる計画には住宅、学校などの生活インフラの新設も必要となりますが、これらの殆どが民間頼みとなる予定です。

民間企業としては、どこまで本気でやるかかなり困惑するでしょう。

ジョコ氏の任期は2024年で終わるので、それ以降誰が強力なドライバーになるかも分かりません。

むしろ、首都移転をジョコ大統領のアンチテーゼとして、次期大統領候補がアピールしたりすると、この計画自体が危ぶまれる事になります。

ジョコ大統領、首都移転を正式に提案

2019年8月16日、ジョコ大統領はジャワ島にある首都ジャカルタをカリマンタン島に移転することを正式に提案しました。

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議会での所信表明演説で言及しました。

首都があるジャワ島の人口が急増し、過密状態となっていることから、ジャワ島以外に首都を移転しようというものです。

ただ、現時点でカリマンタン島のどこにするのか、具体的な移転先は明らかにされていません。

ジョコ大統領、2020年の成長率目標変わらず、7年ぶりの高水準を目指す

2019年8月16日、ジョコ大統領は演説で2020年の経済成長率を5.3%と想定していることを明らかにしました。

2019年度(1~12月)当初予算案から目標を据え置いています。

首都移転やインフラ建設の推進でもっと強気に行きたかったのかもしれませんが、世界景気の減速懸念が出るなか、据え置いたのでしょうか。

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ただ、上記水準は達成すれば2013年以来7年ぶりの高成長を見込んでいることになります。[say]

因みに、19年の成長率予想は5.2%です。

2019年7月

国営企業改革の試金石、クラカタウの改革

国営製鉄のクラカタウ・スチールが大規模なリストラに乗り出すようです。

[box class="box31" title="クラカタウとは"]
  • クラカタウはインドネシア証券取引所に上場する国営企業
  • 政府が80%の株式を保有
  • 2018年12月期の売上高は24兆ルピア(約1900億円)で最終損益は1兆ルピアの赤字(最終赤字は7年連続)
  • 2013年、韓国ポスコとの合弁で東南アジア初の高炉を開設
  • 無理な高炉建設など過剰な投資で債務が拡大
  • 直近では中国などの鋼材が流入して競争力を失い、業績が悪化
[/box] [box class="box9"]

赤字が続く中、上記の様に投資を続けてしまった背景には、国営企業として政権の意向を汲まなければならなかったという事情があるようです。

[/box] [say]国家プロジェクトとして工業化を進める中、1000万トンの鉄鋼製品の生産を目指していて、クラカタウも生産能力を拡大せざるを得なかったようです。

今回のリストラでは、

製鉄以外の子会社の売却や整理を進め、本社の従業員数を約3割減らす予定です。

特に不動産やホテル、医療など非中核企業を売却し、傘下のエンジニアリング会社は独立させます。

こうした一連の資産売却で1000億円程度を手にすると共に2800億円近い有利子負債の圧縮を進める予定です。

リストラで身軽になって競争力を高められるかが注目ポイントで、その成否が今後のジョコ政権の経済政策に大きな影響を与える可能性があります。

遅れる国営企業改革、どこまで改革進められるか

インドネシアで国営企業の改革が遅れているようです。

ジョコ政権は国営企業を業種ごとに複数の持ち株会社にまとめて効率化し、競争力強化を狙いますが、なかなかうまく進みません。

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まずは数値を見ていきましょう
インドネシアの国営企業のデータ
  1. 国営企業数は115
  2. 17社がインドネシア証券取引所に上場
  3. 2018年12月期の国営企業全体の売上高は約2400兆ルピアで、日本の大手商社に匹敵
  4. 2018年12月期の国営企業全体の純利益は1%増。民間は15%増などとなっており、国営企業の非効率性は明白
国は各企業の経営に干渉しないという建前になっているようですが、人事などを通じて経営に大きな影響力を持っています。また、経済合理性よりも政権の政策が優先されがちです。

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