ここでは全世界の政治経済に大きな影響を及ぼすアメリカの2020年大統領選挙の経緯についてまとめていきたいと思います。
大統領が誰になるかによって、マーケットの動きも変わるでしょうし各国の外交政策も変わるでしょう。各候補の政策を中心に経緯をまとめていきたいと思います。
これまでの流れは以下からご確認頂けます。kindle unlimitedで無料でご覧いただけます。
トランプ大統領の一期目の支持率の特徴
トランプ大統領の一期目の支持率を見てみると、これまでの大統領とはかなり違った特徴が浮かび上がります。
世論調査に表れる支持率、不支持率の推移を政権発足当初から見てみると、支持率は最高でも就任直後の50%程度。
2019年9月下旬でも45%程度で推移していると考えられます。
在任中に支持率が一度も50%を大きく超えていない大統領はこれまでいませんでした。
しかも、不支持率は、ほぼ一貫して50%を上回っています。
しかし、その一方でトランプ氏は安定した支持基盤も持っているとされています。
実際に、過去の大統領と違い、トランプ氏の支持率は大きく下がることはありません。
特に共和党支持者による支持率は90%前後と、過去に例を見ない高さを保っているのです。
加えて、隠れトランプ支持者が多い事も特徴の一つでしょう。
再選に向けた課題
人種差別問題と新型コロナ感染拡大、高失業率がトランプ氏再選のリスク要因と言えそうです。
2020年6月の「ジョージ・フロイド事件」をきっかけにトランプ氏の支持率が低下傾向にある中、フロリダ州やオハイオ州など激戦州では、新型コロナウイルスの新規感染者が増加傾向にあります。
「第2波」リスクがトランプ氏再選を危うくする可能性があります。
トランプ氏再選が金融市場にとって望ましい結果??
⾦融市場にとって「都合のいい結果」とはトランプ⼤統領が再選されることだと考えられます。
理由は分かりやすいです。
トランプ政権の経済政策の方が株価が上昇しやすいからです。
⺠主党のしかも左派が政権をとれば、成⻑から再分配へ、小さな政府から⼤きな政府へと経済政策の重心が⼤きく移動する可能性があります。
これらは自由競争や規制緩和によって企業の自律的な成⻑を望む株式市場の考え⽅とは正反対です。
もちろん富裕層増税・法人税増税も株式市場にとってはマイナスでしょう。
バイデン、ブティジェッジ、ブルームバーグなどの中道派が⼤統領に選ばれれば、まだ⾦融市場の混乱は回避されるかもしれませんが、伝統的に⺠主党の政策は⾦融市場フレンドリーではありません。
二期目のトランプ氏がしたいこと
トランプ⼤統領が再選されれば、基本的にこれまでの経済政策が続くと思われますが、2期目の⼤統領はレガシーを残すことに集中する傾向があります。
トランプ⼤統領が何をレガシーにしたいかは専門家の間でも意⾒がまとまっていません。
これによっても選挙終盤中から色々と相場を動かす要因となってくるかもしれません。
カギを握る激戦州
注目されるのは選挙のたびに共和党、民主党と勝者が入れ替わる「スイング・ステート(揺れる州)」と呼ばれる激戦州です。
激戦州は、五大湖周辺の中西部が多いとされます。
自動車や鉄鋼など製造業の工場が多く、もともと労働組合を支持基盤とした民主党が強かった所です。
しかし民主の移民政策などに不満を持つ白人労働者層の支持を集めたトランプ氏は、前回選挙でウィスコンシンとミシガン、アイオワやオハイオ、東部ペンシルベニアを制し、最終的に勝利しました。
いずれも08年、12年は民主党のオバマ・バイデン陣営が勝利した州でした。
選挙人が3番目に多い大票田で、いつも接戦となる南部フロリダ州も焦点とされます。
これ以外にも元々共和党が強いものの、今回は接戦となりそうな州であるノースカロライナ州、都市部からリベラル層の移住が増えている西部アリゾナ州も注目です。
人種構成が多様化している大票田のテキサス州も民主党は共和党打倒を目指しています。
トランプ氏とバイデン氏の政策の比較
トランプ氏は雇用創出と減税を経済対策の柱とし、米国第1の立場を継続する姿勢を明確にしています。
トランプ氏の主な公約ですが
- 雇用創出と減税を経済対策の柱とし、
- 「米国第1」の立場を継続する姿勢
- 雇用については、10カ月以内に1,000万人の雇用を創出し、
- 100万社の小企業を生み出す
- 手取り給与を増やして雇用を維持するため、減税を実施
- 対中政策では、中国から100万人分の雇用を取り戻し、中国から雇用を取り戻した企業に税制面で優遇する政策を公表
- 2020年末までの新型コロナウイルスのワクチン開発、
- 処方薬の価格引き下げ
などが公約に掲げられています。
一方で、バイデン氏はIT企業や富裕層への課税強化で財源を確保し、大規模公共投資に舵を切る戦略です。
バイデン氏の主な公約は、
- 新型コロナウイルスの感染拡大により、米国は大恐慌以来の最悪の経済危機にあると訴え、雇用や産業の再建を強調、
- 巨大IT企業や富裕層を念頭に置き、公正な税負担の必要性を訴求、課税強化を掲げる
- 環境インフラ部門に4年間で2兆ドルの資金を投じる計画
- 製造業支援にも7,000億ドルを投入
- 500万人の雇用を生み出す
- 増税規模は10年で3兆ドル超
- 対中政策は、基本的には強硬路線
- 但し、関税の見直しを視野に入れる
- クリーン・エネルギーや環境問題を重視、
- 新しい医療保険制度も新設する方針
といった所です。
大統領選挙でトランプ氏が勝利した場合、市場にとって、減税方針は好材料なものの、通商や安全保障問題で、中国との緊張が一段と高まるかもしれません。
一方、バイデン氏が勝利した場合、市場にとって、増税方針は懸念材料なものの、3兆ドル規模のインフラ投資や、関税の一部巻き戻しなどで中国との緊張緩和の可能性があることは好材料と言えます。
2021年1月
トリプルブルー実現でバイデン政権は政策をやりやすく
トリプルブルー実現でバイデン政権はやりやすくなりそうです。
1月5 日、ジョージア州で行われた上院の決選投票で 、 2議席とも民主党の候補が接戦のうえ勝利を確実にしました。
これで上下院ともに民主党が主導権を持つ事となり、バイデン新大統領は当初の予想とは変わって、かなり政権運営がやりやすくなるかもしれません。
2020年12月
正式にバイデン氏が大統領に当選
大統領選挙人による投票が12月14日に行われ、538人の選挙人のうち 、バイデン氏は過半数の270人を超える選挙人を確保し勝利を確定したとの報道がありました。
今後 、 選挙人による投票の結果は連邦議会に送付された後 、 2021年1月6日に上下両院による合同会議にて正式に承認される予定です。
バイデン氏はこれで、1月20日に第 46 代大統領に就任する事となります。
激戦6州でバイデン氏勝利
中西部ウィスコンシンと西部アリゾナの両州は11月30日、バイデン氏の勝利を公式に認定しました。
トランプ大統領の選挙陣営や共和党は選挙不正を主張していますが、訴訟をしても勝利の展望が描けず、外堀が埋まりつつあるようです。
2020年11月
トランプ陣営、戦略変更
トランプ大統領の選対陣営が戦略の変更を行っています。
法廷闘争で大統領選の結果を覆すシナリオが難しくなり、バイデン氏が勝利した激戦州の州議会共和党議員に介入を促し、有利な状況に持ち込む戦略にシフトしているようです。
トランプ氏、居座りは否定
トランプ米大統領は11月26日、大統領選でバイデン氏の勝利が確定すれば、速やかに退任する意向を初めて示しました。
激戦州で勝敗を認定する手続きは来週に続々と期限を迎える予定です。
それを踏まえて各州は12月8日までに「選挙人」を決める運びで、同14日の投票が結果確定への節目となります。
政権移行が本格始動
米国で2021年1月の新政権発足をにらんだ政権移行が本格始動しました。
トランプ米大統領は11月23日、バイデン副大統領への政権移行手続きの開始を容認したためです。
政治空白の懸念は回避されそうですが、敗北を認めないトランプ氏が権限誇示へ新たな政策を打ち出すなどの波乱への懸念は残っているようです。
激戦州の消費を公式に認定する手続きが本格化
大統領選は11月23日から激戦州で勝敗を公式に認定する手続きが本格化します。
バイデン氏の当選が確実になるなかで結果を覆すのは難しい情勢ですが、トランプ大統領は認定後も法廷闘争を続けるとみられます。
最終決着までなお曲折がありそうです。
激戦州の勝敗が確定する期限が迫る
大統領選の激戦州で結果を確定する期限が迫ってきています。
トランプ大統領は選挙不正を主張して手続きを遅らせ、連邦議会が大統領を選ぶ方向に持ち込もうとしているようです。
バイデン前副大統領の当選を覆すのは困難との見方が多いものの、トランプ陣営は徹底抗戦する構えです。
敗北を受け入れ始めたトランプ氏
トランプ大統領は選挙戦の敗北を受け入れ始めていると、側近が述べました。
ただ、公には選挙結果を否定するコメントを続け、正式な政権移行開始を遅らせています。
トランプ氏が敗北を認めたとメディアが報じたことを受けて同氏はすぐに「私は何も認めていない!」とツイートしましたが、政権移行プロセスの正式開始を求める圧力はバイデン次期大統領のチームと身内である共和党内の両方から強まっています。
市場の関心は閣僚人事に
11月中旬、市場の当面の関心は主要閣僚の人事となっています。
特に新型コロナの感染拡大で重責が想定される財務長官ポストなどに関心が高まっています。
財務長官にはFRBのブレイナード理事、イエレン前FRB議長、ウォーレン上院議員に加え、その他にも複数名が候補として報道されています。
次の財務長官には、コロナ対策に関連して財政政策とその財源である税金、さらに雇用問題など待った無しの対応が求められます。
ブレイナード氏は、オバマ政権で財務次官としての実績もあり、当時中国を為替操作国認定に動いたことがあるなど対中政策では弱腰でない一面も見られますが、金融政策ではハト派です。
最近浮上してきたのはイエレン前FRB議長です。
FRB議長としての実績に加え、今後の米国の雇用問題解消が求められる中イエレン氏の専門性が注目されます。
重要ポスト指名の時期について、バイデン氏は12月まで行わないことを示唆しています。
アリゾナでバイデン氏勝利
2020年11月12日、複数のアメリカメディアは大統領選で激戦州の一つであるアリゾナ州でバイデン氏の勝利が確実になったと報じました。
民主党候補がアリゾナで勝つのは24年ぶりです。
これにより、バイデン氏が獲得した選挙人は290人、トランプ大統領は217人となりました。
アリゾナは開票率99%でバイデン氏は得票率0.3ポイント、票数で約1万1千票差でトランプ氏を上回りました。
2016年大統領選でトランプ氏が制した州でバイデン氏が勝ったのはウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアの各州に次いで4州目となります。
結果が判明していないのはノースカロライナ、ジョージアの2州だけになります。
トランプ氏がメディア事業を検討
トランプ大統領はメディア事業や番組への出演について顧問らと協議しているようです。
2024年の選挙への再出馬を見据えて支持者をつなぎとめる狙いがあるとみられます。
バイデン氏の勝利確実
2020年11月14日、ABCとCNNがジョージア州でバイデン氏の勝利確実と報じ、この結果、バイデン氏が獲得する選挙人数は306人となりました。
勝利に必要な270人を大きく上回りました。
これで全50州で勝敗が判明したことになります。
バイデン氏勝利宣言後の初めての取引
2020年11月8日、アメリカ株価指数先物はニューヨーク市場の取引で上昇しました。
アメリカ株が先週に値上がりした流れを引き継ぎました。
米大統領選で勝利を確実にしたバイデン氏がより安定したアメリカ経済のかじ取りを行うとの見方が強まりました。
米株先物は高水準のバリュエーションや、新型コロナウイルスの感染再拡大にもかかわらず値上がりしました。
過去5営業日のうち4営業日上昇しているS&P500は、9月上旬に記録した過去最高値まであと2%の水準にあります。
追加財政支援の内容に注目が集まっています。
民主党が想定していた大型の経済対策とはならないでしょうが、追加の景気回復てこ入れ策としては十分な大きさとなる公算が大きいと投資家は考えているようです。
バイデン氏の政策とその影響
バイデン氏が選挙で公約している政策について、予想される市場への影響はどいったものでしょうか。
まず追加経済対策については、2021会計年度(2020年10月~2021年9月)歳出法案に組み込まれる可能性があります。
具体的には、歳出法案に失業給付金の特例加算や中小企業向けの給与補填制度などの予算を上乗せすることになります。
歳出法案の成立期限は12月11日ですが、これに間に合わなければ、追加経済対策の成立は新政権発足後となります。
規模については、上院共和党が民主党案の2.2兆ドルを承認することは考え難く、1兆ドル前後となる見通しです。
ただ、市場はすでに規模縮小は想定済みなので、影響は限定的でしょう。
増税については、上院共和党である限り、公約の実現は極めて困難です。
大統領選後の株高など市場の反応は、この点を好感したものと考えられます。
また、「インフラ投資」も、増税分の財源が確保できないため、規模は縮小される見通しが強いです。
「通商政策」については、注目はやはり対中政策です。
新政権は、トランプ大統領の関税政策を否定しているため、中国側が通商関係で何かしらの譲歩をすることを条件に、関税見直しも予想されます。
ただ、ハイテク分野での覇権争いや、中国の軍事行動をけん制する動きは継続され、対中関係の改善は部分的なものにとどまると思われます。
ただ、関税などを巡る大統領発言に市場が振り回される状況は、無くなると思われます。
今後の金融市場の見込み
株式市場は、短期的には軟調な展開となる可能性があります。
短期的に軟調となる事の根拠として、
- 年内の追加景気刺激策が限定的なものになること
- コロナ感染の第3波に収束の兆しが⾒えないこと
- これまでの株価上昇が急だったこと
- PERで⾒たバリュエーションが足元で⾼まっていること
があげられます。
⻑期的なトレンドとしては、⽶国経済が2020年のコロナ禍の景気後退から2021年は回復すると考える人が多いようです。
そのため、10年国債利回りも徐々に上昇していき、そうなると、株式市場ではこれまで出遅れてきた景気敏感なバリュー株がテクノロジーなどのグロース株に徐々に追い着く展開になる可能性が出てきます。
トランプ氏、抗議集会を計画
トランプ大統領は、大接戦となった大統領選挙の結果に抗議する集会を計画しているようです。
11月8日、明らかになりました。
トランプ氏は選挙の結果に異議を唱える法廷闘争への支持を集めるため相次いで集会を開く方針です。
日本株のNT倍率も高水準
アメリカの大統領選・議会選から1日が経過し、東京株式市場ではTOPIXに比べて日経平均株価が優位となる展開が強まっています。
11月5日の日経平均の終値は1.7%高の2万4105円と年初来高値を更新しました。
一方で、TOPIXは1.4%高にとどまりました。
上昇に勢いの付く日経平均は割高さが増し、日経平均をTOPIXで割ったNT倍率は14.60と2日連続で上昇しました。
8月3日の14.57を上回り、終値ベースで1980年4月25日の14.72以来40年ぶりの高水準となりました。
マーケットの関心は上院選挙へ
バイデン氏の勝利の可能性が高まる中、投資家の関心はいまだに決着のつかない上院の議会選に移っています。
税制・規制に与える影響や追加刺激策への見通しに注目が集まっているのです。
11月3日の大統領選・連邦議会選以降、S&P500は約4%上昇しました。
議会選で下院は野党・民主党が過半数を維持する見通しとなる一方、上院では与党・共和党が優勢になっており、バイデン氏が大統領に就任したとしても法人税率やキャピタルゲイン税率が引き上げられる可能性が低いとの見方が一因となっています。
バイデン氏当確でリスクオン
バイデン氏が当選を確実にしたことで、9日以降の金融・資本市場では投資家が積極的にリスクを取る動きが広がりそうです。
大統領選の混乱が長引く懸念は遠のきましたが、議会選では年明けまで決着が長引きそうです。
財政政策などの方向性は固まるには時間がかかりそうで、先行きには不透明感も残っています。
市場関係者の間では、大統領選の勝敗が付かない状態が長くなることが最も懸念されていましたが、バイデン氏の勝利がほぼ固まったことで投資家の間では安心感が広がり、株式相場では強気の反応が顕著に出そうです。
方向感が読みづらいのが外国為替市場のドルと円の動きです。
リスクオンなら通常、「円安・ドル高」が進むはずですが、そうでもなさそうです。
先行きのカギを握るのは米長期金利です。
選挙前は「大統領・上院・下院」の全てを民主党が押さえる「トリプルブルー」との見方が広がっていました。
大規模な財政出動で景気回復が加速し、米10年物国債利回りが上昇するというのがドル高(円安)の根拠でした。
しかし、足元の議会選情勢では「ねじれ」が残る公算が大きく、ドル高を見込んで持ち高を傾けていた投資家がいったん、逆の動きを強めることで円高が加速する可能性があります。
ウォール街はウォーレン氏を警戒
ウォール街は反金融のウォーレン氏の動きに警戒を強めています。
バイデン氏にはリベラル色の強い協力者もいて、ウォール街は神経質にならざるを得ません。
民主党内の進歩派と呼ばれる人々は、ウォール街の規制強化と利益の抑制に動く構えを見せ、民主党内の進歩派と中道派との今後の争いをバイデン氏がどう仕切るか、金融業界の経営幹部らは注視することになります。
民主党の長年のストラテジストや企業の顧問弁護士、元ロビイストらで構成する財界に友好的な人たちが、金融を監督する部署の人選に最大の影響力を行使することを、銀行や金融機関は期待しています。
逆に富の不平等と大銀行不信に焦点を当てるエリザベス・ウォーレン上院議員とそれに触発された民主党のリベラル派は、同じ考えを持つ当局者を規制・監督のポストに就けることに力を注ぐ構えのようです。
集計が長引き、分断が深刻
長引く集計作業で、分断が深刻になっています。
異例の僅差となった激戦州で、選挙不正を訴えるトランプ大統領の支持者らが開票所などに集まり、集計中止などを求めて抗議しています。
バイデン氏の支持者との罵り合いも起きています。
アメリカの分断があらわになっており、新しい大統領は苦慮しそうです。
NY株はラリー一服
11月6日の米国株式市場では、大統領選明けのラリーに一服感が見られました。
バイデン氏が勝利するとの見通しを受けて、前日まで4日続伸していましたが、6日は反落して始まりました。
開票作業が大詰めを迎えるなか、投資家は勝者が決まる前に、いったん株高の利益を確定する売りに動いているようです。
株式投資のヘッジファンドがリターンを改善
一部のアメリカ株投資家は大統領選が行われる週の混乱を恐れていましたが、実際には株式に投資する多くのヘッジファンドが投票終了後に年初来リターンが改善し、1日としては過去最高を記録した例すら出ているようです。
運用担当者は3日の大統領選を控えて法人税や経済対策、規制を巡って先行き不透明感がくすぶる中、比較的慎重なポジションを組んでいました。
ただ、上院選は共和党が過半数を確保する公算が大きく、大統領選は集計が完了した段階で民主党候補のバイデン氏が勝利しそうな状況下、投資家は政策面の動きが止まるとの期待感に伴う株式相場上昇の恩恵を享受しています。
市場は当初、選挙の紛糾に神経質になっていたものの、結果的には数週間前に値下がりしていた一部のテクノロジー株が持ち直し、多くのファンドはリターンを改善することが出来たのです。
市場では、民主党が大統領選を制して議会の上下両院で過半数を確保する事態に備えた『ブルーウェーブ取引』の巻き戻しが起きているとされています。
バイデン氏が遂行可能な政策
バイデン氏が大統領に就任し、上院を共和党が、下院を民主党が過半数の議席を確保する「ねじれ」となる見方が強まっています。この場合、アメリカ政治はどうなっていくでしょうか。
上記のシナリオとなる場合、議会の承認が必要な政策は与野党の対立により成立が難しいとみられるため、バイデン氏が実現可能な政策は、大統領の権限のみで実施可能なものが中心になるでしょう。
具体的には、
- パリ協定への復帰等の外交・通商政策、
- 排ガス規制の強化等の規制に関する政策
などです。
ただ、先月末に保守派のバレット氏が連邦最高裁判事に就任し、最高裁で保守派判事が多数を占める状況が長期化する見通しとなったため、大統領権限に基づく政策執行も、司法による厳しい制約を受けるとみられ、米政治の停滞が懸念されます。
バイデン氏が過半数に迫る
11月4日、バイデン氏が中西部の激戦州を相次ぎ制し、当選に必要な過半数の「選挙人」の獲得に迫りました。
トランプ大統領の勝利が確実なアラスカ州を除き、接戦が続く5州が焦点となります。
アメリカを二分した超大国の指導者選びは最終局面に入っています。
大統領選後に株高となった理由
情報が錯綜する中で株高となった理由は何でしょうか。
大統領選の開票前だった11月3日の株式市場では、「ブルーウェーブ」(大統領選と上院・下院選挙で民主党が圧勝するシナリオ)を前提とした「買い」が入り、NYダウは前日比2.06%上昇しました。
しかし、開票が進むにつれ、 「ねじれ議会」(大統領はバイデン氏、上院は共和党、下院は民主党が制するシナリオ)の観測が高まったことから、11月4日以降のNYダウは2日連続で大きく上昇しました。
選挙結果のシナリオが変わったにもかかわらず、株が大幅高となった理由は何でしょうか?
「ブルーウェーブ」のシナリオでは、大規模な財政支出と、連邦法人税等の増税がセットで株式市場に織り込まれていました。
その一方で、開票速報を受けて「ねじれ議会」シナリオの可能性が高まったことから、バイデン氏の政策が連邦議会で通過しづらくなるとの見方が広がり、「大規模な財政支出の可能性低下」→「財政赤字の改善」→「米10年国債利回りの低下による株高」という連想が働いたとみられます。
さらに、株式市場にとって逆風となりかねない増税の可能性が後退したことも、プラスに作用したのかもしれません。
ただ、これは少し楽観的に捉え過ぎなような気もします。
冷静に、そして慎重に状況を見ていく必要があるでしょう。
投票率が120年ぶりの高さ
大統領選は約1億6千万人が投票し、投票率が66%超と120年ぶりの高水準になる可能性が出てきました。
有権者の関心が高く、郵便投票が普及したためです。
民主党候補のバイデン前副大統領は5日までに史上最多の票数を獲得し、中西部のラストベルト(さびた工業地帯)で共和党候補のトランプ大統領を追い上げています。
ブルーウェーブの期待はしぼむ
上院を民主党が奪回する可能性がほぼ消え、大規模財政出動への期待も後退する中、金融市場ではリフレ取引が巻き戻されているようです。
11月3日に行われた米議会選を受け、景気循環に敏感な投資戦略が打撃を受けています。
バリュー株がアンダーパフォームし、債券利回りは低下、インフレ期待も下がり、ディフェンシブなハイテク銘柄が市場の主導権を取り戻しつつあります。
ホワイトハウスと上下両院を民主党が支配する「ブルーウエーブ」シナリオの下、新型コロナウイルス対策での大規模政府支出を見込む投資家の間でリフレ期待が高まっていました。
バイデン氏の勝利期待で新興国アセットが上昇
11月5日の新興国市場の株式と通貨は上昇し、ここ2年余りでの高値を付けました。
米大統領選挙で民主党候補バイデン前副大統領の勝利が近づいていることが好感されたためです。
バイデン氏が大統領に当選し共和党が上院の過半数を握れば、大規模な経済対策成立の可能性は低くなり、米金融当局が低金利の長期化を余儀なくされると投資家は予想しているのです。
新興国株の指標、MSCI新興市場指数は1月に付けた高値を上回ったほか、ブルームバーグが調査する新興国24通貨のうち23通貨が上昇しました。
アメリカで民主党の大統領が誕生し、共和党が上院の過半数を確保する見通しを投資家が歓迎したという事でしょう。
ロシア・ルーブルが通貨の上げを主導しました。
ブラジル・レアルも上昇したほか、メキシコ・ペソは節目の水準を上抜け、3月以来の高値を付けました。
新興国通貨のボラティリティーの指標は8月以来の低水準近くに低下しています。
決着まで時間
大統領選の選挙結果が投票日翌日になっても決まらず、今後、郵便投票の開票で決することとなる異例の大接戦となっています。
新型コロナの影響で郵便投票が大幅に増加しており、激戦州での再集計や選挙結果に関する法廷闘争も考えられるため、政治的な混乱が見込まれます。
同時に行われた議会選挙では、事前の予想通り下院は民主党による過半数維持が見込まれますが、上院は接戦の結果、共和党が制することとなりそうです。
選挙日をこなして、株式相場は上昇
2020年11月4日の米国株式市場は終日、買い優勢の展開となりました。
NYダウは前日比+367.63ドルの27,847.66ドルと、3日続伸しました。
また、ハイテク株を中心とするナスダック総合指数は同+3.9%と、4月14日以来およそ6ヵ月半ぶりの上昇率を記録しました。
なお、市場参加者の不安心理を映すとされるVIX指数は、3日の35.55から4日は29.57へ低下しました。
アメリカ株式市場、トランプ銘柄に買い
2020年11月4日午前のアメリカ株式市場では、当初の予想に反してトランプ大統領が再選を果たす公算が大きくなったことで、IT株に買いが入っています。
具体的には、
- コロナ禍による在宅勤務などのテレワークの拡大で恩恵を受けている情報技術株に安全買い
- 規制緩和などが予想されるため、伝統的なエネルギー株も買われ、太陽光発電のファースト・ソーラーなど再生エネルギー系は下落。
- トランプ氏続投で防衛予算が高水準に維持されるとの見方から防衛関連産業に買い
- 大手行はおおむね下落
といった所で動きが明確です。
激戦のフロリダ州はトランプ氏が勝利
トランプ氏が激戦州のフロリダで勝ちました。
人口が増えているヒスパニック票を得たことが大きいと思われます。
出口調査の暫定結果によると、同氏はヒスパニックの47%を獲得し、前回16年から10ポイント強積み増しました。
トランプ大統領、早めの勝利宣言
2020年11月4日、トランプ大統領は未明に行ったホワイトハウスでの演説で、勝利を宣言しました。
大統領はさらに、先週新たなメンバーを加えた最高裁判所に介入を求める意向も示しています。
ペンシルベニア州とミシガン州を含めリードしている諸州で自身の勝利がまだ発表されていないことに触れた後、開票作業が続いていることに不満を述べました。
最後の世論調査でもバイデン氏優勢
大統領選に関する複数の世論調査結果が2020年11月1日に発表され、バイデン前副大統領が引き続き全国レベルと激戦州の両方でトランプ大統領をリードしていることが分かりました。
ニューヨーク・タイムズ等の世論調査では、ペンシルベニアとフロリダ、アリゾナ、ウィスコンシンという重要な激戦州の全てでバイデン氏がリードしています。
これら4州は、2016年の大統領選でトランプ氏が全て制した。
CNNの世論調査では、同じくトランプ氏が前回の選挙で勝利したアリゾナとミシガン、ノースカロライナの3州でバイデン氏が優勢です。
一方でABCとワシントン・ポスト紙の調査によれば、バイデン氏がやや苦戦しています。
フロリダ州では50%対48%でトランプ氏がリードしています。
一方でペンシルベニア州についてはバイデン氏が51%(トランプ氏44%)と大きくリードしているようです。
トランプ氏が追い上げ
トランプ氏が最後の追い上げを見せています。
政治サイト、リアル・クリア・ポリティクスが主な世論調査を平均した1日時点の最新支持率はバイデン氏が51.1%、トランプ氏が43.9%と約7ポイントの差となり、10月初旬に10ポイントあまりあった差は縮小しました。
とりわけ激戦州でその傾向が鮮明です。
南部ノースカロライナ州、アリゾナ州、ペンシルベニア州では9月末に比べてバイデン氏のリードは縮み、トランプ氏が激しく追い上げているようです。
ブルーウェーブが起きない場合の相場
ウォール街では、バイデン前副大統領が中途半端に勝利した場合の相場を懸念する声が上がっています。
バイデン氏の勝利だけでなく、上下両院でも民主党が過半数を制する「ブルーウエーブ」が相場が上昇する条件です。
その条件達成に対する投資家の見方がこのところ、やや怪しくなっています。
投資家の間では民主党が上院で過半数を制するとの予想が後退し、五分五分の確率になっています。
そうした見方から、強気派が新たな株高に向けて期待する大規模な経済対策が来年早期に講じられる可能性も低下しているようです。
2020年10月以前
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