メキシコ ロペスオブラドール新大統領の政策についてまとめてみた

ここではメキシコ、又はメキシコ大統領のロペスオブラドール氏の政策についてまとめると共にフォローしていきたいと思います。

実際の遂行状況については、↓にある記事をご参考頂けるとより分かりやすいと思います。

メキシコ・ロペスオブラドール氏の政策の遂行状況のまとめ

メキシコのロペスオブラドール氏が掲げる公約・政策についてのまとめ

ポピュリストとして当初マーケットから警戒されていたロペスオブラドール氏。

彼は2014年に政党登録したばかりの「MORENA」から出馬し今回当選しました。

彼は選挙期間中、ずっと体制転換を訴え続けました。

それは、エリート層や既得権益層から政治を取り戻す、汚職を撲滅するという所に主眼が置かれていました。

かなり左派的な、急進的な主張っぽく聞こえたりするので、多くの人は彼が政権を握れば様々な点で方針転換が図られるのだろうと思っていたわけです。

実際に当選確実となってから、自身の政策について情報発信をしていますが、現実的なものも沢山あるようです。

このブログではそうしたロペスオブラドール氏の政策についてまとめてみます!随時更新していきます。

メキシコの本ブログは以下をご覧ください。

メキシコに投資すべきか? メキシコペソ・メキシコ株の投資ブログ

メキシコの経済成長率4%を達成する事を公約に

ロペスオブラドール氏は選挙期間中から経済成長率4%の実現を公約に掲げていました。

ただ、実際にそれをどの様に達成していくかについては、具体化させている公約があまりに大衆迎合的なものばかりで、よく分かりません。

一定程度大統領としての職務を経験してからどの様な政策が出てくるかをしっかりと見ていく必要があるでしょう。

2019年6月追記

実際問題、ロペスオブラドール氏が大統領になってから全く成長率は上がっていません。同大統領は前政権までの責任で何とか言い逃れをしようとしていますが。。。

意外に保守的だったメキシコの2019年度予算案

2018年12月末に発表された2019年度の予算案はある意味サプライズでした。

基礎的財政収支(プライマリーバランス)がGDP比で1%の黒字と想定されていたからです。

ロペスオブラドール氏は、当選後に石油産業の民間開放の見直しや新空港の建設計画の撤回など、市場や経済界にマイナスの印象を与える政策を発表していただけに、この予算案は通貨や株式市場にプラス評価となりました。

ただ、メキシコ中銀の金融政策決定会合の声明には新政権の政策の実効性に疑問符を投げかける表現もあったりしましたし、IMFの世界経済予想でも、メキシコの経済成長率は減速が予想されています。

景気は決して良くはありませんので、予算案どおり財政政策を運営するかを見守る必要はありそうです。

増税はしない。でも歳出は増やす

現実的なものも多いと冒頭に述べておきながら、最も非現実的な所から始めます。これが一番ポピュリストだなぁと思われる政策だと思います、、、

歳出を増やす際の財源は無駄の排除。

無駄って言っているのは、

  • 汚職撲滅による政府契約の見直し
  • 非効率プログラムの廃止
  • 省庁再編
  • 歴代大統領の年金廃止
  • 高級官僚の給与半減

等だそうです。

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もちろん、こんなもので増える歳出を賄えるわけもなく。。。

多くの人がロペスオブラドール氏の発言に耳を傾けている所です。

2019年7月追記

逆に本来削る必要のないものまで削ったりしているので様々な弊害も出てきているようです。

これについては別記事でご確認ください。

メキシコ・ロペスオブラドール氏の政策の遂行状況のまとめ

最低賃金の大幅引き上げ

ロペスオブラドール氏は大衆迎合的な政策を採用する政権ですが、その際たるものの一つが最低賃金の大幅引き上げでしょう。

労働者の権利意識が高まったものの、生産の停滞と投資計画の中止相次ぐ

労働者の権利意識を高めたことで、大規模なストライキが頻発し、生産の停滞を招くと同時に、投資計画の中止も相次いでいます。

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大衆迎合的な経済運営の限界を早々に内外に印象づけた形となりました。

3兆円規模のインフラ投資の実施

この政策は2018年9月下旬に明らかにされました。

ロペスオブラドール氏の支持基盤で開発の遅れる南東部を中心に年間で計5千億ペソ(約3兆円)規模のインフラ投資を実施するというものです。

太平洋とメキシコ湾を結ぶ物流網を整備し、有名リゾート地カンクンを擁するユカタン半島に観光鉄道を敷設するというのですが、どこから財源が来るかは分かりません。

メキシコの予算は年間30兆円位なので、その10%にも及ぶ投資。大丈夫か、と。

このインフラ投資の中には、計約300本の地方道路を整備する事も含まれていて、これによってヒトやモノの移動を活発にするほか、工事で5万人の雇用も創出出来ると主張しています。

どこまで現実的なのかロペスオブラドール氏はしっかりと示していかなければなりません。

石油増産への投資約1兆8千億円の実施

エネルギー分野に総額3040億ペソ(約1兆8千億円)を投じる計画を掲げています。

これは選挙期間中から言っていた事です。

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この政策は優先順位の高い公約の一つとなっていますが、資金の捻出方法などは明らかになっていません。
MEMO
ロペスオブラドール氏は石油産業の盛んなタバスコ州出身で、支持層の中心である貧困層向けに安価なガソリン提供が必要と考えているのです。

2019年5月、ロペスオブラドール大統領、2022年に石油を自給自足すると宣言

2019年5月10日、ロペスオブラドール大統領は2022年5月に国内でガソリンの自給自足体制が整うと宣言しました。

80億ドルを投じて新たな精製施設を建設するほか、既存施設へも増産投資をする予定です。

ただ実際問題、現在は需要の7割程度を輸入に頼っており、この宣言がどこまで実効性のあるものか分かりません。

燃料輸入の停止とガソリンの完全自給を目標に

任期最初の3年で、ほぼ全てが米国からとなっている大規模な燃料輸入をやめることを目指すとしています。

国内での精製を増やす方針という事ですが、それらに要する予算は甚大であり、それをやる位だったら輸入し続けた方がまし、という話もあります。

これについても、どうしても国内の眼を気にしすぎているきらいがあります。

候補者は財源についてあまり深く考えたりしないので、理想論だけになってしまう。それで本当に当選すると慌てて色々軌道修正するわけですが。

2019年2月 メキシコ政府が国営石油会社ペメックスに約40億ドルの支援

2019年2月15日、メキシコ政府は業績不振で財務体質が悪化している国営石油会社ペメックスに対して総額39億ドルの金融支援を実施すると発表しました。

政府は現在、7割近くを輸入するガソリンの完全自給を目標にしていて、この支援を通じてペメックスが原油やガソリンの増産に向けて投資できるようにするのが狙いのようです。

ペメックス支援について、マーケットからは低い評価

しかしそうした支援策は1000億ドル以上の有利子負債を抱える債務超過企業には不十分というのが専らの評価です。

2019年1月下旬に格付けを2段階引き下げBBBマイナスにしたフィッチ・レーティングによれば、「信用力悪化を食い止めるには不十分」であり、「年間12億~17億ドルの追加支援が必要」という事です。

ここがポイント
生産減→業績悪化→投資減少、という負の連鎖を断ちきるには支援規模や戦略が不足しているようです。

2018年12月 石油鉱区の入札を中止

2018年12月11日、メキシコの国家炭化水素委員会(CNH)は2019年2月に予定していた石油鉱区の入札を中止すると発表しました。

2018年9月に実施予定でしたが、ロペスオブラドール氏の意向に配慮して延期していたのです。

今回の決定によって中長期的な民間資本を活用した油田開発が遠のくことになります。

地方振興のための中央省庁移転

中央省庁の大半を首都メキシコシティから移転させ、地方都市の活性化を目指すものです。

ロペスオブラドール氏の説明によれば、財務公債省、内務省、外務省、国防省、海軍省の5つ以外、すべて地方都市に移すとのこと。

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これは相当お金と時間がかかりそうな感じです。とても印象深い政策なのでしょうが、この国のファンダメンタルズ強化に資するかどうかという観点では、後回しでもいいような。

原油市場の民間・外資への開放見直し

結構個人的に気になっていたのがこれでした。



ロペスオブラドールさん、選挙期間中に見直しを公言していたのです。

しかし、当確後、少しだけ方針を変えたような?

原油市場の開放見直しについて、次期財務相候補カルロス・ウルスア氏が、外資の民間企業などに付与された石油・ガス開発・生産を巡る契約について話したのです。

それによれば、入札プロセスに問題がなかったことが確認されれば、それを尊重する方針である、と。

つまり、現政権下で結ばれた契約に対する一定の配慮も示したわけですね。



前大統領の功績の一つは原油市場の外資・民間開放で結構評価されていたと思ってます。

それをロペスオブラドール氏はメキシコ国民の方だけを考えて喋っていたから、どうしてもマーケットからは警戒されていたと思います。

今それを必死に修正しているという事なんでしょうか。

奨学金の拡充や若年層の就労支援、高齢者の年金増大

若年層の就労支援と高齢者の年金の拡充に向け、新たに年間で総額1500億ペソ(約8600億円)を投じる方針です。

若年層や高齢者への支援は選挙期間中からの公約の柱で、具体策の実現に動きます。

2019年度予算案での反映に向け、現政権と協議する予定ですが、どうやって財源をねん出するかは不透明な所もあります。


不法移民対策は中南米の福祉政策を処方箋に

ロペスオブラドール氏は、不法移民対策として、各国内で雇用創出や福祉充実を図り地元への定着を進め、アメリカへの移民を減らそうとする意向です。

しかし、その対策には総額で300億ドル程度が必要との考えを示しています。

こんな規模の額は中南米だけで何とかできるようなものではありません。当然、アメリカやカナダ、他の南部諸国と協力して資金拠出をする事になりそうです。

アメリカとの協力については、トランプ大統領がどこまで乗ってくるかはもちろん分かりません。

中米移民集団に対する対応

2018年10月から特に動きが活発になっている、中米からアメリカを目指す「キャラバン」と呼ばれる移民集団については、2018年12月に大統領に就任してから移民集団に対して労働ビザを支給するとしており、事実上、メキシコへの滞在を促しています。

2018年11月8日には、移民集団の代表者とロペスオブラドール次期大統領が面会しています。

アメリカのトランプ大統領は移民集団に対して厳しい姿勢を続けていて、国境近くへの軍の派遣も進めています。

メキシコ政府はアメリカ政府の動きを見ながら、グアテマラ国境近くの州に滞在することを条件に雇用や医療、子供の教育を提供する支援策を発表しています。

メキシコとしてもこれが発端で何とかうまくやっている対米関係を壊したくないのが本音のはずです。

NAFTAは現政権と共同歩調

NAFTA再交渉に関しては専門家を派遣し、現政権と共同で進める方針を示しています。

トランプ大統領とは同じポピュリストとしてキャラが重なる所が多いとされていますが、それがこの交渉に吉と出るか凶と出るか、見守る必要があります。

因みに、NAFTA交渉に関する経緯やまとめは↓をご参照。

NAFTA再交渉の経緯 まとめ

アメリカ重視

選挙期間中は頻繁に批判していたアメリカのトランプ大統領ですが、当選後はアメリカとの関係改善をっ模索している様です。

メキシコがNAFTAの再交渉をするにあたって、まずアメリカと話をしてその後カナダとその話し合いを基に行っていく、と述べている事や、トランプ大統領もメキシコとの二国間貿易協定をカナダより優先させる可能性があると述べていることなどから、今のところはその作戦が上手く行っているようです。

新空港の建設は反対

首都の新空港建設計画は撤回すると主張しています。

財界は反対しているようですが、両者で共同の研究会を設けて協議すると決め、まずは先送りした感じになっています。

こうした中、通信運輸相への就任が見込まれているハビエル・ヒメネス氏が、2018年の8月末までに計画続行か中止を判断することを明らかにしました。

ロペスオブラドール氏も、選挙中に工事中断と堂々と言っているので、さすがにここからそれを翻意すると自身の信頼性にも傷がついてしまうので、なかなか工事を続けるというのは言いずらいのではないかなと考えてしまいます。

空港建設は選挙で決める

選挙期間中は建設反対としていた空港ですが、2018年8月17日、2018年10月下旬に国民投票を実施する方針を明らかにしました。

新空港建設反対については経済界などが強く反発しており、選挙後は最終的な判断を先送りしていたのです。

どうやら、経済団体からの陳情についてもそれなりに配慮せざるを得ない感じになっているのでしょうかね。

これがどういう形で展開していくのかは、ロペスオブラドール氏がこれから大統領となってどの様に政策のかじ取りをしていくかの良い判断材料になるかもしれません。


空港建設に関する選挙の日程が決定

ロペスオブラドール次期政権は2018年10月9日、首都メキシコシティにある国際空港の代替施設建設の是非について10月25~28日に国民投票を実施する方針を示しました。

記述の通り投票結果を受け、すでにメキシコシティに隣接するメキシコ州で建設が始まっている新空港の工事を続行するかを決める考えです。

2018年10月29日 空港建設中止を発表

ロペスオブラドール次期大統領は2018年10月29日、メキシコシティ空港の代替施設の建設を中止すると発表しました。

28日まで実施した新空港建設を巡る国民の意見調査で、約7割が建設中止を支持したことを理由に挙げています。

ただ、空港建設に関する契約済み工事への補償など混乱が起きそうです。

金融機関への締め付け強化??

銀行の一部手数料徴収を禁止?

これは彼自身の政策ではないのかもしれませんが、同氏が所属する新興左派政党、Morenaは2018年11月8日、国内の銀行に対して預金の引き出し手数料やクレジットカード年会費などの徴収を禁止する法案を提出する方針を発表しました。

まぁ、ロペスオブラドール大統領の知らない所で与党が勝手に法案を出すことはないと思われるので、彼もこの政策に同意しているのはほぼ間違いないと思っています。

この法案、顧客の保護を理由としていますが、この発表を受けて銀行株は軒並み大幅な下落となりました。

これを機に軟調だった株価がまた下落という事にならない事を祈ります。

国民からの意見聴取、国民投票の多用

ロペスオブラドール氏は国民投票で懸案を片づける事に前向きです。

上記の空港建設の時もそうでしたし、2018年11月には南東部ユカタン半島のリゾート地、カンクンを起点とした観光鉄道「トレン・マヤ」の建設などを巡り国民に「意見調査」を実施するとの発表がありました。

しかし、これには様々な問題があります。

まずこの調査は現行の法律に基づいたものではなく法的な効力がないのです。

しかし、ロペスオブラドール氏は国民の意思だと言って、有効性を主張します。

また、調査は投票方式で全国の有権者が参加できるらしいのですが、投票所は全市町村に設置されるわけではないようです。

上記の2018年11月に関する意見調査については観光鉄道のほか石油精製施設の建設、南部オアハカ州を中心とした物流網整備といったインフラ整備と年金や奨学金の拡充などの社会政策も意見調査に含まれるようなので、なおさらやるならしっかりとやらなければなりません。

国民投票も手法としてありなのですが、あまりにこれをやりすぎるとそもそも議会制民主主義の意味がなくり衆愚に陥る可能性があるし、政権自体の判断能力のなさを証明しているような事にもなりかねないので、慎重にやるべきでしょう。

観光鉄道をはじめとした次期政権優先プロジェクトは国民調査で9割が賛成

2018年10月26日、ユカタン半島のリゾート地、カンクンを起点とした観光鉄道の敷設などを巡り24~25日に実施した国民への「意見調査」の結果が発表され、観光鉄道をはじめとしたロペスオブラドール政権の掲げる10の優先計画はすべて9割程度の賛成票を得ました。

具体的には、「トレン・マヤ」と呼ばれる観光鉄道の敷設に対しては88.99%、石油精製施設の建設には91.6%、年金拡充には93%が賛成しました。

どれもバラマキ色の強い内容ですが、次期政権は今回の意見調査で優先計画が国民の信任が得られたとして2019年の予算案に盛り込む考えです。

既述の通り、意見調査は法的根拠がなく、調査を担当したのも次期政権が指名した民間団体です。

メキシコシティ空港の代替施設建設を巡って行われた意見調査時と同様に、「複数回の投票が可能だった」とした声もありこんなことを根拠に政策を遂行していって良いのか、といった印象を持ってしまいます。

ロペスオブラドール氏の政策はとにかくポピュリスト色が濃く今後の動向が少し心配です。

財界とはとりあえず話し合っている所をアピール

ロペスオブラドール氏をかなり警戒していた財界。

油田開発の民間開放停止などの公約を警戒していたわけですが、同氏の当選後すぐに会談をしています。

ロペスオブラドール氏も、むやみに財界を敵に回すべきではないと考えているのでしょう。さすがメキシコシテイ市長の経験者です。

財界とはとりあえず若者の就労支援などで合意しました。

一旦歩み寄りを演出した両者だが、主要な対立点は先送りしたままです。

大統領給与の6割をカット

これはただのネタですね。パフォーマンスに過ぎないので、なんらプラスにはなりませんが、一応書いておきます笑

政策に必要な資金の調達方法に関する説明が不足

意外に現実的な政策も多く、その点は投資家を安心させていると思われる反面、政策遂行に必要な資金をどうやって調達するかの説明が不足している印象があります。

何をするにしてもお金は必要。これがないから皆困っている。アイデアは結構あるわけです。

ロペスオブラドール氏は、どうやって財政的に回していくかの説明をもっとメディア向けにしていく必要があると思われます。

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