ここでは新興国投資とは直接関係ありませんが、しかしとても重要なドル円の推移を見ていきたいと思います。
日本人が新興国資産を含めた海外の資産に投資をする際に為替は切り離せません。
そして投資先通貨と同じ位常に重要になってくるのがドル円の状況です。
そのため、ここでは番外編としてドル円周辺のホットトピックについて見ていきたいと思います。
2020年5月
ドル円は再び膠着
ドル・円の値幅変動が新型コロナウイルス感染拡大以前に逆戻りし、再び膠着相場となっているようです。
つまり、コロナに対する根強い不透明感と経済再開への期待が混在していて、どちらにも動けない状態といった所でしょうか。
ドル・円の日中平均値幅は、3月に2円8銭と2020年で最大となっています。
その後4月は75銭、5月は18日までで64銭と縮小し、2月と同水準にまで戻しています。
恐らく新型コロナの一方的な悪化というのはなくなったものの、その影響がどこまで広がるかの漠然とした不透明感は深く、もう少し投資判断を見極めたいと思っているのかもしれません。
加えて、安全資産としてドルと円が同じ方向に動きやすいことや日米金利差などで明確な差がなくなっていることも背景にあると思われます。
2020年4月
トランプ大統領、ドル高を支持
トランプ大統領は過去数年にわたりアメリカの製造業者や輸出業者のためにドル安を求めてきましたが、方向転換です。
しかし、多くのエコノミストは新型コロナウイルスの衝撃に揺らぐ世界経済にとってドル高は望ましくないと言っているようです。
パンデミックからの影響を懸念した資金需要でドルは3月に急上昇しましたが、これはドル建て債務を膨らませている新興市場にとって大きなリスクになります。
協調減産不十分との見方や米企業の決算への警戒から円が全面高
OPECプラスの原油減産が不十分との見方や米企業決算への警戒などからリスク回避の動きが優勢となりました。
4月13日は、株安を背景にドル・円相場が約1週間ぶりに1ドル=108円台を割り込みました。
2020年3月
膠着状態が続く円
2020年3月下旬現在、新型コロナウイルスの感染拡大での乱高下を経て、1ドル=109円前後で再び動かぬ円の様相を強めています。
3月27日に円高が強まりましたが、これには
- 世界的な株価急落で企業や金融機関が基軸通貨ドルの確保に動く有事のドル買いが一服したこと
- 3月の決算期末を目前に控えた国内の企業や投資家によるリ資金還流現象で円が買い戻されたこと
が挙げられます。
コロナショックが起きて、株価は乱高下しているものの、円相場は9日に原油相場の急落を材料に101円台までドルが急落する場面があった以外、基本的に昨年以降の109円台を中心にした動くが続いています。
背景
新型コロナ・ショックで需給と金利差という為替相場の2大変動要因が働かなくなったことがあると言われています。
米中の貿易摩擦で輸出入が滞ったところにコロナ・ショックによる経済活動の停滞が重なり、企業間の貿易が一段と停滞すると同時に、FRBのゼロ金利政策導入で日米間の金利差も大きく動かなくなった、という二点です。
ただ、もうすぐすると新年度入りで長期投資家である生命保険会社や年金基金などの国内機関投資家による外貨建て資産投資による円売りが膨らむ可能性が高く、そうなると円安に振れやすくなるかもしれません。
ドルが34年ぶりの高値、「悪いドル高」
2020年3月19日、外国為替市場でドルが34年ぶりの高値を付けました。
背景
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業や金融機関の間で基軸通貨のドル資金を確保する動きが加速しているのです。
国際決済銀行が3月19日に公表した世界の貿易量を考慮した名目実効レートによると、ドルは17日に2002年の高値を上回り、プラザ合意の翌年の1986年以来の高値をつけたようです。
ドル相場は対円で19日に1ドル=111円台を付け、資源価格の急落も相まって、新興国通貨に対するドル高も進んでいます。
ドルの調達難は信用収縮を深める恐れがあり、ドルの債務が膨らむ新興国経済にも打撃を与えます。
そもそもドルが上昇基調にあったところ、パンデミックが加わって、ドル需要が拡大してドル相場が急上昇したのです。
こうした「悪いドル高」といわれる現象が起きるのは、リーマン・ショック以来です。
基軸通貨であるドルの調達が難しくなると、世界の銀行による投融資に影響がでてきます。
ドルの借り入れを多用するヘッジファンドの運用にも足かせとなり、保有するポジションの解消が進むと株価や債券の価格変動が大きくなるおそれがあり、注意が必要です。
FRBが緊急利下げで円高
2020年3月16日、東京外国為替市場のドル・円相場は急落しました。
背景
FRBが緊急利下げを実施し、政策金利の誘導目標をゼロ近辺とした為です。
ドル・円は午前6時現在で、前週末比0.8%安の106円台後半です。
16日早朝は107円29銭で取引が開始されましたが、FRBが緊急利下げを公表すると一時1.1%安の106円48銭まで売られました。
WHOがパンデミック宣言で円が買われる
2020年3月11日のニューヨーク外国為替市場では円が上昇しました。
WHOのパンデミック宣言を受けての事です。
ドル・円のインプライド・ボラティリティーが高まっていることを踏まえると、ドルが対円で1週間内に急落するリスクは十分残っていると考えられます。
テクニカル的な支持水準の100円68銭を割り込んで100円に達するかどうかが焦点となりそうです。
円急騰の背景に機械取引の特性
2020年3月9日の急激な円高・ドル安はその裏にアルゴリズム取引がありそうです。
3月9日の円高で円の対ドルの年間値幅は10円を上回りました。
これは2019年(8円30銭)よりも大きい水準です。
今回のこの粗い動きについてはコンピュータープログラムが売買を繰り返す「アルゴリズム取引」がありそうです。
今回は節目とされた1ドル=103円を突破したことでドルの投げ売りが出て円高が進み、さらなるドル売りを招く循環が生じたとみられているようです。
対ドルでみた円の値幅が19年まで2年連続で過去最小を更新するなか、機械取引も変動率の低い相場を前提にこまめに売り買いを繰り返して稼ぐ手法を学習してきました。
このため、今回のように過去のトレンドから外れるとこの手法は通じなくなり、損切が一気に進んで相場のボラが一段と大きくなるようです。
円が安全通貨として急騰
2020年3月9日、安全通貨である円とスイスフランが急上昇しました。
原油価格や株価の急落が投資家の動揺につながり、リスク選好度が大幅に低下した結果円が買われましたが、これらは鶏と卵の関係にあると言えるでしょう。
米10年債利回りが一時0.40%を割り込んで過去最低を更新し、イールドカーブ全体が初めて1%を下回ったことも警戒感につながったようです。
【ドル円の推移(3月4日~9日)(出所:TradingView)】
3月9日、円高が一気に進む
2020年3月9日、早朝から円が急伸しています。
ドルに対して一時1.2%高の104円17銭と、2016年11月以来の円高となりました。
背景
新型コロナウイルス感染状況の悪化に加え、サウジアラビアが一点原油の増産と公式販売価格を引き下げる意向を示したことを受け、リスクオフのムードが強まったようです。
ドルが2018年来の安値水準、円は半年ぶりの円高水準
2020年3月6日、ドルが下落し円やスイス・フランなどの安全通貨が買われました。
スイス・フランと円は主要10通貨に対して上昇し、フランは対ドルで約2年ぶりの高値、円は6カ月ぶりの高値となりました。
1ドル=95円も射程圏内?
ある金融機関が、1ドル=95円の水準も見え始めていると指摘しています。
新型コロナウイルス感染拡大の中でこのまま混乱状況が続けば、円は2013年以来の高値に達する可能性があるという事です。
同金融機関のスタッフによれば、円の長期的な適正価値の推計は1ドル=95円だという事です。
同氏によると
「円は相当の上昇余地があり、比較的過小評価されていると言える数少ない典型的な逃避先資産の1つだ」
と述べました。
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