ここではメキシコ・ロペスオブラドール大統領の政策についての遂行状況を追っていきます。
ロペスオブラドール氏の政策についてのまとめや公約については↓をご確認ください。
メキシコ ロペスオブラドール新大統領の政策についてまとめてみたロペスオブラドール氏の政策はポピュリズム色が強く、幾度もマーケットを裏切ってきました。メキシコに投資をする際は、ロペスオブラドール氏が何を考えているかを知っていた方が良いです。
同大統領の政策如何でメキシコペソやメキシコ株式の動きも変わってくるでしょう。
2024年6月
新大統領、財政赤字が予想を超える可能性に言及
次期大統領のシェインバウム氏は6月19日、2025年の財政赤字がGDP比で最大3.5%に達する可能性があると述べました。
これは以前の政府予測である3%前後を超えるものですが、あまり気にしていないようです。
シェインバウム氏は、責任ある公共財政を維持し、赤字を削減し、2026年まで大規模な新規事業着手を見合わせると発言し、政府の運営コスト削減などを進めると述べています。
2024年4月
中国優遇政策を凍結
メキシコ政府が米政府から圧力を受け、中国企業のメキシコ進出を促す補助金の交付を凍結したとの報道がありました。
米バイデン政権は中国企業がメキシコ経由で米国への輸出を拡大する動きに神経をとがらせており、進出意欲の強い中国企業に逆風となりそうです。
2024年2月
年金支払額を現役収入並みに
ロペスオブラドール大統領は2月5日、現役時代の100%の収入を保証する年金改革など20項目の憲法改正案を発表しました。
巨額の財源が必要な年金改革に備えて640億ペソ(約5600億円)超の基金創設も提案しています。
アメリカとの関係も相応に安定し、それによって経済が安定しているため、こうした人気取りに走る政策も可能となるのでしょう。
この年金改革案通り、仮に今後、退職時と同じ収入を退職後も保証すれば財政悪化は必至です。
2023年12月
投資促進へ方針転換
メキシコの極左政権が企業向けの投資促進策を導入しました。
これに対して外資系企業は困惑しながらも歓迎しているようです。
現政権はこれまで直接投資の誘致に消極的でした。
しかし、競争力を強化して、メキシコの国際的な立ち位置を強固にするとして一転して投資優遇に動いたようです。
ただ、今回の措置が適用されるのは24年12月までの期間限定です。
輸出額が総取引高の50%を超える企業に対象は限定され、事実上すでにメキシコ国内に拠点を構えている企業にしか恩恵はありません。
極左政権、駆け込みでインフラ事業の仕上げ
メキシコ政府が総額5000億ペソ(約4兆1300億円)をかけて建設している鉄道新規路線「マヤ鉄道」が12月15日、一部開業しました。
2024年に任期満了で退任するロペスオブラドール大統領は軍隊も大量に動員し、自身の看板政策だった巨大インフラを駆け込みで仕上げています。
2023年11月
内向きの経済政策対決
2024年6月のメキシコ大統領選挙まで半年を切り、与野党候補によるつばぜり合いが激しくなってきましたが、内容はかなり内向きです。
選挙戦は低所得者や自国企業を重視してきた極左のロペスオブラドール政権の政策を踏襲するかを争う形になっています。
現政権の極左的ポピュリズム政策の継承を前面に押し出すのが、与党・国家再生運動(MORENA)から出馬するシェインバウム・前メキシコシティ市長です。
一方で、国民行動党(PAN)、制度的革命党(PRI)、民主革命党(PRD)の野党3党が統一候補として擁立したガルベス上院議員は先住民系のルーツを持つ人物で、現政権のポピュリズム政策を批判しています。
過去30年で最悪の財政赤字
メキシコの2024年度歳出予算が下院を通過しました。
残り任期が1年を切ったロペスオブラドール大統領ですが、相変わらずポピュリズム的なばらまき政策を前面に出し、観光鉄道の新設や年金など看板政策に重点を置いた予算を編成させました。
財政赤字は過去30年で最悪の規模に達する見通しです。
2023年9月
鉄鋼関税を設定
メキシコ政府が鉄鋼を輸入する際の関税を引き上げる時限措置を発動させました。
事実上米政府による要請です。
アメリカは中国などの企業がメキシコ経由で鉄鋼を米国に迂回輸出する動きを問題視していたのです。
メキシコにとっても国内産業の保護につながるという極左にとって都合の良い側面もあります。
次期大統領選、極左政権の優勢が続く
メキシコの与党・国家再生運動(MORENA)は9月6日、2024年6月の大統領選の公認候補にクラウディア・シェインバウム前メキシコシティ市長(61)を指名したと発表しました。
大統領選は与党が優勢で、極左派政権による保護主義が続く可能性が高まっています。
2022年12月
最低賃金を2割上げ
メキシコ政府は2023年の最低賃金を20%引き上げることを決めました。
これを受けて、一部の企業は賃上げが必要になると思われます。
左派でポピュリストのロペスオブラドール氏の目玉政策なわけですが、メキシコに進出する外資製造業などの負担が増え、投資を控える可能性もあります。
2022年4月
リチウムを国有化する法案が可決
4月19日、国内にあるリチウム資源を国有化するための鉱業法の改正が成立しました。
ロペスオブラドール政権が提出した改正案をメキシコ議会上院が賛成多数で可決しました。
今後は原則、民間企業の採掘を認めず、国営企業が独占する見通しです。
EV向け電池に使うリチウムの需要が高まるなか、重要資源として権益を囲い込む目的があります。
すでに政府が開発を委ねる一部民間企業に対しては許認可を再検討しますが、メキシコでリチウム採掘をめざす外国企業に逆風となるでしょう。
議会、憲法改正案を否決
メキシコ議会下院は4月17日、ロペスオブラドール大統領が提出した電力国有化に関する憲法改正案を否決しました。
野党議員の反対で憲法改正に必要な3分の2以上の賛成を得られませんでした。
憲法改正案に対しては米国政府や企業が投資環境を損なうと繰り返し批判していたという背景があります。
賛成275票、反対223票で否決されました。
国民行動党(PAN)など複数の野党が反対したのです。
ロペスオブラドール氏は議会での否決を受け、
「(反対票を投じた議員は)国民よりも外国企業の利益を優先し、メキシコを裏切った」
と述べました。
ロペスオブラドール氏は2021年10月に下院に憲法改正案を提出していますが、それによれば、民間事業者の許認可や電力売買契約を取り消し、国営電力公社CFEのシェアを54%まで高める案でした。
民間企業は残りの46%を発電できますが、CFEに不利な契約を迫られかねないという懸念が高まっていました。
2022年3月
首都新空港開業
首都メキシコシティ近郊で3月21日、新空港が開業しましたが、効果に疑問の声が上がっています。
ロペスオブラドール大統領は前政権が着手した空港の建設計画を破棄し、自身が主導して別の場所に新空港をつくりました。
現政権が目玉政策として進めるインフラ開発の第1弾なわけですが、投資効果を疑問視する声があがっています。
新空港はメキシコシティに隣接するメキシコ州にできましたが、問題はそのアクセスです。
メキシコシティの中心部から新空港へは車で最短45分程度、渋滞していればその数倍の時間がかかります。
最短で20分以内に到着する既存のメキシコシティの空港と比べると利便性は劣ります。
政府は航空会社に新空港への移行を促し米航空会社の誘致も目指していますが、思惑通りに進むかは不透明です。
しかし、この新空港はロペスオブラドール政権の肝煎り政策で、簡単にあきらめることは出来ません。
ロペスオブラドール氏は2018年、ペニャニエト前政権がメキシコ州の別の場所に着工していた空港は建設費が高すぎるとして計画を覆し、今回の新空港建設を決めたのです。
新空港は当初、800億ペソ(約4700億円)以下で完成するとしていましたが、その後建設費が膨らみ、メキシコの最大野党である国民行動党(PAN)は実際には1000億ペソ近くにのぼると指摘しています。
前政権の空港計画を中止した費用を加えると、投資総額は変わらないという批判もあります。
新空港は大統領が主導するインフラ開発プロジェクトの第1弾です。
ほかにもカンクンを起点とした観光鉄道「トレン・マヤ」やタバスコ州に製油所を建設。観光鉄道の建設費も当初の1400億ペソから21年10月時点で600億ペソ増え、費用対効果を疑問視する声があがっています。
最近、ロペスオブラドール氏の支持率は2月に54%と就任以来最低となっており、インフラ開発を急ぐ背景には人気回復の思惑もあると思われます。
2021年11月
主要インフラ工事に関する手続きを大幅に簡略化
ロペスオブラドール大統領は自身が進める国内の主要インフラ工事について、情報開示など必要な手続きを大幅に簡略化する仕組みを導入しました。
工事の費用や委託先などが公表されなくなり、透明性が後退するのは必至です。
野党や経済界から反発する声が上がっています。
中銀総裁の人事など、ロペスオブラドール氏の人気取りや独善的な
国家の安全保障に関わるプロジェクトに認定された場合、工事に関わる企業や行政機関が当局に許認可を申請する際に5日以内に却下などの回答がなければ暫定的に承認したと見なせるようになります。
従来は申請手続きに必要な情報量も多く、手続きにかかる時間も長かったのです。
鉄鋼輸入に関税15%
メキシコ政府は23日、鉄鋼製品の輸入に対して15%の関税を導入しました。
新型コロナウイルスの影響を受けた国内産業の保護を目的とした一時的措置で、2024年までに税率を段階的に引き下げます。
TPPに加盟する日本は対象外ですが、韓国などから輸入する鉄鋼製品を使う日本企業の現地法人などが影響を受ける可能性があります。
鉄鋼製品112品目に関税を導入しました。
22年6月29日まで一律15%の関税を維持し、翌日以降は品目ごとに段階的に引き下げます。
24年10月以降は94品目は関税ゼロになります。
一部の品目にはその後も3~7%の関税が残ります。
2021年10月
メキシコ経済の回復の行方に懸念
メキシコのGDPが2021年7〜9月期に急減速し、アナリストや投資家は同国の経済回復の行方に疑問を抱いているようです。
新型コロナウイルス感染の第3波が起きた7〜9月は米国など多くの国で経済成長が鈍りました。
メキシコは10月29日にGDPが前の期に比べ0.2%減だったと発表したが、これは20年半ば以来のマイナス成長でした。
実質ベースではGDPはおそらく16年の水準にとどまっており、アナリストらは供給網の混乱や、ロペスオブラドール大統領が率いる政府の政策が経済へのさらなるリスクとなると指摘しています。
実際、通貨ペソは26日に対米ドルで下落し始め、一時1ドル20.1718ペソから20.5782ペソと2%安となりました。
8月中旬以来の安値水準で、新興国の中では南アフリカランドに次ぐ対ドルでの下落幅を記録しました。
インフレ率は6%を超えており、アナリストは11月の会合でも引き上げると予想しています。
半導体不足など製造業への逆風や不十分な政策ガイダンスの下での不安定な投資が、メキシコ系座愛の下振れリスクになると懸念されています。
国家主義的でまずいロペスオブラドール大統領による政策を巡る不透明感のため、メキシコ経済はパンデミック前から縮小していました。
19年の成長率はマイナス0.1%、20年はマイナス8.5%でした。
アナリストはGDPが18年のピーク時の水準に完全に戻るには23年までかかり、1人あたりのGDPは27年までその水準に戻らない可能性があると予想しています。
リチウム採掘を国が独占
ロペスオブラドール大統領は1日、電力市場や資源開発で民間企業の活動を制限する法案を議会に提出したと表明しました。
政府がリチウムの採掘を独占するほか、電力市場で国営企業を優遇する措置を導入します。
同大統領らしい保護主義で、資源分野の民業圧迫につながる可能性があります。
リチウムなど戦略的に重視する鉱物の採掘を政府が独占しますが、すでにメキシコ政府が開発を委ねている一部の民間企業は対象外になる可能性があるようです。
脱炭素で世界的にEVの需要が高まる中、電池に使われるリチウムは資源としての重要性が高まっています。
電力市場への規制も強化するようです。
法案ではエネルギー規制委員会(CRE)を廃止し、国営電力公社CFEのシェアを少なくとも54%まで高めることとなっています。
残りの発電量については入札を通じて民間企業から買い取る方針です。
2021年8月
元大統領を裁く是非
メキシコで1日、過去の大統領を司法で裁く対象に含めることへの賛否を問う国民投票が行われました。
ロペスオブラドール大統領は汚職撲滅を重要施策としており、国民投票は政治的ショーといったような側面があります。
野党の勢いを一段とそぐことを狙ったようですが、投票率は7%程度にとどまり、政権の思惑通りの結果とはなりませんでした。
選管当局が1日夜に発表した見通しによると、投票率は7%程度で、裁くべきだとの賛成票は89.36~96.28%で大半を占めました。
もちろん、与党支持者の投票が圧倒的だったと思われます。
2021年7月
国営石油に新発見の油田権益を
メキシコ湾南部のザマ油田を巡り、メキシコのエネルギー省が運営会社として国営石油会社ペメックスを選ぶ方針を示したことが明らかになりました。
同油田は米採掘会社タロス・エナジーなどの企業連合が発見しましたが、油田の一部はペメックスの管轄域に及んでおり、調整が必要になっていました。
タロスは非常に残念な決定であるとの認識を示しました。
メキシコのロペスオブラドール政権は国営会社を優先するエネルギー政策を相次いで示しており、その一環とみられますが、こうした事が本当にこの国にとって良い事かは分かりません。
2021年6月
中間選挙で与党が勝利し、引き続き企業には厳しい政策が続く可能性
6日、下院議員や15州知事を選ぶ中間選挙が投開票されました。
下院(500議席)では与党連合が過半数を維持する見通しとなり、ロペスオブラドール大統領が進めてきた汚職対策を有権者が評価したという事になります。
経済分野では同大統領の国営企業の保護を優先する政策が加速しかねず、民間企業には厳しい経営環境が続く可能性があります。
2021年5月
遅れる経済回復
メキシコ経済の回復が他国に比べて遅れています。
今のメキシコを支えているのは好調な米経済でしょう。
何とかアメリカのおかげで製造業は持ち直していますが、政府による新型コロナウイルス対策の財政出動は限られて内需が弱いままです。
インフレ加速で一段の金融緩和による下支えも見込みにくい状況で、米経済に依存するカナダとも差が出ています。
そんな中でもロペスオブラドール氏は、我が国の経済は非常に良い状況だと虚勢を張りました。
たしかに同日公表の1~3月のGDP確報値は、前年同期比2.8%減と、4月末の速報値(2.9%減)からわずかに上方修正されました。
ただロペスオブラドール政権の政策の結果ではなく、積極的な財政出動で押し上げられた米経済の恩恵が行き届いた側面が大きいわけで、彼の自信がどこから来ているのか、よく分かりません。
2021年4月
上院も民間企業の燃料輸入許可撤回を可能にする法案可決
メキシコ連邦議会上院も4月22日、炭化水素法の改定案を可決しました。
すでに下院で可決しており、ロペスオブラドール大統領の署名を経て成立します。
政府は国営企業の保護を重視し、民間のビジネス環境の悪化につながる施策を相次いで導入しています。
下院、民間企業の燃料輸入許可撤回を可能にする法案可決
メキシコ下院は4月14日、政府が民間石油企業による石油精製製品の輸入許可の撤回を可能にする法案を可決しました。
エネルギー市場への国の影響力強化を目指すロペス・オブラドール大統領の意向を反映した法案です。
議論の的の一つとなったのは、経済や安全保障上の危機といった一定の状況下で、ガソリンなど燃料の輸入・販売許可の政府による撤回を可能にする炭化水素法の改正です。
この改正は業界内の競争に影響を及ぼし、消費者に値上げを強いることになると懸念が示されています。
ガス・石油業界に法的な不透明感を与え、石油に関する許可制度をゆがめるとの警戒感も示されています。
2021年3月
国営企業有利の政策を加速
メキシコ政府がエネルギー分野で国営企業の優遇を加速しています。
原油の輸出入や給油所の運営で民間企業の許認可を停止できる改正法案を議会に提出したほか、電力取引で国営企業が有利になる法改正も実現しました。
民業圧迫が進み、外資企業のメキシコへの投資にも影響しそうです。
ロペスオブラドール大統領は3月29日の記者会見で、
「ガソリン供給を保障するために国営石油会社ペメックスを守らなくてはならない。外国企業に依存することはできない」
と述べました。
2018年の選挙で政権交代を実現したロペスオブラドール氏は、保護により国営企業の業績を改善する方針を加速させています。
国営有利な電力法を可決
メキシコの電力分野で国営企業を優先する法律の改定が決まりました。
国営公社が不足電力を補うために民間企業と結んだ売買契約の条件を修正できるなど、民間企業に不利な内容を含んでいます。
ロペスオブラドール政権は民間のビジネスを妨げるような政策を次々と導入し、国内外の企業や経済団体の反発が強まっています。
連邦議会上院が3月2日に電力産業法の改定法案を賛成多数で可決しました。
ロペスオブラドール大統領が署名し、近く公布される見通しです。
2020年12月
最低賃金を15%引き上げ
メキシコ政府は、2021年の最低賃金を15%引き上げることを決めました。
日給を20年の123.22ペソ(約640円)から141.70ペソに引き上げます。
経済団体は反発していますが、ポピュリストのロペスオブラドール大統領は、物価上昇率を大幅に上回る水準の引き上げを続けています。
政府と経済団体、組合の代表でつくる国家最低賃金委員会(CONASAMI)が12月16日に多数決で決めました。
経済団体は10%の引き上げを提案していました。
11月の消費者物価上昇率は3.33%と、今回の引き上げ幅はインフレ率を大幅に上回っています。
経済相にクルティエル氏を起用
ロペスオブラドール大統領は12月7日、マルケス経済相が退任し、後任にクルティエル下院議員が就くと発表しました。
ロペスオブラドール氏は任命の理由として経済界との良好な関係をあげました。
メキシコ政府では、ロモ大統領府長官が2日に退任したばかりです。
ロモ氏は企業経営者から政府に転じ、民間企業とのつなぎ役を果たしていました。
長官職を廃止したため、クルティエル氏の起用で、民間企業との関係維持をはかるとの見方が出ています。
2020年11月
1.2兆円程度の追加インフラ計画
メキシコ政府は30日、総額2286億ペソ(約1兆1900億円)の新たなインフラ投資計画を公表しました。
10月に続く計画発表で、新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込む経済を下支えする狙いがあります。
首都メキシコシティ近郊で建設中の新空港へのアクセスを改善する高速道路など交通やエネルギーなど29件のインフラ整備計画です。
事業は2021年末までに始める予定ですが、資金の過半は民間が負担する方針です。
2020年10月
インフラ投資1.5兆円も、過半が民間
メキシコ政府は5日、総額2973億ペソ(1兆4900億円)のインフラ投資計画を公表しました。
資金の過半は民間企業が投じ、エネルギーや交通でインフラ整備を進めます。
新型コロナウイルスで落ち込む経済を下支えする狙いです。
業務時間の短縮などで行政手続きが遅れており、予定通り進むかは不透明です。
財務公債省によると、GDP比で1%超に相当し、18万5000~19万人の雇用創出が期待できるという事です。
計画は39のプロジェクトを含み、2021年末までに工事を始めます。
国営石油会社の製油所の改修や近代化のほか、首都近郊で建設中の新空港を通る鉄道整備などです。
18年12月に発足した左派のロペスオブラドール政権は、大企業中心の経済団体との対立が目立っており、経済界は新型コロナ対策での資金支援のために税金支払いの繰り延べなどを求めたが、政府は応じていませんでした。
今回のインフラ計画では歩調を合わせましたが、これが今後も続くとは限りません。
メキシコ銀行は10月1日、2020年の実質成長率がマイナス9.82%に落ち込むとの見通しを示しており、厳しい経済が続く中、ロペスオブラドール氏がどこまで経済を理解した政策を遂行できるか注目されます。
2020年7月
年金制度を改め、企業負担増
2020年7月22日、メキシコ政府は年金制度改革の概要を明らかにしました。
受給に必要な就労期間を24年から14年に短縮し、企業の負担比率を引き上げ、年金の平均受給額を退職時給与の4割に引き上げます。
これで低所得者層の支持固めにつなげたい考えです。
民間企業の負担は増えることになりますが、メキシコを代表する経済団体、企業家調整評議会は改革を支持する意向を示しています。
政府は9月に始まる議会に法案を提出し、早期の成立を目指します。
現状では年金受給額は平均で退職時給与の3割程度とされており、月給1万564ペソ(約5万円)の労働者の年金受給額は現状で給与の35%なものの、改革後は58%に高まるとされます。
メキシコのエネルギー政策が新協定違反の可能性
カナダのエネルギー企業4社がUSMCAにメキシコのエネルギー政策が違反している可能性があると指摘しました。
メキシコのロペスオブラドール政権は、前政権が進めたエネルギー産業の民間開放を批判し、エネルギー政策における国家の役割を拡大する必要があると主張し、数十億ドル規模の契約の再交渉を求めているようです。
その上で、新規の再生エネルギー施設の試運転停止や発電所の開発・操業制限を決めたメキシコ政府の措置により、自社のメキシコ事業が危険にさらされる可能性があると主張しています。
2020年5月
外資を引き続き締め出す方策
メキシコ政府が再生可能エネルギーの活用の抑制に乗り出し、外資の追い出しを強めています。
メキシコ政府は風力や太陽光などのプロジェクトに関し、国家電力システムに接続した新たな試運転を認めない事としました。
新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞で需要が減り、発電能力が過剰になったためと説明しています。
これによって送電や配電のシステムで、再生可能エネルギーの売却が難しくなります。
事業を手掛けるのは外国企業が多く、電力公社優遇と見られても仕方ありません。
再生エネルギー投資の大半は欧米を中心とする外国企業が手掛けており、欧米のみならず国内からもこの措置に不満が出ています。
自動車関連工場が18日から再開
2020年5月13日、メキシコ政府は主要産業である自動車関連の工場稼働が18日から可能になると発表しました。
鉱業と建設業と共に、新型コロナウイルスの感染が広がる中でも稼働を認める産業に加えました。
これまでは鉄鋼やセメント、ガラスなどの操業は認められていたが、自動車は含まれていませんでした。
感染は現在も深刻だが、自動車の供給網を一体的に構成するアメリカの経済再開が進んでいるのに歩調をあわせた形です。
ただ、メキシコではアメリカに数週間遅れる形で新型コロナの感染が拡大しており、政府は早急な活動再開には慎重な姿勢を示しているのも確かです。
経済再開を検討
2020年5月12日、ロペスオブラドール大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大で停滞する同国経済について、13日に再開計画を公表する意向を示しました。
これを踏まえて、
「元に戻るのではなく『ニューノーマル(新常態)』に向かう」
と述べました。
地域ごとに異なった対応になる見通しですが、最大のポイントは、政府が自動車産業の稼働をどのように認めるかとされています。
2020年4月
ペメックスの第1四半期、損失が2.5兆円
メキシコの国営石油会社ペメックスが4月30日発表した2020年1~3月期決算は、最終損益が5622億ペソ(2兆5300億円)の赤字となりました。
原油価格の下落が響いて、前年同期(357億ペソの赤字)から赤字幅が大幅に拡大しました。
ロペスオブラドール大統領が特に強く肩入れする同社の苦境はすぐに終わりそうにありません。
新型コロナ対策で25億ドル
2020年4月17日、約25億ドルの新型コロナ対策を発表しました。
ロペスオブラドール大統領は新型コロナウイルス感染拡大に対応するため、約25億ドルの支援策を5月に実施すると発表しました。
しかし、早速規模が十分でないとの批判も出ています。
大統領執心のペメックス、二社以上が投機的水準に格下げ
2020年4月17日、ムーディーズとフィッチが国営石油会社ペメックスの債務格付けを引き下げました。
ムーディーズは「Baa3(トリプルBマイナスに相当)」から「Ba2(ダブルB)」に2段階引き下げ、フィッチは「ダブルB」から「ダブルBマイナス」へ、今月2度目となる引き下げを実施しました。
これで二社が投機的水準としました。
投機的水準に引き下げた格付け会社が2社以上になると、機関投資家は投資できなくなる事が多く、ペメックスの資金調達の環境は悪化しそうです。
ロペスオブラドール大統領のご執心のペメックスですが、同氏のまずい政策も一因となり、かなり厳しい状況になっています。
政府と経済界の摩擦が強まる
メキシコで政府と経済界の間での摩擦が強まり懸念が高まっています。
ロペスオブラドール大統領はいつも通り企業による労働者の解雇を批判し、一方で経済界は財政出動がなければメキシコの2020年の経済成長率がマイナス10%に落ち込むとの試算を示すなどして政府の対応を批判しました。
新型コロナウイルスの感染が広まる中、既報の通り、メキシコ政府の民間企業向け対策はいつも通り乏しく、危機感が強まっています。
メキシコ政府は3月13日から4月6日の間に失われた雇用の数値を発表しましたが、その資料には、解雇人数が多かった企業名が具体的に明記されていました。
ロペスオブラドール氏らしいと言えばそうでしょう。
メキシコ政府は企業に対して不要不急の操業を止めるようにも要請していますが、具体性に欠ける政策でもある為、混乱が生じこれも不満につながっているようです。
メキシコへの投資は引き続き同政権がある間は慎重にならざるを得ません。
ロペスオブラドール氏、現代版マーシャルプランを提唱
2020年4月6日、ロペスオブラドール大統領は新興国の新型コロナウイルス対策支援として、国際金融機関が新たな「マーシャルプラン」の策定を支援すべきだと表明しました。
同大統領はマーシャルプランのようなものが必要だとブラックロックのCEOとの意見交換で表明したようです。
その上で、そうした新興国支援は一方的な融資ではなく開発協力の形で行うべきだとも主張しました。
同大統領は、富を使う事は積極的ですが、富を創出する事は常に他人任せの様な感じがしてしまいます。
コロナウイルス対策を発表も企業への支援は乏しい
2020年4月5日、ロペスオブラドール大統領が新型コロナウイルスの感染拡大を受けた対策を公表しました。
内容
- 治療のために6425床を確保
- すべての高齢者を対象に2カ月分の年金を前倒しで支給
- 学生向けの奨学金を拡充
- 小規模商店などへの融資拡充
- 税負担の軽減など企業支援策は見送り
ここにきても企業活動を軽視する同大統領の方針は変わりませんでした。
同大統領は弱者への支援を前面に出し、人気取りのための手段とする事を忘れませんでした。
その一方、いつも通りですが企業向け支援には消極的でした。
代表的な経済団体の企業家調整評議会は民間企業の資金繰り支援の為、納税の繰り延べなどを求める声明文を公表していましたが、これに対する明確な回答は出していない状況のようです。
2020年3月
法的根拠のない住民投票の結果を受けて工場の操業が停止に
2020年3月23日、メキシコ政府は北西部メヒカリで建設中のビール工場について、操業許可を取り消すと発表しました。
操業で水不足が懸念されるとして、一部住民が反対運動を展開しており、ロペスオブラドール大統領の指示で実施した住民投票で反対票が7割を占めたため、この様な決定となりました。
突然の許可取り消しは、民間投資をさらに冷え込ませそうだ。
この工場はアメリカへの輸出向けのビールを製造するために建設しており、すでに9億ドルを投じ設備の70%が完成していたそうです。
ロペスオブラドール政権が、法的根拠のない住民投票を実施して、必要な許可を得て建設が始まっていた案件を中止に追いやったのはメキシコシティ新空港の建設中止と同じやり方です。
有力経済団体の企業家調整評議会は「必要な許可を得た民間投資への住民投票は法的秩序を乱し、国内外の投資に大きな打撃を与える」と政府を批判する声明を発表しました。
2020年1月
天然資源の権益売却入札、再開する考えなし
2020年1月8日、ロペスオブラドール大統領は、石油・ガス開発権益の売却入札を今年再開する考えはないと述べました。
同国政府がエネルギーセクターへの民間投資促進に動くとの期待が完全に消滅しました。
その上で、前政権が実施した入札で110件の契約を得た石油大手企業が、投資や生産で実績を示す必要があると付け加えました。
エネルギー政策の面で引き続き反民間のグループが主導権を握っていることがうかがえます。
民間投資こそが石油増産の鍵を握ると思われますが、ロペスオブラドール氏は国家主導がメキシコの石油生産を上向かせると信じているようです。
2019年12月
ロペスオブラドール氏、富の分配は平等になったと強調
2019年12月1日、ロペスオブラドール大統領は就任1周年の演説で、富は現時点で従来よりも平等に分配されるようになったと強調し、自身の政策の成果をアピールしました。
経済が低調である事の方がよほど重要ではありますが、そういった臭いものにはふたをしたいのでしょう。
2019年11月
新しい経済政策を発表
2019年11月26日、メキシコ政府は総額8590億ペソ(約4兆8千億円)に上る民活型のインフラ投資計画を発表しました。
民間企業が資金を投じて、道路や港湾といった交通インフラを中心に整備を進める、というものです。
ロペスオブラドール氏のまずい経済政策もあり、ずっと経済成長率は前期比でマイナスとなっており、これで挽回したい考えです。
具体的な内容
- 計画は2020~24年の5年間
- 合計147のプロジェクトが掲げられる
- 道路、港湾や空港などの交通インフラが7割以上
- 2020年に全体の半数近い案件が集中
- 沢山のインフラ工事をして景気浮揚に役立てたい考え
ロペスオブラドール大統領は
「インフラ計画によって経済に大きな刺激を与えたい」
とコメントしています。
2019年10月
IMFも成長見通しを引き下げ
2019年10月30日、IMFはメキシコの19年の経済成長率見通しを7月時点の0.9%から0.4%にさらに引き下げました。
メキシコ銀がまとめる民間機関の予想平均でも0.43%まで下がっている状況です。
成長率が1%を下回るのは金融危機の影響でマイナスとなった2009年以来です。
経済低迷の背景
不振の理由にはまず国内の経済政策の混乱があるでしょう。ロペスオブラドール氏は従来政権が進めてきた民間主導型の自由主義経済を「汚職や格差の温床」として全面否定しているのです。
国内外から資金を集めた首都の新空港は建設中止にし、石油鉱区の民間入札は無期延期にしました。
外国企業参加のパイプライン敷設計画も見直しを突きつけており、外国企業は慎重な姿勢で経済成長に冷や水をかぶせている状況です。
ついに景気後退入り
2019年10月30日に発表した2019年7~9月期のGDPは、一般的に景気後退期に入ったとされる2四半期連続のマイナス成長となりました。
景気後退となった背景
まずロペスオブラドール大統領のポピュリスト的な経済政策、国内の混乱や不安定な対米関係が投資にブレーキをかけたこと、そしてそれに伴う雇用や消費の低迷、等でしょう。
国内外の民間企業にとっては、契約済みの案件すら簡単にひっくり返される状況に不安が高まっている状況です。
メキシコ経営者連合会(COPARMEX)のグスタボ・デオジョス会長は
ロペスオブラドール政権の無計画で近視眼的な政策が混乱を招いている」
と批判しています。
民間企業がリスクを敬遠して投資を控えているだけでなく政府が続ける緊縮策も景気の悪化を加速させている一因です。
景気停滞で本来なら刺激策として財政出動も求められる局面ですが、ロペスオブラドール氏は
「歴代政権がぜいたくをし、無駄遣いをした」
と人気取りのために批判をして、支出抑制を続けています。
官民の建設や設備投資の合計である総固定資本形成は1~7月で4.6%減、対内外国直接投資では1~6月で19%減です。
対米関係
NAFTAの代わりに出来たアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)締結についても、アメリカとカナダで議会の批准手続きが遅れていて、いまだに発効時期が見通せない状況であることは泣きっ面に蜂でしょう。
そうした中でトランプ氏は不法移民対応を巡り、一時はメキシコの全輸出品目に対して関税をかけ、段階的に引き上げるとも発表しました。
メキシコ側の努力もあってなんとか関税は見送られたものの、再び同様の混乱があるかもしれないという事で、皆投資に慎重です。
ロペスオブラドール大統領の姿勢
ロペスオブラドール氏はいまだに成長率2%の達成は可能だと言い張り、現状の経済停滞を認めようとしません。
経済成長を模索するよりも、前政権までの汚職摘発による国民の不満の”ガス抜き”の方が自身の支持率の維持には役立つからでしょう。
国の将来ではなく、自身の人気維持の為にエネルギーを使ってしまっているのです。
トランプ氏は20年の大統領選に向けて前回選挙の際のように移民や通商問題などでさらにメキシコに要求を突きつけて来る可能性もあり、メキシコ経済が苦境を脱する道はまだ見えません。
2019年9月
まずい経済政策で景気後退の危機?
メキシコは、経済成長率が直近2四半期連続でプラスを達成できないなど、景気後退の危機にひんしています。原因はロペスオブラドール政権の経済政策にもあるようです。
元々世界的に景気は悪くなり始めているので、政治だけが悪いわけではないですが、ロペスオブラドール政権で投資環境が混乱している上、緊縮策に固執し公共事業などを削減している事が景気をさらに押し下げている事は間違いないとマーケット関係者は考えているようです。
メキシコ政府は支出削減に躍起になってきました。
大統領専用機や公用車を廃止したほか、自身を含めた政府幹部や高級官僚の給与をカットするなど、目に見えやすい形の支出削減策は、貧困層を中心とした支持基盤へのただのアピールです。
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主要公約である年金や奨学金の拡充、開発の遅れる南部へのインフラ投資などにばらまきこそが一番の元凶で、それをやめた方が国の為になるのですが、それはポピュリストなので出来ません。
ただ、批判されているのは分かっているので、2019年予算で基礎的財政収支をGDP比1%の黒字確保を約束しています。
実際、財務公債省によると今年1~7月の公的支出はペニャニエト前大統領の任期最終年度だった前年同期と比べ4.5%も減少しました。
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新空港の建設中止などによる混乱で民間投資が落ち込み経済成長が停滞するものの、必要な公的支出が絞られているので景気がもっと悪くなっているのです。
緊縮策の影響は経済面だけでなく、日々の国民生活にも影響が出ています。
例えば医療分野。
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自分の好きな政策をとにかく最優先し、本当に必要な事には目を背ける。。。
そんな姿勢の象徴が、債務超過が続く国営石油会社ペメックスの救済でしょう。
2019年2月に約1千億ペソの財政支援を発表したのに続き、7月には3年間で総額2690億ペソの支援を打ち出しています。
使途は政府からの直接の資本注入や税金減免です。
しかし、この投資は公共投資のような経済効果はほとんどなく、むしろ国家財政への悪影響が懸念されています。
政府は2020年予算案に関しても「緊縮策と財務規律の維持が柱」としていて、2020年も現状方針が取られる見込みです。
現在の経済状況を半ば放ったらかしのまま、我が道行くロペスオブラドール政権ですが、このまま行くと、景気停滞ではなく、後退局面になりそうです。
今からメキシコに投資をするのは少し様子を見てからにした方が良いかもしれません。
2020年度の予算案を連邦議会に提出
2019年9月9日、メキシコ政府は2020年度の予算案を連邦議会に提出しました。
- 19年度比で1.5~2.5%の経済成長を前提とする
- 歳入が今年度予算より+0.4%
- 歳出は同+0.8%
- 基礎的財政収支はGDP比で0.7%の黒字を目指す
連邦議会はこれを議論し、11月15日までの可決を目指します。
エレラ財務公債相は予算案について、
- 社会福祉の拡充
- 治安改善
- 国営石油会社ペメックスの支援
により大きな優先度があると説明しています。
今年度に引き続き増税はしないとも明言しました。
税収の柱として期待されるペメックスによる原油生産は、
落ち込みは底を打っており、今後は計画通り増産が見込める
と説明しています。
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ロペスオブラドール政権のまずい経済政策によって民間投資は落ち込み、雇用や消費にも影を落としている状態です。
政権に対する海外投資家の目は厳しく、財政規律を維持しながら、景気刺激を含めた必要な施策をどう実行していくか、若干の諦めを持ちながら、政権のかじ取りを見ていく事になりそうです。
2019年7月
250億ドルの景気刺激策を発表
2019年7月29日、メキシコ政府は総額250億ドル強の景気刺激策を発表しました。
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内容は、インフラ整備、投資促進、民間消費の促進等による景気浮揚。
メキシコはここ最近、ロペスオブラドール氏のまずい政策もあって、景気後退に入ったとされているため、景気浮揚が急務です。
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景気刺激策には税控除や今年の政府支出の加速、2020年に計画されていたモノとサービス購入の前倒し、インフラ基金の資金活用が含まれるとしていて、景気刺激策による予算への影響は想定していないと述べています。
メキシコは基礎的財政収支で対GDP比1%の黒字達成を目指しています。
ロペスオブラドール氏、経済が思うようにならずメディアに八つ当たり??
2019年7月11日、ロペスオブラドール大統領はイギリスのFTに対し、「メキシコ国民に謝罪すべきだ」と述べました。
FTが同氏の経済政策を批判する記事を掲載したことに対する反論のようで、経済が低迷する中、海外メディアとの対立姿勢が目立つようになっています。
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海外投資家の多くは、FTが正しい事を分かっているでしょう。
新財務大臣、市場の疑念払しょくに努力
2019年7月9日、エレラ新財務公債相はウルスア前財務公債相が重視した財政規律を維持する意向を表明し、市場の懸念払しょくに努めました。
エレラ氏は、ウルスア氏が掲げた対GDP比1%の基礎的財政黒字という目標から脱線することはないと強調し、2020年予算案でも似た目標となると述べました。
エレラ新財務大臣はこれを意識して大きく路線変更するわけではないと表明したものと思われます。
経済政策への不満から財務大臣が辞任
2019年7月9日、メキシコのウルスア財務公債相が同日付での辞任を表明しました。
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経済政策などを巡る意見の不一致が辞任理由であるのはほぼ間違いないでしょう。
国民の人気取りばかり優先してしまい、現実的な政権運営等がおろそかになっている可能性があります。
後任はアルトゥロ・エレラ次官が就く予定です。
貧困対策などに不満高まり、少しずつ支持率低下か
ロペスオブラドール大統領の支持率は依然高いものの、直近の調査ではピークからは低下し、66%となりました。
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ロペスオブラドール氏が掲げる貧困や治安、汚職対策といった主要分野の政策で、国民の不満が高まっているようです。
ロペスオブラドール氏は、汚職や治安悪化、格差問題で前政権を徹底批判して当選した経緯があるので、ここで結果を出せないのは致命的です。
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ロペスオブラドール氏は、こうした問題は前政権までの責任だと主張しているようですが、それだけで納得させることは難しいでしょう。
大統領就任から7カ月も経過している中で、そろそろ結果が求められてきているわけです。
もし、このまま主要政策で国民の不満が高止まりすれば、支持率のさらなる低下は避けられないでしょう。
2019年6月
ポピュリズム的な「ムダ」削減も限界か
ロペスオブラドール大統領の、人気取りを狙った歳出削減策も、少し疲弊感が出てきて、限界が見え始めているようです。
もちろん、緊縮策は貧困層へのアピールのためだけではなく、年金や若者向け奨学金の拡充、国営石油会社ペメックスの救済、ユカタン半島の観光鉄道敷設といった主要公約を実行するための予算捻出策でもあります。
元々、経済界や市場は同大統領の公約をすべて実行すれば財政赤字が拡大すると疑念を持っていました。
大統領はその疑念を払拭するために、自身の主要公約以外の予算をとにかく削りまくるというやり方をしているわけです。
これまでの実績(2019年1-4月)としては、
- 教育省:185億ペソ(約1020億円)、
- 通信・運輸省:168億ペソ、
- 農業・農村開発省:156億ペソ
など、大半の省庁で2桁の減少率となっています。
これは職員の削減や各種の施策のストップで捻出したようです。
これで財政赤字は増えず、懸念された財政規律の緩みは今の所みられていません。
しかし、このやり方は様々な弊害を生んでいます。
例えば、財務省が社会保障庁の予算執行を妨げていることで、病院で必要な診察や投薬ができなくなったり、主要産業の観光業では、広告宣伝向けの基金が廃止され、経済省所管で海外からの投資や貿易拡大の旗振り役だったプロメヒコもなくなった結果、2019年に入って観光客は伸び悩み、外国からの投資は前年同期比で2桁減が続いています。
また、緊縮策に加えて、原油生産の減少や税収不足で予算が予想よりも大幅に減っているため、様々な必要なインフラ投資が出来なくなっていたりします。
ただ、貧困対策や庶民派アピールでロペスオブラド-ル氏の支持率は依然として高く、直近の調査でも支持率は7割を超えています。
このまま景気悪化が続き、雇用や家計に一段と響いてくるようになると、国民の気持ちも変わるのかもしれませんが、当面の間、メキシコは投資対象として海外投資家から忌避されることになるでしょう。
2019年5月
大企業への税優遇を廃止
2019年5月20日、ロペスオブラドール大統領は国内大企業への税優遇措置を廃止すると発表しました。
大統領は、前政権が導入した大企業を対象とした約2000億ドル規模の優遇措置が乱用されていると批判し、この決断胃に立ったと説明しています。
政府によれば優遇措置を受けている企業のうち58社は株式市場に上場しており、ベンチマークの株価指数IPC指数に採用されている3分の1近くの企業が税優遇措置を受けているとの事です。
どの企業が優遇措置の対象となっているか大統領は明らかにしていませんが、当該税優遇措置がまるでパイプラインからガソリンを盗む組織犯罪のようになっているとしています。
ロペスオブラドール氏の石油ナショナリズム、格付け危機でどうなるか
ロペスオブラドール氏の「石油ナショナリズム」政策。
この構想には、総工費80億ドルを投じた新たな精製所の建設、既存の精製所の改修、減少する原油生産の回復などが含まれていますが、これを遂行する会社ペメックスの巨額の負債が問題になっています。
今、格付け機関は、費用のかかる上記計画を警戒し、ペメックスの社債に対する評価を「ジャンク」に引き下げると警告しています。
ペメックスの上記事業は国家プロジェクトなので、ペメックスの格付けが下がり、その遂行が危ぶまれるとメキシコ国債の評価にも関わります。
フィッチやS&Pは、ペメックスの評価を切り下げて見通しはネガティブとしました。
ペメックスの長期対外債務格付けはフィッチが「BBB-」、ムーディーズが「Baa3」で、いずれも、ジャンク級の1つ上に当たります。
主要格付機関3社のうち2社がジャンク級に格下げした場合、同社の社債を売却せざるを得なくなる機関投資家は多いと予想されます。
その場合、あるレポートでは830億ドル相当のペメックス社債のうち、160億ドル分が放出されるという事です。
メキシコ政府は2019年5月13日、ペメックスの負担軽減に向け
- 段階的な減税、
- 25億ドル規模の債務リファイナンス、
- 銀行3行による既存与信枠の拡大
等の対策を発表しました。
ただ、どれもマーケット関係者の懐疑的な見方を払しょくする事はありませんでした。
前政権によって実現した、外資にも開かれたエネルギー市場自由化の流れは、ロペスオブラドール大統領によって完全に中断されてしまいました。
同大統領は2019年5月、民間事業者では要求通りの予算や3年の期限を守れないとして、新たな精製所はペメックスが建設することになると発表しました。
因みに、その精製所は大統領の地元、タバスコ州に建設される予定です。
ムーディーズはこの決定を批判し、計画よりも工期が延び、コストも50%超過する恐れがあると警鐘を鳴らしています。
ただ、国民の石油ナショナリズムをたきつけて、とにかく人気取りに邁進するしか、今の政権には頭にないのかもしれません。
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