インドの2019年総選挙に関するまとめ モディ首相の功績と課題

ここでは、インドの2019年の総選挙ブログの番外編という事で、特にモディ首相の課題と功績についてフォーカスしていきます。

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インドの2019年総選挙 モディ首相の功績と課題

インドへの投資リスク 一つは政治

新興国に投資をする際のリスクは政治です。

インドも同様です。ポピュリズム的な政策ばかりしていたり、安定的な政治基盤がなかなか作られないなど色々とあります。

インドではこの5年間驚くべき程に政治が安定していました。

ただ、2019年の選挙でその安定が脅かされるかもしれません。どの様な経緯となるかインドへの投資をしている人、検討している人なら注目しておいて損はないでしょう。

モディ首相のこれまでの実績

2014年に就任以来様々な改革を実施してきたモディ首相。

インドは91年まで続いた社会主義経済の遺産として非効率な国営銀行・企業が今も多く、複数の省庁や州政府による規制が入り組むなど、色々な要素が入り組んでいてこれらを効率的で高い成長率を実現させるためのインフラにし直すためには相当な労力が必要です。

モディ首相は、この様な背景を踏まえて政府の合理化と民間主導の経済成長を掲げて政権を獲得しました。

209年の総選挙では、脱社会主義政策の是非と進捗について国民の審判を受けるといって過言ではないでしょう。

一般的に海外の投資家からは相応の評判を得ているような印象ですが国内でどうかというと、5年前の時ほど順風というわけではなさそうです。

では、モディ首相の前向きな功績はどういったものがあるでしょうか。

不良債権の早期処理化など

2016年に成立・施行した破産・倒産法では、債権者側による債務不履行企業の破産の申し立てを認めました。

債務不履行の定義を明確化し銀行に迅速処理を義務化

中央銀行が、債務不履行の定義を厳格化するとともに不良債権の早期認定と迅速処理を銀行に義務づけました。これによって債務不履行企業に抜け道がなくなったのです。

借金踏み倒しが横行してきたインド企業社会ですが一気に変わりつつあります。

インドの税金 GST(物品サービス税)

2017年に始まったGSTも大きな功績でしょう。

これは間接税を全国統一した物品サービス税の事を指します。

この制度によって税務が簡素化され企業活動がやりやすくなったほか、納税事業者の登録義務の徹底によって税の捕捉も容易になりました。

インド政治史上まれに見る安定的な政権運営

2014年の前回選挙では現与党インド人民党(BJP)がモディ氏の人気をテコに躍進し、下院議席の52%を単独で握り、10年ぶりに国民会議派から政権を奪還しました。

下院の単独過半数は30年ぶりであり、これによってモディ首相はインド史上まれに見る安定的な政権運営を実現したのでした。

残ったインドの課題

沢山の非効率な産業

GDPの15%しか産出しない農業に労働力人口の半数が従事している・・・

というのがインドの状況を示す象徴的なケースでしょう。

こうした経済全体の生産性向上がなければ市民全員が実感できる生活水準の改善は望めません。

状況を変えるには、

  • 近代的企業の増加
  • 就労に堪えられる初等・中等教育の浸透、
  • 農地・荒廃地の転換とそれに必要な制度整備

ですが、まだまだ途上であり、これがモディ首相にとっての大きな課題となっています。

もちろんモディ氏はこの課題を十分認識しています。

実際2014年の総選挙でも、工業化や都市化、インフラ整備、規制改革など多くの経済改革を公約に掲げたわけです。

しかし、上記の土地収用の関連法制の整備や学校教育の強化は、公約の柱だったにもかかわらず進みませんでした。

1000万人の雇用創出

前回の選挙時の公約であった1000万人の雇用創出ですがこれは未達であり、むしろ雇用数は純減との見方もあります。

インドは年間に1200万人ほどが新たに就労年齢に達しますが、労働参加率は半分程度です。これは新たに600万人の新規雇用を創出しなければ労働需要を吸収できないという事です。

同時に労働市場では農業離れが進んでいる。農業は間接的に労働人口のほぼ半分を吸収

雇用拡大の大きな障害とされるのが、30を超える法律が入り組む労働法制です。

特に従業員が100人を超えると解雇に政府の許可が義務づけられる法律が企業の投資意欲をそいでいると言われています。

中央政府の改革

中央政府の非効率性もモディ首相が声だけで実行に移せていないものの一つでしょう。

インドには52の「省」があり、そこに60人超の「大臣」がいます。

とてつもない肥大化した中央政府となっているわけですが、これにメスを入れる行政改革はまだまだ行われていません。

司法改革

上記の中央政府の改革と似ている所もありますが、訴訟の数が多くなっている割にそれをさばけるほどの能力が司法にありません。

訴訟の乱発に司法の処理能力が追いついていない結果、インドの裁判所全体の未審議・未決案件は3000万を超えると言われています。

これでは安心して外国企業がインドに進出する、という事も難しくなってしまいます。

2017年以降、モディ首相の人気に陰り 高額紙幣の廃止、税制改革

モディ首相はの2期目入りは当初濃厚とみられていました。

しかし、モディ氏の支持率は2017年を境に低迷し始めたのです。

きっかけは2016年末の高額紙幣の廃止や2017年の税制改革でした。

これによって経済が混乱し、BJPの支持基盤だった小売業者らが反発したのです。

この小売業者の支持は大切です。なぜなら、小売り関連の票は家族分を含め約3億票とされる為です。

ここに加えて農産品価格の低下に苦しむ農家もモディ首相の政権運営に反感を持ち始め、その結果モディ首相の出身党であるBJPは2018年末の地方選で惨敗しました。

モディ首相人気の陰りと国民会議派への支持復活

代わりに支持を伸ばしているのが、最大野党の国民会議派です。

初代首相ネールのひ孫であるラフル・ガンジー総裁が、モディ氏との支持率の差を縮めています。

どちらが勝つかの予断は出来ません。

ただ、国民会議派が勝てば、インド外交が一変する可能性があります。

国民会議派は伝統的に各国と等距離で付き合う外交を重視する為です。もちろん第2次モディ政権が発足すれば、外交面での大きな変更はあまりないでしょう。

モディ首相でも国民会議派でも経済政策に大きな変更はない?

経済政策は政権交代の有無にかかわらず、大きな方針変更はないとの見方が多いようです。

ただ、単独過半数を握る与党が不在となって、与党連合内の協調が乱れると、政策停滞が目立ち始める可能性が高くなるでしょう。

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