ここでは、インドと中国による貿易紛争に関する経緯をフォローしていきたいと思います。
2021年11月
インド、中国との係争地にインフラを整備
インドが中国との係争地がある北部ラダック地方で、インフラ整備を急いでいます。
インド軍の展開を助ける道路、橋、トンネルなどの建設で計1兆4000億ルピー(約2兆1400億円)の予算を見込んでいます。
中国への強い姿勢を示すのが目的ですが、そこには2024年に想定される総選挙で、与党への支持を高めたいモディ首相の思惑が透けています。
インド政府は軍事作戦上重要な73カ所の道路、橋、トンネルなどを建設する計画です。
部隊や兵器の配備を容易にするため、戦略的な全天候型の道路を建設しています。
2021年2月
両軍が係争地から撤退開始
中国の発表によれば、2月10日、双方の軍隊が前線からの撤退を開始したようです。
ただ、インド側は何も発表しておらず、撤退が実現するのか不透明です。
TikTokがインドから撤退
TikTokを運営するバイトダンスがインドの事業体制を大幅に縮小します。
2000人超とされる現地社員を原則、解雇します。
インド政府がアプリを禁止してから7カ月、再開のメドはなお立たない状況で、バイトダンスにとっては撤退をせざるを得ない状況だったようです。
インドは1億人を大きく超える利用者がいた重要市場だけに影響は大きいと思われます。
2021年1月
対中輸入が2割減
インドの2020年の中国からの輸入は前年比2割ほど減少したようです。
モディ政権が国境の係争地域での衝突をきっかけに中国製品を排除して国産に切り替えていることが背景にあります。
インド人の対中感情悪化もあって電化製品、家具、おもちゃなどの輸入が減りました。
この傾向はさらに落ち込む可能性があります。
インドの19年の輸入総額は約4800億ドルで、引き続き国別では中国が全体の14%で最も高い比率となりました。
インドにとって、価格競争力が高い中国からの輸入品は貿易赤字を拡大させる頭痛の種になってきたため、その問題の解決にはつながっています。
2020年11月
インドが中国系アプリを新たに禁止
インド政府は11月24日、中国のアリババやテンセント系のサービスなど主に中国企業が運営する43アプリを新たに禁止すると発表しました。
インドは6月と9月にも中国系のアプリを禁止しているので、今回が3回目になります。
中国との国境係争地で対立が長期化する中、インドが追加の経済制裁を打ち出したとみられます。
2020年9月
国境紛争も経済に影響
インド政府は2020年9月1日に中国が実効支配線の付近で挑発行為をやめないと批判したのに続き、2日には中国が関与する118のアプリの使用禁止を発表しました。
インドと中国の国境係争地を巡る緊張と経済的緊張が再び高まってきました。
国境での両国の争いが絶えないな中、インド政府は再び経済制裁を打ち出しました。
中国のインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)や、ネット大手のテンセントのサービスなど118のアプリを禁止すると9月2日に発表したのです。
これは動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」など59アプリを禁止したのに続く措置で、電子書籍からオンラインゲームまで禁止対象は幅広く設定されています。
インドの大手経済紙エコノミック・タイムズは8月下旬、インド政府が中国企業によるインドへの直接投資の認可を、全ての案件について保留していると報じ、その数は175件に上ると伝えています。
この中には中国民営自動車大手、長城汽車によるインド国内の工場買収や、インドの有力スタートアップへの出資なども含まれるとみられます。
2020年7月
インド、政府調達で中国を制限
インドが政府調達で中国企業の参入を制限します。
政府や公営企業が物やサービスを民間から購入する入札に参加する場合、所轄官庁へ事前登録した上で、外務省と内務省による許可を義務づけるというものです。
7月23日に改正した規制では、制限対象を「陸の国境を接する国の企業」と定めています。
インドと陸路で接するのは中国、ネパール、ブータン、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマーの6カ国ですが、インドから融資保証などを受けるバングラデシュなどは除外され、対象となるのは中国とパキスタンのみとなります。
パキスタンとの取引はあまりないので、現実的に政府調達で関係するのは中国に絞られます。
つまり、中国との対立姿勢を鮮明にした法律となるわけです。
インドが中国企業の締め出しにかかるのは、国境係争地での衝突が背景にあります。
ただ、これは諸刃の剣とも言え、どこまで続くかは分かりません。
2020年6月
TikTokなど中国製アプリ59の使用を禁止
2020年6月末、インド政府は動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」など中国製の59アプリの使用を禁止しました。
軍事的衝突にからむ措置と思われますが、インド政府は
「インドの主権や国防、社会的秩序に損害を与える」
と、今回の措置の理由を説明しています。
国境紛争が貿易対立に発展する可能性
中国とインド両軍による国境の係争地域での衝突が貿易にも波及し始めています。
インド政府は通信や自動車分野で中国企業を締め出す制裁措置を検討し、中国製品の関税引き上げも視野に入れています。
ただ、インド国内では中国企業を排除すると経済が回らなくなるとの懸念もあり、最終的にどういった対応になるかは分かりません。
印中両軍の6月15日の衝突ではインド側の20人が死亡しました。こういった両軍の衝突で死者が出るのは45年ぶりの事です。
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