ここではインドとアメリカの貿易摩擦問題について取り上げます。
アメリカの貿易戦争姿勢はインドとも存在し、それによって政治的な対立等が懸念されます。これがインド株式やインドの通貨ルピーにどう影響するのかを見ていきたいと思います。
アメリカとインドの摩擦、2019年6月以前の整理
2018年インドとアメリリカの貿易総額 | 約1420億ドル |
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2018年3月 | 鉄鋼・アルミニウムの関税をほぼ一律で引き上げ |
継続中 | ロシア製地対空ミサイルシステム「S400」の購入 |
アメリカはトルコと同様、ロシア製のミサイルシステムをインドが購入検討している事に懸念を示してます。
アメリカにとってインドは対中包囲網を作る為の戦略の要となるパートナーです。このため、インドを追い詰めて、中ロに接近させるのは得策ではないという思いもあります。
こうした政治的摩擦も踏まえて、総合的に貿易摩擦の問題が語られていく事になるでしょう。
GSPとは新興国の発展を促すために設けられた制度です。
対象となった国からの輸入品の一部にかかる関税を免除する仕組みで、アメリカ政府によると、2018年のGSPの対象となったインドからの輸入額は約62億ドル。
これは米国にとって最大の数値です。
2020年7月
通商合意近いとのコメント
2020年7月21日、インドのゴヤル商工相はインドとアメリカは2年にわたる通商交渉を経て、合意に近づいていると明らかにしました。
関係者によると、インドはアメリカにジェネリック医薬品に関して譲歩を求めており、その見返りとして乳製品市場の開放や農産品の関税引き下げなどを提案しているようです。
両国はまた、アメリカがインドに対する「一般特恵関税制度(GSP)」の適用を復活させることも協議中との事です。
GSPの下、インドはあらゆる製品を無関税でアメリカに輸出することができていましたが、トランプ政権は昨年、インド市場へのアクセスに障壁があるとしてインドをその適用から除外しました。
ゴヤル氏はインド政府とアメリカ政府は50ー100項目の製品・サービスについて、締結まで数年かかるFTAを目指すよりも、まず特恵貿易協定の締結を目指すべきとの考えを示しています。
2020年4月
貿易摩擦が緩和の方向
フェイスブックがインド大手財閥のリライアンス・インダストリーズの傘下企業に57億ドルを出資する事が報道されましたが、裏には米印貿易摩擦の雪解けがありそうです。
2020年2月のトランプ氏のインド訪問で、米印関係は急速に雪解けに進んだようです。
2月の首脳会談では新たなエネルギー供給や武器の売買で合意し、直後にインド政府は小売業の外資規制を緩和しました。
さらに今後、「大型の貿易交渉」も進めているようです。
2020年4月のフェイスブックからの出資受け入れも、こうした動きと無縁ではありません。
リライアンス・インダストリーズはモディ首相がかつて州首相を務めた西部グジャラート州に巨大製油所などを持ち、創業家のアンバニ家と首相は親しいことで有名です。
一方、インド政府の中国対する姿勢は厳しくなっています。
外資規制を見直し、中国企業によるインド企業への出資は認可制となりました。
外国からの投資を呼び込む一方で各国への対応は少しずつ変えています。
2020年2月
高関税や5Gなど難題は持ち越し
2020年2月25日、トランプ大統領とモディ首相がインドで会談し、液化天然ガスの新規供給や30億ドル規模の武器輸出などで合意しました。
トランプ氏は貿易協定の締結に楽観的だと主張したものの、インドの関税政策や5Gなどの懸案は軒並み解決を持ち越し、課題を残した首脳外交となったようです。
今回は、インドに対潜ヘリなど30億ドル規模の米国製兵器を輸出すると合意したほか、新たにエクソンモービルを通じて同国にLNGを供給することも決ましました。
課題
インドの高関税政策への対応です。
インドの平均関税率は17%(2018年)と高く、20年に入っても玩具や携帯電話部品などの関税率をむしろ引き上げると表明しています。
モディ政権は自国産業の保護政策を2期目の原動力としているのです。
そのためアメリカは2019年6月、インドに適用していた途上国向けの関税優遇制度を打ち切り、同国市場の開放を要求しました。
今回もアメリカは乳製品などの市場開放を求めて事前交渉しましたが、インドはノンバンクの経営破綻などで景気不安のさなかにあり、自国製品を優遇するアメリカの説得に力はなく、インドは関税や外資規制などの産業保護策を今回も堅持したようです。
トランプ大統領訪印で貿易協議を集中的に議論
2020年2月24日からトランプ大統領が訪印し、貿易問題を集中協議するようです。
アメリカはインド製品の関税優遇措置を打ち切って圧力をかけていますが、インド側は市場開放に後ろ向きのようです。
モディ政権は中ロとも関係強化を行いアメリカをけん制します。
アメリカ政府高官は、エネルギーと経済の関係強化が主題になると明かしています。
インドは原油の調達を中東に頼ってきましたが、アメリカはイランへの経済制裁を強めつつ、シェールオイル・ガスの購入をインドにも求めています。
首脳会談ではインド側がアメリカからのエネルギー調達を大幅に増やすと表明する見通しのようです。
一方でインドは貿易の最恵国待遇の適用再開を求めていて、モディ政権がどこまで市場開放で譲歩するかも焦点となりそうです。
アメリカとインド、大規模な貿易協定締結を検討中
2020年2月18日、トランプ大統領は、アメリカとインドが大規模な通商協定の実現に取り組んでいると述べました。
ただ、時期は未定です。
トランプ氏は24日からインドを初めて公式訪問する予定です。
交渉担当者らは、インドの鶏肉・乳製品市場への米国のアクセスを拡大する部分的な合意をまとめようと取り組んできましたが、進展は発表されていません。
インドにとってアメリカは中国に次ぐ第2の貿易相手国で、2018年のモノ・サービスの貿易総額は過去最大の1426億ドルに達しました。
2019年のアメリカの対インド貿易赤字(モノ)は232億ドルと、貿易相手国の中で9番目の規模となっています。
2019年6月
トランプ大統領、インドの対米報復関税は受け入れられない
2019年6月27日、トランプ大統領はインドの報復関税について、「容認できない」として撤回を求めました。
その上で、モディ首相と協議するのを楽しみにしている、と表明しました。
外相会議で溝深い事を印象付ける結果に
6月26日、ポンペオ米国務長官とインドのジャイシャンカル外相が会談しました。
懸念材料である貿易摩擦やロシア製ミサイル問題などについて協議しましたが結論を先送りした形です。
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6月19日、アメリカがインド人技術者向けのビザ発給制限を検討??
アメリカ政府がインド人技術者向けのビザ発給制限を検討しているとの報道がありました。
もしこれが本当になると、米印関係は更なる悪化となる可能性が高くなります。
2019年6月16日、インドが報復措置の内容を発表
2019年6月16日、インド政府はアメリカからの輸入品に対する関税を引き上げました。
対象はアーモンドやリンゴなどの30品目弱です。もちろん、これはアメリカがインドに対して取っていた特恵関税を廃止した事に対する報復関税でしょう。
インドが報復措置を発動を検討
インドはアメリカの特恵関税廃止への対抗措置として、一部のアメリカ製品に対する輸入関税を6月17日の週から引き上げることを検討しているようです。
ただ、アメリカとインド派防衛・エネルギー分野での関係強化を目指し、ポンペオ米国務長官が訪問する予定で、タイミングとしては微妙な形です。
これが両国関係の安全保障にまで影響が及ぶと話がややこしくなります。
因みに、報復関税の対象は最大29品目で、アーモンドやクルミ、豆類などが含まれるとみられます。
アメリカ、インドへの特恵関税制度(GSP)を廃止
2019年6月5日、アメリカがインドに対する一般特恵関税制度(GSP)の適用を終了しました。
インドが幅広い貿易障壁を設け、アメリカの輸出に悪影響を及ぼしていると判断した為です。
GSPは発展途上国の経済発展を後押しするため、一定条件を満たした対象国からの輸入品の関税を一部免除する制度です。
アメリカはインドが自国産業について保護主義的な政策を採っているとして是正を求めていましたが、しっかりとした対応をインド政府が取っていないという事で今回の措置に踏み切ったという事です。
ただ、2019年3月にこの制度の適用終了を同国政府に通知していたので突然降ってわいたというものでもありません。
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