インドの経済・財政政策のまとめ2019

ここでは、インドの経済政策や財政政策一般についてまとめていきたいと思います。

2019年はモディ首相が二期目を決めた年として、今後どういった政策で臨むのかなどが注目される年です。ここではインドの成長戦略を考える上でも重要な経済・財政政策に的を絞ってフォローしてきます。

この記事はタイムライン形式で追記していきます。

モディ政権(二期目)の経済政策概要

政権の顔ぶれ

二期目のモディ政権ですが、閣僚の顔ぶれは1期目から劇的に変わったわけではありません。

一期目から続く課題と選挙公約の実現への取り組みを優先するものとなり、大きなサプライズ人事もなく、ベテランと若手のバランスが取れた内閣で、マーケットからはおおむね評価を受けている印象です。

MEMO
特に、鉄道、陸運、電力、エネルギーなどインフラ関連の主要閣僚が再任されたことは、第1期の政策が踏襲される事を示唆しており、前向きに評価されているようです。

財政

投資家は政府が財政緊縮にどの程度コミットするか注目しています。

経済成長が減速しているので、公共投資を増やしたい所ですが、歳出拡大余地は限られています。

2019年度の赤字幅
2019年2月に発表された暫定予算案では対GDP比3.4%と想定されています。

成長戦略や格差是正を望まれつつ、財政出動には限界があるため、どの様に調整するかが注目されるのです。

税制改革

税制改革に対する国民の期待値も高いようです。

現行の税法は複雑で、抜け穴も多いのです。

2019年度の予算案で直接税法の簡素化、税控除の撤廃、課税ベースの拡大に関する政府案が盛り込まれる予定です。

消費活性化政策

2019年7月時点で、過去数ヶ月間に発表した消費関連指標はいずれも弱く、個人消費の減速を裏付けるものとなっています。

投資家は政府による個人消費刺激策がどういったものになるか注目しています。

また、消費低迷の一因が地方経済にあるため、政府が新予算案で農家所得を増やす対策を盛り込むことも期待されています。

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但し、その場合は財政赤字が拡大する恐れが出てくるので、それはそれで心配です

インド準備銀行は、景気対策のため消費者向け信用のリスクウエイトの引き下げや、銀行のノンバンクへの貸し出し規制緩和を発表したりしています。

民間投資促進のために必要なこと

インドが民間投資を本格的に拡大するには、非合理な規制や許認可手続きの整理、契約の円滑な履行、輸出企業の育成、物流インフラ整備など、抜本的な改革が必要とされています。

しかし、土地と労働の制度改革は先送りが続き、国有銀行の民営化もなかなか進みません。

民間企業の活動は非常に重要です。

これが上手くいかないと、労働人口の45%が従事する生産性の低い農業部門にずっと従事したままで、経済全体の生産性も上がりません。

その他の公約

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報道で拾えたものをリストアップしてみました。粗い点はご容赦ください。
  • 2024年までにスタートアップを5万社増やす
  • 国有企業の民営化
  • 土地の所有者を明確にして譲渡しやすくする「土地改革」
  • 雇用の柔軟性を高める「労働法制改革」
注意
上記の内下の2つは1期目のモディ政権は関連法の改正を試みましたが、上院の壁に阻まれてきました。

2019年9月 法人減税を発表してインド株は急上昇

205億ドル規模の法人減税を発表

2019年9月20日、インド政府は法人実効税率を現行より5%ほど低い約25%に改めると発表しました。

景気刺激の一環として、また投資促進の効果も狙います。

加えて新規企業への優遇税制やキャピタルゲイン減税など幅広い対応も見られます。

モディ首相の目玉政策の一つである「メーク・イン・インディア」が低迷していることを踏まえ、製造業での投資をテコ入れしたい意図がにじみます。

政府保有株、市況悪化で延期の可能性

財務省は、電力のNTPCや保険のゼネラル・インシュアランスといった一部国有企業の政府保有株売却計画が、最近の市場環境悪化のために、延期される可能性があるとの見方を示しました。

政府の財政負担の軽減を行うために実施されるものですが、ここ最近のインドマーケットの状況を鑑みて、その様な可能性を示唆したものと思われます。

財政目標未達となる可能性

インド政府は、今年度の財政赤字目標を達成できない可能性が高そうです。

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理由は何でしょうか??

景気の急減速によって税収が大きく落ち込んでいるためです。

4-6月期の成長率が5%と、6年ぶりの低い伸びにとどまったことで、政府は年末にかけて追加の刺激策を迫られ、財政赤字の対GDP比目標を現在の3.3%から3.5%に修正せざるを得なくなる可能性があるとの事です。

2019年8月

新しい景気刺激策を発表

2019年8月23日、インド政府は新しい景気刺激策を発表しました。

主な内容としては、

  • 自動車ローン金利低下を促すための国営銀行への7,000億インドルピー(約1兆円)の資本注入
  • 車両登録料引き上げ時期の2020年6月までの延期
  • 小売業への海外企業進出を促すための基準緩和
  • 国営銀行の統合推進し、経済への金回りをよくする
  • 海外機関投資家に対する証券投資に係る増税案の撤回(証券市場への資金呼び込み)
  • スタートアップに関する税引き下げ
  • 住宅産業向けの優遇制度を設定

等です。

シタラマン財務相は、海外投資家に課している高い税負担を免除し、低迷する金融市場のテコ入れを行いたい考えです。

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注目される自動車産業についてはどうでしょうか

自動車産業については、政府が古い車からの買い替えを進めるなどテコ入れ策を導入する予定です。

住宅産業や中小企業でもローン負担の軽減などにつながる措置を検討しており、幅広く金回りの良い経済となるように目くばせします。

国有企業1兆6000億円分を売却意向

インド政府が国営企業の民営化を加速させようとしています。

2019年度(19年4月~20年3月)に航空会社やセメントメーカーなど23社を民間に売却する計画です。

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売却額は1兆500億ルピー(約1兆6000億円)ほどだそうです。

国有赤字企業の売却で政府の財政負担を軽減し、民営化で効率的な経営を促して経済の活性化につなげたい思惑です。

参考データ

  • 政府が51%以上出資する国営企業は約260社
  • 1兆500億ルピーの売却が実現すれば、単年度の売却額としてはモディ政権下では最大規模
  • 売却対象の23社のうち7社は赤字

赤字企業の中で最も政府を悩ませていたのがエアインディアです。

政府は年180億~578億ルピーを支出して経営を支えてきており、財政への負担は相当重いものでした。

エアインディア以外だと、

  • セメントメーカーのセメント・コーポレーション・オブ・インディア
  • 三輪自動車を製造販売するスクーターズ・インディア
  • ヘリコプター運航会社パワン・ハンズ
  • 太陽電池などを製造するセントラル・エレクトロニクス

などです。

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いずれも民間企業が多い分野です。
注意

民営化計画が思い通りに進むかは分かりません。

実際にエア・インディアは2018年にも売却を計画したものの、売れませんでした。

インドの経済成長が鈍化するなか、赤字企業には買い手がつかない可能性もあります。

ノンバンク対策が急務に

インドでノンバンクを巡る問題が景気の足かせになっているようです。

インフラ金融大手の経営悪化がノンバンク業界全体の資金繰り問題に波及し、とくに自動車ローンの減少が新車販売に急ブレーキをかけているようなのです。

当局は金融市場への資金供給を通じた対応策を中心に様子を見ていますが、効果はまだ出ていません。

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このままでは、自動車以外にも余波が広がる懸念があります。

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そもそもなぜ、ノンバンクがそんなにインドでは広がったのでしょうか。

インドの銀行は不良債権問題から自動車ローンの新規実行に慎重になり、それを埋める形でノンバンクが貸し出しを急拡大してきたのです。

ただ、このノンバンクが凄く勢力を付けているにもかかわらず、かなり大きな問題であることは昔から把握されていました。

MEMO

ノンバンクの資金繰りが悪化したきっかけは、2018年に起きたインフラ開発などに融資するノンバンク、IL&FSのデフォルトでした。

上記を機にノンバンク全体の株価や格付けが下がってしまい、新たな資金調達が難しくなるというジレンマに陥ったのです。

自動車ローンを手がけるノンバンクも銀行融資やCPなどを通じて資金を調達しにくくなり、結果的に自動車ローンを縮小させざるを得なくなっているのです。

景気全体に悪影響が及ばないように、国としてもしっかりとした対応を取ってもらう必要があるでしょう。

2019年7月 予算案を発表

初のグローバル債券を発行し、資金調達の多様化を図る

インド政府が財政赤字の圧縮を進め、初のグローバル債を発行するなど、経済成長回復に向け外国からの投資を増やす施策を実行します。

2019年7月5日、シタラマン財務相は就任後初の予算演説を行いました。

主なポイントは以下の通りです。

  • 海外からの投資を促進するために初のグローバル債券を発行
  • 資産売却に伴う収入目標は、1兆500億ルピー(約1兆6600億円)と、2月の暫定予算(9000億ルピー)から引き上げ
  • インド準備銀行など金融機関から配当1兆600億ルピーを受領
  • 歳出総額の見積もりは33兆2000億ルピー
  • 公債発行額は7兆1000億ルピー(暫定予算での計画と変わらず)
  • 保険仲介事業を外資に開放
  • メディア業界への投資規制を緩和
  • インフラ投資は年間20兆ルピーが必要になりそう

今年度本予算案を発表

財務省は2019年7月5日に今年度本予算案を発表しました。

インドのその年の施策等を概観するためのかなり重要なものです。

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どんな内容であったか、簡単に概略から。
2019年度予算案

  • 電子化などを推進し、手続簡素化を行って『官僚主義』の打破を図る
  • インドの経済規模を数年以内に5兆ドルに引き上げる
  • 経済成長ペースの加速に向けてインフラ、雇用創出、デジタルコンテンツ分野を重視
  • 国内資金のみならず海外資金の導入を積極的に推し進めるため、グローバル債券を活用

MEMO
歳出総額は27兆8千億ルピー(約43兆円)で、前年度予算から13%増えています。

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もう少し詳細に見ていきましょう

インフラ関連では、

  • 高速道路計画の見直し
  • 道路及び鉄道などの輸送インフラから水道やガスなど生活インフラへのシフトを重視
  • 鉄道関連では2018~30 年の間に総額50 兆ルピーの投資資金が必要
  • 水道及びガス関連は今年度中に開発計画を仕上げる方針
  • インフラ投資全体では、今後5年で総額100 兆ルピーを投資
  • 道路は同5年間で総延長12.5 万km の拡充に8025億ルピーを投資し、鉄道では資金調達の多様化を図る

といった事が示されました。

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上記の「今後5年で100兆ルピーの投資」というのは、5月の選挙での公約「インフラに5年で100兆ルピー」の再表明ですね

雇用拡大については、

  • 中小企業育成に向けて、来年度までにGST(財・サービス税)に関連して3500 億ルピー相当の補助金を拠出
  • 年間20 兆ルピー相当の投資規模の拡充に向けて、海外投資家のへの門戸開放
  • メディア、航空、保険向けの認可拡大
  • 証券投資関連の基準を統一しより開かれた業界に

不良債権問題では、

  • 今年度中に国営銀行に7000 億ルピー規模の公的資金注入
  • 中央銀行と政府間での金融セクターの監督権限を巡る問題の解決
  • 特に準備銀行にノンバンクをはじめとするシャドーバンキング及び住宅ローン関連の監督権限強
    化を図る
  • 一連の対応で必要となる財源は、政府が保有する国営企業の株式売却を通じて1.05 兆ルピー程度を確保
  • 国際金融市場での外貨建借入などを通じた資金調達の拡充も検討

家計向けには、

  • 電動自動車購入ローンの税控除
  • 住宅ローン金利の減免
  • 高額所得者に対する累進課税の強化により税収を確保

といった所です。

MEMO
いずれもものすごく目新しいもの、といった感じではないというのが今の所の多くの人々の意見のようです。もう少し具体的な細かい政策が今後出てきたところで、改めて評価が下されていくと思われます。

年次報告書で、前年比7.0%の成長も可能

インド財務省は、2019年7月4日に年次報告書を発表し、その中でマクロ経済環境と政府が進める構造改革を勘案すれば、経済成長率が前年比+7.0%と前年(同+6.8%)から加速するとの見通しを示しました。

その中で、昨年の景気減速の要因は

  • 世界経済の減速
  • 貿易摩擦を巡る不透明感
  • ノンバンクセクターにおける流動性懸念

であるとまとめています。

今年度については、景気は上下どちらにも行く可能性があるとしつつ、モディ政権の政治的安定性とモディノミクスが追い風となって行くとしました。

2019年6月

エアインディアの民営化、再び手続き開始

2019年6月27日、インド政府は国営航空エア・インディアの民営化に向けて、再び売却手続きを始めると発表しました。

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この動きは今に始まったものではなくて、2018年からやっていました。しかし、赤字体質のエアインディアを買う会社がなかなか出てこず、挫折していたのです。

政府は同社の業績や運航業務が改善し、今手続きを進めれば売却が出来民営化できると判断したようです。

2019-20年度の財政赤字拡大

インドのニルマラ・シタラマン財務大臣は、2019年7月5日に公表予定の2019-2020年度予算案で、財政赤字が当初想定していたよりも拡大するとの見通しを示します。

背景は景気低迷による税収の落ち込みです。

(旧) (新)
19-20年度の財政赤字 3.4% 最大3.6%

3.6%の赤字が容認されると、減税や投資奨励策などのために約4200億ルピー(60億ドル)の予算が確保できるという事で、モディ首相が二期目の選挙を戦った時の公約実現の資金が確保できるわけです。

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