アルゼンチンの通貨危機、財政危機の経緯とまとめ(2018年~)

この記事では、現在のアルゼンチンの通貨危機に関する経緯とまとめを記したいと思います。

新興国通貨や新興国株への投資で気を付けなければいけないのは通貨危機。新興国ならどの通貨も潜在的なリスクは先進国よりは高め。

こういった危機がどういう時に起きるのか、また起きた後どうやって復活していくのかを見ていくためにこの記事を書いています。

新興国への投資を行う上で重要な知見をこの記事でまとめていきたいと思います。

主に新しいイベントが上に来るように、順次更新していきます!

2018年以降の経緯を網羅的にご覧いただきたい場合は以下をご参考ください。

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アルゼンチンペソ 通貨危機の概要まとめ

アルゼンチンペソ・日本円の為替チャート

【直近5年間のアルゼンチンペソー日本円のチャート(出所:TradingView)】


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かなりアルゼンチンペソが下落しているのが分かると思います。2015年より前の水準にしっかり戻れるでしょうか。。。

アルゼンチンペソ急落 アメリカなど先進国の金融政策が影響

2018年4月から始まるアルゼンチンペソの急落・通貨危機は、アメリカなど先進国の金融政策の変更によって引き起こされたものと言えます。

具体的には、アメリカを中心とした先進国が利上げをしたために、資金の逆流が発生し、アルゼンチンにあった資金が急激に先進国に戻り、結果としてペソが急落したのです。

その意味では、1997年から始まったアジア通貨危機と本質的には同じと見ることが出来ます。

アルゼンチンのファンダメンタルズも悪い

ただ、そうは言っても全ての新興国が通貨危機に陥っているわけではありません。

では、なぜアルゼンチンだけこんなに通貨が急落したのでしょうか。

1つはアルゼンチンは国際経済・金融の世界で、長年、典型的な問題児といわれ続けて来ました。

経常収支の赤字、財政赤字、高インフレ、これまでの歴史

アルゼンチンは、慢性的に経常赤字・財政赤字が大きく、インフレ率も高い国です。

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つまり、経済のファンダメンタルズが弱いのです。

これまでも国として7回、デフォルト(債務不履行)を起こしています。

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何度も同じことを繰り返しており、これが問題児と呼ばれる所以です。

通貨急落を受けた、アルゼンチンの金融政策

詳細は、以下に記している経緯をご覧頂きたいと思いますが、2018年4月の通貨急落を受けて、アルゼンチン当局は主に以下の事を行いました。

  • 金利を大幅に引き上げ
  • IMFに支援を要請(緊急融資を依頼)
  • 日次で政策金利を変更

これによって、少しずつですが通貨のボラティリティを下げていくという手法を取っていきました。

2019年10月の選挙で改革派のマクリ氏が敗北

こうした危機対応を主導していたのがマクリ大統領(当時)でした。

しかし、その経済政策は国民に不人気で、2019年10月の選挙でポピュリズム政策を掲げるフェルナンデス氏に敗北しました。

政治によって新興国通貨は翻弄されます。

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トルコがいい例ですよね。

よく見ておかなければなりません。

フェルナンデス大統領の就任時の主要政策(2019年12月)

2019年12月10日に、左派のアルベルト・フェルナンデス大統領が就任しました。

就任演説ではポピュリズム色が目立った政策で、マーケットは警戒を強めています。

実際、同日の株価指数は5%近く下落してしまいました。

以下が、同大統領の掲げる主な政策です。

債務問題

国の経済成長が戻るまで返済は行わないとしています。

貧困層支援

低い利率で融資が出来るような特別なシステムを構築

若年層支援

補助金を使って、雇用を保証

インフラ事業

道路の補修、公的な建物を補修、低所得者向けの住宅を建築

2024年9月

欧州企業が大型投資を決定

アルゼンチンが国内投資を呼び込むため、税制改革に動いています。

このほど成立した大型投資への税優遇策を受けて、欧州の自動車メーカーが相次ぎ設備増強などを決めました。

豊富な資源分野などでも投資対象国として存在感を高める狙いです。

2025年に財政黒字目標

アルゼンチン政府は9月16日までに2025年度の予算案を発表しました。

ミレイ大統領が2025年に財政黒字化を達成し、2025年のGDP成長率が5%になるとの見通しを示した。

年金改革など計画の妨げになりうる法案には拒否権を発動するとしており、引き続き国民は我慢が必要だと訴えました。

インフレ率、237%

9月11日、8月の消費者物価指数が前年同期と比べて236.7%増だったと発表がありました。

4カ月連続で前月の上昇率を下回りました。

ミレイ政権発足以降の300%近いインフレは鈍化傾向にありますが、依然として国民生活を圧迫していると言えます。

2024年8月

インフレ率は263.4%

8月14日、7月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同期と比べて263.4%だったと発表がありました。

3カ月連続で前月の上昇率を下回りました。

住宅や光熱費は300%以上の価格上昇が進んでいる状況です。

国内では賃金の伸び率が低迷しているようで、それによって国民の購買意欲と購買力が低下しており、インフレ圧力が和らいでいると思われます。

なお、1〜3月期のGDPは前年同期比5.1%減と、マイナス成長です。

2024年6月

GDPは5.1%減少

6月24日に発表された1~3月期のGDPは前年同期比で5.1%減少しました。

インフレに賃上げが追いつかず、個人消費が落ち込んだためです。

また、ミレイ大統領による大規模な緊縮策も響いたと言えるでしょうが、これは想定の範囲内でしょう。

【直近5年のGDP成長率の推移】

インフレ率は276%に鈍化

6月13日、5月のCPI上昇率が前年同月比で276.4%だったと発表されました。

10カ月ぶりに伸びが鈍化しました。

ミレイ政権の緊縮策が奏功しているとの声が上がっています。

【直近5年のインフレ率の推移(出所:TradingView)】

緊縮策が奏功

ミレイ大統領が就任して6月10日で半年を迎えました。

ショック療法と銘打つ厳しい緊縮政策によって財政収支の黒字化を達成しており、今のところはうまくいっています。

一時的な景気悪化を覚悟のうえで懸案の高インフレを抑え込んでいると言えます。

新たな公共工事を止めたほか、公共交通機関や光熱費などの補助金を減らし、現在も省庁の半減や7万人超の公務員削減にも動いています。

2024年5月

IMFが8億ドル支援

IMFは新政権での取り組みの成果が期待以上であるとして、6月にも約8億ドルの支援を承認することで合意しました。

アルゼンチンの経済再建に向けた改革が進展を見せ始めており、アルゼンチンにとっては前向きなニュースと言えます。

今後も緊縮財政を維持しつつも、高インフレに対応する難しい政策のかじ取りが今後も求められます。

インフレ率が9か月連続で前月対比で上昇

5月14日、4月の消費者物価指数が前年同月比で289.4%上昇したとの発表がありました。

9カ月連続で前月の水準を上回り、食料品や光熱費の急激な上昇が国民生活を直撃しています。

2024年4月

財政赤字解消

アルゼンチンのミレイ大統領は2024年1~3月に財政黒字を達成したと明らかにしました。

ミレイ政権は公共事業や補助金を削減するなどして財政支出の縮小を進めており、3月は2750億ペソ(約490億円)を超える黒字を達成したようです。

ミレイ氏は23年12月に就任して以降、小さな政府を標榜して改革を進めてきており、各種補助金を減らしたりして、国民に負担増も求めています。

同氏は、24年には財政黒字化を達成すると公表していました。

インフレ率が加速

4月12日発表した3月の消費者物価指数は、前年同月比で287.9%の上昇となりました。

2023年12月以降、上昇率が200%を超える大幅なインフレが続いています。

政策金利を70%に引き下げ

中央銀行は4月11日、政策金利を10%引き下げて70%にしました。

ミレイ大統領の就任以降、3回目の引き下げとなります。

インフレは前年同月比では加速しているものの、月間では低下傾向にあるとして利下げに踏み切りました。

2024年3月

引き続きの高いインフレ率

3月12日に発表された2月の消費者物価指数は前年同月比で276.2%の上昇でしあt。

1991年3月(287.3%)以来、約33年ぶりの大きな上昇率です。

【2000年以降のインフレ率の推移(出所:TradingView)】

ミレイ大統領が物価抑制のための補助金を減らし、公共交通機関の料金やエネルギー価格が上昇しました。

同補助金は国民を物価高から守るためのものと位置づけられていましたが、足下では逆に動いてしまいました。

2024年2月

33年ぶりの物価上昇率に

2月14日発表された1月の消費者物価指数は前年同月比で254.2%の上昇となりました。

1991年4月(267%)以来、約33年ぶりの大きな上昇率です。

2023年12月発足のミレイ政権が通貨を切り下げたため、輸入品を中心にインフレが一段と加速している状況です。

2024年1月

インフレ率200%以上

アルゼンチンのインフレが加速しています。

1月11日発表された2023年12月の消費者物価指数は前年同月比で211.4%の上昇となってしまいました。

1991年5月(232.1%)以来、32年7カ月ぶりの大きな上昇率です。

2023年12月発足のミレイ政権が通貨を切り下げたため、輸入物価が上がったのが響いたと思われます。

2023年12月

300の規制を撤廃

ミレイ大統領は12月20日、国民向けにテレビで演説しました。

この中で、300超の規制撤廃を目指す緊急経済対策を発表しました。

国有企業の廃止と民営化など具体的に30項目の法改正を示し、財政赤字の削減につなげます。

ミレイ氏は、過去100年の危機にわたる一連の危機はすべて財政赤字が起源だと述べ、改めて過去の政権を批判しました。

この上で公営企業の民営化を禁止してきた規則を撤廃し、すべての国有企業を株式会社に転換し、その後民営化すると踏み込みました。

IMFにすぐに返済

カプト経済相は12月13日、IMFから実行のあった融資9億1200万ドルについて、12月21日にも返済する方針を明らかにしました。

一方で440億ドル規模の融資の取り決めについては再交渉を目指すとしていますが、政府が目指すIMFプログラム修正の内容には触れず、21日の返済資金の財源にもコメントしませんでした。通貨切り下げ

アルゼンチン新政権のルイス・カプト経済相は12月12日、通貨ペソの公式レートを1ドル=800ペソと現状よりも対ドルで5割強切り下げると発表しました。

緊急の経済対策で省庁も18から9に減らします。

燃料や公共交通機関など国民向けの補助金も削減し財政を健全化することが目的です。

ミレイ大統領誕生

12月10日、経済学者出身のハビエル・ミレイ氏(53)が大統領に就任しました。

4年ぶりに極左から右派への政権交代となります。

目下年率140%超の高インフレや債務問題に直面している国で、課題が山積する中での船出となります。

外交では親中路線の前政権から転換し、米国重視にカジを切ると見られています。

選挙戦で主張してきた経済のドル化や中央銀行廃止については時期や方法を検討している様子で、現実路線を模索しているようです。

燃料や公共交通機関など国民向けの補助金を削減して、歳出を減らすことで財政を少しでも健全化し、GDP比で5%の財政調整に動く考えを示しています。

また、基本的に小さな政府を志向しており、国営企業の民営化も進める方針とのことです。

2023年11月

ミレイ氏が次期大統領に

次期大統領に右派のハビエル・ミレイ下院議員(53)が決まりました。

元々、左派で分配重視のマサ氏と、自由主義経済が柱で右派のミレイ氏による一騎打ちの構図となっていました。

ミレイ氏が決選投票で勝てた背景は第1回投票で3位の中道右派票がミレイ氏に流れた点が大きいと思われます。

ミレイ氏は世界有数の水準のインフレや通貨安で経済苦境に陥るなか、中央銀行の廃止や経済のドル化など過激な主張を唱えている人物ですが、彼が大統領になることで、これまで中国寄りだったアルゼンチンの路線は一転し、米国との関係改善が進む見通しです。

通貨ペソの非公式レートは前日と横ばいで推移しました。

ただ選挙後初の平日となる11月21日は、どうなるか分からないと警戒する人もいるようです。

アルゼンチンのインフレが深刻

11月13日発表された2023年10月の消費者物価指数は、前年同月比142.7%の上昇でした。

これは1991年8月(144.4%)以来、約32年ぶりの大きな上昇率です。

中央銀行が8月に実施した通貨切り下げの影響などで、商品やサービスの価格が軒並み上昇していることが影響しています。

【1991年以降のインフレ率の推移(出所:TradingView)】

2023年10月

大統領選が不透明で株などが下落

アルゼンチンで金融市場が不安定になっています。

10月23日は主要株価指数が1割超も下げてしまいました。

ペソも売られており、対ドルの非公式レートは大幅に下落しています。

背景としては、10が鵜22日投開票だった大統領選挙が事前の世論調査とは異なる結果となり、経済の先行き不透明感が強まったことがあるものと思われます。

22日の大統領選では当選者はおらず、11月19日に決選投票が行われます。

得票率約37%で首位だった反米左派の与党連合セルヒオ・マサ経済相(51)、約30%だった右派の野党ハビエル・ミレイ下院議員(53)が決選投票で戦います。

大統領選は三つ巴でポピュリズム台頭を警戒

アルゼンチンの大統領選が22日に投開票されます。

主要3候補の接戦が繰り広げられており、中央銀行の廃止などを訴える右派ハビエル・ミレイ下院議員(52)が首位に立っています。

干ばつや年率100%を超えるインフレに直面して経済状況は厳しいため、過激な主張になびく有権者が目立っており、注意が必要です。

2023年9月

インフレ率、32年ぶりの高さ

9月13日発表された2023年8月の消費者物価指数は、前年同月比124.4%上昇となりました。

1991年8月(144.4%)以来、32年ぶりの大きな上昇率です。

【直近10年のインフレ率の推移(出所:TradingView)】

中央銀行が8月に通貨を切り下げたため、輸入物価の上昇でインフレが加速しているようです。

2023年8月

借り換え75億ドルをIMFが正式承認

IMFは8月23日開いた理事会でアルゼンチン向けに借り換え融資の75億ドルの払い込みを正式に承認しました。

干ばつや通貨安で経済情勢が悪化しており、IMFは引き続き再建を支援する考えです。

ハビエル・ミレイ氏がIMFに経済政策を説明

アルゼンチン大統領候補のハビエル・ミレイ下院議員が8月18日、IMFとオンラインで協議しました。

同氏は、中央銀行廃止や経済のドル化など自身の経済政策を標榜しています。

インフレ率が6か月連続で100%を超える

8月15日発表された2023年7月の消費者物価指数は、前年同月比113.4%の上昇でした。

13日の大統領選予備選挙で過激な主張の右派候補が首位となったことを受けて中央銀行は8月14日に通貨切り下げを実施しており、今後はさらにインフレが加速するとの見方が大半です。

【直近5年のインフレ率の推移(出所:TradingView)】

通貨が動揺

通貨ペソが再び動揺しています。

中央銀行は8月14日、ペソを対ドルで約2割切り下げました。

前日の大統領予備選挙で中銀廃止などを唱える右派候補が首位に立ち、通貨が実質的に切り下げられるとの見方が広がったことに対応した形です。

非公式のレートは8月15日に対ドルで8%程度下落し、1ドル=720ペソ程度となっています。

こうした状況を受けて、国民の間で通貨ペソへの信認が急低下し、貯蓄を守るため、ペソをドルに両替する動きが広がっています。

【直近5年のUSD-アルゼンチンペソの推移(出所:TradingView)】

予備選で右派が首位

アルゼンチンで8月13日、大統領選の予備選挙が実施されました。

極右と呼ばれる第三極のハビエル・ミレイ下院議員が首位となりました。

年率100%超というインフレに直面するなか、同氏の過激な主張に国民の支持が集まったようです。

主な主張内容としては、公共支出の大幅削減や中央銀行の廃止といったものから、人工妊娠中絶への反対などがあります。

同氏がどこまでIMFと協力的なのかは不透明で、マーケットでは不安視されています。

大統領選で与党は苦戦

アルゼンチンの大統領選挙は8月13日、18~70歳の全国民に投票義務のある予備選挙が予定されています。

干ばつや年率100%を超えるインフレが響いている中で、反米左派の与党連合は苦戦をしています。

予備選は10月22日の本選挙に向けた大規模な世論調査の側面もあり、野党が支持拡大を狙い動いています。

2023年7月

IMFが追加融資

IMFは7月28日、アルゼンチンに約75億ドルの金融支援を実行することで事務レベルの合意に達したと発表しました。

今後IMF理事会の最終承認が必要になるとのことですが、今年起きている干ばつで経済環境がかなり厳しいため、プログラムの条件を一部緩和するというものです。

インフレ率、過去30年で最大

7月13日発表された2023年6月の消費者物価指数は、前年同月比で115.6%上昇しました。

5月(114.2%)からさらに加速して、上昇率は過去30年で最も大きくなりました。

【直近5年のインフレ率の推移(出所:TradingView)】

干ばつや通貨安を背景に、食料品やサービスの価格が軒並み上昇しています。

2023年6月

インフレ率114%に

6月14日発表された2023年5月の消費者物価指数は、前年同月比で114.2%の上昇でした。

4月の108.8%からさらに加速し、上昇率は過去30年で最も大きかったようです。

【直近5年のインフレ率の推移(出所:TradingView)】

こうしたインフレ率の背景には食料品やサービスの価格の上昇があります。

上昇幅は16カ月連続で拡大しており、4カ月連続で100%を上回りました。

2023年5月

インフレ対応策を発表

アルゼンチン政府は5月14日、通貨下落やインフレ加速への対応策を公表しました。

通貨ペソの下落を緩和するために外国為替市場への介入を強化するとともに、中央銀行は政策金利を引き上げます。

国際金融機関などとも交渉して、外貨準備の増強も目指していく方針です。

政策金利は6%上がって97%となり、今年で4回目の利上げとなります。

【直近5年の政策金利の推移(出所:TradingView)】

2023年4月

ドルの流出防止へ人民元決済を導入

アルゼンチン政府は4月26日、中国からの輸入品の決済をドルから人民元に切り替えると発表しました。

中国はアルゼンチンにとって最大の輸入相手で、全体の2割強(2022年に約175億ドル)を占める国です。

通貨ペソの公式レートは1ドル=220ペソ程度と、年初から2割以上、ペソ安・ドル高が進んだのみですが、実態はより深刻と言われています。

例えば外国人向けのレストランや土産物店で用いられている非公式の相場は460ペソ程度で、価格差(スプレッド)は240ペソ程度と、1年前の80ペソ程度から広がっている状況です。

アルゼンチンの通貨安はもともとの財政の脆弱さに、主要産業である農業が干ばつで打撃を受けたことと、アメリカの利上げでドル高が進んだことが原因です。

特にペソの対ドル相場はFRBが利上げを開始した22年3月以降下げ足を速めており、強いドルがアルゼンチンの頭痛のタネになっている状況と言えます。

今後は、債務再編を巡る条件の修正に向けてIMFとの再交渉が必要になるとの見方が強まっていますが、もし再びデフォルトという事態になれば世界経済の混乱要因になりかねません。

10%の金利引き上げ

アルゼンチン中央銀行は4月27日、政策金利を10%引き上げました。

政策金利はこれで91%となりました。

【直近5年の政策金利の推移(出所:TradingView)】

闇市場で急落している通貨ペソの防衛が目的とみられています。

現在のインフレ率は100%を超えており、中銀は4月20日にも政策金利を3%引き上げてていましたが、それだけでは不十分と判断したものです。

経済が深刻化の中、利上げせざるを得ず

アルゼンチン中央銀行は4月20日、政策金利を3%引き上げて81%にすると発表しました。

3%上げた3月に続き、2023年に入って2度目の利上げとなります。

【直近5年の政策金利の推移(出所:TradingView)】

干ばつや通貨安による輸入物価上昇で加速するインフレを抑えこむ狙いがありますが、経済状況は深刻です。

アルゼンチンのフェルナンデス大統領は4月21日に、過去1世紀で最も深刻な干ばつに直面していると危機感をあらわにしています。

同国の国家干ばつ監視委員会が発表した3月時点の水不足の地域は全国で約1億3800万ヘクタールで、前年同月の2.5倍に達しています。

この干ばつで主力の大豆、トウモロコシ、小麦が軒並み打撃を受け、生産量が急減する見込みです。

飼料として穀物を利用する牧畜産業に影響するほか、輸出を通じた外貨獲得にも打撃となります。

一方で、インフレは急速に進んでおり、3月の消費者物価指数は前年同月比104.3%上昇しています。

2月(102.5%)に続いて100%を上回っており、過去30年で最も高い水準となっています。

【直近5年のUSDーARSの推移(出所:Tradingview)】

2023年3月

利上げ局面再開へ

アルゼンチン中銀は昨年10月に利上げ局面を休止していましたが、インフレ進行を理由に3月16日の定例会合で6ヶ月ぶりに利上げ再開を決定しました。

【直近5年の政策金利の推移(出所:TradingView)】

アルゼンチンの2月のインフレ率は+102.5%と約30年ぶりに100%を突破している状況です。

【直近5年のインフレ率の推移(出所:TradingView)】

2022年12月

フェルナンデス副大統領に有罪判決

12月6日、連邦裁は大統領在任中の汚職疑惑で起訴されたフェルナンデス副大統領に禁錮6年、終身公職追放の有罪判決を下しました。

ただ、不逮捕特権などを勘案すればフェルナンデス氏は副大統領に留まると見込まれており、上訴の行方如何では次期大統領選に出馬可能であるなど影響力を維持出来ます。

【年初来のUSD-ARPの推移(出所:TradingView)】

経済の立て直しの動きは前進する一方、インフレは進んでおりペソ相場は引き続き厳しい状況です。

このまま政治面でのゴタゴタが経済の足を引っ張る可能性に警戒が必要です。

2022年10月

債務再編で合意

日米欧などで構成するパリクラブ(主要債権国会議)は10月28日、アルゼンチン政府と19億7200万ドルの債務の再編で合意したと発表しました。

報道によると、金利が従来の9%から4.5%に下がるという事です。

アルゼンチンのマサ経済相は、我々の国と企業が、会議参加国との関係を正常化できると評価しています。

アルゼンチン側は2022年12月に支払いを始めて、28年9月に完了する予定です。

利上げ小休止も

アルゼンチン中銀は10月20日の定例会合で前月比でのインフレ鈍化を理由に利上げを小休止させました。

しかし、FRBのタカ派傾斜を受けた資金流出による通貨ペソ安が続きインフレも高止まりしている一方で、外貨準備は過小な上、政治・経済の両面で不透明感が高まるなかで厳しい状況が続く可能性は高いと見込まれています。

2022年9月

IMFがアルゼンチンの経済再建に関する決意を歓迎

IMFのゲオルギエバ専務理事とアルゼンチンのマサ経済相は9月12日、アメリカワシントンで会談しました。

ゲオルギエバ氏は、アルゼンチン政府が取り組む経済の再建について目標達成への強いコミットメント(決意)を歓迎するとの声明を公表しました。

マサ氏は8月3日に経済相に就任し、今回が両氏の初会談となりました。

IMFとの協調姿勢の維持が確認された形です。

2022年8月

引き続き視界不良で前途多難

グスマン経済相辞任の後も、なかなか経済の上向きは簡単にはいかなさそうです。

フェルナンデス大統領は経済危機対応を目的に経済相の権限を強化し、8月初めに下院議長であったマサ氏を経済相に据えています。

これによって与党内の対立は一旦休戦し、マサ氏は緊縮財政路線を維持したほか中銀も一段の金融引き締めに動いたものの、世界的な商品高も影響してインフレは一段と深刻さを増しています。

与党関連団体の扇動によるデモも激化しており、来年の大統領選に向けて対立再燃も予想され、経済の視界不良状態が続きそうです。

2022年7月

【2022年7月のUSD-ARSの推移(出所:TradingView)】

©Trading View

また経済相を交代

アルゼンチン政府は7月28日、7月4日に就任したばかりのバタキス経済相が退任すると発表しました。

後任には下院議長を務めるセルヒオ・マサ氏が就任します。

これまでは別の閣僚が担当していた生産開発省と農牧漁業省も新たに管轄することになり、より大きな役割を担う事になりそうです。

与党内では穏健派のアルベルト・フェルナンデス大統領と、急進的なクリスティナ・フェルナンデス副大統領との間で意見の相違があると言われています。

退任したバタキス氏は、副大統領と距離が近いとみられていました。

新しい経済相に経済学者を任命

アルゼンチンのフェルナンデス大統領は7月3日、左派の経済学者シルビナ・バタキス氏を経済相に指名しました。

グスマン前経済相の2日の辞任を受け、政治危機が深刻化し、経済や市場にも影響が波及しています。

同氏は2011年から15年までブエノスアイレス州の経済相を務めた経歴を持っています。

グスマン経済相が辞任

アルゼンチンのグスマン経済相は7月2日、辞任すると明らかにしました。

同氏は左派政権内では穏健派で知られ、強硬派の影響力が増している可能性があります。

IMFとの債務再編を主導してまとめており、今後のアルゼンチン経済の不安材料になりそうです。

グスマン氏は2019年12月に経済相に就任し、フェルナンデス大統領の右腕としてIMFや日米欧などで構成するパリクラブ(主要債権国会議)との交渉を担ってきました。

与党内には大幅な債務削減や利率の引き下げを求める声があがる中で、国際機関との間に入って交渉を軟着陸させてきたという経緯があります。

公表した7ページの辞表では、後任が備えるべき重要な要素として「連立政権における政治的合意」をあげました。

グスマン氏は、元大統領で大きな権力を持つクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル副大統領が率いる左派政党連合の急進派から強い圧力を受けていたとされています。

左派政党連合における内紛の存在をうかがわせます。

2022年6月

1-3月期の成長率は前四半期比で0.9%

6月23日発表した1~3月期のGDPは、前の四半期比で0.9%増となりました。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で落ち込んだホテルや飲食などが回復した事が影響しました。

一方で農産物など食料品の輸出が減少傾向にあり、成長率は鈍化しています。

実質成長率は前の四半期比で2021年の7~9月期が4.1%、10~12月期が1.9%でした。

3四半期連続でプラスとなりましたが、伸び率は縮小傾向にあります。

2022年1~3月期の実質成長率は前年同月比では6%でした。

2022年5月

2024年9月に返済を延期

アルゼンチン政府は5月31日、日米欧などで構成するパリクラブ(主要債権国会議)に対する債務について、返済期限を2024年9月まで延ばすことで合意したと明らかにしました。

IMFとの3月の合意に続いて債務交渉が進んだことになります。

同政府は2021年5月に約24億ドルの支払期日を迎えましたが、金利が高いことを理由に返済を拒否して交渉に入っていました。

その後一部を返済したものの、約20億ドルの支払いが残っている状況です。

利上げで49%に

アルゼンチンの中央銀行は5月12日、政策金利を2%引き上げて49%にすると決めました。

ロシアのウクライナ侵攻を背景に進むエネルギーや食料品の価格上昇を抑える狙いがあります。

アルゼンチンは今年に入って5度目の利上げとなりました。

政府当局はIMFとの間で債務再編で合意しており、求められている高インフレへの対処を進めています。

4月の消費者物価指数は前年同月比で58%の上昇です。

これは1992年1月(76%)以来の高い上昇率です。

なお、50%を上回るのは11カ月連続です。

2022年3月

議会がIMFとの債務再編を承認

アルゼンチン議会は3月17日、IMFと合意した450億ドル規模の債務再編案を承認しました。

新たな計画では返済開始は2026年に先送りされ、2034年に完了する予定です。

政府も政権を担うようになって、現実的な選択をせざるを得なかったようです。

今後はIMF理事会での承認を経て合意を実行する見通しです。

17日に実施した上院の投票で賛成56、反対13、棄権3で可決しました。

アルゼンチン政府は22年に190億ドルの返済を予定しており、債務再編で合意できなければ支払いが難しい状況でした。

来週にも28億ドルの返済を控えており、IMFは直ちに合意を承認する必要があります。

アルゼンチンの財政赤字はGDP比で21年に3%でした。

同国政府は22年に2.5%、23年に1.9%、24年に0.9%をめざす方針です。

政府は電気やガスについて拠出している補助金の対象から富裕層を外すなどして支出を抑え、財政を健全化したい考えです。

ただ、国民からは一部反対もあります。政府支出の切り詰めを求めるIMFに反発する国民の抗議活動も起きているのです。

例えば2月のインフレ率も前年同月比で52.3%と深刻な状況が続いていたりします。

同国政府は24年にかけて段階的にインフレを抑制する計画を示していましたが、世界的にエネルギー価格が上昇する中で先行きは不透明さを増している状況です。

2022年2月

2.5%の利上げ

アルゼンチン中央銀行は2月17日、政策金利を2.5%引き上げて42.5%にすると発表しました。

1月に2%引き上げたのに続き、今年2回目の利上げとなります。

政府当局はIMFとの債務再編の最終合意に向けてインフレを抑制したい考えで、利上げを一段と進めました。

アルゼンチンの1月の消費者物価指数は前年同月比50.7%上昇しました。

8カ月連続で50%を上回っています。

国際的なエネルギー価格の上昇に加えて、干ばつに伴って農作物や飲料品の値段が上がっている事が背景です。

アルゼンチンは1月末、IMFとの間で450億ドル規模の債務再編で基本合意しました。

IMFはインフレ抑制のために、実質金利をプラスにするよう求めているもようで、中銀の今回の決定はその要請に向けた動きとなります。

アルゼンチン、IMFとアメリカからの脱却を模索

アルゼンチンのフェルナンデス大統領は2月3日、訪問先のロシアでプーチン大統領と会談しました。

アルゼンチンは米国のほか、IMFに対する経済的な依存から脱却する必要があるとの考えを示しました。

フェルナンデス大統領は、ウクライナ情勢を巡りロシアと西側諸国の対立が深まる中、ロシアを訪問しました。

プーチン氏との会談で、アルゼンチンがIMFと米国に対する依存から脱却し、他に対し開放的にならなくてはならないと述べ、ロシアとの関係進化の意義を主張しました。

フェルナンデス大統領はこの後、中国を訪問し、北京冬季五輪の開会式に出席した後、6日に習近平国家主席と会談する予定です。

2022年1月

IMFと債務再編で基本合意

アルゼンチン政府とIMFは28日、450億ドル規模の債務再編で基本合意しました。

返済時期を遅らせるもようです。

今後は歳出抑制により段階的に財政赤字を減らす計画で、2025年に財政均衡を目指していく計画です。

両者は引き続き交渉し、アルゼンチン議会とIMF理事会での承認を目指します。

IMFは同日、アルゼンチン当局と財政再建への道筋で合意した旨の声明を公表しました。

インフラや科学技術分野への投資は認める一方で、エネルギー分野の補助金を徐々に減らすことは不可欠であると一致したと指摘しています。

アメリカに支援要請

アルゼンチンのカフィエロ外相は18日、ワシントンでブリンケン米国務長官と会談し、債務問題について支援の要請をしたようです。

アルゼンチンがIMFと進める450億ドル規模の債務再編交渉をめぐり、米国に支援を求めたのです。

IMFとの間では財政均衡を目指す時期など再建策の細部で隔たりがあり、債務協議は難航しています。

カフィエロ氏がこの時期に訪米したのは、IMFとの交渉で米国の支援を期待したいためです。

米国はIMFへの出資比率が17%と最大で、影響力が大きいのです。

1年2か月ぶりに利上げ

アルゼンチン中央銀行は1月6日、主要政策金利を約1年2カ月ぶりに引き上げました。

IMFが金融政策の引き締めを求めており、一応それに応えました。

アルゼンチン中銀は7日物中銀債金利(LELIQ)を2ポイント引き上げ40%に設定しました。

アルゼンチンのインフレ率は50%前後となっていますが、世界中の中銀がインフレ加速に歯止めをかけようと利上げに動く中で、アルゼンチン中銀はこれまで政策金利の据え置きを続けてきました。

2021年12月

IMF、アルゼンチンへの2018年の支援について報告書

IMFは22日、アルゼンチンに対して2018年に実施した金融支援について「過度に楽観的な予測が、計画の健全性を弱めた」との報告を公表しました。

米国の利上げでアルゼンチンの通貨ペソ安や外貨準備の減少が進んだため、融資枠を設定して支援したものの、結果として成功しなかったと結論づけました。

IMFは18年6月、アルゼンチンに対して、500億ドル(5兆7000億円)の融資枠を設定していました。

米利上げで新興国からの資金流出が進んだ金融市場の環境で、通貨ペソの下落が進んだことが背景でした。ここに加えて同10月には融資枠を570億ドルに広げました。

IMFによる支援は中道右派のマクリ政権(15~19年)下で立案されたものですが、19年12月に反米左派のフェルナンデス政権になってから、支援が打ち切られています。

IMFとアルゼンチン政府は、450億ドル規模の債務再編交渉を進めていますが、なかなか進展していません。

フェルナンデス政権の与党連合は今年11月の議会選挙で上下院ともに議席を減らしました。

2023年の大統領選挙を視野に、フェルナンデス政権はIMFに譲歩をしにくい国内情勢となっていおり、すぐの進展は見えません。

与党が議席を大幅に減らし、政権と議会がねじ状況に

14日、議会選挙(上下両院の部分改選)の投開票が行われ、与党の左派連合が上院、下院ともに議席を減らしました。

2019年12月に発足したフェルナンデス政権は、就任直後に広がった新型コロナウイルス対策で十分な成果を出せなかったことに加え、食料品高や通貨安によるインフレ加速にも批判が集まりました。

議会選は、4年ごとの大統領選の中間の年に行う「中間選挙」と位置づけられています。

地元メディアは、上院の議席で与党が改選前の41から減って、過半数を確保できない可能性があることを報じています。

与党が議席を減らす背景には、新型コロナ禍対応の不手際やなかなか進まない債務再編交渉があるでしょう。

9月に実施された国会議員予備選で与党の得票率は野党を下回り、与党内の対立が表面化する動きもみられていました。

今回、14日に実施された中間選挙で与党が敗北したことで、政権と議会は「ねじれ状態」となりました。

足下の感染動向はワクチン接種の進展も追い風に改善しているものの、インフレ率は高止まりしており、IMFとの債務再編交渉の行方も不透明となるなど、フェルナンデス政権にとって状況はかなり厳しい状況となっています。

議会選挙、与党苦戦の様相

14日午前、議会選の投票が始まりました。

下院(全257議席)の半数、上院(全72議席)の3分の1が改選となります。

4年ごとの大統領選の中間年に行う「中間選挙」と位置づけられており、国民は2019年12月に就任した左派のフェルナンデス大統領の統治を判断することになります。

即日開票で、14日夜にも大勢は判明する見通しでしが、与党は苦戦するとの報道が多くなっています。

10月下旬の世論調査では左派の与党連合の支持率は34.2%、中道右派の野党連合は42.1%です。

フェルナンデス政権は、発足後まもなく新型コロナウイルス禍に直面し、その対応に四苦八苦しました。

国民には集会禁止を求める中でフェルナンデス氏自身がパーティーを開いていたことも明らかとなり、批判されたりもしました。

食料品価格の上昇や通貨安でインフレは年率50%超に加速しており、市民の生活が厳しくなったことも与党には逆風となっています。

今回の選挙では、中道右派のマクリ前大統領らの野党連合が議席を伸ばす見通しです。

マクリ氏は14日、「国を正しい方向に導く」と述べ、23年の大統領選に向けて再度の政権交代をうかがう基盤を築きたい考えを表明しています。

議会選挙で与党苦戦

14日に中間選挙と位置付けられる議会選挙がありますが、与党は苦戦を強いられているようです。

中間選挙で大敗すれば大統領は任期満了までレームダックとなる恐れがあり、2023年の大統領選で野党が勝利する可能性が出てきます。

最新の調査ではフェルナンデス氏の支持率は33%に下落し、より急進的なクリスティナ・フェルナンデス副大統領の支持率はさらに低い31%でした。

有権者の支持を得るため、政府は中央銀行に紙幣を発行させて社会保障手当を増やしたり、1400品目以上の日用品の価格を22年1月まで据え置いたりしていますが、なかなか指示には結びついていません。どれも近視眼的な政策ばかりです。

21年9月までの1年間のインフレ率は52.5%と世界有数の高さでした。

エコノミストは22年はさらに高インフレになる恐れがあると警告していますが、政府は自らの政策で物価を制御できるとしています。

しかし、それを真正面から信じる投資家やエコノミストはいません。

こうした状況を受けて、同国経済界のリーダーは行動で意思表示しています。

事業家や投資家20人以上が隣国ウルグアイに住んでいます。

ウルグアイ経済はアルゼンチンより安定しており、税制面でも優遇されるのです。

海外移住者が増え、国内では政策が行き詰っており、どうなるか注視する必要があります。

選挙前で、債務交渉がまた難航

IMFに対する債務450億ドルの再編交渉期限が迫るなか、アルゼンチンが態度を硬化させています。

協議をまとめるためにIMFは金利を引き下げ、同国政府の経済計画を支援すべきだと主張しています。

交渉は1年前から続いていますが、2022年に返済されなければならない190億ドルのうち28億ドルの期限が同年3月に迫っていて、残された時間は少ないです。

アルゼンチンの与党、正義党(ペロン党)の政権は、経済危機のさなかに返済はできないとして22年予算に返済金を盛り込まず、債務の再編を当て込んでいます。

IMF側は、新たなプログラムについてアルゼンチンとの「積極的かつ友好的な対話」を続けるとしていますが、今のところ金利上乗せの取り下げには応じていません。

IMFの規定では、借入国の出資割当額と比べて特に融資額が大きい場合、金利に2%が上乗せされます。

IMFの資金がむやみに長く利用されるのを防ぐ仕組みで、そうした大きな借り入れが3年を超えると上乗せ金利は3%に上昇します。

アルゼンチンは金利上乗せの対象だが、上乗せは経済的に困難な状況にある国々を助けるどころか罰するものでIMFの使命に反するとして、適用除外を求めています。

ただ、IMFのいくつかの主要出資国は適用除外に反対しているようです。

アルゼンチンは財政赤字の削減や、政府による価格統制や為替管理にもかかわらず年率50%を超える物価上昇の抑制など、重要な分野で信頼できる見通しを示せていないことも理由の一つです。

グスマン氏が20年8月に民間債権者と650億ドルの債務の再編について合意をまとめた時点では、IMFとの合意も早々にまとまりそうだとの期待が高まりました。

ただ、アルゼンチン政治で常に悪者扱いされてきたIMFに対して同国政府が敵対的な攻撃姿勢を強めるなかで、この楽観論は消え去ろうとしています。

グスマン氏は元々穏健派の閣僚の1人とみなされてきましたが、11月14日の議会中間選挙を前にアルベルト・フェルナンデス大統領の政権支持率が下降線をたどるなかで、強硬な発言をするようになっています。

クリスティナ・フェルナンデス副大統領と同様の経済観を持つようになったのか問われると、グスマン氏は

「景気回復と経済発展に政府が果たす役割について、我々の考え方は明らかに共通している」

と答えています。

2021年9月

4-6月期GDPが1年ぶりのマイナス

21日発表された4~6月期のGDPは前期比1.4%減で、1年ぶりのマイナスとなりました。

新型コロナウイルスの感染拡大により、消費や投資が伸び悩びました。

景気低迷は政権運営に逆風になっています。

アルゼンチンでは3月後半から新型コロナの感染が拡大し、経済活動に大きな影響を与えていました。

家計消費は1.1%増、公共投資は0.5%増と伸び悩んでいます。

感染拡大の第1波で落ち込んだ昨年からの反動増は限定的でした。

企業の投資意欲も低迷し、設備投資など固定資本形成は横ばいでした。

その一方、8月の物価上昇率は年率51.4%と、インフレは高止まりしている状況です。

内閣改造で財政出動が加速する可能性

アルゼンチンの与党正義党(ペロン党)のフェルナンデス大統領は17日、内閣改造に踏み切りました。

この改造で急進左派のクリスティナ・フェルナンデス副大統領の影響力が強まり、さらなる財政出動が予想されます。

先日実施された議会選挙の予備選で、中道右派の野党連合が過去最高の得票率で与党に9ポイントの差を付けて勝利したことで、与党連合内の緊張が一気に表面化しました。

副大統領はこの責任を大統領の経済政策にして、内閣改造を求めたのです。

内閣改造で新たに任命された人たちを見ると、実力者である副大統領に、大統領が一段と譲歩したことがわかります。

与党連合は11月の議会中間選挙での敗北を避けようと必死ですが、上院で過半数を失う恐れがあります。

与党、予備選大敗で政治的不安定となる可能性

アルゼンチンの議会中間選挙の候補者を絞り込む予備選挙で、左派のフェルナンデス大統領の与党、正義党(ペロン党)が大敗しました。

11月の本選で上院の過半数維持が危うくなりました。

中道右派の野党連合「ジュントス」が2015年の結成後で最大の勝利を収めました。

開票率96%の時点で全国の得票率はジュントスが41%、与党は30%にとどまっています。

アルゼンチンでは有権者が予備選に投票する義務があります。

2カ月後に下院の半数、上院の3分の1の議席を改選する中間選挙の世論調査のような役回りです。

12日の予備選の投票で、ジュントスは正義党の伝統的な地盤で総人口の3分の1が集まるブエノスアイレス州をはじめ、主要地域の大半で勝利しました。

2021年6月

成長率が2.6%に鈍化

アルゼンチンの成長率が鈍化しています。

23日発表した1~3月期の実質成長率は前の四半期比2.6%でした。

2四半期連続で前四半期の実績を下回りました。

5月中旬から6月上旬にかけ、新型コロナウイルスの感染の第2波に見舞われたことで4月以降の景気も伸び悩んでいるようです。

実質成長率は20年の7~9月期が13.2%、10~12月期は4.4%だったのできれいに下落しています。

新型コロナ感染の第1波後に建設業や製造業が上向いたものの、ホテルや飲食店が振るわず、5月までの14カ月で1万1800件のホテルや飲食店が経営破綻したそうです。

10度目のデフォルトは回避

アルゼンチン政府は22日、5月末が期限で不払いだった日米欧などで構成するパリクラブに対する債務について、2022年3月末まで交渉を継続することで合意したと発表しました。

これで10度目のデフォルトは回避した事になりますが、もちろん完全にデフォルトのリスクがなくなったわけではありません。

5月末に期限だった約24億ドルの支払いについて、アルゼンチン政府は年利9%という負担が重く、見直しが必要だと主張し、返済を拒否していました。この債務については、60日間の利払い猶予期間中となっていました。

今回、交渉再開と引き換えにアルゼンチン政府は一部債務の返済再開を受け入れました。

パリクラブはアルゼンチンが先進国への債務返済を拒否しながら、中国への返済を優先していることを問題視していました。

パリクラブはアルゼンチン政府に対し、同国にとって最大の債権者であるIMFとの450億ドル規模にのぼる債務再編交渉での合意を求めています。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けてIMFは柔軟化の兆しを見せているものの、まだ隔たりは大きく、合意できるかは不透明な状況です。

更に、選挙が近づき、政権内ではフェルナンデス副大統領を中心に「強硬論」が幅を利かせる動きも出ているようです。

交渉はまだまだどうなるか分かりません。

主要債権国への債務支払わず、減免を要求

アルゼンチン政府は日米欧などで構成するパリクラブ(主要債権国会議)への債務を期限の5月31日までに支払わなかったようです。

今後、60日間の利払い猶予期間(グレースピリオド)中の交渉で債務減免の合意を狙います。

不払いは既定路線で、グレースピリオド中の債務再編交渉で債務減免で合意できるかどうかが焦点となります。

アルゼンチン政府は既にドイツやフランスなど欧州諸国から支援について前向きな反応を得ているようです。

2021年5月

21年インフレ率は若干上昇

5月7日に発表されたアルゼンチン中央銀行の月例アナリスト調査によると、2021年のインフレ率の予想中央値が前月の46%から47.3%に上昇しました。

また今年のGDPの予想中央値は6.4%増と、前月の6.6%からやや縮小しました。

12月時点のペソの対ドル名目相場平均の予想は1ドル=112.64ペソ、22年末までに159.09ペソになると予想されています。

4月のインフレ率は前月比3.8%前後との見方が中心的でした。

2021年4月

アルゼンチン、政府内部で論争?

IMFの高官は4月8日、アルゼンチンの連立政権はIMFとの交渉や経済政策を巡って内部で対立しているようだと述べました。

450億ドルの借り換えに向けIMFと交渉を進めているアルゼンチンについて、新たな合意の鍵となる持続可能な借り入れに向けた経済政策に大きな不透明感があると指摘しました。

アルゼンチンは新型コロナウイルス流行で長期にわたるリセッションが悪化する中、2018年のIMFとの合意に置き換わる新たな合意と返済の先送りを求めています。

交渉は今年6月までの合意が目標とされていましたが、アルゼンチン政権内で反対の動きが出たことから停滞しています。

多くの投資家は、10月の中間選挙の後にならなければ合意を得られないと見込んでいるようです。

アルゼンチンとIMFの交渉、また難航

アルゼンチンの450億ドル相当の債務返済計画がIMFとの間で6月までに決着する可能性は低いとグスマン経済相が明らかにしました。

グスマン氏は従来の返済プログラムの条件変更には、米国や中国、ドイツ、日本、フランスといった各国の支持が必要になるだろうと語っています。

アルゼンチン政府は、2021年9月ー24年に必要な450億ドルのIMFへの支払いを履行できないという事です。

2021年3月

IMFからSDRで43億ドル超を調達

アルゼンチン政府は3月24日、IMFから43億5400万ドルを調達すると発表しました。

特別引き出し権(SDR)を活用します。

債務問題の抜本的な解決には遠いものの、当面の債務返済や外貨準備高の補充に活用される見通しです。

SDRは危機時などにドルやユーロなどを引き出せる権利の事です。

アルゼンチンは、パリクラブ(主要債権国会議)に対する24億ドルの支払いが5月末に控えているほか、外貨準備高の減少も問題となっていましたが、今回のSDR活用で、当面のデフォルトの懸念は遠ざかったと言えます。

GDP成長率、3年連続マイナス

アルゼンチンが3月23日に発表した2020年のGDPは前年比9.9%減でした。

マイナス成長は3年連続です。

新型コロナウイルスの感染拡大に加え、通貨安やインフレが響きました。

新型コロナ対策として経済活動の制限を長期にわたり実施したため、家計消費が13.1%の大幅減となりました。

アルゼンチンはブラジルなど周辺国に比べ経済活動を厳しく制限したものの、新型コロナの感染拡大を止めることができず、経済は大きな痛手を負ってしまいました。

2020年10~12月期のGDPは前年同期比4.3%減で、周辺国に比べて回復が遅れている状況です。

通貨安とインフレも重荷です。

フェルナンデス政権は資本規制によりドルの購入を制限していますが、市民が手持ちのペソを外貨に替える動きは止まっていません。

輸入物価の上昇を受けて、物価上昇率は年率40%前後で推移しています。

5月の返済を巡って債務交渉開始

アルゼンチン政府が再び債務再編交渉に乗り出します。

5月に24億ドルの返済期限が迫っており、返済にはIMFとの交渉で合意する必要があります。

ここに加えて追加融資も要求しています。

アルゼンチンのグスマン経済相は3月15日、アルゼンチンの債務問題は過去にIMFが巨額融資をした影響が大きく、貸し手に非があるという従来の主張を繰り返しました。

2月末時点のアルゼンチンの政府債務額は3349億ドルです。

2019年12月に発足したフェルナンデス政権は返済負担の軽減を求め、20年8月に米欧の金融機関と約45%の債務減免で合意しており、国際機関や主要先進国の債務にも同様の措置を求めています。

今回焦点となっているのは日米欧などで構成するパリクラブ(主要債権国会議)に対する24億ドルの支払いで、5月末に支払期限を迎えます。

現在、アルゼンチンは新型コロナの感染拡大を理由に債務返済を中断しています。

従来の契約に従った金利負担は年9%で、グスマン氏は金利は持続可能な水準ではないと不平を述べています。

パリクラブは債務再編交渉の条件として、アルゼンチンの最大債権者であるIMFとの合意を挙げており、IMFとの合意は必須です。

グスマン氏は3月23日にもワシントンを訪れ、IMFのゲオルギエバ専務理事との会談に臨む予定です。

ここで交渉が決裂して24億ドルの返済ができなかった場合、2カ月の猶予期間を経て、同国として10度目のデフォルトとなります。

交渉を複雑にするのが、アルゼンチンがIMFに返済猶予を求めると同時に、追加融資を要求している点です。

新型コロナの影響でアルゼンチン経済は大きく傷んでおり、外貨準備高は減少している状況です。

資本規制で通貨安を食い止めている状況で、IMFを含む国際機関からの融資抜きでは何もできない状況になっています。

ゲオルギエバ氏は2月に、支援そのものには前向きな姿勢を示したものの、返済猶予や元本の削減については態度を明らかにしていません。

フェルナンデス氏は19年10月の大統領選で圧勝し、新政権を発足させたものの、今の所目立った成果をあげられていません。

むしろ、新型コロナの封じ込めに失敗して感染者数が増加した上、インフレによる経済の低迷も深刻になっています。

足元ではワクチンを閣僚や高官が秘密裏に接種していたことが明らかになり、不支持率が支持率を上回る状況となっているのです。

大統領選で国民のIMFに対する悪感情をあおった手前、債務再編交渉での譲歩はさらなる支持離れにもつながりかねません。

IMFとの新しい合意を急がず

アルゼンチンのフェルナンデス大統領は3月1日、IMFからの新たな支援に関し、性急な合意は望まないとの意向を示しました。

IMFとの交渉をめぐっては、5月に設定された合意目標の達成は困難との懸念が広がっています。

フェルナンデス大統領は議会演説で、政府は前政権とIMFの合意について調査を行うため法的措置も取り得ると述べました。

同大統領は先に、この合意によりアルゼンチンの債務水準が高まったとも批判していました。

2020年11月

コロナワクチンやアメリカ大統領選挙が終わっても軟調なペソ

2020年11月中旬ごろからこぞって新興国通貨高・ドル安が進み、相場のマーケットオンが進みましたが、アルゼンチンペソは弱いままです。

まず、新興国通貨高とドル安となった背景ですが、

  1. 米大統領選挙を通過したことで、各国の金融市場でリスク選好とみられる動きが強まったこと、
  2. バイデン氏の次期大統領就任が確実となったことで、民主党主導で財政支出が拡大するとの見方が高まっていること
  3. 米ドル安が進行すれば、新興国の米ドル建て対外債務の実質的な軽減が見込まれること

などが挙げられます。

しかし、アルゼンチンペソは、9月に同国政府が対外債務再編を行ったことで債務不履行から脱却したにもかかわらず、同国に対する市場の信頼回復が進んでいないとみられ、他の新興国通貨の上昇から置き去りにされるかたちとなっています。

政策金利を引き上げ

2020年11月12日、アルゼンチン中央銀行は政策金利のLELIQ金利を36%から38%に引き上げました。

インフレ加速を受けた措置で、物価抑制のほか、ペソ建ての国内貯蓄を促進する狙いがあります。

中銀は翌日物と7日物のリバースレポ金利も引き上げました。

10月の前月比物価上昇率は3.8%と、今年最も高い伸びを記録しました。

新型コロナウイルス対応の封鎖措置の段階的な緩和が背景にあります。

2020年10月

富裕層の海外逃避が急増

アルゼンチン政府が富裕層への課税を強化する一方、ウルグアイでは新規移住者への税優遇措置を打ち出したことを受けて、アルゼンチンからウルグアイに移住する富裕層が増えているようです。

富裕層にとって最大の不満は、多くの人が厳しすぎると受け止めている税制です。

アルゼンチン議会は間もなく、純資産300万ドル(約3億1000万円)以上の国民を対象とする時限的な「連帯」税導入について審議入りする予定です。

政府関係者らは最大40億ドルの税収が見込めると話しています。

すでに昨年12月、既存の富裕税が2.25%に引き上げられ、全世界でスペインに次ぐ高税率になっていますが、更にここから増税となる可能性があるわけです。

野党議員は新たな連帯税は新政権への信用をさらに損なうだけだと指摘しています。

すでに新政権は穀物輸出の最大手企業を国有化する計画に失敗したほか、突如として通信料金の凍結措置を打ち出すなどしており、社会が混乱しています。

政情不安と経済危機のせいで外国企業がアルゼンチンから逃げ出しているさなかに、現政権は緊急事態だからと言って恣意的な税を導入していると野党議員は批判します。

富裕層の資産への課税については、既存の税の徴収効率化と慢性的な脱税の摘発のほうがはるかに税収を増やせると多くのエコノミストが指摘するなど、効果を疑問視する見方が広がっています。

しかし、アルゼンチン富裕層の大半は新税について公然と批判することには慎重です。

その理由はアルゼンチンの経済状況にあります。

アルゼンチン経済は10年前から低迷を続け、景気後退の3年目にあります。

そこに新型コロナウイルス危機の影響が重なり、状況の悪化が深刻です。

与党議員は、コロナウイルスが経済に大打撃をもたらし、国民の4割超が貧困状態にある状況で、アルゼンチンに富裕税が必要であることに疑問の余地がないと主張しています。

アルゼンチンの総税収はGDP比28.4%に相当しており、OECD平均の34.3%を大きく下回っています。

一方で、民間部門で働く人は総人口4500万人のうち800万人にとどまり、公務員や年金生活者、補助金受給者など2000万人以上が国のお金に依存しているのです。

そうしたなかで多くの個人と民間企業の税負担が「完全に重すぎる水準」になっていると指摘している人も多くいます。

世界銀行によれば、アルゼンチンは世界で最も税負担が重い国であるばかりか、富裕層に対する税率もすでに最高水準になっています。

国際金融協会(IIF)のエコノミストは、財政の観点からみて新税がゲームチェンジャーにはならず、逆にアルゼンチンの政策の方向性に対する疑問に輪をかけることになると指摘しています。

メキシコ同様、民間を軽視した左派政権で、なかなか景気浮揚は難しいのでしょう。

通貨ペソの下落止まらず

通貨ペソの下落が止まらず、政府も四苦八苦しています。

資本流出が進む中、中央銀行は外貨購入の制限など資本規制を相次ぎ強化していますが、逆に市民がドルを求める動きを後押しし、ペソは実勢レートで公定レートの半値以下となってしまいました。

アルゼンチンでは現在、外貨の購入が制限されています。

10月8日時点の政府の定める公定レートは1ドル=77.09ペソとなっていますが、闇市場ではペソの価値下落が止まらず、同日の実勢レートでは1ドル=155ペソと、既に公定レートの半値以下で取引されている状況です。

不利なレートにもかかわらず、市民が競うように手持ちのペソをドルに変えるのは資本規制の強化が止まらない中、自国通貨への不信感が高まっているためです。

中央銀行は何とか資本流出を止めようとあらゆる手を使っていますが、逆に市民の不安をあおる形となっています。

今後、大豆など穀物の輸出が本格化すれば外貨準備高は回復するとみられていますが、なかなk市場心理の改善にはつながっていません。

政府が進めている債務再編交渉の先行きが見通せないことも不安要素です。

10月6日からIMFと債務の返済見直しについての交渉を開始しています。

フェルナンデス大統領は、既に米欧の機関投資家と合意したような債務の大幅削減の再現を期待しています。

しかし、一方でアルゼンチンの厳しい経済状況を理由にIMFに対し追加支援も要請しています。

つまり、債務減免と追加融資を同時並行で進めようとしているわけで、早期妥結は難しいでしょう。

IMFは通貨安を止めるためには財政と経常の「双子の赤字」を改善する必要があるとして、財政支出の削減など、国民に痛みを伴う改革を要求しています。

フェルナンデス氏は

「債務問題は貸し手であるIMFに責任がある」

と主張して2019年の大統領選で当選した経緯があるため、表向きには公的支出の削減を拒否しています。

今後、市場の不安を取り除くために安易な妥協をすれば、支持者や与党内の急進左派勢力からの反発を招き、政治不安を招くリスクもありそうです。

かなり長い時間、投資家は事態を見守る事となるでしょう。

IMF、すぐに歳出削減を求める事はしない

2020年10月6日、IMFのゲオルギエワ専務理事はアルゼンチン政府が求める新たな支援プログラムを巡る協議について、直ちに歳出削減を求めることはないと述べました。

アルゼンチンの前政権はIMFからの借り入れに基づく合意を順守するためリセッション下で歳出削減を行わなければなりませんでした。

今は、新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、IMFとしてそうした緊縮財政をすぐに求めることはないと説明したわけです。

同氏は協議の行方を見守るとした上で、

「成長に向けた中期目標を明確にするため、アルゼンチンの手助けとなることを望む」

と語りました。

IMFの交渉担当者は同日、アルゼンチン入りしています。

大豆の輸出関税を一部引き下げ

2020年10月1日、アルゼンチン政府は主要輸出品の大豆にかけている輸出関税を33%から30%に引き下げたと発表しました。

輸出促進のための一時的な措置で、2021年1月には33%に戻す予定です。

鉱物や工業品の輸出関税も大豆と同時に引き下げました。

アルゼンチンは外貨準備減と通貨安で経常収支が悪化しており、輸出を促進する事で事態を改善したいと考えています。

アルゼンチンのグスマン経済相は、輸出振興の鍵となる分野の発展を促進すると述べました。

景気が低迷する同国では9月以降、通貨ペソ安が進んでいます。

中央銀行が保有する実質的な外貨準備は、公表値を下回っていたことが明らかになりました。

そのうえ、政府が資本規制を強めたため、市民が闇市場で手持ちのペソを売りドルを買う動きが活発になっていたのです。。

来週IMF代表団がアルゼンチンを訪問

2020年10月1日、グスマン経済相はIMFの代表団が来週、アルゼンチンに到着すると明らかにしました。

アルゼンチンはIMFと新たな金融支援プログラムを交渉したいと考えています。

アルゼンチンが2018年にIMFと合意した570億ドル規模の金融支援は経済危機を回避できず、同国は今年デフォルトに陥りました。

アルゼンチンは、この合意に代わる新たな支援をIMFから取り付ける必要があるとしています。

2020年9月以前

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