【2019年11-12月】イギリスの総選挙の経緯

ここでは、BREXITに関連するスポット記事として2019年12月実施のイギリスの下院総選挙についての経緯をまとめていきます。

2019年12月

保守党が地滑り的勝利をした理由

保守党勝利の大きな要因は、最大の争点だったBREXITをめぐり、労働党の支持層の離脱派を大量に切り崩した構図が浮かびあがります。

離脱に関し玉虫色の姿勢に終始した労働党は残留派の支持者の一部にも見放され、保守党を利する結果になったわけです。

やはりどっちちかずというのはダメだという事でしょうか。

今回は労働党の「一人負け」です。

得票率をみると、労働党は32.2%と2017年の前回より7.8ポイントも下落。

労働党が失った約260万票は保守党や自由民主党に流れたと見られます。

労働党、地盤で苦戦し大敗

労働党が地盤とする地方都市は離脱を求める有権者が多く、保守党がその牙城を崩しました。

労働党は40議席近くを失う歴史的大敗を喫し、離脱か残留かで分断した党内をまとめきれず、EU残留を望む有権者の受け皿にもなれませんでした。

直前の世論調査では保守党との差が詰まっているとの報道がありましたが、ふたを開けてみると大敗でした。

労働者が多いイングランドの地方都市は労働党が強く、党のカラーから「赤い壁」と呼ばれていますが、今回の総選挙ではこうした地域で保守党が相次いで議席を奪いました。

地方都市はロンドンとの格差も大きく、2016年の国民投票で離脱を選んだ人も多かったと言われています。

有権者は長年支持してきた労働党よりも、離脱実現を掲げる保守党を選んだわけです。

労働党は、支持者である労働者の離脱支持の声をくみ取ることが出来ずに選挙戦を終えました。

保守党が過半数を確保、1月末の離脱が現実味

2019年12月13日、開票を終え、保守党が過半数を獲得しました。これで2020年1月末の離脱が前に進みそうです。

ジョンソン氏は「1月31日までに欧州連合(EU)から必ず離脱する」と勝利宣言し、公約だった2020年1月末の離脱へ準備を加速させる姿勢を強調しました。

獲得議席

  • 保守党は獲得議席を365と解散前から67上積みし、サッチャー政権下の1987年以来の歴史的な大勝
  • 労働党は203と40減の惨敗、コービン党首は辞意を表明
  • スコットランド民族党(SNP)は48(13増)
  • 自由民主党は11(10減)。

次はEUとのFTA交渉が注目の的となります。

保守党と労働党の差がさらに縮む

2019年12月11日に公表された最終の世論調査では、保守党の支持率は41%、労働党は36%でした。

保守党のリードは5ポイントに縮小しています。過半数を取れるかがまずは注目点である事に変わりありません。

終盤でも保守党リード

12日に投開票日が迫った総選挙ですが、前回と違って保守党が引き続きリードを保っているようです。

直近の世論調査では保守党が単独過半数を確保するとの予測も沢山出ています。

ただ2度目の国民投票を掲げる労働党も支持率の差をじわりと縮めていて、保守党の過半数阻止へ必死の追い上げを図っています。

ある最新予測によると、保守党の獲得議席数は337議席と、前回から20議席増やし過半数を確保する見込みとの事です。

ただ、結果が出るまでどうなるか分かりません。

保守党が過半数確保する見込みと与野党幹部が想定

総選挙ではジョンソン首相率いる保守党が明確な勝利を収めると、与野党両方が想定している事ががそれぞれの党幹部によって明らかになりました。

保守党と野党労働党の幹部がそれぞれ匿名で述べたところによると、ジョンソン氏の選挙公約「EU離脱を完了させる」が奏功し、労働党の地盤だったイングランド北部で保守党の支持が伸びているようです。

今の所、保守党が20~35議席差で下院過半数を握る公算が大きいとみているようです。

保守党は全員が現在の離脱案支持を誓約しており、少数の差でも過半数を確保すれば、理論上は2020年1月31日の期限までにBREXITを完了することが出来る見込みとなっています。

2019年11月

保守党と労働党との差が6ポイントに縮小

2019年11月30日に公表された世論調査で、保守党の労働党に対するリードが66ポイントとなり、前週の13ポイントから大きく縮小しました。

保守党の支持率は39%と前回調査の41%から低下した一方で、労働党の支持率は5ポイント上昇し、33%に達しました。

労働党に勢いが出てきているようで、保守党が過半数を獲得できずに終わる可能性も出てきています。

尚、自由民主党の支持率は5ポイント低下の13%、ブレグジット党は1ポイント上げて4%、緑の党は5%で変わりませんでした。

保守党の支持率が下降

 最新の世論調査によると、保守党の支持率が1ポイント低下し41%、野党労働党は2ポイント上昇し34%になっているようです。

この結果、両党の支持率の差は7%ポイントに縮小しました。

EU残留派の自由民主党は13%と変わらず、ブレグジット党は1%ポイント低下の4%です。

予測モデルでは保守党が過半数

ある調査会社の予測モデルによると、保守党は定数650のうち359議席を獲得して単独過半数を獲得し、その他の政党の議席合計との差は68議席となる見通しのようです。

因みに最大野党の労働党は前回の262から減って211となる見通しです。

保守党、マニフェストを公表

2019年11月24日、保守党はマニフェストを公表し、離脱協定案の関連法案審議を12月中に再開し、2020年1月末までに議会の承認を経て離脱を実現させると宣言しました。

離脱後の緩和措置として現在のイギリス・EUの経済関係が続く「移行期間」についても、2020年末以降に「延長しない」と明記しました。

注意

仮に2020年1月末にEUと合意して離脱できても、2020年末までの移行期間中にEUとの間で新たな自由貿易協定がまとまらないと、突然関税などが発生する「合意なき離脱」に至ってしまう恐れがあります。

これを避けるため、今の離脱案では移行期間を22年末まで延長できることになっているのです。

保守党の献金額は労働党の26倍

選挙戦の第1週に各政党が受けた政治献金の額は、保守党が最大野党である労働党の26倍となったようです。

保守党が11月6日からの6日間で5700万ポンド集めたのに対し、労働党は21万8500ポンドにとどまったようです。

全政党への献金のうち87%が保守党に向けられた計算です。

ただ、献金している頭数も重要でしょう。

この数字はジョンソン氏の人気の高さを浮き彫りにしていますが、一方で保守党が大富豪や銀行、大手企業の味方だとする労働党の主張を裏付けることにもなりかねません。

保守党が過半数獲得??

データプラクシスによる世論調査の分析によると、保守党が過半数を約50議席上回り、安定多数を確保する見通しとの事です。

保守党は57議席増の約349議席を獲得する見通しで、労働党は約30議席減の213議席となるとみられます。

ただ、これは今の状況を前提としています。

全くどうなるか分かりません。

事実、保守党と労働党との差が縮まってきている、との報道がも多く出始めています。

ジョンソン首相が落選する確率は?

ジョンソン首相が総選挙で自らの議席を失う確率は20%程度あるようです。

ブックメーカーのラドブロークスのオッズが示唆しています。

ジョンソン氏は再びロンドン西部の地元選挙区から出馬する予定です。

前回2017年の総選挙では約5000票差で再選を果たしましたが、今回は労働党が重点選挙区としてジョンソン氏の議席を狙っており、油断していると足下をすくわれかねません。

労働党、巻き返しの為急進的な政策を発表

労働党が、今回の選挙で過去40年間では最も急進的なマニフェストを打ち出しました。

労働党の急進的政策

  • 半年以内に、BREXITに関する国民再投票を実施
  • 鉄道、水道、発電、郵便などを国有化。
  • 2030年までに全国で完全光ファイバーによるブロードバンドを無料で提供
  • 多国籍企業には英国での売り上げ、従業員、業務の比率に基づき課税
  • 上位5%の所得者(年8万ポンド以上=約1130万円以上)に対して増税
  • 新たな金融取引税の導入。
  • 印紙税の課税対象を外国為替、金利デリバティブ、コモディティー取引にも拡大し、取引費用の50%とする

等です。

2年前の2017年総選挙の際にコービン氏は、急進的な社会主義的政策パッケージを掲げ、支持を伸ばしたという成功体験があります。

今回も、こうした急進策を取って劣勢の状況を挽回しようという事でしょう。

テレビ討論開催、ジョンソン氏が批判をかわす

2019年11月19日、序盤のヤマとなる初めてのテレビ討論が開催されました。ジョンソン氏の優位はあまり変わらなかったようです。

労働党のコービン党首は政府・与党の離脱計画の懸念点や医療政策の失敗を厳しく批判しましたが、ジョンソン首相は無難にかわしていきました。

これに対する評価はメディアによって分かれていますが、選挙戦全体の雰囲気を劇的に変えた、という評価を下している所は無いようです。

討論終了後のある世論調査では、ジョンソン首相が討論で勝利したとの回答が51%、コービン氏の勝利が49%だったという事です。

ジョンソン首相、法人減税を延期し福祉に回す計画

2019年11月18日、ジョンソン首相は法人減税を延期し、国民保険サービス等の優先事項に財源を費やすと述べました。

元々、法人税を現行の19%から来年には17%に引き下げる予定でした。

この措置で6000億円ほど余剰が出来る見込みと説明しています。

労働党の医療保険制度への追加支出への対抗といった所もあるでしょうか。

労働党は独自の歳出拡大計画に向け、法人税と富裕層への所得税を引き上げたい考えです。

例えば5%の最富裕層に対して所得税を引き上げるほか、将来的には法人税を2010年当時の28%未満の水準まで引き上げる方針を示しています。

立候補する保守党議員が離脱合意案支持を誓約

2019年11月16日、ジョンソン首相は12月の総選挙に出馬する保守党の立候補者全員が、当選した場合は同首相の離脱合意案に賛成票を投じるとの誓約書に署名したと述べました。

これで、総選挙で過半数議席さえ獲得すれば、最新の離脱協定案を速やかに議会通過させられます。

ただ、保守党の立候補者らは離脱後のプロセスの採決については誓約していません。

労働党、260億ポンドを医療保険制度に追加支出

2019年11月13日、労働党は次の選挙で勝利した場合、医療保健制度に260億ポンドの追加支出を行うと表明しました。

具体的には、数千人の追加職員採用や設備刷新、新しい機器の導入などを行うという事です。

労働党は、公共医療を提供する国民保健サービス(NHS)を選挙戦の中核に据えることを目指してきましたが、少しバラマキ的な感覚も残る政策です。

各社で温度差あるものの、引き続き保守党がリード

各社世論調査で、温度差はありますが、保守党がリードを保っています。

スカイニュースの世論調査では、

  • 保守党が42%、
  • 労働党が28%、
  • 自由民主党が15%、
  • ブレグジット党が4%

となりました。

調査会社サーベーションによる11月12日発表の世論調査では、

  • 保守党が35%、
  • 労働党が29%、
  • 自由民主党が17%、
  • ブレグジット党が10%

となりました。

保守党が引き続き支持率トップ

最新の世論調査によると、ジョンソン首相率いる与党保守党の支持率が1%ポイント上昇し39%、野党労働党は31%となっているようです。

EU残留派の自由民主党は15%と横ばいでブレグジット党は1%ポイント低下し8%でした。

オッズはジョンソン首相の勝利を予想

ブックメーカーのオッズでは、高い確率でジョンソン首相が勝利すると見なされているようです。

ジョンソン首相が政権を維持する確率は75%になっていて、問題は議席をどれだけ伸ばせるかに移りつつあるようです。

ブレグジット党が保守党と争わない意向を表明した事で、保守党が過半数を獲得する確率はそれまでの60%から一気に75%となったわけです。

ブレグジット党、保守党と争わない方針を表明

2019年11月11日、ブレグジット党のファラージュ党首は来月の総選挙で保守党の現職議員とは争わない方針を表明しました。

これでジョンソン首相が議会で過半数を獲得できる可能性が高まりました。

この発言で、ポンドも上昇しました。

ファラージュ氏は

2017年の選挙で保守党が勝利した317選挙区に候補者を擁立しないというのは困難を伴う決断だったが、ジョンソン氏のより明確なEU離脱に信頼を寄せている

と述べました。

ウェールズ担当大臣辞任でジョンソン首相は出鼻をくじかれる

選挙戦が始まりましたが、ケアンズ・ウェールズ担当相が辞任を表明し、ジョンソン首相にとっては出鼻をくじかれる形となりました。

ケアンズ氏は、性的暴行を巡る裁判を妨害したとされる元側近に関する情報を知りながら、その事実を否定したことが問題となっていました。

ブレグジット党が、離脱派を分断する作戦

2019年11月6日、議会下院は正式に解散し、各党がブレグジットを争点とする選挙戦に入ります。

足下の状況

足元の支持率ではジョンソン首相率いる保守党が、EUと新離脱協定案で合意した実績を武器にリードしていますが、全く予断を許しません。

注目はブレグジット党です。

早期のEU離脱を掲げるブレグジット党が新たな離脱案では不十分だとして、同案を破棄するように訴え始めています。

これによって離脱派の有権者が分断されれば、保守党にとっては思わぬ逆風となるかもしれません。

EU残留派の動き

世論調査ではなお半数の国民が「EU残留」を求めていますが、残留派の政党乱立で票が分散する傾向にあります。

総選挙は小選挙区制のため保守党には有利な状況と言えます。

ファラージュ氏が保守党に揺さぶり

「ブレグジット党」のファラージュ党首は、今の離脱協定案を破棄して合意なき離脱をしない限り、保守党と戦う事を表明しました。

ファラージュ氏は、協定案を破棄し合意なき離脱を公約しないなら、12月12日の総選挙では全ての選挙区に候補者を立てて戦うと宣言しました。

ファラージュ氏は今回の離脱案を「売国」と表現し、「離脱ではない」と批判しました。

ファラージュ氏は一方で、保守党と「不戦協定」を結び、対労働党でブレグジット党の方が保守党より有利な選挙区では、保守党が候補を取り下げるように取り決めたいとも述べています。

同党首は、

「労働党が支配し、保守党が一度も勝ったことのない選挙区は全国に約150ある。これを解決する唯一の方法は、EU離脱派の連合を全国で打ち立てることだ」

と述べました。

保守党関係者の間では、反EU票がブレグジット党とで割れて、勝てたはずの所で勝てなくなるとの懸念があり、どの様に対応するか注目されます。

今のところ保守党はジョンソン氏を前面に出して戦う予定で、ファラージュ氏の提案を拒んでいます。

1 COMMENT

Shena Mudie

I just want to mention I am just beginner to weblog and seriously savored this website. Most likely I’m likely to bookmark your blog post . You amazingly have great posts. Thank you for revealing your website page.

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です