フィリピンの経済政策の経緯とまとめ

ここではフィリピンの経済政策・産業政策についてフォーカスを当てて追っていきたいと思います。フィリピン株式等のフィリピン資産への投資を検討されている方、既に資金を投じている方であれば経済政策について知識を持っておくことは重要です。

よく言われるフィリピンの弱点とは、

フィリピンは人口増加率が高いが、就労の機会が少なく、多くの若者が海外へ出稼ぎに向かってしまう、というものだと思います。

コールセンター誘致に成功したと言われますが、今後の経済発展をより力強いものとする為には、より雇用吸収力がある製造業の発展が急務です。

在フィリピンのトヨタや三菱自などによる現地組み立て工場でも輸入部品が多く使われ、裾野産業が育っていなかったというのがこれまでです。

2016年のアキノ前政権時代、部品の現地調達を促す政策を導入し、日本車メーカーなどが現地生産に切り替えていきましたが、ドゥテルテ現政権は輸出企業向け優遇税制の大幅縮小を掲げるなど、製造業の誘致に関心があるのか疑問も感じるという不満の声もあります。

ドゥテルテ大統領は麻薬撲滅や人権軽視のニュースがよく流れますが、経済政策はどうなっているのでしょうか。

時系列でまとめていきます。

2023年1月

中国とインフラ開発で連携

フィリピン政府は1月4日、中国との間でインフラ開発など14項目で協力することで合意したと発表しました。

協力することで合意した項目は農業や情報通信技術、両国間の観光業振興など多岐にわたっており、懸案となっている南シナ海問題は外交当局間で直接対話する連絡ルートを構築することで合意したようです。

2022年12月

政府系ファンド設立法案を可決

フィリピン下院は12月15日、マルコス大統領が進める政府系ファンドの設立法案を可決しました。

フィリピンの経済発展とインフラプロジェクトへの融資を目的とした法案ですが、財政赤字と政府債務を抱えている中でだ丈夫なのかという指摘もあります。

過去には大統領の不正蓄財も起きており、経済界などからは反発を受けているようです。

2022年8月

2023年度の予算案を発表

フィリピン政府はマルコス政権発足後の初となる2023年度の予算案を発表しました。

歳出額は前年度比+4.9%で、教育に次いでインフラ投資への配分が大きくなっています。

市場では、前政権のインフラ投資促進の方針を継承し、高成長を支える予算案との評価が多いようです。

【2022年7月~8月26日までのフィリピン総合指数の推移(出所:TradingView)】

©Trading View

2022年7月

施政方針演説、経済界は一定の評価

7月25日にマルコス大統領が初の施政方針を発表しました。

前政権の大規模インフラ投資計画を一段と拡大するほか、コロナとの共存や雇用創出などに注力し、6年の任期期間中、年6.5~8.0%のGDP成長率を目指すとしました。

経済界の評価は高く、株式市場の上昇を後押ししました。

【2022年7月のフィリピン総合指数の推移(出所:TradingView)】

©Trading View

新大統領の経済対策、早くも疑義

フィリピンのマルコス新大統領の経済政策に早くも疑義が生じています。

閣僚に元フィリピン航空社長を起用するなど一見経済重視に見えますが、実態は前政権の積み残し案件への対応という側面が強く、企業誘致に欠かせない経済特区の新設には再検討を求めたりしています。

若い人口構成など潜在的な成長力を発揮できるのか、7月25日の初の施政方針演説を前に不安感が強まっています。

2022年4月

新たなインフラ7件を稼働

フィリピンのドミンゲス財務相は、メディアの取材に対して6月までに7件の新たなインフラが稼働すると明らかにしました。

6月末に任期を満了するドゥテルテ政権の閣僚として、目玉政策だった大型インフラ整備計画の成果をアピールする狙いです。

これらに加えて、2022年末までに12件のインフラ計画が完工すると見込んでいるとも回答がなされています。

フィリピンでは78件のインフラ事業が進められており、ドミンゲス氏が「完工」を予告したのはそれらの一部だとみられます。

2016年に発足したドゥテルテ政権は毎年、GDPの約5%に相当する資金をインフラ整備にあててきました。

2022年3月

主要インフラの外資上限を撤廃

ドゥテルテ大統領は3月下旬、通信を含む主要なインフラ企業で外資上限40%の規制を原則として撤廃する改正法に署名しました。

新規投資を呼び込み、新型コロナウイルスの打撃を受けた経済の回復を目指します。

外資上限の撤廃が決まった事業分野はほかに航空、国内海運、鉄道業界などです。

ただ、電気、配水、石油、港湾、公益車両などの分野では外資上限を維持します。

財界は外資規制の緩和をおおむね歓迎していますが、一部の国会議員は重要なインフラの運営に外国の影響力が強まる事態を警戒しているようです。

法案の採決時に反対票を投じた上院議員は、中国政府の影響下にある同国企業がインフラ企業に投資する可能性を指摘しています。

OECDがまとめた、外国直接投資(FDI)を巡る規制の厳しさを示す指数でフィリピンは国・地域別で、世界のなかで3番目に参入が難しいとされており、政治的な問題と経済発展の所で揺れ動きそうです。

原子力の活用検討を指示

ドゥテルテ大統領は同国の電源構成に原子力を加える大統領令に署名しました。

石炭火力発電所の段階的な廃止に備える狙いがあります。

季節的な停電と高い電気料金に苦しむ経済にはプラスとなりますが、反対派も多いようです。

ドゥテルテ氏は気候変動対策のために石炭火力発電所の廃止を進める中で、原発をベースロード電源の有力な代替手段として活用する意向を示しています。

2022年1月

小売りの外資規制を緩和

フィリピンは、小売事業の外資規制を緩和します。

これまで同国への参入障壁となっていた払込資本金の要件を大幅に引き下げ、中小規模の企業も参入しやすくなります。

海外から新規投資を呼び込み、新型コロナウイルスの感染拡大で低調となった経済の回復につなげたい狙いです。

21日にも法律が発効されます。

ドゥテルテ大統領が署名し6日に公布された同法では、

  • 外資の小売事業者に求められる払込資本金を、従来の1億2500万ペソ(約2億8000万円)から、5分の1となる2500万ペソに引き下げる
  • 純資産や店舗数、小売り実績などに関する要件も廃止する

といった事が規定されています。

2021年7月

ドュテルテ大統領、施政方針演説で民間企業の支援を約束

ドゥテルテ大統領は26日、首都マニラの議会で任期最後の施政方針演説に臨み、民間企業への支援策を講じる事を約束しました。

2022年6月に任期満了を控えるドゥテルテ氏にとっては就任以来6回目で、今回が最後の演説となりました。

フィリピンでは新型コロナウイルスの累計感染者数が150万人を超えて、東南アジアではインドネシアに次ぐ規模となっています。

ドゥテルテ氏は、フィリピンは急速な経済成長を遂げる準備ができていたものの、新型コロナがすべてを奪っていったと語りました。

インフラ計画に遅れ

フィリピンで鉄道整備など大型インフラ計画の遅れが目立っています。

都市部を中心に渋滞や混雑は深刻で、ドゥテルテ政権は発足後に多くの整備計画を打ち出したものの、新型コロナウイルスの感染拡大などで工事が中断し、遅れているのです。

交通の混雑がフィリピン経済に及ぼす影響は年間で3兆円規模とも言われ、計画の進行は喫緊の課題です。

特にマニラや周辺都市は深刻な渋滞が社会的損失を生んでいます。

マニラ首都圏では渋滞に起因した社会的損失が1日あたり35億ペソ(約80億円、17年時点)、年換算で約3兆円規模に上ると試算されています。

車だと恒常的な渋滞で3~4時間かかるところを、延伸した鉄道を使えば30分で移動できたりします。

ドュテルテ大統領のインフラ計画で当初掲げた75件の「旗艦案件リスト」を見ると、18年11月末時点ではドゥテルテ政権の任期でもある22年までに40%が完了する予定でしたが、19年に28%に修正されました。

同年には旗艦案件リストそのものを改定し、60%弱が22年の完了を予定していたという事です。

それ以降も案件の入れ替えを続けましたが、今年6月時点では再び34%となりました。計画の遅れが鮮明になっているわけです。

インフラ事業は用地買収などに時間がかかり、昨年以降は新型コロナの感染拡大で工事中断や資材調達の遅れも発生しました。

フィリピン経済への影響を考えると、影響は甚大です。

整備の加速は22年に予定されている大統領選挙でも争点の1つになるでしょう。

2021年4月

企業復興税優遇法を施行

4月11⽇から「企業復興税優遇法」が施⾏されます。

これによって法⼈税率が引き下げられ事となり、海外からの直接投資の呼び込みや経済成⻑にポジティブな効果が期待されます。

これまで同国の法人税率は30%だったが、17~25%の東南アジアの周辺国と比べ最も高かったため他国並みの25%に下げました。ほかの税制優遇策とあわせて、出遅れていた製造業の誘致を急ぎます。

フィリピンも減税策を通じた東南アジア各国との投資誘致競争にも乗り出します。

また、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた経済の回復も期待されます。

2021年3月

外出規制を強化

フィリピン政府は3月27日、マニラ首都圏とその周辺4州の移動・外出制限措置を29日から4月4日まで、4段階あるうちの最も厳しい水準に引き上げると発表しました。

新型コロナウイルスの感染が拡大し、1日の新規感染者数が1万人に迫っているためです。

段階的に緩和してきた制限措置は2020年3~5月の水準に戻ります。

新たな措置のもとでは、午後6時から午前5時まで外出を禁止し、17歳以下と66歳以上の人の外出は認めません。

商業施設は生活必需品を扱う店に限り営業できます。

昨年、最も厳しい措置を敷いた時はバスや都市鉄道などの公共交通機関を全面的に運休しましたが、今回は利用者数を制限して運行を容認します。

足下の景気は底入れする一方で新型コロナウイルスの感染拡大の影響が色濃く残るなか、感染再拡大による行動制限の再強化は景気の下振れに繋がることは避けられないでしょう。

一方で、足下のインフレ率は中銀の定める目標を上回るなど、中銀は景気の不透明感にも拘らず追加緩和に動けない状況にあります。

金融市場を巡る環境変化がペソ相場の悪材料となる懸念もあるなか、新型コロナ対応が経済・政治のカギを握るかもしれません。

外資規制を緩和する機運

フィリピンで外資規制の緩和に向けた機運が高まっています。

フィリピンは厳しい出資制限で外国企業の参入を抑えていますが、ドゥテルテ政権の影響力の強い議会下院が関連法の緩和案を承認し、憲法の条文改定にも意欲を見せています。

実現すれば外資との競争が本格化し、地場財閥が支配する産業構造に影響を与えそうです。

外資は地場企業との合弁やフランチャイズチェーン)方式で展開するのが一般的ですが、経営権を握れないため思い通りに事業を運営できず、苦戦することも多いのが現状です。

対照的に地場企業は外資との競争にさらされずに済んでいます。

2020年10月

M&A規制緩和

フィリピンの競争当局はM&Aに関する審査基準を緩和しました。

買収額が500億ペソ(約1100億円)未満の場合は事前審査を不要にし、大型再編をしやすくしました。

新型コロナウイルスの影響による倒産を減らして雇用をつなぎとめる狙いですが、財閥の産業支配が一段と強まるとの見方も出ているようです。

フィリピン競争委員会(PCC)は10月5日、コロナ対策法に基づく2年間の時限措置として、M&A規制を緩和することを公表しています。

フィリピンではPCCが国内の事業に絡む買収案件が公正で自由な競争を阻害しないかどうかを事前に審査しています。

新たな規制では、PCCが事前審査の対象とする買収額を従来の24億ペソ未満から大幅に引き上げました。

企業にとっては最長3カ月かかった審査がなくなり、比較的大きな企業の買収もしやすくなりました。

この審査の根拠となる法律は、24年に及ぶ議会審議を経て2015年にようやく成立したものです。

これまでは競争上の観点から却下や懸念を示し、破談になるケースも起きていました。

従来は企業側が規制当局による却下を恐れて、買収をためらうケースもあったとみられます。

フィリピン政府は、規制が緩和されることで企業の心理的なハードルが下がり、これまで進まなかった再編が動き出すことを期待しています。

今回、規制緩和を決めた要因が新型コロナによる経済への影響です。

フィリピンは厳格な都市封鎖で感染拡大を抑え込もうとした結果、多くの企業が経営難に陥るという副作用も生んでしまいました。

それでも、資金力のある大手財閥ではM&Aへの意欲は衰えていません。
JGサミット傘下の食品会社は6月、審査で認められなかった企業とは別の製糖会社を買収すると発表していたりします。
そこで、政府には財閥の力を借りて企業倒産に歯止めをかけ、失業者を減らしたいとの思惑が出てきたのです。
周辺国に比べて出遅れるカルテルの摘発を進める狙いもあります。
PCCは規制緩和で浮いた人員を、カルテル調査に回す方針です。
ただ、政策の狙いには疑念の声も上がっています。
規制緩和で利益を手にする企業をどう監視するのか、という事です。
規制緩和は形を変えた財閥支援ともみえるのです。

こうした財閥は今後、M&Aによる規模拡大にさらに踏みこむ可能性があります。

その一方で企業買収に積極的でない財閥もあり、今回の規制緩和は財閥の力関係にも変化をもたらすかもしれません。

過去最大の景気刺激策を含む予算案が可決

2020年10月16日、景気刺激型で過去最大の歳出となる2021年度予算案がに下院で可決されました。

これを受けて、フィリピンの株式市場は大きく上昇しています。

株価上昇は新型ウイルスの新規感染者数が減少傾向にあることも追い風となったようです。

2020年8月

フィリピンのリート市場

フィリピンで第1号となるREITをアヤラ財閥系が上場させました。海外マネーも活用しながら、新型コロナウイルスの影響が広がる中でも成長を続ける業務受託ビジネス向けの需要に商機を見いだしているようです。

REIT市場の発足で、資金調達手段が多様化し、新興勢力などとの競争が激しくなりそうです。

アヤラ中核子会社のアヤラ・ランドが傘下のREIT「Aリート」を上場させました。

2009年に制定されたREIT法の要件が1月に緩和されて初の上場となりました。

公募には国内外の機関投資家や約3300人の個人が参加し、外国人の保有比率は15.7%に上っています。

アヤラ・ランドはAリート株の51%を保持する一方で、株式売却で136億ペソ(約300億円)を調達し、新たな不動産の開発に投じる予定です。

アヤラ以外でも積極投資で急成長する新興のダブルドラゴン・プロパティーズもREITを10月に上場し、約170億ペソを調達すると発表したりしています。

フィリピンで外国人はコンドミニアムなどの区分所有を除き不動産取引は制限されており、REITを通じて外国人が不動産に間接投資することで新たなマネーが市場に流入するようになりそうです。

財閥の政治リスク高まる

フィリピンの大手財閥の政治リスクが高まっています。

ドゥテルテ大統領が敵視する最大手の放送局が免許更新を認められず、財閥8位で親会社のロペス・ホールディングスは弱体化を余儀なくされそうです。

現在、フィリピン経済界を牛耳るのは食品などを手掛けるサンミゲルや不動産を主力とするアヤラ、インフラ系のメトロ・パシフィックなど10グループ超の大手財閥で、各財閥は政治権力に近づき、後押しを受けてきたという経緯があります。しかし、副作用として経済の新陳代謝は起きず、新興企業や外資企業が独力で入り込む隙間は乏しくなっています。

ドゥテルテ氏は2022年の大統領選をにらみ自身の後継候補に有利となる財閥を選別している可能性があります。

2020年7月

首都の行動制限を延長

2020年7月31日、ドゥテルテ大統領は新型コロナウイルスの感染・死者数の増加を受けて、首都マニラの行動制限を8月中旬まで延長すると発表しました。

フィリピンは今月、1日当たりのコロナ新規感染・死者数が東南アジアで最多を記録し、一部都市では医療が逼迫している状況にあります。

首都圏とその南部の各州、フィリピン中心部の複数の都市では6月以降、隔離措置が敷かれており、高齢者や子どもの行動や、レストランやスポーツジムなどの営業が制限されています。

自動車生産振興策が暗雲

フィリピンが導入した自動車生産振興策に暗雲が漂い始めているようです。

振興策とは、政府が2016年に導入した車生産振興策「CARSプログラム」の事です。

一定の台数を生産するのを条件に税を優遇する内容で、1車種90億ペソ(約190億円)の税優遇措置を受ける代わりに6年間で20万台を生産することなどが条件です。

しかし、新車市場が冷え込み、対象となった自動車メーカーが目標を達成できない公算が大きくなっています。

20万台に未達でも税優遇がゼロになるわけではなく、10万台を超えれば一定程度は与えられる仕組みになっていますが、自動車会社は税優遇を全て得ることを前提に、製造コストの高いフィリピンで生産することを決めたという背景があります。

今後、自動車会社は政府に条件の緩和を求める方針ですが、税優遇の縮小はコロナ対策で財源が枯渇する政府にとってもありがたい話のようで、調整が難航しそうとの事です。

ドゥテルテ政権が終盤に入った中でどういった対応をするか注目されます。

2020年6月

ドゥテルテ大統領、インフラ事業で起死回生を狙う

ドゥテルテ大統領が残りの任期2年を切る中で、治安改善と並ぶ看板政策のインフラ整備の加速に再び取り組みます。

南シナ海問題を棚上げして取り付けた中国からの支援事業も遅れており、日本の援助や民間資金に活路を見いだしたいようです。

実際ドミンゲス財務相は2件のインフラ事業で日本から1540億円の借款を受ける契約をしています。

後継指名も視野に求心力の維持に努めているようです。

ドゥテルテ氏は4年前の就任後、インフラ整備が軸の成長戦略を描いていました。

総額8兆ペソ(約17兆円)で空港、鉄道、道路、港湾などを全国で整備し、地域間格差を縮めるという計画です。

ただ、実際に100件の優先事業のうち19年末時点で着工済みはまだ35件程度です。

この要因は中国からの支援が思いのほか遅れている事にあります。

中国との南シナ海の領有権争いを棚上げし、中国マネーを求めたドゥテルテ大統領でしたが、報道によると、中国側が約束した計90億ドルの事業規模のうち、実際に契約までこぎ着けたのは合わせて3億ドル弱にとどまり、中国に良いとこどりされた状態になっているようです。

この穴埋めをする為にドゥテルテ政権は民間資金も活用しだしました。

大手財閥が計画する新空港の建設やマニラの国際空港の拡張も、財閥連合に期待しているようです。

ドゥテルテ政権での成長率は前政権と遜色ないものの2020年については新型コロナでマイナス成長を見込んでおり、それを元に戻すためのエンジンが必要です。

ドゥテルテ大統領の支持率は依然として8割前後とかなり高めですが、有権者の不満が高まれば、自分の息のかかった後継を指名する事が難しくなります。

2020年5月

企業復興税優遇法案から株価が大幅上昇

2020年5月26日、財務省が発表した 「企業復興税優遇法案」を好感して 、株価が大幅に上昇しました。

現在30%の現行の法人税率を2027年まで段階的に20%まd引き下げる事等を含んだ内容です。

これによって景気回復 、直接投資の増加に寄与すると考えた投資家が買いを入れたようです。

コロナ対策費用捻出のため課税強化

新型コロナウイルスの影響による税収減を補うため課税を強化します。

5月初旬の非常事態宣言に基づく大統領令で、石油製品の輸入関税を一時的に10%上げると表明しており、6月からガソリンなどの店頭価格に上乗せされる見通しです。

2020年末まで適用した場合、得られる税収は60億ペソ(約130億円)と試算されています。
医療物資の調達や貧困層の生活支援に充てる予定ですが、保護主義とみなされないよう小幅な比率にとどめ、多様な品目の関税を上げられないか検討していると政府は発表しています。
もう一つ上がっているのが、デジタル課税です。
2020年5月20日、議員の法案提出を受けデジタル課税の導入に向けた検討を始めたようです。
外出制限で利用が伸びた動画配信サービスなどへの課税を念頭に置いているようです。
こうした動きは、他の東南アジア各国でも同様になっています。

16日から外出禁止を一部緩和

2020年5月12日、フィリピン政府は15日に期限を迎えるマニラ首都圏などの外出・移動制限措置を16日から一部緩和すると発表しました。

制限そのものは31日まで延長しますが、業種や人員を限って工場の操業を認めるというものです。

今回の制限緩和は、地域によって異なります。

感染者が比較的多いマニラと隣のラグナ州、中部セブ市は、緩和を一部にとどめますが、マニラ、ラグナ州を除く北部ルソン島の大半の地域などでは、制限をさらに緩和します。

出口戦略を検討

5月15日の期限を見据え、政府は出口戦略を検討し始めているようです。

ドゥテルテ大統領は5月4日のテレビ演説で新型コロナウイルス対策に手応えを感じている事を示しました。

感染者の増加ペースは落ち着いてきており、現在の医療、検査体制や感染者数を踏まえても、制限を緩和できそうとの観測が出ています。

2020年4月

ロックダウン期間を延長

ドゥテルテ大統領は、首都マニラのロックダウン期間を5月15日まで延長しました。

これで封鎖は8週間となります。

大統領は23日夜の対策会議で封鎖措置の延長を決定しました。

また新型コロナのワクチンを開発したフィリピン人に5000万ペソ(約99万ドル)の報奨金を支払うと提案しました。

マニラは1300万人の人口に加えて、統計に入っていない住民が数百万人いるとされています。過密度はかなりの水準で、全土の感染者と死者の3分の2をマニラが占めているとされています。

フィリピンは感染者が少なかった時期にいち早く封鎖と自宅隔離政策を導入し、中国、イタリアに続いて世界で3番目の導入国となりました。

3月12日に、移民、移動、商業、集会を制限し、16日には帰国者以外の入国を禁止しています。

2020年3月

財閥に厳しい姿勢

フィリピンの財閥に対するドゥテルテ大統領の圧力が強まっています。

例えば、財閥3位のアヤラについては主力の水道事業の経営譲渡を迫られたり、国内最大手のテレビ局を持つ財閥8位のロペス・ホールディングスは、放送免許の更新が認められない等の可能性が取りざたされています。

背景

2022年の大統領選で自身の後継候補が選挙戦で有利となるよう影響力を高めるのが狙いと見られています。

ドゥテルテ氏は大統領は就任当初から財閥への影響力を強めてきたという背景があります。

元々財閥もやりたい放題をして国民からかなり問題視されていました。

大統領は通信料金に不満を募らせアヤラ財閥を批判して、通信大手2社に値下げを実施させたり、2017年には大手財閥LTグループを攻撃して、傘下のフィリピン航空に未払いの空港使用料120億円を一気に支払わせたこともありました。

こうすると国民の喝采を浴びて、支持率は上がってきました。

フィリピンの特別な事情

フィリピン独自の財閥事情もありそうです。

フィリピン政府は90年代から財政難などを理由に水道や電力、鉄道などの基幹産業を次々と財閥に売却しました。

その結果、有力な政府系企業が無くなり、政府の産業界に対する支配力が弱まってしまったのです。

ドゥテルテ氏は財閥を自陣に取り込むために、財閥にある意味脅しをかけているわけです。

首都を1か月間隔離

2020年3月12日、ドゥテルテ大統領は新型コロナウイルスの感染拡大を受けてマニラと国内の他の都市との出入りを禁止すると表明しました。

期間は15日から4月14日までです。

車や飛行機、船でマニラから他の都市に出たり、他の都市から入ったりするのを禁止します。

軍や警察を動員して監視する方針のようです。

フィリピンでは市中感染が広がっている可能性が高まっており、早期の移動制限を敷く事で、さらにまん延するのを抑える狙いです。

一方で、中国に対する渡航制限を緩和し、湖北省武漢市を除いて出稼ぎ労働者の渡航を認める方針を明らかにしました。

2019年7月

ドゥテルテ大統領の任期残り半分となった所での課題

ドゥテルテ大統領の6年の任期が半分終わりました。

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大きな課題としてどういったものがあるかを見ていきましょう。

中国との関係

  • 中国との南シナ海の領有権争い
  • 上記問題を抱えた上での中国との経済協力をどう進めていくか

アキノ前政権で大きな問題となっていた南シナ海を巡る中国との争いは、いったん棚上げしていますが、引き続き大きな未解決問題として残っています。

鈍化する経済成長

経済でも思惑が外れていると言っていいでしょう。

2018年の経済成長率は6.2%でした。

invstem.com

当初、2018年以降の成長率を年7~8%とする目標を掲げていました。

更に2019年1~3月は5.6%と4年ぶりの6%割れとなってしまいました。

今後インフラ支出を増やして消費を刺激していく方針ですが、どうなるか分かりません。

対テロ対策

過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓うグループがテロを仕掛けたりと、テロに対する恐怖がなかなか消えません。

安心して経済活動が出来ないとなると、回り回って目標とする経済成長と国民の生活向上も叶いません。麻薬問題で超法規的措置を採ってきたドゥテルテ大統領がどうやってこの問題を沈静化していくか注目されます。

2019年6月

外資系企業への優遇措置を取りやめか

フィリピンで輸出企業の誘致を担う経済区庁のプラザ長官の交代説が浮上しています。

外資企業に対する税優遇の撤廃を目指す政府にとって、制度維持を求める同氏は目障りな存在であり、外資系企業は状況を注視しています。

これまでの税優遇の内容 最大6年間30%の法人税免除、その後も5%の低税率が適用
改正案 外資向け優遇を撤廃し、法人税を25%に

もちろん、税優遇を当て込んで進出した外資は反発しています。

この動きは2018年からありましたが、外資系企業と足並みをそろえて制度維持を求めてきたのがプラザ氏だったのです。

プラザ氏は優遇撤廃の影響の大きさを理解している為、ドゥテルテ大統領とも対立してきました。

今回、5月の中間選挙で勝利し、政権は議会への影響力を高めました。つまり、ある意味ドゥテルテ大統領の思い通りにできるようになったのです。

こうして、抵抗勢力と見るプラザ氏を交代させる可能性が高まっているのです。

しかし、制度が撤廃されれば、製造・輸出拠点としてのフィリピンの魅力は薄れるでしょう。

2018年2月

2018年1月に税制改革を断行しインフラ投資を拡大

ドゥテルテ大統領は2018年1月に20年ぶりの税制改革を断行しています。

これによって物品増税が達成され、新たに手にした財源を、遅れていたインフラ整備に投じたのです。

その際の合言葉は「ビルド・ビルド・ビルド(造れ、造れ、造れ)」。

鉄道や空港、道路などの整備に総額8兆ペソ(約17兆円)を投じる計画を作りました。

もちろん、実行力も伴っていて、首都マニラでは2019年2月、構想40余年にしてついに同国初の地下鉄が着工となりました。

積極的な投資で財政赤字に転落

上記のインフラ整備にはODAなど借金もどんどん投じていきます。

もちろん、これは国家財政に担を強いるもので、アキノ前政権後期の2013~15年にようやく黒字化した財政は、ドゥテルテ政権になって再び赤字に転落してしまいました。

IMFの予測では、2019年は民主化以降で最悪の2350億ペソ、22年には4200億ペソへと赤字が膨らむ見通しとの事です。

こうしたファンダメンタルズの悪化からペソはどうしても軟調な値動きになりがちとなってきました。インフラがないためなかなか自国産業が育たないという課題を解決するためにしょうがない事ですが、ペソ安は常にフィリピンの当局者を悩ます問題となります。

一帯一路で中国からの支援を得る

投資をするにあたって必要な資金を調達するために、中国依存が深まった事も特徴の一つでしょう。

財源不足を補い、インフラ投資を速めるには、一帯一路のチャイナマネーは魅力的です。

中国に厳しい姿勢を維持していたアキノ氏とは対照的に、ドゥテルテ氏は問題を棚上げして対中接近を図ってきました。

問題は国民感情です。一向に収まらない中国船の領海侵犯に対し、中間選挙前に国内から反発が強まると、ドゥテルテ氏は選挙の争点となるのを避けるために腐心したようです。

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