新興国投資にとって政治の安定性は非常に重要です。選挙があれば、その候補者が誰になるかで大きく投資成果も変わってくる可能性があります。
この記事では、2019年のインドネシアの大統領選挙についてまとめてみました!
新しい情報が入り次第、順次更新していき、経緯の記録を残していきます。
各陣営の動きの経緯
野党陣営の抗議、なかなか終わらず
野党陣営による大規模なデモは5月28日までに沈静化したようですが、野党側は選挙結果に異議申し立てをし、審理が本格化する6月後半に再び大規模なデモを準備する方針のようです。
大きな心配をするほどではないかもしれませんが、これがそのまま国を分断して政治的な不安定を生むと、通貨ルピアを含めてマーケットは警戒してしまうかもしれません。
大規模暴動でSNS制限も
大統領選の公式結果を受けて、首都ジャカルタで混乱が続く中、政府はSNSの使用制限を決めたようです。
invstem.com
4月に行われた大統領選でのジョコ大統領の再選が確定した5月21日以降、SNSでは偽情報や暴力をあおる投稿が急増しており、大きな問題となっています。
ジョコ大統領の勝利が確定も、テロや大規模デモ発生の可能性
2019年5月21日、インドネシア選挙管理委員会は4月17日における大統領選で現職のジョコ大統領の再選が決まったと発表しました。
結果を受け入れない野党支持者による大規模なデモや、選管を狙ったテロ計画が浮上し、混乱等を避けるために予定より早い発表となりました。
ジョコ大統領の実績と今後の課題
これまでの実績と今後の課題について改めて簡単にまとめてみました。
↓をご参考ください。
【2019年5月】ジョコ大統領再選、これまでの実績とこれからの課題
ジョコ大統領勝利も、政権運営は前途多難
インドネシアの大統領選で現職のジョコ大統領が再選する事で決着がつきましたが、政権は前途多難で苦しむ事も多いかもしれません。
ポイントとしては、
- 両陣営とも「バラ撒き」色が強く、ジョコ大統領の公約実現にもかなりの歳出増が見込まれること
- 歳出増が見込まれる割に、それが力強い成長にはつながらない可能性が高いこと
- 副大統領には宗教指導者が就任し、外資誘致などの政策へのマイナスの影響があると見込まれること
議会選挙もジョコ陣営が60%確保
大統領選挙と同時に行われた国民議会議員選挙でも、ジョコ氏が率いる闘争民主党が約20%の票を得て第一党となる見込みです。
連立政権を組む他の与党と合わせて過半数の議席を確保する見込みで、得票率は陣営全体で約60%です。
これによりジョコ政権は、議会の後ろ盾も得た事となり、ひとまず大きな障害なく政策を推進する期待が持たれます。
ジョコ氏の再選、金融市場はひとまず歓迎
金融市場においてはジョコ・ウィ氏の再選が確実となったことを受けて、現状政策が続くとの思惑から通貨、国債、株式が上昇する『トリプル高』となり、金融市場からはひとまず好感されているようです。
但し、インドネシアが直面する経常赤字と財政赤字の双子の赤字はもちろん解消されておらず、バラマキ的な政策をエサに得票率を上げたジョコ大統領にとって、当然帳尻合わせで頭を悩ませることになるでしょう。
一歩間違えばすぐに海外資金は国外へ逃避してしまいます。
引き続き細かくウォッチしていく必要があるでしょう。
2019年4月18日、ジョコ氏が再選確実
ジョコ・ウィドド大統領の再選が確実視されています。
2019年4月18日、ジョコ大統領は「私とアミン氏は2024年までの大統領と副大統領として信任された」と表明し、勝利宣言をしました。
民間調査機関によると、最大野党の党首、プラボウォ・スビアント氏(67)を獲得票で大きく上回り、再選を確実にしたようです。
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4月13日に選挙戦が終了、17日に投票
インドネシア大統領選挙の選挙活動期間が4月13日に終了しました。
両陣営は最終日n支持者を集めた集会を開いたほか、テレビ討論会で経済政策について議論を交わしました。
テレビ討論会でジョコ氏は、
- 経済成長の実績
- 公平な分配
- 地方でのインフラ開発などの実績
など実績を中心に説明し支持を訴えました。
プラボウォ氏は「外国からの製品が大量に流入している」として、国内産業育成の戦略を見直すべきだと主張しました。
引き続きジョコ氏が優勢な中、17日に投票が行われますが、早ければその日中に大勢が判明します。
2019年4月、終盤戦でもジョコ大統領がリード
ある調査会社が発表した最新の世論調査によると、ジョコ氏の3月の支持率は56.5%で、プラボウォ氏の43.5%を大きく上回りました。
昨年12月の調査と比べて差はやや縮まっているようですが、最終盤でもジョコ氏が大きくリードしている状況です。
ジョコ氏は与党や各地のイスラム教団体などの組織票を固め、手堅く選挙戦を進めています。
一方で、若者の支持獲得で少し苦戦しているため、最近は若者を狙った選挙活動も展開しています。
ライバルのプラボウォ氏は、失業者の多い地方だけでなく、就職で不満を抱える大卒以上の都市部のエリート層に支持を広げています。
2019年4月7日のジャカルタでの大規模集会では10万人超を集めました。ある調査によれば、22歳以下の有権者の支持率ではジョコ氏を上回っているようです。
ただ、全体的にはジョコ氏リードでマーケットもそのような折り込み方をしているようです。
2019年3月、引き続きジョコ大統領がリード
2019年4月17日の投開票のインドネシア大統領選まであと少しです。
再選を目指すジョコ大統領と対立候補のプラボウォ元陸軍戦略予備軍司令官の戦いもヒートップしてきていますが、3月30日、テレビ討論会で防衛や外交を巡り激しい舌戦を交わしました。
現在支持率ではジョコ氏が優位に立っています。しかし、一部調査ではプラボウォ氏が激しく追い上げていて、どうなるかはもちろん分かりません。
外交戦略についてジョコ氏は「世界最多のイスラム教徒人口という特長を生かす」と述べ、イスラムへの配慮をかなりにじませました。
世論調査の大半でジョコ氏がプラボウォ氏を20ポイント前後リードしています。
ただ、ある調査ではプラボウォ氏がジョコ氏を激しく追い上げ、その差は10ポイント強まで縮まったとも言われ、ジョコ氏も野党批判を始めて巻き返そうとしています。
選挙戦は終盤戦に入り、テレビCMや多数の支持者を集めて行う屋外の大規模集会も解禁されました。
大統領候補のテレビ討論会は4月13日にも開催される予定です。
2019年3月 インドネシア大統領選挙、ジョコ大統領が支持率でリード
2019年3月現在の世論調査では、再選を目指すジョコ大統領が副大統領候補にイスラム教指導者を起用して保守層を取り込み、支持率で野党陣営に20ポイント以上の差をつけて優位に立っているようです。
ジョコ氏自身は既述の通りイスラム教徒であっても、宗教色の薄い世俗派とみられてきました。
しかし、副大統領候補に選んだマアルフ・アミン氏は同国のイスラム教指導者の最高団体「インドネシア・ウラマー評議会」の議長。生粋のイスラム教徒であり、他のイスラム教徒への影響力も相当です。
ジョコ氏は前回の大統領選で「イスラム色」が薄いとみなされ、最終盤で苦戦したという苦い経験があり、今回のイスラム色を前面に出す手法もそこから来ています。
2019年2月 インドネシア大統領選挙、第二回テレビ討論 インフラ整備で激論
2019年2月17日、インドネシア大統領選挙候補者による第二回のテレビ討論会が行われ、インフラ開発で激論を交わしました。
実績を強調するジョコ氏と、質の重視を訴えるプラボウォ氏
ジョコ氏は高速道路や都市鉄道を整備してきた実績を強調し、質を重視するプラボウォ氏は開発が国民のためになっていないと批判する、というのが主なやり取りのポイントです。
ジョコ氏はインフラ開発を経済成長につなげる政策を採用し、首都ジャカルタのあるジャワ島の横断道を含む約950キロメートルの高速道路や19の港湾、10の空港を新たに整備しました。
これによって物流コストが下がり物価の安定に貢献したほか、所得などの地域格差もやや縮小したと主張しています。
これに対してプラボウォ氏は、インフラ建設そのものよりも、(財政面などの)社会的な影響を考慮すべきだ」と主張しました。
加えて「多くのインフラ開発計画で多額の借金を抱えている」とも指摘い、インフラ開発の一部について、プラボウォ氏が当選すれば見直しや中止があり得ると示唆しました。
2019年1月 インドネシア大統領候補者のテレビ討論会が開始
2019年1月17日に正副大統領候補の第1回テレビ討論会が開かれました。選挙戦も折り返し地点です。
第一回目のテレビ討論のテーマは、人権、汚職、テロ等。
双方ともあらかじめ準備していた文言を読んでいるような感じで、ガードが固く、様子見の所があったのかもしれません。
ただ、今後は経済政策や安全保障などがテーマとなり、活発な議論となっていくでしょう。
現状はジョコ氏が過半数の支持 現職大統領の強み
現状は、再選を目指すジョコ大統領が50~60%程度の支持を獲得する一方、プラボウォ党首は30%強と20%程度の差がついているようです。
やはり現職の強みはあると思います。
ただし、前回の大統領選挙でも序盤はジョコ氏がリードしていたものの、最終的な得票率はジョコ氏が約53%で、プラボウォ氏との得票差はわずか6%程度にまで接近したという事もあります。
テレビ討論は残り4回が予定されています。
その内容によっては形勢逆転のシナリオも十分あり得ます。
2018年11月15日 野党副大統領候補、当選すれば鉄道計画見直しと発言
2018年11月15日、野党の副大統領候補として立候補した実業家でジャカルタ前副州知事のサンディアガ・ウノ氏は、当選した場合、中国と進める同国初の高速鉄道建設計画について見直す旨の発言をしました。
ジョコ政権が進めた巨額のインフラ開発全体を見直していく可能性もあります。
高速鉄道計画はジョコ政権の目玉政策のひとつですが、土地収用がはかどらず資金調達は難航しています。
元々は2019年の開業を目指していたが、実現は難しい状況です。
事業費も当初の55億ドルから61億ドルにまで増えており、政権内にも当該プロジェクトに懐疑的なっ見方をする人が増えています。
インドネシア大統領選挙の候補者
ジョコ現大統領
ジョコ氏の主な政策
ジョコ氏の政策のキーワードは、
- インフラ整備、
- 海外資本積極導入、
- 物価の安定、
- 汚職撲滅
といった所でしょうか。
一期目の最初は期待通り規制緩和や補助金削減などの改革を断行したものの、選挙が近づくと改革は鈍化どころか逆行している一面も出てきます。
宗教色強くなる?
副大統領候補としてジョコ氏が選んだのは、排他的イスラム主義が見え隠れする宗教指導者マアルフ・アミン氏です。
ジョコ氏自身は宗教色が薄い為、宗教を重視する人を取り込むためのやむを得ない人事だったのでしょうか。
海外の投資家が懸念するのは、イスラム教でもより排他的な雰囲気の色彩が強い政府になる事で、これまで進んできた民主化が逆行してしまう事でしょう。
主要メディアを味方につける
今回、ジョコ陣営には主要メディアを持つ実業家らがサポーターとして名前を連ねます。
メディア王の異名を持つハリー・タヌスディビョ氏はジョコ氏支持を表明し、更に大手広告会社の創業者エリック・トヒル氏が選対本部長に就きました。大手メディアの報道姿勢はジョコ氏寄りになっているようです。
プラブウォ氏
スハルト元大統領の娘婿で元軍幹部だった同氏。強いリーダシップを前面に掲げてジョコ氏と二回目の対決に挑みます。
プラブウォ氏の政策
プラブウォ氏の政策のキーワードは、
- 海外からの投資案件の精査(インフラ整備の見直し)
- 物価安定、
- 貧困層向けのサービス(教育、保健医療)の拡充
といった所でしょうか。ジョコ氏と違って、海外資本の積極導入には消極的です。
豊富な資金力でジョコ氏に対抗
プラボウォ氏と副大統領候補の大手投資会社創業者サンディアガ・ウノ氏の個人資産の合計額は7兆ルピア(約520億円)と言われています。
この金額はジョコ陣営の約110倍と言われ、この豊富な資金力を選挙のキャンペーンにどんどん活用していく予定だそうです。
テレビCMやソーシャルメディアで主張を拡散し、支持を訴える戦略でしょう。
政策はともかく、何となくイメージではプラブウォ氏が少しジョコ氏に劣っているような現状なので、SNS等を使っていかに挽回してくかがプラブウォ陣営の最初の課題でしょう。
争点は経済政策か?
選挙の争点は経済政策になるとみられています。
地域間格差の解消を主眼に置きインフラ整備の実績を訴えるジョコ氏に対し、軍出身のプラボウォ氏は「強いリーダーシップ」による開発促進と経済成長を主張しています。
ただ、国民がそれだけでどちらを大統領に選ぶか決めるというのは少し話が出来すぎです。
プラブウォ氏は国軍特殊部隊で民主活動家の誘拐などに関わった疑いもあり、同氏が長期独裁体制を敷いたスハルト元大統領の元娘婿であることも手伝って、強権政治を懸念する声もあったりします。
そういった所をジョコ陣営が見逃すわけもないので、かなりパーソナルな部分に影響を受けやすいでしょう。
前回の選挙でも戦ったジョコ氏とプラブウォ氏
両氏は2014年の大統領選で初対決しました。なので今回が2回目の対決。
前回はメディアも巻き込んだ誹謗中傷合戦に発展しました。後味の悪い戦いになったのです。
このため、2018年9月21日の候補者番号抽選会でジョコ氏が「インドネシアの民主主義が成熟したことを国民に示そう」と述べると、プラボウォ氏も「選挙が平穏に静かに行われることを望む」と応じました。
ただ、安易にポピュリズム的な政策に走ってしまう現政権を見ていると、なかなかこの国の民主主義が成熟したとは言えないかもしれません。
今回も前回と同じような感じになる可能性はあります。そしてそれがもとで国が真っ二つに割れてしまうという事は避けたいところです。
今後の日程
2018年9月23日 大統領選挙 正式な選挙期間の開始
2019年4月に投開票されるインドネシア大統領選挙の選挙期間が23日、正式に始まりました。
ここから半年間という長い選挙期間が始まります。
その後2019年4月17日に大統領選挙と、議員選挙が行われ、更にその半年後の2019年10月20日に正副大統領が正式に就任する形となります。
とん挫するジョコ大統領一期目の改革
大統領選を意識し、国営企業肥大化か
ジョコ政権が目先の国民受けする政策、票取りをするための政策、に走り始めているような感じになっています。
プルタミナ
プルタミナは国営の石油会社です。
この会社は原油や石油製品の多くを外部からの調達に頼っているので、原油価格の上昇を最終製品に転嫁しないと収益は悪化します。
これまでのジョコ政権なら、プルタミナがそうした行動を取っても、特に何も言いませんでした。
しかし、最近は国民の反発を恐れるジョコ政権の意向を受け、プルタミナ主力のレギュラーガソリン価格の引き上げに踏み切ることはしません。その分、プルタミナの収益は悪化するはずです。
元々プルタミナは石油・ガス採掘の許認可権限を持っていて、その巨大な官僚機構には原油採掘や石油取引で生んだ富が転がり込み、それが政界を動かし、汚職の温床にもなっていました。
2014年に大統領に就任をしたジョコ氏も当初はこの組織の改革に前向きでしたが、ここ最近はそうではないとも取れる行動をしています。
ガルーダ・インドネシア航空
銀行出身の経営者がリストラを進め、赤字垂れ流しだった企業を少しずつ回復させてきました。
2017年4月に就任したパハラ・マンスリ社長がリストラを進めています。共同運航便の活用や不採算路線の廃止など、積極的に赤字体質を改善させつつありました。例えば2018年4~6月期の最終赤字額は、1~3月期に比べて縮小しました。
ただ、パハラ氏の改革には暗雲が漂っています。
経営陣が従業員の手厚い福利厚生に切り込もうとしたことで、労働組合が猛反発しているのです。労組は繁忙期であるイスラム教大巡礼の時期などにストライキをちらつかせ、撤回を迫っています。
ジョコ政権はこれにビビってしまい、今リストラを進めた経営陣の刷新を模索しています。
そして、2018年9月12日、臨時株主総会でパハラ・マンスリ社長の解任が決まりました。後任には、国営港湾会社ペリンド3のアスカラ・ダナディプトラ社長が就く予定です。
就任からわずか1年半での交代で、経営改革が停滞する懸念されますし、ジョコ大統領のこれまでやってきた改革に逆行しかねないものであるため、海外投資家中心に落胆している人も多いでしょう。
労組がわめけば非効率な事でも取ってしまうのがインドネシア経済、という色眼鏡で見られないようにしていかなければなりません。
PLN
PLNは国営の電力会社です。
PLN単独で考えると割に合わないインフラ投資を最近しています。これもジョコ政権の意向を受けての事と言われています。
PLNの収益悪化が懸念されている事は言うまでもありません。
中国の影
世界から注目されているのが中国の介入です。
一帯一路を通じて、世界への影響力・支配力を強めようと必死な中国が、インドネシアの国政選挙に密かに介入する事がかなり懸念されています。
先日、話題となったカンボジアの総選挙に中国がサイバー介入したという報道がありましたが、これはインドネシアの大統領選挙介入の為の予行演習だったとの噂が専らです。
インドネシアはビジネス上も中国にとってかなり重要であり、自国に有利な選挙結果となるように、様々な手段を中国が講じてくる可能性がかなりあります。
ここら辺の点についても要注目の選挙と言えるでしょう。
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