ここではスポット記事として、2019年9月時点のブラジルレアルの現状と見通しを記述します。
最新の記事はこちら。【2020年7月】中長期的に見れば買って良いブラジルレアルの現状と今後の見込み
ブラジルレアル全般について現状を整理しつつ今後の見通しなどを展望します。このほかブラジルレアルの年金改革のスケジュールやボルソナロ政権の状況についての簡単な説明をします。
ブラジルレアルの現状と動向
1BRL=25~26円
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2019年8月以降、なんとなくブラジルの内政(改革の進展など)などよりも米中摩擦の激化やアルゼンチンペソの急落といった外部要因でブラジル経済が危ぶまれる感じが強くなっています。
引き続き内政の状況には注意しながらも外部要因でレアルがどうなるか注意する必要もあるでしょう。
レアル円のチャート推移(2019年8月末までの直近1年)
【2019年8月末時点から直近1年のレアル円のチャート】出所:TraingView
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ドル・レアルのチャート推移(2019年8月末までの直近1年)
【2019年8月末時点から直近1年のドルレアルのチャート】出所:TraingView
2019年8月に入ってから、米中貿易摩擦や中旬に起きたアルゼンチンペソの急落を受けて、ブラジルのみならず多くの新興国通貨が軟調です。
時間と資金が許すのであれば、大きく落ちた所で拾っていく位の視野で臨みたい所です。
口で言うのは簡単ですが。。。
アルゼンチンペソ急落の影響はどうか
2019年8月11日、アルゼンチンは大統領予備選で左派が勝利した事で、通貨ペソが急落しました。
この混乱は隣国であるブラジルにも波及しています。
例えば、2019年8月にはブラジルレアルは対ドルで5月下旬ぶりに1ドル=4レアル台に下落、レアル=円でも25円台に落ちています。
ブラジルとアルゼンチンは経済関係も深く、通貨レアルも弱含む傾向にありますが、どこまで悪影響が広がるかはまだ9月時点では分かりません。
2019年9月に入り、アルゼンチンのデフォルトが少し現実味を帯びてきていますので、注意しておくべきでしょう。
注目されたボルソナロ政権の年金改革は大詰め
注目されていたボルソナロ政権の年金改革は2019年9月時点では道筋が見えている段階で、期待感が膨らんでいます。
ただ、海外要因とアマゾンの火災問題の方がより注目されていて、2019年9月初旬においては話題感において少し劣っているかもしれません。
年金改革法案、これまでの流れ
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ここがスタートです。
色々ありましたが、無事通過
ここでの議論もそれなりにありましたが、無事通過
二回投票がある中で、7月は第一回の投票だけ行われ通過しました。
第一回は改革法案の前文について、第二回は法案内容についての承認です。無事終了しています
無事、可決で終了しています。
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といった感じです。
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2019年7月中に下院で1回目の採決が行われたので、このまま順調にいけば2019年中に本改革法案が成立する可能性が高いと思われますが、政治は何があるか分からないので楽観視は出来ません。
下院本会議の1回目の投票で、賛成が圧倒的多数で、そのまま第二回も無事8月9日に通過しました。
下院を通過した事は年金改革法案実現に向けた重要なステップです。
このまま順調にいけば、9月頃に上院で採決が取られる見込みです。
9月第一週に、上院憲法司法委員会にて年金改革法案の票決が行われました。
そこで、同法案は賛成18:反対7で承認されました。
ただ、承認された法案では、歳出削減規模が8,700億レアルとなり、下院で承認された案から縮小しています。
削減額縮小は少し気になる所ですが、一方で新たに歳入を増やす案も盛り込まれていて、財政改善という意味では、下院の原案と同じ効果があるとされています。
ただ、アマゾン火災問題などでボルソナロ政権の支持率が下がり、国民の後ろ盾がなくなったりすると、それがそのまま上院の採決にも影響が出るかもしれません。
年金改革法案の進捗については下の記事で最新状況をフォローしています。ご参考ください。
ブラジル大統領ボルソナロ氏の経済政策に関するまとめ年金改革法案が通るとどうなるの??
ムダを廃して出来た新たな財源を、様々な経済政策に振り向けることが出来るようになります。
ブラジルでは社会保障関連支出が大きく、基礎的財政収支は2014年以降5年連続で赤字となっています。
今回の『年金改革』により、財政収支が改善すれば、新しい経済政策や景気刺激策を行う余地が生まれ、ブラジル経済を支えることができると期待されています。
これはもちろんブラジルレアルを上昇させる一つの要因となりうるでしょう。
国有企業改革も前進か
2019年8月21日、ブラジル政府は郵政電信公社など国営・国有17社を2019年末までに民営化すると発表しました。
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肥大化した国営・国有企業の経営効率化と政府保有株の売却で財政再建を加速させますが、まだこれでは終わらず、国営石油会社ペトロブラスも含めたさらなる民営化案も浮上しているようです。
ただ、これまでは、政府が民営化を提案しても、既得権益を守りたい議員の反対で、骨抜きされるケースが多くありました。
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2017年にはテメル前政権がエレトロブラスや造幣局の民営化を提案しましたが、議会の賛成を取り付けられず、失敗に終わったという経緯があります。
この民営化改革が上手くいけば、もちろんレアルにとっては追い風となるでしょう。
懸念されるアマゾン森林火災問題、長引けば経済の重荷に
2019年8月に発生したアマゾンの森林火災が拡大するなか、ブラジルとヨーロッパの対立が改善しません。
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ボルソナロ大統領は経済成長のために森林開発を進めたい一方で、ヨーロッパはアマゾンを保護すべきだと主張している事です。
ヨーロッパがかなり深い懸念を示している事に、ボルソナロ大統領は内政干渉だと強く反発しています。
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ヨーロッパとの関係悪化がさらに進むと、経済成長の足かせとなるリスクも出てくると思われます。
ボルソナロ氏は「アマゾンはブラジル国民のものだ」と繰り返し訴え、ヨーロッパ、特にフランスのマクロン氏を念頭に「植民地主義を思い起こさせる」などと発言したりして、少し感情的な様相も帯びています。
ブラジル政府は、今が焼き畑の時期にあたり、火災は例年並みだと主張しています。
ブラジル国立宇宙研究所によれば、今年のアマゾン地域での火災発生件数は直近のピークだった2010年の6割程度との事です。
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国際的な関心が集まるのはボルソナロ氏の姿勢に原因がありそうです。
ボルソナロ氏は地球温暖化に懐疑的で、環境保護より経済開発を優先しています。
- 2018年の大統領選ではアマゾンの土地売買や農地開発を容易にする規制緩和を行うと公約
- 政権発足後、道路を舗装し、農牧地や鉱山の開発を後押し
- 違法伐採を監視する政府機関の予算を削減
- それまで違法だった金の違法採掘を合法化し、国が管理する方針も提示
- 上記の行動から、政権が森林開発を容認したと受け止められ、違法伐採や焼き畑が急増
ブラジルは南部に産業が集中していて、森林が広がる北部は貧しい事で知られます。
歴代政権は、この格差を分配によって解決しようとしてきましたが、ボルソナロ氏はそれを経済振興によって成し遂げようとしているのです。
ただ、このままボルソナロ氏が強硬姿勢を続けると経済にも悪影響を及ぼしかねません。
すでに欧米の衣料・靴メーカーがブラジル製素材の発注を停止する方針を発表しました。
EUと、ブラジルを含む南米4カ国のFTAも見直しの検討が公然と言われる等、成長戦略の根幹とするFTA網の拡大にも黄信号がともり始めています。
最初はなんてことないと思っていたアマゾン森林火災問題は、意外に政権を大きく揺らしそうです。
直近の経済成長率は+0.4%
2019年8月29日に発表された2019年4~6月期の経済成長率は前期比0.4%増と、2四半期ぶりにプラス成長に転じました。
企業の設備投資が持ち直し、景気後退入りは避けられました。
- 設備投資など固定資本形成が前期比+3.2%
- 家計消費も同+0.3%
- 輸出は同▲1.6%と低迷
アルゼンチン向け工業品輸出が減っている事や、豚コレラの影響で中国向け大豆輸出が伸び悩んだことが輸出低迷の要因です。
アマゾン火災問題が長引くと、輸出にも影響を与えてしまう可能性があります。そこが少し心配です。
景気浮揚のための歳出増をどこまで許すか
上記の通り、ブラジルの景気は厳しい状況ですが、これに対するボルソナロ大統領の対応が注目されます。
ボルソナロ大統領は大統領選挙時に財政再建を公約の一つの柱としていた事から、他のポピュリズム政権と違ってのべつ幕無しの歳出増は出来ません。
ただ、景気低迷に伴う歳入鈍化を受けて、財政状況はひっ迫度合いを増している状況でもあります。
そこで大統領としても景気浮揚で税収アップを図るべく、政権の経済チームに対して歳出の伸びを前年のインフレ率以下に抑えることを定めた歳出上限法の見直しを指示したようです。
ただ、この法律改正には議会承認が必要です。
議会は同法及び経常歳出に向けた国債発行の禁止、プライマリーバランスの達成を財政政策の柱とみる傾向があり、なかなか実現が難しそうな情勢です。
心配なのは、仮にそれが可決してしまった時にマーケットがどう反応するかということ。
実現すれば金融市場では財政健全化に向けたストッパーが外れたと見る可能性もあり、そうなると年金改革でレアルが上昇する事を我慢して見守っていた投資家を裏切る事になる可能性もあります。
ブラジルレアルの金利はどうなるか
2019年9月時点の政策金利(9月18日修正) | 5.5% |
2019年7月31日、ブラジル中央銀行は政策金利を約1年4カ月ぶりに引き下げることを決めました。
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すでにアジア、オーストラリアで利下げの動きが出ており、世界的な流れになっています。
利下げは2018年3月以来です。
これまでブラジルは、景気が悪いながらも通貨安を警戒し政策金利を維持してきました。
中央銀行は、ボルソナロ政権の改革の行方と、物価上昇が落ち着きつつある中で、アメリカが利下げに踏み切ったこともあり、金融緩和が可能な環境が整ったと判断したようです。
中央銀行は弱いインフレ見通しに伴い、一層の緩和が可能になるとの認識も示唆してます。
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確かに、追加利下げへの思惑が通貨を下押しする可能性はありますが、それ以上に年⾦改革法案の進展期待が通貨の上昇材料になると考えられます。
世界的な金融緩和の流れの中で、引き続き相対的に⾦利の高いブラジルレアルには資⾦流⼊が増えるという可能性があり、そうなればブラジル・レアルの上昇を後押しすると考えられます。
2019年9月18日、ブラジル中央銀行は政策金利を0.5%引き下げ年5.5%にすると発表しました。
これで2会合連続の引き下げとなり、過去最低を更新した形です。
また、中央銀行は
「良好なインフレ見通しが強まっていることから刺激策の追加調整が可能になるとみている」
としていて、政策の次の動きが見通しに左右されるとしながら、追加緩和の可能性も示唆しました。
ブラジルの政策金利の推移は↓
【最新】ブラジルの政策金利と金融政策の推移とまとめ2018~外貨準備を活用したレアル買い介入を実施
ブラジル中央銀行は8月に起きているレアル下落圧力を抑制するために2009年2月以来の、米ドル売り介入策を行うと発表しました。
8月21日から29日の間に最大で38億ドル程度の米ドル売り加入を実施するというものです。
ただ、今回の介入は新規の米ドル売り介入という事ではなく、既存の通貨スワップ介入残高の一部を米ドル売却と引き換えに解消するというものであり、通貨防衛を狙ったものとまでは言えなさそうです。
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ブラジルの外貨準備は直近で3800億ドル強あります。
今回の為替介入のレベルはたったの1%なので、特に心配はないと思われます。
ブラジルレアルの今後の見通し
今後の見通しを考える場合、まずは直近の最下限はどこなのかを知っておく必要があります。
それは、
2018年9月10日 | 1米ドル=4.24レアル台 |
2019年8月25日 | 対円で1レアル=25.4円で史上最安値を更新 |
の二つでしょうか。
2019年8月25日、対円史上最安値が更新されました。。。
25.4円程度となっています。
ただ、外部要因もかなりあり、ブラジル自体の要因というわけでもないので個人的には様子見です。
資金に余裕がある人は、時間分散を意識しつつしっかりと仕込んでおくと良いでしょう。
因みに、2019年8月末現在は
1米ドル=4.1レアル |
1レアル=25.6円 |
となっています。
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一度意識されていたラインを突破してしまうと、なし崩し的に下がる可能性も無きにしも非ずなので、よほど自信がない限り投資は控えるべきでしょう。
ビッグマック指数(≒購買力平価)で考えた場合のBRL
もう一つ、通貨が割安か否かを考える時のツールであるビッグマック指数と実際のレートを検討してみましょう。
ビッグマック指数の説明等は↓をご参考ください。
割安な新興国通貨はどれだ??購買力平価(ビッグマック指数)で考える簡単チェック
日本のビッグマックは390円、ブラジルでは17.5ブラジルレアル(2019年7月現在)。
1BRL | 22.28円(2019年7月末時点) |
が購買力平価説を基にした簡易的なブラジルレアル・円の為替レートになります。
こうした所からすると今の為替レートは高めになっているという事ですね。
ブラジルレアル安の理由は様々だが、政治の混乱である事が多い
2015年に史上最安値を更新した背景として、政治の混乱がありました。
当時ブラジルレアルが回復したのは、ルセフ前大統領が辞職し、テメル大統領代行の大統領昇格となった後、政治機能の回復が見られたためです。
現状、ボルソナロ政権はおおむね安定的に政治運営しており、喫緊のリスクとして政治リスクを意識するほどではないと思われます。
まずは年金改革の行方を注意、上手く行けば1レアル=30円台は超えるか
やはり、ブラジルはファンダメンタルズの弱さがありますので、それをいかに計画的になくしていくか、という事でしょう。
その意味で年金改革が順調に進むか否かはかなり重要です。
政治は最後までどうなるか分かりませんが、年金改革は今年中に遅くても決着がつくと言われています。
また、年金改革法案に加え、税制改革などの構造改革の進展や、ブラジルの景気動向も注目ポイントとなるでしょう。
心配なのがアマゾン森林火災問題でしょうか。
自然環境問題という観点で極めて重要であるものの、この問題はこれそのものよりも個人的な怨嗟も絡んでいたりして、少し厄介です。
対応に忙殺されて、他の大切な問題が後回しとなって、最終的に足下を救われるといった事が無いように祈るところです。
年金法案などが決着した後だとすぐに上昇してしまう可能性もあるので、それまでは不安定な状態でも、5~6%くらいの金利をもらうつもりで少しずつ仕込み、来たる上昇に向けて準備しておいても良いかもしれません。
おすすめの投資信託やETF
個人的にお勧めするのは、やはり外資系の運用会社の商品か、国内の運用会社でもしっかりとした海外のブラジル運用に強い運用会社に外部委託している商品です。
パフォーマンスは1年などの短期ではなく、なるべく長めのもののほうがパフォーマンスの差がしっかり出ます。
また、純資産が最低でも10億円はあるものが良いと思います。
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加えて個人的に重視しているのはレポートの充実です。
投資する前も投資した後も質の高いレポートがたくさん出ている事は大切ですね。特にしっかりと相場観を記している所は重宝するものです。
加えて、これは完全に個人の経験によるもので、何か科学的なデータがあるわけではないのですが、販売手数料のない商品(ノーロード)のものより、手数料かかる投資信託の方が何となくパフォーマンスが良いような気がします。。。いつもそういうわけではないのですが。。。
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