米中貿易摩擦、ベトナムへの影響

ここでは、米中貿易摩擦に関連したベトナムの状況についてフォローします。

少しニッチなテーマですが、ベトナムへ投資をしている方は少し興味があるでしょう。米中貿易摩擦は世界経済に悪い影響を与えていますが、ベトナム経済や産業にはポジティブな影響も与えています。

ベトナム経済や産業に米中貿易戦争やそれに伴うサプライチェーンの変化がどう影響していくのかを記述していきます。

米中貿易摩擦に関するタイムライン記事は↓

米中貿易摩擦についての経緯とまとめ2019年7月~12月米中貿易摩擦問題について整理してみた2018

2019年10月

ベトナムの対米輸出は加速

2019年10月に発表された通関統計によれば、ベトナムから米国向けの輸出は19年7-9月期に前年同期比+28.3%となり、4-6月期の同+25.9%から加速しました。

さらに月次で見ると、9月にかけて15カ月連続で2桁増とっています。

米中貿易摩擦が激化するなか、ベトナムが中国の代わりとして存在感を高めています。

2019年8月

「ベトナム製」の定義を明確に

ベトナム政府は「迂回輸出」の排除を念頭に「ベトナム製」の基準案を策定しました。

具体的には、

  1. 商品の金額に対して国内での加工付加価値を3割以上
  2. 輸入時の製品から全く別の製品に加工すること

になっているようです。

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新たな案ではベトナムでの簡単な加工は「ベトナム製」と認めません。

ベトナムではこれまで「自国産」の定義が曖昧で、表示の仕方を製造業者の自主的な判断に任していました。

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今回こうした措置を採る背景には、アメリカの影があります。

ベトナムはアメリカが貿易赤字を抱える国の上位で、アメリカの「監視対象国」に指定されています。

このまま今回の問題を放置しておくと、中国と同じ制裁関税を課す可能性をトランプ大統領は示唆しているのです。

2019年7月

ベトナム政府が迂回輸出防止へ新しい法令

米中貿易摩擦に絡んで、ベトナムが中国製製品の「迂回輸出」の温床となっている事を受けて、ベトナム政府が対策に乗り出しています。

ベトナムは罰則規定も含む新たな法令で、アメリカの制裁関税逃れを狙った中国からの迂回輸出の防止につなげたい考えです。

ポイント

ベトナムの対米貿易黒字は1~5月に216億ドルに達し、前年同期比で4割以上急増しました。アメリカはベトナムの対応を注視していて、中途半端な事をするとアメリカの怒りの矛先がベトナムに向いてしまう可能性さえあります。

米中貿易摩擦からの恩恵はいつまで続くか

2019年6月のG20で行われた米中首脳会談によって、米中摩擦は一旦緩和という方向となりました。

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米中貿易摩擦から漁夫の利を得ていると考えられているベトナムにとってはどうなのでしょうか

ただ、引き続きアメリカの対中関税は第三弾まで有効なわけで、やはり中国の対米輸出には制限がかなりかけられている状況であるといえます。

このため、ベトナムが中国に代わる「世界の工場」としての地歩を固める機会は引き続き生きていると言えそうです。

しかし、そういった漁夫の利が長く続くほど甘くもないでしょう。

そもそも、米中摩擦はアメリカが自国の巨額貿易赤字の削減を目指したものであり、トランプ政権はメキシコ、EU、日本といった貿易赤字を抱える国に対して圧力をかけてきました。

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ベトナムは対米貿易黒字がどれくらいあるのでしょうか
アメリカの国別貿易赤字上位(2018年)
  1. 中国
  2. メキシコ
  3. ドイツ
  4. 日本
  5. アイルランド
  6. ベトナム

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ただ、2019年のラップで考えると、中国、メキシコ、日本、ドイツに次ぐ5番目がベトナムです。

上記の状況もあり、アメリカ財務省は2019年5月の「為替報告書」で ベトナムを『 為替操作監視国リスト 』 に 加え、監視を強化したのです。

アメリカはベトナムドンが不当に安く誘導されているとして、実質実効レートの段階的上昇をするなどして、経済の実力を反映した為替レートにすべきと述べています。

アメリカが本気でベトナムをターゲットにしだすと、まだ独り立ちするには少し厳しいベトナムの産業構造なので、かなりしんどい事になるでしょう。

アメリカ政府、ベトナムで最終加工した鉄鋼製品に最大400%超の関税

2019年7月2日、アメリカ政府は韓国や台湾で生産した鋼材をベトナムで最終加工し、同国からアメリカに輸出した一部の鉄鋼製品に対し、最大456%の関税を課すと発表しました。

今回は米中貿易摩擦に関連した中国製品を標的としたものではありませんが、原産国をごまかす「迂回輸出」にアメリカがセンシティブになっている故の措置と言えるでしょう。

2019年6月

ベトナムを迂回してアメリカへ輸出

アメリカが対中関税を発動した数十億ドルに上る中国製品が、ベトナムなどのアジア諸国を経由した「迂回輸出」でアメリカに入ってきているようです。

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迂回輸出とは、第3国で短期間に最小限の加工等を加えた中国製品について、産地を第3国と表示して米国に再輸出する行為です

アメリカ政府ももちろんこの事実を把握していて、は1年以上にわたって対策を講じてきました。

この迂回輸出を効果的に防げなければ、アメリカの対中関税もあまり意味を成しません。

場合によっては、ベトナムに何らかのとばっちりが来る可能性もあります。

米中貿易摩擦の負の影響

ベトナム経済にとってメリットばかりが注目される米中対立ですが、負の側面の出てきています。

台湾系でベトナム鉄鋼最大手のフォルモサ・ハティン・スチール(FHS)は、計画していた高炉の新設を遅らせる可能性を表明しました。

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貿易戦争の影響で中国産の鋼材が安値で流入し、市況悪化が長引いて、投資をしても採算が合うのか分からなくなったためです。

同社は東南アジア最大の一貫製鉄所を目指し、最終的には生産量を2250万トンまで増やす計画でした。

2019年5月

漁夫の利を得るベトナム・・・?

2019年5月5日、トランプ大統領が対中関税を引き上げると表明した「怒りのツイート」以降、世界の株価は下落しました。

しかし、ベトナム株は無傷です。

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ベトナムの代表的な株価指数「VN指数」は5月半ば以降、トランプ大統領のツイート前の水準を上回る局面もありました。

その背景は、ベトナムが米中衝突の「漁夫の利」を得る、というもの。

世界の工場という立場を中国からベトナムが獲得する、というシナリオです。

でも、あまり高笑いしている暇もなさそうです。

STEP.1
 
STEP.2
ベトナム国内での雇用創出
 
STEP.2-1
輸出の拡大
STEP.3
個人の消費拡大
STEP.3-1
対米黒字の拡大でアメリカから目を付けられる

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アメリカの対ベトナムのモノの貿易赤字は395億ドル(2018年)ですこれからもっと増える可能性があります。

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この10年で4倍に膨らんでいます。当然そうなればなるほど、アメリカからの厳しい視線が顕在化し、中国からの生産シフトが続けば、結局中国が今直面する苦しみと同じことを味わる事になるのです。

1 COMMENT

Reginald Wickett

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