ブラジルの政治についてのまとめと経緯

ここではブラジルの政治をテーマとして記述していきたいと思います。

2021年10月

上院、ボルソナロ氏のコロナ対策を批判する報告書をまとめる

ブラジル上院は、ボルソナロ大統領による不十分な新型コロナウイルス対策が死者を増やしたとする報告書をまとめる方針です。

物騒なのは殺人罪などで刑事責任の追及も視野に入れている事です。

ブラジル上院は新型コロナを巡るボルソナロ政権の対応について委員会を設けて調査を進めていました。

報告書は

  • ボルソナロ政権のワクチン購入が遅れたことで医療崩壊が起きたと批判
  • 連邦政府は2020年時点で英アストラゼネカ製のみで十分だと判断し、米ファイザーからの連絡を無視していた
  • 明確な科学的証拠がないにもかかわらず抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」の治療効果に固執した

などの問題を含め、殺人罪や文書偽造など少なくとも12の罪を指摘するようです。

今後は議会での採決を経て連邦検察が訴追するかどうかを決めます。

ただ現時点では、弾劾などにつながる可能性は低いと見られます。

ブラジルでは22年10月に大統領選挙が控えており、今回の一件がボルソナロ氏にとって不利になる可能性が相応にあります。

NGO組織がボルソナロ氏を告訴

オーストリアの非政府組織(NGO)「オールライズ」は12日、アマゾンの熱帯雨林の大規模破壊を招いて気温上昇などを引き起こし人類を危機に陥れているとしてブラジルのボルソナロ大統領を「人道に対する罪」の疑いで国際刑事裁判所(ICC)に告訴しました。

同NGOはボルソナロ氏が、結果がどうなるかを十分に知りながらアマゾンの大規模破壊を推し進めていると主張しています。

2009~18年のアマゾンの伐採面積は年間平均約6500平方キロでしたが、アマゾン開発に積極的なボルソナロ氏が19年に就任してからは年間1万平方キロを超えている状況です。

2021年9月

ボルソナロ大統領の発言で政治が不安定化

ブラジルでは7日にボルソナロ大統領が今後は最高裁に従わないと発言するなど、過激な言動をとったことで政治不安が再燃しています。

支持者を前に最高裁判事を罵倒し、今後、判決には従わないと主張しました。

三権分立や民主主義を否定する姿勢が懸念されました。

現在、議会では税制改革案が審議されています。

しかし、今回のボルソナロ氏の発言を受け、上院議長はすべての議論を一時停止すると発表しました。

ボルソナロ氏の弾劾も取り沙汰されており、不安定な状況が続いています。

2021年7月

ボルソナロ大統領が退院

ボルソナロ大統領は18日、最大都市サンパウロの病院を退院しました。

14日に腸閉塞との診断を受け、首都ブラジリアからサンパウロの病院に搬送、4泊入院していました。

ボルソナロ氏は選挙運動中の2018年に暴漢に腹を刺され、就任後に何度か手術を受けています。

腸閉塞は、過去の手術が影響した可能性があるという事です。

最高裁がボルソナロ氏の捜査を検察に許可

ブラジル最高裁の判事は2日、新型コロナウイルスのインド製ワクチンの不正契約告発を放置したなどとして、ボルソナロ大統領の捜査を検察に許可しました。

インド製ワクチン「コバクシン」について、メーカーの提示価格の10倍以上で購入しようとするなどの不正があったとの告発を受けながら、ボルソナロ氏が捜査を命じなかった疑いがあるとの事です。

議会調査委員会で6月、明るみに出ました。

ブラジル政府はインドの製薬会社が製造するワクチン「コバクシン」2000万本分を16億レアル(約350億円)で輸入する契約を結びました。

書類に不備があったにもかかわらず、発注するよう政権内部から圧力があったことが判明しています。

ボルソナロ氏は内部告発を受けていましたが、調査すると言ったきり、具体的に動いた形跡がなかったとされています。

同委員会はコロナの脅威を過小評価するボルソナロ氏の言動や、政権のコロナ対応を検証するために設置されました。

2021年6月

コロナを巡って汚職が発覚

新型コロナウイルスのワクチン調達における汚職問題が浮上し、政権が対応に追われています。

ボルソナロ大統領は、契約交渉で賄賂を要求したことが疑われている保健省の高官を解任しました。

また、大統領の弾劾を求める声も上がっており、政治問題が市場センチメントを悪化させています。

2022年の再選に向けてギアを上げようとするボルソナロ氏にとっては、政治的に敏感な時期に論争が起きてしまいました。

世論調査の支持率では、2022年大統領選への立候補が可能となった左派のルラ元大統領に先行されている状況です。

野党側は6月30日、ボルソナロ氏に対する罷免請求を議会に提出しました。

ただ、弾劾要請の受け入れ可否を決める権限を持つ下院議長が、受け入れようとする姿勢を全く示していないことから、今のところ専門家は、ボルソナロ氏が大統領職を追われる可能性はほとんどないとみています。

支持率を下げているとはいえボルソナロ氏は依然、世論調査では有権者の2割超の支持を得ている状況です。

ただ、この汚職問題は政府のコロナ対応のひどさを露呈させ、信用を大きく傷つけたことは確かです。

今回の疑惑でボルソナロ氏の議会の支持基盤はさらに弱まり、重要な経済改革の推進が困難になる可能性があります。

ボルソナロ氏、コロナ対応への批判で苦しい状況

ポピュリズムのボルソナロ氏は、4月からの2カ月間、上院の議会調査委員会(CPI)で政権の新型コロナウイルスへの対応を巡る新事実が相次ぎ浮上し、信用が落ちています。

CPIは政府の新型コロナ対応が、極めて不適切で、公衆衛生に有害でもあったと主張しています。

効果が否定されたクロロキン(抗マラリア薬)などをボルソナロ氏が強く支持したことや、ファイザーからのワクチン供給に関するメール数十件を無視した疑いなどが主張の一つです。

政府がファイザー側からの81件の連絡のうち53件に応答しなかったことを示す一連のメールがあり、これがワクチン購入の遅れにつながったとされています。

CPIが調査を開始した4月以降、上院の委員会室での証言は大きく報じられ、嫌がおうなしに人々が注目するようになっています。

CPIは、クロロキンが新型コロナに有効だと示せるよう、政府が書類を修正しようとしていたり、大統領府内の医療顧問の多くが非科学的な新型コロナ対策を支持していた事も明らかになっています。

調査は8月終了予定ですが、10月まで延長されるかもしれません。

最終的にはただの報告ではなく刑事手続きを求めることもありえるとの報道があります。

もちろん、ボルソナロ氏への選挙にはマイナスに働くでしょう。

問題はその程度です。

テレビニュースを通じて、政権の新型コロナ対応は大失敗だったという認識が広がったのは確かです。

その一方で、右派のボルソナロ氏の支持率は安定し、有権者の20~30%の中核支持層の忠誠は変わらないようです。

ルラ氏はこの状況を静観しています。

政治能力が高い彼は自分の勝てる見込みがどこまであるのか考えているのでしょう。

2021年4月

アマゾン森林保護へ急転換

ボルソナロ大統領が欧米諸国から求められてきた森林保護への協力を表明し、内政干渉だとする従来の姿勢を転換しています。

新型コロナウイルス禍で支持率が低迷し2022年の大統領選での再選も危うくなっており、支持率回復のための政策転換です。

ボルソナロ氏は4月22日、米国主催の気候変動に関する首脳会議にオンラインで出席して、森林保護を宣言しました。

4月23日に発表された最新の世論調査では、ボルソナロ氏の支持率は25%にとどまり、不支持率は54%となっています。

新型コロナへの対応を巡り、支持率下落が止まらないのです。

2022年に予定されている大統領選での投票意向を問う質問では、ボルソナロ氏の支持率は左派のルラ元大統領を下回っています。

ルラ氏は過去の汚職疑惑で有罪判決を受けたため2018年の大統領選に出馬できませんでしたが、連邦裁判所は4月15日、有罪判決を取り消す判断を確定させました。

既に22年の大統領選はボルソナロ氏ではなく、ルラ氏を中心に回りつつある状況です。

コロナ抑制できずともボルソナロ大統領は強気

ブラジルで新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかかりませんが、ボルソナロ大統領はこれまでの方針を変えようとしていません。

WHOが地獄のような状況になっていると警戒を呼び掛ける中でも、ボルソナロ大統領は4月9日、州知事によるロックダウンの動きを批判しました。

医療機関の対応体制が限界に近づく中でも、サンパウロ州は抑制策の一部を来週緩和すると発表しています。

ルラ氏が大統領選に出馬意欲

ルラ元大統領は4月2日、2022年に予定されている大統領選の出馬に前向きな姿勢を見せました。

同氏はカリスマ的な人気を誇っており、世論調査では再選を目指すボルソナロ大統領に先行しています。

左派のルラ氏は右派のボルソナロ氏が新型コロナウイルス対策で失敗したとして厳しく批判していました。

ルラ氏は汚職事件で有罪判決を受けており、18年の大統領選には出馬できませんでした。

3月に裁判所が過去の司法手続きを無効とする判決を下したため、再審理が予定されており、次の大統領選までに有罪判決が確定しなければ、ルラ氏は立候補が可能となります。

ボルソナロ大統領、窮地に

ボルソナロ政権の運営が不安定になっています。

大統領は3月29日、外相や防衛相を含む6閣僚を交代させると発表した一方で、同氏の支持基盤だった軍との対立も表面化しています。

ボルソナロ大統領が国軍を新型コロナ対応に投入する考えをみせたところ、国軍内に反発が出たのです。

そうした中で軍の政治的中立を重視した同氏が事実上更迭されました。

この対応に対して軍は、3月30日には陸軍・海軍・空軍の司令官が同時に退任するという対応で応じました。

支持率の低迷に加え、2022年10月に予定される大統領選には人気が高いルラ元大統領が立候補する可能性が出てきたことも、劣勢に拍車をかけています。

2019年1月の大統領就任以来、頻繁に閣僚交代を繰り返してきたボルソナロ氏ですが、今回の内閣改造は政権発足以来、最大の規模となります。

2021年3月

閣僚を大幅刷新

ボルソナロ大統領は3月29日、閣僚3人と閣僚級の高官3人の交代を発表しました。

外相、国防相、法務・公安相を交代させました。

新型コロナウイルス対応のまずさに国民が不満を募らせ、態勢の立て直しを迫られる中、就任以降で最も大規模な閣僚の入れ替えを行ったのです。

対中強硬派のアラウージョ外相を巡っては、色々と懸案があり、足を引っ張られかねないと思ったのかもしれません。

同外相は中国警戒論を唱えており、5Gでの中国メーカー製品の採用を巡り、親中派の議員から圧力を受けていたことを示唆していたり、また、ブラジル政府が新型コロナウイルスのワクチン確保に遅れていることに対して、議会では海外との交渉窓口であるアラウジョ氏の責任を追及する声が浮上し、一部の議員グループが弾劾決議案を準備していました。

今回の内閣改造は政権発足以来、最大の規模となったのは、政府が脆弱な時期を迎えているという説を否定するためという見方が一般的です。

コロナ対策の抗議運動に大統領は満足

ボルソナロ大統領は3月17日、支持者が新型コロナウイルス感染抑制のための社会的距離に反発して抗議運動を行なっていることに満足していると述べました。

ブラジルではこの日、1日としては初めて9万人超の新規感染者が確認されたほか、前日には1日当たりの死者数が2800人を突破し、過去最多を記録しました。

大統領は抗議運動に言及し、

「満足している。(抗議運動は)人々が生きていることを示している。われわれは自由を望んでいる。世界が我が国の憲法を尊重するよう望む」

と述べました。

保健大臣を交代

ボルソナロ大統領は3月15日、パズエロ保健相を交代させると発表しました。

新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから、保健相は4人目となります。

第2波の拡大やワクチン接種の遅れなどが深刻化するなか、相次ぐ人事刷新で自身への批判をそらす狙いとみられます。

パズエロ氏に代わり、医師のマルセロ・ケイロガ氏が保健相となります。

検察が異議

ブラジルの検察当局は3月12日、収賄罪に問われたルラ元大統領への有罪判決を破棄した最高裁判所の判断に異議を申し立てました。

上訴が認められれば、ルラ氏が来年の大統領選に出馬する道は再び閉ざされます。

次回の大統領選は左右両極で激突か

ルラ氏の無罪で、来年の大統領選は左右両極で激突となる可能性があります。

ブラジル連邦最高裁がルラ元大統領に対する収賄罪などに基づく有罪判決を取り消す判断を下した事で、ルラ氏は政治的な権利を回復しました。

これで左派ルラ氏と、現職で右翼のボルソナロ氏が対決し、有権者は左右両極の政治家のどちらかを選ぶしかなくなる状況になるかもしれません。

まだ、ほんの序盤戦ですが、より穏健な中道志向の候補は勢いが削がれるかもしれません。

ルラ氏が最高裁で無罪、レアル急落

3月8日に最高裁判所は、ルラ元大統領の汚職容疑に対して下級審が下した有罪判決を無効とする判決を下しました。

これにより、同氏が来年の大統領選に出馬する可能性が浮上し、一気にレアルマーケットは下げました。

ルラ氏のポピュリスティックな拡張的財政政策が復活することに対する警戒が強まり、また、ボルソナロ現政権がそれに対抗して経済改革が進まなくなるとの懸念が、レアルの急落の要因です。

レアルは一時対米ドルで昨年5月以来の安値まで下落しました。

その後、米長期金利の上昇が一服したことや、2月消費者物価指数の結果などを受けて来週の金融政策決定会合で利上げが決定されるとの期待が一層高まり、レアルは週初の下落を補って余りある上昇を見せました。

2021年2月

連邦議会の議長はボルソナロ氏支持

2月1日に連邦議会が開幕し、上下両院ともボルソナロ大統領が推薦した候補者が議長に選出されました。

新型コロナウイルス対策で議会と対立することの多かったボルソナロ氏ですが、対立関係にあった中道政党の切り崩しに成功しました。

特にボルソナロ氏と対立するマイア前議長は自身の後継者を擁立してボルソナロ氏を追い落とすことを示唆していたため、議長選はかなり重要な岐路だったのです。

今回の議長選で、大統領が弾劾される可能性は低下し、更に構造改革が進みやすくなるとの見方が広がったようです。

ボルソナロ氏は2月3日、両議長との会談で35項目の課題を提示し、議会で優先して議論するよう求めました。

経済政策を統括するゲジス経済相が推進する、行政や税制改革、国有企業の民営化といった施策も含まれています。

また、財政への影響を限定した形での追加経済対策が近い将来に発表する予定とも報じられています。

2020年11月

統一地方選でボルソナロ氏苦境

2020年11月15日、市長や市議会議員を選ぶ統一地方選の投開票が行われました。

サンパウロ市やリオデジャネイロ市など主要都市の首長選では、ボルソナロ大統領が応援する候補者が軒並み苦戦を強いられています。

最大都市サンパウロ市では現職のコバス市長と左派のボウロス氏がともに過半数を獲得できず、11月29日の決選投票に進むことが確実となりました。

ボルソナロ氏が投票を呼びかけていた、キリスト教福音派の支持を受けるルソマノ氏は4位と伸びませんでした。

ボルソナロ氏の出身地であるリオデジャネイロ市長選では、現職のクリベラ市長を支持しましたが、得票率は22%程度にとどまり、ともに決選投票に進む野党候補のパエス氏の37%に大差を付けられています。

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