【2019年6月~】イラン問題と原油価格の動向

ここでは原油関連のスポット記事として、ホルムズ海峡沖で起きたタンカー襲撃問題についてまとめていきます。

対イランでアメリカが制裁措置を取っている事によって、イランの暴発が懸念されています。

イランが非常事態に陥り、ホルムズ海峡が安全に航行できないとなると、原油価格の上昇と、更には原油供給が行われない事による、サプライチェーンの停滞といったかなりまずい状況も想定されます。

以下からこれまでの経緯を網羅的にご確認頂けます。

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ここではイランや原油価格の状況をフォローしていきます。

アメリカとイランの応酬

この問題のポイント
  • トランプ大統領は大統領選挙を意識し、イランの核保有は避けたいシナリオ
  • アメリカは核開発に関する新たな枠組み作りに意欲
  • アメリカもイランも戦争は避けたい
  • イランは合意そのものを壊す意図はなく、違反を繰り返して協力国を増やしたい
  • アメリカとイランで対話のチャネルが細っており、相互理解が不足して偶発的に事態が悪化するリスクも

INSTEX(貿易取引支援機関)の可能性

アメリカは、核合意からの離脱でイランへの経済制裁を再開たわけですが、このままではまずいと思った英独仏は2019年1月、イランとの貿易を継続するため、「貿易取引支援機関(INSTEX)」なるものを創設しました。

イランもINSTEXに期待を寄せていましたが、アメリカが対イランで経済制裁する中で、なかなか稼働しませんでした。

2019年6月28日に欧州が、イランにINSTEXの準備完了を報告したものの、取引が人道物資に限られるなど、原油取引の再開にめどが立つものではなかったため、イランはまだ不十分との評価を下したのです。

やはり、アメリカなしのスキームではなかなか上手くいかないのが現状と言わざるを得ないのだと思います。

アメリカの大統領選挙の影響

2020年に大統領選挙を控えるトランプ米大統領にとって、イランとの戦争は再選に影響する可能性のあるもので、、トランプ大統領にとってリスクが高すぎる「ディール」です。

従って、アメリカとイランの対立がすぐに沸点に達して軍事衝突になる可能性は低いのではないかと考えられています。

INSTEXを通じたイラン救済もなかなか上手くいかない事を考えると、最終的にイランとアメリカが再交渉のテーブルにつき、話し合うというのが決着点になると思われます。

しかし、そこに至るまでそれなりに時間がかかる可能性が高いと思われます。

WTI原油価格のチャート(直近3か月)



(出所)TradingView

2021年2月

イラン、核合意の義務逸脱続く

イランがアメリカによる制裁の解除が進まないことにいらだちを強めています。

イランが未申告の核施設への抜き打ち査察受け入れを停止すると宣言したことを受け、IAEAのグロッシ事務局長は2月20日にイランを訪問しました。

イランが23日からIAEA「追加議定書」の履行停止を予告していることから、今後の査察協力の技術的な進め方について話し合ったもようですが、イランの頭の中にあるのはアメリカの制裁解除でしょう。

アメリカ、イランとの協議の用意があると表明

バイデン米政権は、イラン核合意への復帰に向け、「前向きな外交努力」についてイランと協議する用意があると2月18日に明らかにしました。

アメリカは

「イランの核プログラムに関する前向きな外交努力について話し合うため、イランおよび国連安保理常任理事国5カ国プラス1による協議への招待があれば、米国は受け入れる用意がある」

と説明しました。

2021年1月

イランが濃縮度20%のウラン製造に着手

IAEAは1月4日、イランが濃縮度20%のウラン製造に着手したことを確認しました。

20%まで高めれば、核兵器級の90%に引き上げるのは容易になるといわれ、国際社会の緊張感が高まるのは必至です。

2020年11月

イラン、、アメリカ次期政権のと交渉の用意

イランの核科学者殺害に関連し、アメリカのバイデン次期政権との交渉を行うと表明しました。

イラン政府は11月29日、今回の暗殺を過去の核交渉に結びつけるわなに、イランは落ちないと断言しています。

イラン、次期アメリカ政権に期待

バイデン氏が次期大統領となる事を受けて、イランのロウハニ大統領は11月8日、次期政権はトランプ大統領の過ちの埋め合わせをすべきだとの考えを示しました。

イラン核合意はバイデン氏が副大統領を務めていた2015年に結ばれました。

バイデン氏は、イラン政府が履行を再開することを条件に復帰する考えを示しています

2020年10月

アメリカ、イランに新たな制裁

2020年10月8日、アメリカ政府はイランの金融部門に新たな制裁を科しました。

米大統領選・議会選が近づく中、銀行18行を対象とし、イランへの圧力を強めます。

具体的には対象銀行の米国資産を凍結し、米国民と対象銀行の取引をほぼ禁止するほか、二次的制裁を対象銀行の取引相手に拡大します。

これは外国銀行がアメリカの市場と金融システムへのアクセスを失うリスクがあることを意味しています。

財務省は発表文で、イランに農産物、食品、薬品、医療機器を売却する取引には制裁を適用しないとし、人道物資の必要性は理解していると説明しました。

2020年9月

アメリカがイランに追加制裁を検討

トランプ政権は、イランに対する新たな制裁を検討しているようです。

十数行の金融機関を標的とし、金融セクター全体を対象にした制裁のようです。

この動きは事実上、アメリカによる制裁で原油販売の落ち込みなど経済に大きな打撃を受けているイランを、世界の金融システムから孤立化させるものです。

残された数少ない合法的なつながりが断たれることで、イランは非公式もしくは違法な取引への依存度が高くなるかもしれません。

アメリカ、単独でイラン制裁

2020年9月21日、アメリカが単独でイランへの制裁を行う事を決定しました。

トランプ大統領はイランとの武器取引に関わる個人や団体を制裁対象に指定する大統領令に署名しました。

イランだけでなく同国と軍事協力を深めるロシアや中国が反発するとみられ、制裁の効果も不透明です。

9月19日、トランプ政権は国連が2015年のイラン核合意を受けて解除した対イラン制裁の復活を一方的に宣言しました。

アメリカによると、10月に期限切れを迎える国連の武器禁輸措置も続くという事です。

IAEA、イランの低濃縮ウランの貯蔵量が合意の10倍

2020年9月4日、IAEAはイランの低濃縮ウランの貯蔵量が2トンを超えたとする報告書をまとめました。

核合意で定められた基準の10倍以上となりました。

8月にイランと合意した核関連施設を査察したことも分かりました。

核合意ではイランの低濃縮ウランの貯蔵量の上限は、202.8キログラム(六フッ化ウラン換算では300キログラム)と定めていますが、報告書は8月25日時点で2105.4キログラムに達していたと指摘しました。

1トン余りあれば核爆弾1個を製造できると言われ、十分な水準にあります。

イラン、協調姿勢をアピール

イランが国際機関や関係国と協力する姿勢をみせ始めています。

2020年9月1日のイラン核合意の当事国会合ではアメリカ抜きでの合意維持の方針を確認したほか、8月にはIAEAの査察を受け入れる方針に転じています。

アメリカ主導の「包囲網」に対抗するのがねらいです。

イランはアメリカと対立を深める中国にも接近しています。

両国間で25年間におよぶ経済・安全保障の「戦略的パートナーシップ」をむすぶ交渉を本格化させています。

2020年8月

アメリカ、イランへの圧力を緩めず

アメリカはイランがIAEAの査察受け入れ方針に転じた後も同国への疑いを捨てず、引き続き経済・外交両面の圧力を続ける方針のようです。

ただ、対イラン政策はヨーロッパとの違いが多く、具体的な追加措置で苦慮している状況です。

国連制裁再開などを強く主張すれば整えてきたイラン包囲網が乱れる可能性もあります。

IAEAの査察をイランが受け入れ

イランがこれまで拒否していた国内2カ所の核関連施設へのIAEAによる査察を認めました。

国際機関への協力をアピールし、アメリカによる対イラン包囲網に対抗することが狙いです。

IAEAによるイランへの査察の根拠は

  1. 核拡散防止条約(NPT)にもとづく包括的保障措置協定
  2. イランが暫定適用している追加議定書
  3. イラン核合意に基づく検証受け入れ義務

の3つです。

2施設への立ち入りは、こうした義務の範囲を超えるというのが従来のイランの立場でしたが、これを撤回して受け入れを表明したわけです。

イランの方針転換の背景にはトランプ政権の強硬姿勢があると思われます。

アメリカは今月、ともにイランを敵視するイスラエルとUAEの国交正常化合意を仲介し、イラン包囲網を強めることに成功しました。

中東を歴訪中のポンペオ国務長官は、UAEに追随するアラブの国を増やしたい立場とみられます。

イランは、IAEAへの協力姿勢を示す事で、多国間主義や法の支配に背を向けているのはアメリカであるという主張を展開するものとみられます。

多国間の取り決めであったイラン核合意から一方的に離脱したトランプ政権の行動については、欧州の核合意当事国からも批判の声が上がっています。

2020年7月

アメリカ・イランの対立が再燃

アメリカとイランの対立が再燃する懸念がでています。

2020年7月23日、イランの民間旅客機がシリア上空を飛行中にアメリカ軍の戦闘機に異常接近された事が発端です。

11月のアメリカ大統領選が近づくなかで双方の疑心暗鬼が強まり、偶発的な衝突のリスクがふたたび高まるのではないかと懸念されます。

緊張は中東のより広い地域に及んでいます。

例えばイランと対立関係にあり、イスラエルはイランが後ろ盾となっているイスラム教シーア派の武装組織ヒズボラの武装集団が越境するのを阻止するため攻撃を実施したと発表しました。

また、6月下旬からイラン国内では軍事施設等で不可解な爆発や火災が相次いでおり、イラン側はイスラエルやアメリカによるサイバー攻撃であると疑っています。

アメリカやイスラエルは、関与についてあいまいな態度を取り、イランへの圧力のひとつとしているようです。

疑心暗鬼がこれ以上拡大すると暴発リスクがまたもや高まります。

2020年6月

イラン大統領、アメリカが謝罪すれば協議

2020年6月24日、イランのロウハニ大統領はアメリカ政府が2015年のイラン核合意からの離脱について謝罪と償いをすれば、アメリカとの協議に応じる用意があると述べました。

トランプ大統領は2018年にイラン核合意から離脱して対イラン制裁を再導入し、それ以降両国は対立しています。

ロウハニ大統領はテレビ演説で、アメリカとの協議に応じるのは問題ないが、アメリカ政府が核合意での義務を履行し、合意離脱についてイランに謝罪と償いをすることが条件だ、と発言しました。

アメリカ、イランとの協議の可能性を示唆

2020年6月5日、アメリカ国務省のイラン担当特別代表、ブライアン・フック氏はイランとの協議の可能性について言及しました。

同氏はイランとの協議の可能性に言及しながら、これまでのところ、交渉は囚人交換に限定されていると述べました。

イランは2018年から拘束していた米海軍退役軍人のマイケル・ホワイト氏を6月4日に解放した一方、アメリカ政府は対イラン制裁違反で有罪を認めたイランと米国の二重国籍の医師が家族に面会するためイランを訪れることを認めています。

今後事態が少しずつでも好転するかもしれません。

2020年5月

アメリカ、イラン内相に制裁を発動

2020年5月20日、アメリカ政府はイランのラハマニファズリ内相が重大な人権侵害に関与したため制裁の対象にすると発表しました。

対象者の米国資産は全て凍結され、米国人はこれらの対象者との取引が禁じられます。

アメリカ、国連のイラン制裁の再開を警告

2020年5月13日、米国務省のイラン担当特別代表は、場合によっては国連の対イラン制裁を全面的に復活させる手続きを発動すると警告しました。

国連安全保障理事会が10月に期限切れとなるイランへの武器禁輸措置を延長しない場合に上記の様な状況となる可能性を示唆したものです。

トランプ大統領、対イラン軍事行動制限に拒否権発動

2020年5月6日、トランプ大統領はイランに対する大統領の軍事行動の権限を制限する決議案に拒否権を発動しました。

トランプ大統領は、決議案はアメリカ軍や同盟国などをイランの脅威から守る大統領の職務を妨げる可能性があると理由を説明しました。

トランプ氏は1月にイラン革命防衛隊の司令官殺害を突然決断しており、今後も米国とイランの突発的な軍事衝突のリスクが残っています。

アメリカの下院議員がイラン制裁の延長を要求

アメリカの下院議員らは、イランの武器輸出入などを禁じた国連安保理の制裁を10月以降も延長するため、国連での外交を活発にするようトランプ政権に求めているようです。

下院では、ポンペオ国務長官に制裁延長を求める書簡が作成されており、下院議員429人のうち少なくとも382人が署名したそうです。

当該議員らは10月に制裁の期限が切れた後にイランと他国間の武器の輸出入が増えることへの懸念を表明しています。

2020年3月

イラン、アメリカに制裁解除を求める

イランではコロナウイルス感染者が2万人を超え、ロウハニ大統領が対立するアメリカに対し、経済制裁の解除を求めています。

イランでは政府の初期対応が遅れたうえ、3月半ばからイラン暦の新年休みとなって人々の移動が加速し、感染が拡大する懸念があります。

イラン最高指導者のハメネイ師は、感染拡大の背後にアメリカの陰謀がある可能性があると指摘し、アメリカに責任をなすりつけようとしていますが、民衆はかえって政府への疑念を強めているようです。

状況は深刻で、イランは3月中旬、IMFに50億ドルの支援を要請しています。

アメリカの強い影響下にあるIMFに支援を求めるのは異例です。

ロウハニ大統領は23日、イラン経済の悪化を食い止めるため、原油の輸出妨害や銀行送金の禁止をなくすようトランプ政権に求めました。

イラン国内の封鎖策については、保守強硬派の聖職者が強く反対したようです。

イラン暦の新年には多くのイラン人が親戚の家を訪問する為、大移動が発生します。

実際今年も保健当局の警告にもかかわらず少なくとも300万人が感染地域をおとずれたようです。

新型コロナウイルスの対応を巡っては、初期のすばやい対応と政府への信頼、対策の実行力が最も大切です。

アメリカに対する批判に終始してきたイラン指導部の対応力が試されています。

アメリカ軍が親イラン武装組織を攻撃

2020年3月12日、アメリカがイラン傘下にあるとされるイラクの武装組織を攻撃しました。

イラクで前日に米軍駐留基地を狙った攻撃があり、アメリカ兵2人が死亡したことに報復した形です。

対立が再燃する恐れがありますが、両国とも新型コロナウイルスへの対応に専念する必要に迫られており、どうなるかはまだ分かりません。

イラクによれば3人のイラク兵が死亡し4人が負傷したとの事です。

イラン外務省は13日、

「トランプ氏は、危険な行動に出る前にイラクへの違法な駐留をやめるべきだ」

とコメントしています。

再びイランとアメリカの関係が緊張

アメリカとイランの緊張が再び高まり、注視が必要かもしれません。

2020年3月11日に、イラク内の米軍などが駐留する基地に多数のロケット弾が撃ち込まれました。

これで少なくともアメリカ人2人とイギリス人1人が死亡したようです。

親イランのイスラム教シーア派武装勢力の犯行の可能性が指摘されています。

トランプ大統領はアメリカ人がイランや親イラン勢力によって殺害された場合、イランに対して軍事行動に出ると警告してきました。

今回の攻撃の背後にイランがいたとなると両国の対立が再び深まりかねません。

2020年2月

孤立深まるイラン、国内の閉塞感かなり強い

イランの孤立が日に日に深まっているように見受けられ、問題の解決がなかなか見通せません。

制裁を科すアメリカと対立するだけでなく、合意維持に努めてきた欧州との間にも亀裂が入り、経済の苦境と政治の孤立は深まっています。

イラン革命防衛隊の士官ら保守強硬派の支持者が反米、反イスラエルの革命スローガンを繰り返し、存在感を示す中、対外関係を重視する保守穏健派だとされるロウハニ大統領も演説でアメリカの圧力には屈しないと強調しました。

元々イランの世論はそこまで大きく反米に振れていたわけではなく、反政府と反米を往復した感じになっていると言われています。

2020年1月3日のソレイマニ司令官を殺害事件の後でさえ、ウクライナの旅客機撃墜を巡って、市民らは政府を批判したりしています。

とにかく社会の閉塞感が強く、不満を持た世論が暴発するリスクもあります。

IMFによるとイランの19年の実質成長率はマイナス9.4%で、インフレ率は31%、失業率は16%に達しています。

この経済状況を何とかしないと国内政治の安定化を求めるあまり、対外強硬のリスクが高まってしまいます。

EU、紛争解決メカニズムの推進を棚上げ

EUは、イランをけん制するねらいで英独仏が発動した「紛争解決メカニズム(DRM)」の手続きを棚上げする方針のようです。

2020年2月3日、4日にイランを訪問したボレル外交安全保障上級代表がロウハニ大統領らに伝えました。

理由

国連の対イラン制裁につながる動きがイランの暴走を招きかねないためです。

一方で、米イランの対立をめぐる危機打開の具体策はみえず、手詰まりに陥っているのも事実です。

ボレル氏は

「国連の安全保障理事会に制裁再開の判断をすぐにしてもらう事は避ける」

と述べました。

DRMの発動はイラン核合意を崩壊に導くのではなく、あくまでもこれを守ることが主眼であるとの考えを強調しました。

2020年1月

イラン、核拡散防止条約からの撤退も

2020年1月20日、イランは欧州各国が核合意違反問題を国連で持ち出すならば核拡散防止条約からの脱退も検討すると言明しました。

既報の通り、イギリスとフランス、ドイツはイラン核合意で定められている紛争解決メカニズムの発動を表明しました。

これはイランの問題が国連安保理に持ち込まれる可能性を意味しています。

イランのザリフ外相は「欧州各国がその様な受け入れがたい行動を続けるなら、核拡散防止条約から脱退する」

と述べました。

イラン、IAEAとの関係も見直す可能性

イランのラリジャニ国会議長は、英独仏が「紛争解決手続き」を発動したことを受けて、そうした措置に直面すれば国際原子力機関との協力関係を見直すと警告しました。

イギリス、フランス、ドイツが取った行動は、イランの核合意違反を正式に非難するもので、最終的にはイランに対する国連制裁再開につながる可能性もあります。

イランのハメネイ師、アメリカと対話しない

2020年1月17日、イランの最高指導者ハメネイ師は8年ぶりに金曜礼拝の演説に立ち、アメリカとは対話しないと語り、反米での国民の結束を呼びかけました。

イランでは、軍がウクライナ機を誤って撃墜したことに民衆の反発が高まっています。

ハメネイ師は撃墜について不幸で悲しい出来事と話した一方で、撃墜を政治的に利用している敵がいるとして、政府の対応を非難する抗議デモの参加者を間接的に批判しました。

アメリカ、対イラン制裁で90日間の猶予を設定

2020年1月16日、アメリカ財務省は前週発動したイランに対する追加の経済制裁を巡り、特定業種での取引の段階的な縮小に向け90日間の猶予期間を設けると発表しました。

猶予期間は4月9日までで、建設業、鉱業、製造業、繊維業での取引が対象となります。

ただ制裁対象業種への新規参入は制裁の対象になるとしました。

イラン、核合意前のウラン濃縮度を超えた水準にあることに言及

2020年1月16日、イランのロウハニ大統領は、イラン核合意で制限されているウランの濃縮量について、合意が成立した2015年よりも増えていると話しました。

貯蔵量や濃縮レベルの具体的な数値には触れませんでしたが、濃縮活動の大幅な制限超過が確認されれば、イラン核合意の完全な崩壊が一層現実味を増します。

イランの国際的な孤立が深まり暴発するリスクも増えています。

ヨーロッパとイランの亀裂が深まる

これまで核合意の維持に向けて一定の協力をしてきた欧州とイランの亀裂が深まっています。

英独仏は国連制裁の再開に道を開く手続きに着手し、イギリスは一転、イランとの新たな取り決めを目指すトランプ米大統領に同調する姿勢を示しています。

このままだとウクライナ機撃墜で批判されるイランの孤立が一段と深まる可能性があります。

英仏独がDRM手続きを発動

2020年1月14日、イギリス、フランス、ドイツの3カ国は国連の対イラン制裁の再開に道を開く「紛争解決メカニズム(DRM)」という手続きを発動したと発表しました。

イランが核合意から逸脱する動きを進めているためです。

もちろんイランは反発するでしょう。

DRMとは

DRMは核合意の当事国が違反の存在を認めた場合の解決手段です。

当事国の外相級の協議などでまとまらない場合は、国連安保理に通知します。

安保理での協議次第では制裁の再開もあり得る、というものです。

イランは、ヨーロッパが核合意で約束した経済利益を提供すれば、合意順守に戻る姿勢をみせていますが、どうなるでしょうか。

イラン、国内情勢が不安定に

イランがウクライナ機を誤爆したことに抗議する市民らのデモが止まらず、混とんとしているようです。

アメリカによる軍司令官の殺害の追悼一色だった雰囲気が一転して、デモの矛先は最高指導者ハメネイ師にも向かっているようです。

アメリカの制裁による経済不振への不満も強く、アメリカとの全面衝突の危機は回避したものの、イランは国内の不安定化に苦慮しています。

こうしたイランの市民デモが終わらないのは、投票行動を通じた政治の変化が望めないからという背景もあります。

例えば、イランは2月に国会議員選を控えていますが、現職議員290人のうち90人について選挙への出馬資格を認めないと発表しています。

理由は明かされていませんが、社会や経済の開放を支持しているからと見られます。

反米で固まっているかの様に見えるイランですが、足下がふらついています。

イラン、ウクライナ機誤爆を認める 偶発的衝突リスクが実際の懸念に

2020年1月11日、イランは1月8日に発生したウクライナ国際航空機の墜落について、軍が誤って撃墜したと一転認めました。

一転誤爆を認めたのは、回収したフライトレコーダーなど明白な証拠が存在し、押し切るのが難しくなった事があります。

このまま旅客機側の技術的トラブルとの主張を続けてアメリカ以外の国も敵に回して孤立するのはまずいと思ったのでしょう。

ただ、これまでの虚偽説明に国際社会の不信は強まっていて、イラン指導部に大きな打撃となる可能性もまだあります。

アメリカ、イランに追加の制裁

2020年1月10日、アメリカはイランに新たな制裁を科しました。

イランの金属や同国指導部の一部が対象に含まれます。

具体的内容

今回の制裁はイランの鉄鋼業界や同国の高官8人に加え、建設や製造、繊維、鉱業など他のセクターも標的としています。

偶発的衝突リスクは消えず

取り会えず真正面からの衝突を避けたアメリカとイランですが、引き続きイランによるアメリカへの挑発は続くものと思われ、偶発的な衝突リスクは残りそうです。

今後イランは米軍への直接攻撃を避けて、影響下にある民兵組織などを通じた間接的な挑発等を続けてくると見られています。

つまり、両国が偶発的に衝突するリスクは消えていない状況で、イラン発の中東の混乱は長期化が避けられそうにありません。

アメリカ、軍事力行使は回避

2020年1月8日、トランプ大統領は演説で、イランがイラクの米軍駐留拠点を攻撃したことの報復措置としてイランに追加の経済制裁を科すと表明しました。

トランプ大統領は軍事力を誇示しつつも「使うことを望んでいない」と語り、報復攻撃に慎重な立場をにじませました。

ただ、マーケットはこれを好感し、リスクオフが和らいでいます。

アメリカが戦争を回避した理由

戦争の長期化という「時間のコスト」が民主主義国家・米国に不利に作用し、政権が揺らぐ可能性があったためと考えられます。

もし戦争となれば、アメリカ軍が通常兵器で敵対国の本国を攻撃する一方で、イランは米軍の足元でゲリラ戦を展開する事になるでしょう。

決着は容易にはつかず、ベトナム戦争のように長期化し泥沼の再来もありえます。

今年、大統領選挙を控えたトランプ大統領にとって、国民から不評を買うような泥沼戦争は回避したかったと考えられます。

イランの報復でアルゴリズム取引が発動

イランによる対米報復のニュースは通貨を自動的に売買するアルゴリズムを発動させ、一部の通貨トレーダーはこれに振り回されたようです。

アルゴリズムには「イラン」や「攻撃」などのキーワードを検出するプログラムが組まれていたと見られ、今回の報復に関するニュースが出るとすぐに反応したものと思われます。

これにより、円買いドル売りの大量注文が出されたという事です。

ドルをショート(売り持ち)にしていた多くのトレーダーは、ドルがアルゴ主導で107円65銭まで下げを加速した過程で買いを強いられ、ドル・ロングになってしまったという事です。

イラン、意図的に米軍被害を回避?

イランが戦争拡大を回避するために、意図的に米軍被害を避けた可能性があります。

イランのアメリカへの報復としてイラクの米軍基地に行ったミサイル攻撃について、米欧の政府筋はイランが意図的に犠牲者を出さなかったとの見方を示しました。

アメリカ国防総省の元高官は

「アメリカはイラクを通じてイランからの事前通告を受けたため、防衛措置をとることができた」

と明かしています。

イランにとってアメリカとの戦争は非現実的である一方、イラン国民に対しては対米強行姿勢を貫く必要性があり練られた作戦であると考えられます。

実際にイランは攻撃後もスイスなどを介してアメリカに正面衝突をする意図はないとのメッセージを送ったとみられます。

イランがアメリカに報復

2020年1月7日、アメリカ防総省はイラクにある米軍基地がイランから十数発の弾道ミサイルの砲撃を受けたと発表しました。

イランのアメリカに対する報復です。

1月8日の東京株式市場では日経平均は一時、前日比600円以上の下落となりました。

リスク回避の動きが鮮明となり円高・ドル安、原油と金の価格は急伸しています。

アメリカとイラン、対話のチャネルがない中偶発的衝突リスクが高まる

対話のチャネルがないアメリカとイランが、我慢の限界点を互いに見誤り、偶発的に衝突するリスクが高まっています。

2019年12月27日にイランが支援するとされる武装勢力がアメリカの民間人1人を死亡させ、米兵4人を負傷させたことが今回の始まりでした。

トランプ氏はアメリカ人の死傷者が出たとの報告を受けて、すぐにソレイマニ司令官の殺害を指示したとされています。

アメリカに死傷者が出たか否かがトランプ大統領にとっての大切な一線だったようですが、イランはそれを結果的には見誤ったようです。

実際、トランプ大統領は2019年6月にイランがアメリカの無人機を撃墜した際には、イランへの空爆を実行直前に中止しています。

無人機撃墜でアメリカ側に死傷者はなく、釣り合わないと判断したためと言われています。

一方、イラン側からすると、カリスマ的な英雄だったソレイマニ氏の殺害は一線を越えた暴挙と映った可能性があります。

両国がどこが妥結ポイントなのか分からないまま、事態が泥沼化していく事が懸念されます。

アメリカ、イラクへの制裁を示唆

2020年1月5日、トランプ大統領はイランへの大規模な報復を警告するとともに、制裁を科す可能性に言及しました。

具体的な内容

アメリカ軍がイラクからの撤退を強いられ、イラクが軍事基地の建設費用を補償しなければ、同国に厳しい制裁を科す、というものです。

トランプ大統領は中東に軍を派遣したことがアメリカにとって最悪の決定だったと述べた上で、アメリカはイラクでの軍事基地建設に巨額を費やしたと指摘しました。

その費用を回収するまでは退くに退けないという事でしょうか。。。

イランが核合意を放棄

2020年1月5日、イラン政府は欧米などと結んだ核合意の制限を破り、ウランの濃縮活動を無制限に進めると宣言しました。

中東の安定を支えていた核合意が崩れれば、イスラエルからサウジアラビアまで核開発ドミノを招くおそれがあり、そうなれば地域の緊張は高まります。

米イランの対立激化で仲介役のヨーロッパも正直あまり役に立ちそうにありません。

2020年初っ端から大きなヤマ場です。

具体的な行動

これまでウランの濃縮度の上限は核合意では3.67%でしたが、イランはこれを4.5%まで引き上げていました。今回、濃縮度の数値には言及しませんでしたが、核合意前に実施していた20%まで引き上げる可能性が高まっています。

ウランは一定水準を超えると加速度的に濃縮度が上がる構造になっていて、20%まで濃縮度を高めれば兵器級の90%にいたるプロセスの大半を終えたことになります。

アメリカ、イランが報復すれば更なる報復を行うと警告

2020年1月4日、トランプ大統領はイランが報復をした場合は「イラン関連の52カ所を標的にとても迅速かつ激しく攻撃する」とツイッターに書き込みました。

イランの政府関係者が報復の方法について、アメリカCNNに「軍事施設に対する軍事的な対応になる」と述べたこと等に対するリアクションと思われます。

アメリカ軍がイラン革命防衛隊司令官を攻撃、同司令官は死亡

2020年1月2日、イラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のソレイマニ司令官がバグダッドでアメリカ軍から攻撃を受けて死亡したとの報道がありました。

もしこれが事実であればイランが猛反発するのは確実で、緊張が一気に高まる事になるでしょう。

大きな動きの第一歩となる可能性があります。

2019年12月以前

ここより以前の動向は、以下からご確認ください。

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