ここではスポット記事として、2020年3月時点のブラジルレアルの現状と見通しを記述します。
ブラジルレアル全般について現状を整理しつつ今後の見通しなどを展望します。このほかブラジルレアルの年金改革のスケジュールやボルソナロ政権の状況についての簡単な説明をします。
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ブラジルレアルの現状と動向
1BRL=21円~24円台
レアル円のチャート推移(直近1年)
【2019年2月末から2020年2月末までのレアル円のチャート】出所:TraingView
2020年2月28日、対ドルでも対円でもブラジルレアルは最安値を更新してしまいました。
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2020年3月時点での水準は、レアルの実質実効為替レートの過去10年平均に対し約20%割安な水準にあるとのレポートもあり、ここでの仕込みもありです。
引き続きの世界的なマーケットクラッシュでブラジルレアルが最安値を更新しました。
現地時間3月11日、BRL-JPYは一時1レアル=20.6円を、USD-BRLは1ドル=5.0レアルを記録し、共に過去最安値を記録しました。
世界的な大暴落が起きた3月9日、ブラジルにも大きな影響が及びました。
もちろんブラジルレアルも大きく売られ、対ドルで前週末比2.4%安となる1ドル=4.7レアルと、過去最安値を更新しました。
また対円では一時21.1円まで下げました。
もはや底が見えない状況になりつつあります。
【BRL-JPYの推移(出所:TradingView)】
2020年3月3日、ブラジルレアルは円高の影響もあり、1BRL=23.6円と過去最低値を更新しました。
ブラジルレアルの対ドルは大きな変化はないものの、急激な円高の影響で過去最低値を更新ししてしまいました。
ブラジルレアル側に大きな影響があったというよりは円が買われたため、といった所ですが、当面こうした動きを想定して、丁寧に下値を拾っていく事が大切になると思われます。
ドル・レアルのチャート推移(直近1年)
【2019年2月末から2020年2月末までのドル・レアルのチャート】出所:TraingView
新型コロナウイルスの影響はかなり大きいと言わなくてはなりません。
ブラジルの最大の輸出相手が中国だからです。
中央銀行も為替介入でレアル買いをしているようですが、下げをくい止められていないようです。
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株は上昇したのにレアルが売られた理由
年金改革以降、株は最高値を更新した一方、レアルは対ドルで最低値を記録するなど弱くなっています。背景には政治的な要因がありそうです。
2019年10月以降、年金改革成立を受けて、税制など企業業績面でプラスに繋がるさらなる構造改革が前進するとの期待が高まり株価は最高値を更新しました。
しかし、レアル相場は対照的に上値が重く、対ドルで過去最低値を記録したりしました。
この背景には、
- 与党PSL内での派閥抗争が激化するなどの動きが表面化したこと
- 収監されていたルラ元大統領が釈放され『反ボルソナロ』派の結集を呼び掛け、政界再編を目指す動きを活発化させたこと
- 中南米諸国での反政府デモの動きが伝播し政治的に不安定な状況が続くのではないかという懸念があったこと
- アメリカがブラジルに対して鉄鋼の関税引き上げを表明したこと
がありそうです。
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こうした低い所で少しずつ拾っていくのが長期投資の王道です。
口で言うのは簡単ですが。。。
また、政治的な発言に左右されるところもありました。
例えば、ゲデス経済相が低率で推移する政策誘導金利と高止まりする米ドルが共存する事に慣れる必要があると発言し、レアル安が進行したり、その後、今度はネト中央銀行総裁が短期的にはドル急騰への措置として為替介入を継続する姿勢を示したことでブラジル・レアルの下落幅は縮小したりしました。
米中貿易摩擦軟化でレアル安?
2020年1月、ブラジルの通貨レアル相場は頭打ちする展開をみせましたが、これは米中貿易摩擦の合意第一弾が影響していたと思われます。
ブラジルは米中摩擦の背後で中国向け輸出を拡大させていましたが、その逆回転といった所でしょうか。
米中合意に伴う中国の米国産農産品輸入拡大の「しわ寄せ」がブラジル経済にとってはマイナスとなり、それが嫌気されてレアルが売られる、といったものです。
ここ最近はインフレ率も底入れして追加緩和余地が限られる一方、政府は通貨安を容認する姿勢を示すなど相場の上値は重い状況です。
こうした中では、構造改革の進捗が引き続き試されるかもしれません。
ブラジル株もコロナウイルスで大暴落
2020年3月9日の週でブラジルの主要株価指数ボベスパは大暴落し、1年7か月分の上昇が一気に無くなりました。
背景
他国同様、新型コロナウイルスの懸念深刻化による売りが殺到したためです。
3月12日の取引時間中では、2度にわたりすべての株式売買を中断する措置(サーキットブレーカー)が発動されました。
これで前週末比からの下落幅は約26%となり、1年7カ月分の上昇分が帳消しとなりました。
コロナウイルス蔓延に対する経済対策
300億ドルの経済対策を発表
2020年3月16日、ブラジル政府は新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響を和らげるため、約1500億レアル(300億ドル)の景気支援策を発表しました。
ただ、新たな歳出は含まれず、社会保障給付の前倒しや企業の納税延期などの措置が柱となっているようです。
内訳
- 社会保障関連が834億レアル、
- 企業の雇用維持支援が594億レアル、
- 新型ウイルスに直接対処する費用が45億レアル。
また、ゲジス経済相は新型ウイルス蔓延に伴って成長予測の見直しを行っている事も明らかにしました。
既にブラジルが景気後退に陥るとの見方が高まっていて、景気を支えるため財政規則を緩和するよう政府に求める声が上がっています。
ゲジス氏は、歳出上限のルールは変更しないと強調したが、財政赤字に関するルールを見直していることを明らかにしています。
3月20日には非常事態を宣言
2020年3月20日、ブラジル政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、非常事態を宣言しました。
これにより感染拡大抑制に向け連邦予算の利用が可能になります。
ボルソナロ大統領は、国内の新型ウイルス感染拡大は6月が正念場になると予想しているようです。
ブラジルはすでに中国とEUからの入国を禁止している状況です。
大規模な流動性供給策を発表
2020年3月23日、中央銀行が大規模な流動性供給策を発表しました。
これによってすでに発表されていた政策と合わせれば、1兆2,160億レアル(24兆円程度、対GDP比16.7%)の資金が供給されるとの試算になります。
国内でコロナウイルス感染者が拡大する中で、中央銀行として出来る事はとにかくやるという姿勢です。
年金改革の次のメニューは?
公的部門のムダの見直しが一番のポイントでしょう。その次は税制改革です。
年金改革の成立は大変すばらし成果ではあるものの、これでブラジルのムダが全て無くなったわけではありません。
最優先事項は肥大化したブラジルの公的部門の見直しで、その次は税制改革と言われています。
マイア下院議長によれば、最初の法案には早ければ2020年3月の可決を見込める支持が集まっているという事です。
具体的な項目
公務員給与抑制を図る行政改革と民営化政策の推進です。
公務員給与・手当は中央政府の歳出の2割強を占め、年金支出に続いて財政をひっ迫させる問題となっています。
民営化については、2020年の国営電力公社の動向が目先の注目材料となりそうです。
今回の年金改革法案成立の流れをそのままにどんどん国家財政の立て直しが行われる事を期待します。
行政・財政改革案の概要
2019年11月5日、ブラジル政府は行政・財政改革案の概要を発表しました。
概要
- 公務員の給与に代表される硬直化した予算の仕組みを改め、財政を立て直すこと
- 国から地方自治体への税の配分の仕方の見直し
等です。
10月に成立させた年金改革法案に続く重要課題として、2020年の成立を目指します。
課題
この改革は市場からの評価は相当高いですが、実現には憲法改正が必要で、かなりの抵抗も予想されるため、一筋縄ではいかないでしょう。
ブラジルでは公務員給与や教育関係予算など支出が固定化していて、歳出削減の余地が乏しい問問題がありました。
これを新たな改革案では労働時間と給与を削減できるようにして、柔軟性を持たせます。
政府案が実現した場合、初年度に247億8000万レアル(約6750億円)の予算削減効果が見込めるという事です。
税収の配分も見直します。
予算不足でインフラや治安の維持に苦労する州が多い中、公共政策を地方分権型に移行させて構造を抜本的に変えるという事です。
上記提案の実現には憲法改正が必要で、上下院で議席の5分の3の協力を得る必要があります。年金改革と同様に、時間がかかるでしょうし、どうやって議会を説得していくかという問題が立ちはだかります。
年金改革法案がブラジル経済に与える影響
年金改革法案の成立は二つの意味でブラジル経済に好影響を与えたと思われます。
- 中央銀行が利下げシナリオを維持できたこと
- 年金改革の「次」の道筋をつけたこと
ブラジルのGDP成長率は15~16年ごろの最悪期からは改善しているものの、引き続き低水準で、金融緩和による刺激が必要な状況です。
ただ、ブラジル中央銀行は利下げを続けることが出来る要因として年金改革法案の動向をあげており、これがとん挫していたら、利下げして景気回復を行うというシナリオが崩壊していました。
次に、行政・財政改革案への道筋をつけた点です。
その詳細は以下に記していますのでここでは割愛しますが、この改革には憲法改正が必要で6割の賛成がなくてはなりません。
少数与党のボルソナロ政権は引き続き厳しい状況ですが、年金改革法案の2回目の採決で賛成が、1回目の採決より増えるなどボルソナロ政権の政策に支持拡大の動きが見られており、この勢いで以てすれば憲法改正を含む改革も可能となるかもしれません。
懸念されるアマゾン森林火災問題、長引けば経済の重荷に
2019年8月に発生したアマゾンの森林火災が拡大するなか、ブラジルとヨーロッパの対立が改善しません。
そもそもの対立点
ボルソナロ大統領は経済成長のために森林開発を進めたい一方で、ヨーロッパはアマゾンを保護すべきだと主張している事です。
ヨーロッパがかなり深い懸念を示している事に、ボルソナロ大統領は内政干渉だと強く反発しています。
リスク
ヨーロッパとの関係悪化がさらに進むと、経済成長の足かせとなるリスクも出てくると思われます。
ボルソナロ氏は「アマゾンはブラジル国民のものだ」と繰り返し訴えると同時に、2019年9月の国連総会でもアマゾン森林対策をしっかりやっている事をアピールしています。
ブラジル政府は、通常7-9月が焼き畑の時期にあたり、火災は例年並みだと主張しています。
ブラジル国立宇宙研究所によれば、今年のアマゾン地域での火災発生件数は直近のピークだった2010年の6割程度との事です。
いつもとそんなに変わらないなら、なぜこんなに注目を浴びているのでしょうか??
国際的な関心が集まるのはボルソナロ氏の姿勢に原因があるかもしれません。
ボルソナロ氏は地球温暖化に懐疑的で、環境保護より経済開発を優先しています。
- 2018年の大統領選ではアマゾンの土地売買や農地開発を容易にする規制緩和を行うと公約
- 政権発足後、道路を舗装し、農牧地や鉱山の開発を後押し
- 違法伐採を監視する政府機関の予算を削減
- それまで違法だった金の違法採掘を合法化し、国が管理する方針も提示
- 上記の行動から、政権が森林開発を容認したと受け止められ、違法伐採や焼き畑が急増
ブラジルは南部に産業が集中していて、森林が広がる北部は貧しい事で知られます。
歴代政権は、この格差を分配によって解決しようとしてきましたが、ボルソナロ氏はそれを経済振興によって成し遂げようとしているのです。
ただ、このままボルソナロ氏が強硬姿勢を続けると経済にも悪影響を及ぼしかねません。
すでに欧米の衣料・靴メーカーがブラジル製素材の発注を停止する方針を発表しました。
EUと、ブラジルを含む南米4カ国のFTAも見直しの検討が公然と言われる等、成長戦略の根幹とするFTA網の拡大にも黄信号がともり始めています。
ただ、少しずつですが前進している事も窺えます。
アマゾン地域で9月に発生した森林火災の数が約1万9900件で、前月と比べて約35%減少したことが分かりました。
火災への対応の鈍さを国際的に批判されたボルソナロ政権が、消火のために策を講じた事が奏功したとみられます。
直近の経済成長率は+1.1%
2020年3月4日に発表された2019年のGDPは前年比で1.1%増でした。
伸び率は17~18年の1.3%から微減となりました。
理由
隣国アルゼンチンの景気低迷や中国でのアフリカ豚熱(ASF)のまん延で、経済をけん引してきた輸出が減少に転じた為です。
政府は20年に2%台の成長を目指していますが、新型コロナウイルスの影響もあり、達成は微妙な感じになっています。
輸出がマイナスとなるのは5年ぶりで、最大の貿易相手である中国への飼料用大豆の輸出が大きく落ち込んだのが響きました。
2020年はコロナウイルスの影響もあり不透明なるも、IMFは改革を評価
2020年3月現在、ブラジル景気の先行きをみると、不透明感が強いと言えます。
主な要因
- コロナウイルスで輸出相手国である中国の景気が急激に悪化していること
- レアル安に伴って部品を海外から仕入れる製造業の苦境
- 構造改革の停滞懸念
- 頭打ちがみられる国内景況感
などが挙げられます。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ブラジルの主要輸出品目である農畜産物や資源価格は下落基調が続いています。
レアルは1ドル=4.5レアルと過去最安値を更新するなど、対ドルで年初来から1割以上低い水準で取引されており、輸入品に頼る製造業などで影響が出始めています。
因みに、IMFは2020年1月に更新した世界経済見通しで、世界主要国の20年の経済成長率予測を下方修正したにもかかわらず、ブラジルに関しては成長率見通しを2.2%に上方修正しています。
愚直に経済構造の改革を進めていってほしいものです。
景気浮揚のための歳出増をどこまで許すか
上記の通り、ブラジルの景気は厳しい状況ですが、これに対するボルソナロ大統領の対応が注目されます。
ボルソナロ大統領は大統領選挙時に財政再建を公約の一つの柱としていた事から、他のポピュリズム政権と違ってのべつ幕無しの歳出増は出来ません。
ただ、景気低迷に伴う歳入鈍化を受けて、財政状況はひっ迫度合いを増している状況でもあります。
そこで大統領としても景気浮揚で税収アップを図るべく、政権の経済チームに対して歳出の伸びを前年のインフレ率以下に抑えることを定めた歳出上限法の見直しを指示したようです。
ただ、この法律改正には議会承認が必要です。
議会は同法及び経常歳出に向けた国債発行の禁止、プライマリーバランスの達成を財政政策の柱とみる傾向があり、なかなか実現が難しそうな情勢です。
心配なのは、仮にそれが可決してしまった時にマーケットがどう反応するかということ。
実現すれば金融市場では財政健全化に向けたストッパーが外れたと見る可能性もあり、そうなると年金改革でレアルが上昇する事を我慢して見守っていた投資家を裏切る事になる可能性もあります。
ブラジルレアルの金利はどうなるか
2020年3月時点の政策金利 | 3.75% |
2019年7月に約1年4カ月ぶりの利下げをして以降、ブラジルの金融政策は緩和局面と言えるでしょう。
直近では、2020年2月5日に0.25%引き下げ、過去最低の4.25%としました。
これで5会合連続での利下げですが、今回の利下げ局面では最も小幅なものとなりました。
足下でレアルは過去最低水準にある事もあって、ドラスティックに下げるわけにもいきません。
決定は全会一致でした。
通貨レアルが過去最低水準にあり、経済成長が今年加速すると見込まれる中、アナリストは追加利下げの余地は少ないとみています。
その意味では仕込んでいいのかもしれません。
3月18日、0.5%利下げで3.75%へ(3月19日追記)
2020年3月18日、ブラジル中央銀行は政策金利を0.5%引き下げ、過去最低の年3.75%としました。
これで利下げは6会合連続となりますが市場予想とはほぼ合致した結果となったようです。
中銀は前回会合で利下げサイクルの終了を示唆していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、追加利下げに踏み切りました。
中銀は、新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済を大きく減速させ、コモディティ価格の下落、不安定な資産価格の変動を引き起こし、ブラジルを含めた新興国経済が苦境に立たされているとの認識を示し、金利引き下げの理由としました。
また、今回の利下げはFRBの緊急利下げに追随したものと受け止められますが、レアルの下落が止まらない中、金利低下は通貨安を加速させる懸念もあります。
また、今後の金融政策については、今回決定した政策金利の水準を維持することが適切であるとし、更なる利下げには慎重な姿勢を示しました。
実際に、拡大消費者物価指数は1月の前年同月比+4.2%から2月は+4.0%へと小幅低下し、中央銀行の2020年のインフレ目標圏(4.0%±1.5%)の中央値と同水準となっています。
これはつまり、今回の金利引き下げで実質金利(金利からインフレ率を引いたもの)がゼロになっている事を意味します。
その意味でも政策金利が当面は3.75%に据え置かれる可能性は高いかもしれません。
ただ、今後の政策決定はあくまでこれから発表される経済のデータ次第とも述べ、追加利下げの可能性を完全には排除しませんでした。
まだ利下げが続く?
2020年3月下旬現在、更なる利下げがあると予想されます。
中央銀行は3月26日発表のインフレ報告書で2020年の成長率が0%になるとの見通しを示しました。
足下はインフレ率も抑制された状態が続く見通しで、これは追加緩和が正当化される内容と言えます。
また利下げが行われることになるかもしれません。
利下げする事は通貨安につながるのでは?
確かに、追加利下げへの思惑が通貨を下押しする可能性はありますが、それ以上に年⾦改革法案の進展期待が通貨の上昇材料になると考えられます。
世界的な金融緩和の流れの中で、引き続き相対的に⾦利の高いブラジルレアルには資⾦流⼊が増えるという可能性があり、そうなればブラジル・レアルの上昇を後押しすると考えられます。
2020年3月時点のブラジルの今後の金融政策のシナリオ
ブラジルの金融政策は、直前会合で一旦利下げは停止という見方が強かったですが、どういったシナリオが考えられるでしょうか。
ブラジル中銀のインフレ率のシナリオは、20年は3.5%、21年は3.8%です。
前提は為替レートは1ドル=4.25レアルが続く、というもので2月中旬は4.3レアルを超えていますので、想定を超えたレアル安です。
政策金利は4.25%から21年末には6%に引き上げるとしています。
別のシナリオでは、為替の前提は同じですが、政策金利を4.5%に維持するケースが示されています。
この場合のインフレ率は20年は3.5%で先のシナリオと同じですが、21年は3.8%になるとの試算を示しています。
どちらにしても、ブラジル中銀のインフレ目標である4.25%±1.5%を満たしています。
足元のインフレ率を見ると12月は前年比で4.3%となっており、既にブラジル中銀の見通しを上回っています。
なお、政策金利の水準について、ブラジル中銀は以前から緩和的水準(中立金利を下回る)と述べており、今回の引き下げは景気下支え効果への期待もあるようです。
インフレを考えるなら一段の利下げはないでしょう。しかしコロナウイルスと米中貿易合意に伴うブラジルの対中輸出の影響が大きいと、景気後退懸念が更に強まり、利下げをもう一段するという可能性もあります。
ブラジルの政策金利の推移は↓
【最新】ブラジルの政策金利と金融政策の推移とまとめ2018~ブラジルレアルの今後の見通し
今後の見通しを考える場合、まずは直近の最下限はどこなのかを知っておく必要があります。
それは、
2020年3月17日 | 1米ドル=5.0(5.07)レアル |
2020年3月11日 | 対円で1レアル=20.6円で史上最安値を更新 |
の二つでしょうか。
USD-BRLはまた史上最安値を更新しています。
1USD=5.07レアルです。瞬間的なものではありますが、まだまだ下値を一気に突き抜けていく可能性があります。
引き続きの世界的なマーケットクラッシュでブラジルレアルが最安値を更新しました。
現地時間3月11日、BRL-JPYは一時1レアル=20.6円を、USD-BRLは1ドル=5.0レアルを記録し、共に過去最安値を記録しました。
世界的な大暴落が起きた3月9日、ブラジルにも大きな影響が及びました。
もちろんブラジルレアルも大きく売られ、対ドルで前週末比2.4%安となる1ドル=4.7レアルと、過去最安値を更新しました。
また対円では一時21.1円まで下げました。
もはや底が見えない状況になりつつあります。
【BRL-JPYの推移(出所:TradingView)】
2020年3月3日、ブラジルレアルは円高の影響もあり、1BRL=23.6円と過去最低値を更新しました。
ブラジルレアルの対ドルは大きな変化はないものの、急激な円高の影響で過去最低値を更新ししてしまいました。
ブラジルレアル側に大きな影響があったというよりは円が買われたため、といった所ですが、当面こうした動きを想定して、丁寧に下値を拾っていく事が大切になると思われます。
2020年2月28日、レアルは対円、対ドルどちらとも最安値を記録しました。
新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、中国への輸出が減速するとの懸念が広がっている為です。
特に2月24日からの一週間は世界的にマーケットが総崩れとなりブラジルレアルも売られる対象となりました。
当面コロナウィルスに伴う報道に左右されそうですが、それゆえ、その問題が収束すればいくつかの点で以下の点で回復する見込みがあります。
まず、中銀が利下げ休止を示唆している事が挙げられるでしょう。
2020年2月の会合後の声明で今後の利下げ休止を示唆した一方で、世界経済の減速懸念から各国中央銀行への利下げ圧力が強まっており、これまでのように相対的なブラジルの金利低下によるレアル安の進行は収まる可能性があります。
次に現在のレアルの割安感が挙げられます。
レアルはこれまでの下落で割安感が強まっており、レアルは実質実効為替レートの過去10年平均に対し約20%割安な水準にあるとのレポートもあります。
また、比較的余裕のある外貨準備も味方になるでしょう。
ブラジルの外貨準備高は2019年12月現在で3,569億米ドルとなっていて、必要となれば為替介入に活用することが可能です。
既に年初来からの下落率は10%に達し、感情的になっているマーケットの時こそ買い場です。
2020年3月9日、ブラジル中央銀行は対ドルでのレアル安を止めるため、合計2回の為替介入をした模様です。
金額は35億ドル規模と見られます。中銀のブルノ・セラ理事は同日、必要な限り介入を続けるとして市場参加者をけん制しました。
中銀の強い意思を見せて何とか極端なレアル安は避けていきたい所です。
ビッグマック指数(≒購買力平価)で考えた場合のBRL
もう一つ、通貨が割安か否かを考える時のツールであるビッグマック指数と実際のレートを検討してみましょう。
ビッグマック指数の説明等は↓をご参考ください。
割安な新興国通貨はどれだ??購買力平価(ビッグマック指数)で考える簡単チェック
日本のビッグマックは390円、ブラジルでは17.5ブラジルレアル(2019年7月現在)。
1BRL | 22.28円(2019年7月末時点) |
が購買力平価説を基にした簡易的なブラジルレアル・円の為替レートになります。
こうした所からすると今の為替レートは高めになっているという事ですね。
ブラジルレアル安の理由は様々だが、政治の混乱である事が多い
2015年に史上最安値を更新した背景として、政治の混乱がありました。
当時ブラジルレアルが回復したのは、ルセフ前大統領が辞職し、テメル大統領代行の大統領昇格となった後、政治機能の回復が見られたためです。
ボルソナロ氏を取り巻く政治的なリスク
現状、ボルソナロ政権はある程度安定的に政治運営しており、喫緊のリスクとして重大な政治問題があるわけではありません。しかし注意ポイントもあります。
例えば、ボルソナロ大統領が所属する少数与党内の分裂騒動です。
同大統領が所属する社会自由党の創設者で党首のビヴァール氏による政治資金の不正使用疑惑が明るみに出たのを契機に、同党指導部を中心とする古参議員と、2018年に入党したボルソナロ氏を支持する議員らとの間で内紛が起きているようなのです。
同党が分裂すれば、政権・議会運営に悪影響が及ぶでしょう。
一方、年金改革法案の可決を支えた中道勢力とボルソナロ政権との関係が強まる方向に展開すれば、更なる改革にとって追い風になるかもしれません。
ボルソナロ氏の政治リスク
ボルソナロ政権の改革を進める上で国民からの支持は欠かせませんが、ボルソナロ氏がめちゃくちゃクリーンな政治家なのか、というと必ずしもそうとは言い切れません。
実際に、不支持率が支持率を上回る状況が続くなど、決して好調というわけではありません。
特に与党内では大統領の息子達が幅を利かせたり、身内重用も目立っていて、こうした行動が支持率低下に拍車をかける可能性があります。
ブラジルの大統領は、スキャンダルで常に世間から見放され、下野する事が多かったこともあり、この問題に継続的に注意していく必要があると思われます。
世界の景気動向もあるが、上手く行けば1レアル=30円台も
やはり、ブラジルはファンダメンタルズの弱さがありますので、それをいかに計画的になくしていくか、という事でしょう。
その意味で年金改革が順調に進むか否かはかなり重要でした。
これが2019年10月に成立した事で、今後の改革進捗にも期待が持てます。
今後、税制改革などの構造改革の進展や、ブラジルの景気動向が注目ポイントとなり、場合によっては1レアル=30円というのも大いにあり得るでしょう。
心配なのがボルソナロ大統領の政治姿勢とアマゾン森林火災問題でしょうか。
アマゾン問題については自然環境問題という観点で極めて重要であるものの、この問題はこれそのものよりも個人的な怨嗟も絡んでいたりして、少し厄介です。
対応に忙殺されて、他の大切な問題が後回しとなって、最終的に足下を救われるといった事が無いように祈るところです。
年金法案などが決着した後だとすぐに上昇してしまう可能性もあるので、それまでは不安定な状態でも、5~6%くらいの金利をもらうつもりで少しずつ仕込み、来たる上昇に向けて準備しておいても良いかもしれません。
貿易摩擦問題
2019年12月20日、アメリカのトランプ大統領はボルソナロ大統領に対し、ブラジルからの鉄鋼・アルミニウム輸入への追加関税の発動を見送ると伝えました。
背景
トランプ氏は12月2日、ブラジルとアルゼンチンが自国通貨の操作で米国の農家の利益を損なっていると主張し、両国から輸入する鉄鋼・アルミへの追加関税を直ちに発動させると表明していました。
しかし、トランプ大統領は2019年12月20日、ボルソナロ大統領と電話での貿易協議を行い、その中で同関税を賦課する事を見送ると伝えたようです。
一瞬、ブラジルの新たな課題として認識されかけ始めましたが、何とか杞憂に終わったようです。
元々のアメリカの主張
ブラジルが自国通貨を切り下げてアメリカの輸出品が不利を受けていると主張しています。
確かに、レアルは2019年初から12月までの間に対ドルで1割安い水準で推移し、11月下旬に最安値を更新しています。
ただ、これはどちらかと言うと選挙対策の色合いもあるかもしれません。
保護主義的な政策を打ち出して、業績悪化に苦しむ鉄鋼メーカーや、中国との貿易戦争で打撃を受ける農家にアピールする、というものです。
これを受けて、ボルソナロ大統領は同じ日に
「私はこれは報復ではないとみており、私はトランプ氏にアルミ価格への関税で罰することのないように話す」
とコメントしています。
アメリカにおいて鉄鋼の輸入相手国のうちブラジルはカナダに次いで2番目に大きく、19年1~9月期の輸入量は前年同期比1割増えたという事です。
おすすめの投資信託やETF
個人的にお勧めするのは、やはり外資系の運用会社の商品か、国内の運用会社でもしっかりとした海外のブラジル運用に強い運用会社に外部委託している商品です。
パフォーマンスは1年などの短期ではなく、なるべく長めのもののほうがパフォーマンスの差がしっかり出ます。
また、純資産が最低でも10億円はあるものが良いと思います。
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加えて個人的に重視しているのはレポートの充実です。
投資する前も投資した後も質の高いレポートがたくさん出ている事は大切ですね。特にしっかりと相場観を記している所は重宝するものです。
加えて、これは完全に個人の経験によるもので、何か科学的なデータがあるわけではないのですが、販売手数料のない商品(ノーロード)のものより、手数料かかる投資信託の方が何となくパフォーマンスが良いような気がします。。。いつもそういうわけではないのですが。。。
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